<構成>
1 検査の背景(リンク参照)
(1)GoToキャンペーン事業の概要(リンク参照)
(2)GoToキャンペーン事業の予算(リンク参照)
(3)GoToキャンペーン事業を実施する委託先の公募等(リンク参照)
(4)GoToキャンペーン事業の開始時期、一時停止措置等(リンク参照)
2 検査の観点、着眼点、対象及び方法(リンク参照)
3 検査の状況(リンク参照)
(1)GoToキャンペーン事業の予算の執行状況(リンク参照)
(2)GoToキャンペーン事業を実施する事務局の公募等の手続等(リンク参照)
(3)GoToキャンペーン事業の実施状況(リンク参照)
(4)委託費の状況(リンク参照)
4 本院の所見(リンク参照)
別図表1 事業フロー図(リンク参照)
別図表2 GoToキャンペーン事業に関する主な出来事(リンク参照)
令和2年1月以降の新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、観光需要等が大きく減少した状況を踏まえて、政府は「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(令和2年4月閣議決定)において、GoToキャンペーン事業として、同感染症の影響により、売上等に甚大な打撃を被った観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテインメント事業を対象に、同感染症の拡大が収束した後の一定期間に限定して、官民一体型の消費喚起キャンペーンを実施し、また、全国の商店街等において賑わいを回復するためのキャンペーン実施を支援するとした。
GoToキャンペーン事業には、図表1のとおり、旅行者又は消費者と贈与契約を締結して給付金を給付する事業として、観光庁が実施するGoToトラベル事業(以下「トラベル事業」という。)、農林水産省が実施するGoToEatキャンペーン(以下「イート事業」という。)及び経済産業省が実施するGoToイベント事業(以下「イベント事業」という。)、並びに中小企業庁が商店街等に地元の良さを発信したり地域社会の価値を見直すきっかけとなったりする取組(以下「商店街イベント等」という。)を実施させるなどのGoTo商店街事業(以下「商店街事業」という。)がある。このうち、イート事業は、更に食事券発行委託事業とオンライン飲食予約委託事業に分かれている(以下、観光庁、農林水産省、経済産業省及び中小企業庁を合わせて「4省庁」という。)。
そして、4省庁は、それぞれ公募し選定した事業者との間で委託契約を締結し、各事業を実施させている(以下、これらの事業者について、トラベル事業は「トラベル事務局」、食事券発行委託事業は「食事券発行事業者」、オンライン飲食予約委託事業は「オンライン飲食予約事業者」、イベント事業は「イベント事務局」、商店街事業は「商店街事務局」という。)。また、農林水産省は、食事券発行事業者及びオンライン飲食予約事業者の販売実績等を取りまとめて同省に報告する実績確認監査等事業者並びに消費者及び飲食店からの問合せに対応するコールセンターを設置し、その運営を行う相談窓口・申請案内等事業者ともそれぞれ委託契約を締結している(各事業の事業フロー図は別図表1参照)。
トラベル事業 | イート事業 | イベント事業 | 商店街事業 | ||
---|---|---|---|---|---|
食事券発行委託事業 | オンライン飲食予約委託事業 | ||||
実施省庁 | 観光庁 | 農林水産省 | 経済産業省 | 中小企業庁 | |
事業の目的 | 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、全国の旅行業、宿泊業はもとより、貸切バス、ハイヤー・タクシーや飲食業、物品販売業など地域経済全体が深刻な状況に追い込まれており、給付金の給付により、感染拡大により失われた観光客の流れを地域に取り戻し、観光地全体の消費を促すことで、地域経済に波及効果をもたらすこと | 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、飲食業等の産業が深刻な状況に追い込まれており、給付金の給付により、感染拡大で失われた外食を利用する消費者の流れを取り戻し、外食における消費を促すことで、飲食業に対する需要喚起を図ること | 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、甚大な影響を受けたイベントを対象として、給付金の給付により、イベント業界全体の需要喚起及び「新しい生活様式」に適応した事業活動の推進と定着を図ること | 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、甚大な影響を受けた地域産業において、新しい生活様式の定着に向けた取組を進めながら、国全体の需要喚起を図るべく、立地や集客機能に優れた商店街等において人の流れと街のにぎわいを創り出し、商店街等のにぎわい回復を図ること | |
事業実施方法 | 給付金の給付 | 給付金の給付 | 給付金の給付 | 請負注(4) | |
給付対象者 | 宿泊旅行等であって、現に実施されたものの旅行者、及び同旅行者であって宿泊地の属する都道府県等において地域共通クーポンを利用して商品等を購入した者注(1) | 食事券発行事業者等が発行する食事券を購入し、飲食店における飲食の提供の対価として当該食事券を使用して支払った者 | オンライン飲食予約事業者のシステムを通じて飲食店を予約して利用し、その際に付与されたポイントを次回以降に同システムを通じて予約した飲食店における飲食の提供の対価として支払った者 | イベント事務局に登録されたイベントのチケットをイベント事務局に登録されたチケット販売事業者等を通じて購入した者注(2) |
(請負契約の相手方)
商店街イベント等を申請し採択された商店街等
|
給付額 | 1人1泊当たり2万円(日帰り旅行の場合は1万円)を上限に旅行代金の1/2相当額 | 使用された食事券の額面の100分の20相当額 | 使用されたポイント数を1ポイント当たり1円として算定した額 | チケット1枚当たり2,000円を上限にチケット税込価格の2割相当額 |
(請負契約額)
1申請当たり1400万円を上限に、商店街イベント等に要した額(1申請者(商店街等)当たり300万円(複数の商店街等で商店街イベント等を実施する場合は500万円の上乗せが可能))
|
給付 | 給付額の7割を旅行代金の割引、3割を地域共通クーポンとして付与注(1) | 購入額の25%分を上乗せした額面の食事券を販売(購入1回当たりの食事券の額面は2万5000円を上限) | 14時59分までに来店する予約に対しては、予約人数1人当たり500ポイント(1回の予約当たり5,000ポイントを上限)、15時以降に来店する予約に対しては、予約人数1人当たり1,000ポイント(1回の予約当たり1万ポイントを上限)を付与 | 給付額を割引又はクーポンとして付与注(3) |
(費用負担)
商店街等は商店街事務局との間で締結した請負契約に基づいて商店街イベント等を実施し、それに要した経費の一部を商店街事務局が請負契約額として支払う。注(4)
|
給付の根拠規程 | サービス産業消費喚起事業(GoToトラベル事業)給付金給付規程(観光庁制定) | サービス産業消費喚起事業(GoToEatキャンペーン)給付金給付規程(農林水産省制定) | 需要喚起キャンペーン事業(GoToイベント事業)給付金給付規程(経済産業省制定) | ― | |
事業実施の委託先 | トラベル事務局1団体 | 49食事券発行事業者 | 13オンライン飲食予約事業者 | イベント事務局1団体 | 商店街事務局1団体 |
1実績確認監査等事業者、 1相談窓口・申請案内等事業者 |
GoToキャンペーン事業の2年度予算額は、2年4月の令和2年度一般会計補正予算(第1号)(以下「第1次補正予算」という。)において1兆6794億余円が計上された後、同年12月には令和2年度一般会計新型コロナウイルス感染症対策予備費(以下「予備費」という。)を使用して3119億余円が予算措置され、更に3年1月の令和2年度一般会計補正予算(第3号)(以下「第3次補正予算」という。)において1兆0856億余円が計上されていて、計3兆0769億余円(給付金計2兆6647億余円、委託費計4122億余円)となっている(図表2参照)。そして、給付金と委託費の合計額のうち委託費が占める割合は、第1次補正予算では18.4%となっていたものが、第3次補正予算では9.4%となっている。
図表2 GoToキャンペーン事業の予算(単位:千円)
歳出予算額(A) | 予備費使用額 (B) |
計 (A+B) |
||||
---|---|---|---|---|---|---|
第1次補正予算 | 第3次補正予算 | |||||
トラベル事業 | ① | (目)サービス産業消費喚起事業給付金 注(1) |
1,124,833,275 | 937,376,000 | 311,929,000 | 2,374,138,275 |
② | (目)サービス産業消費喚起事業委託費 注(2) |
229,413,713 | 93,737,600 | ― | 323,151,313 | |
小計 | 1,354,246,988 | 1,031,113,600 | 311,929,000 | 2,697,289,588 | ||
イート事業 | ③ | (目)サービス産業消費喚起事業給付金 注(3) |
153,360,000 | 45,500,000 | ― | 198,860,000 |
④ | (目)サービス産業消費喚起事業委託費 注(4) |
46,917,470 | 6,000,000 | ― | 52,917,470 | |
小計 | 200,277,470 | 51,500,000 | ― | 251,777,470 | ||
イベント事業 | ⑤ | (目)サービス産業消費喚起事業給付金 | 91,723,500 | ― | ― | 91,723,500 |
⑥ | (目)サービス産業消費喚起事業委託費 | 28,060,996 | ― | ― | 28,060,996 | |
小計 | 119,784,496 | ― | ― | 119,784,496 | ||
商店街事業 | ⑦ | (目)サービス産業消費喚起事業委託費 注(5) |
5,134,334 | 3,001,040 | ― | 8,135,374 |
GoToキャンペーン事業 | 給付金計(①、③、⑤) | 1,369,916,775 | 982,876,000 | 311,929,000 | 2,664,721,775 | |
委託費計(②、④、⑥、⑦) | 309,526,513 | 102,738,640 | ― | 412,265,153 | ||
給付金と委託費の合計額のうち委託費が占める割合(%) | 18.4 | 9.4 | ― | 13.3 | ||
合計 | 1,679,443,288 | 1,085,614,640 | 311,929,000 | 3,076,986,928 |
農林水産省、経済産業省及び国土交通省は、2年5月に策定した「令和2年度「需要喚起キャンペーン事業」に係る企画競争募集要領」において、GoToキャンペーン事業を実施する委託先については、四つの事業を一体的な事業とするために、一つの事務局とすることを基本としていた。そして、クーポンやポイント等を消費者に給付するに当たっては、旅行業者や食事券発行事業者等の中間事業者を広く募集、登録するなどとしていた。
農林水産省、経済産業省及び国土交通省は、上記の募集要領に基づき2年5月26日に公募を開始したが、国会等において全体事務局の必要性等について指摘を受けた。そして、観光、飲食、イベントという性質の異なる事業を統括する事務局の構造が複雑になる可能性があるといった課題が当初からあったことを踏まえて、同年6月5日に公募を中止し、事務局については、4省庁がそれぞれ事業分野に適した執行団体を選定することとした。
4省庁は、各事業を実施するための委託先をそれぞれ募集するために策定した募集要領等において、各事業は、政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(令和2年3月新型コロナウイルス感染症対策本部決定)や業界別ガイドライン等業界ごとの感染症対策の実施状況、地域ごとの感染症流行状況等を勘案しつつ、段階的に実施するなどとしている。また、開始時期や実施範囲等についても、関係省庁等に相談の上決定するとともに、新型コロナウイルス感染症の再流行等による新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)に基づく緊急事態宣言(以下「緊急事態宣言」という。)の発出等新たな事態が生じた場合、事業の実施中においても見直しを図ることがあり得るなどとしている。
そして、各事業の開始時期、事業開始後の実施範囲の見直し、一時停止措置等の状況は次のとおりとなっている。
観光庁は、2年7月10日に、同月22日以降に実施される旅行をトラベル事業の対象とし、旅行代金の割引を行うことを公表した。
しかし、東京都における新型コロナウイルス感染症の感染状況(以下「感染状況」という。)等から、観光庁は、同月17日に東京都を目的地とする旅行及び東京都に居住する者の旅行をトラベル事業の対象外とすること(以下「東京除外措置」という。)を公表した。
東京除外措置は同年9月30日をもって終了し、同年10月1日から東京都を目的地とする旅行及び東京都に居住する者の旅行がトラベル事業の対象となったが、その後における感染状況等から、5都市に係る旅行、年末年始の全国に係る旅行及び緊急事態宣言に伴う全国に係る旅行について一時停止措置等(以下、これらを合わせて「5都市等に係る一時停止措置等」という。)が行われている(図表3(トラベル事業)参照)。
観光庁は、東京除外措置及び5都市等に係る一時停止措置等により取り消された旅行については、旅行業者及び宿泊事業者(以下「旅行業者等」という。)に対して旅行者から取消料を収受しないことを求め、これに伴って旅行業者等を含む観光関連事業者に生ずる実損を低減させるために、取消料対応費用及び取消料対応事務費用(以下「取消料対応費用等」という。)を支払う措置を講ずることとした。
なお、地域共通クーポンの利用は、地域共通クーポン取扱店舗の審査・登録、地域共通クーポンの配布等に時間を要したことから、2年10月1日以降に実施される旅行から開始された。
農林水産省は、イート事業のうちオンライン飲食予約委託事業については、2年10月1日からポイント付与を開始し、また、食事券発行委託事業については、同月5日から食事券の販売を開始した。
しかし、その後における感染状況等から、同省は、同年11月に、食事券発行事業者に対して食事券の新規販売等の一時停止措置を実施すること、消費者に対して食事券やポイントの利用を原則4人以下の単位での飲食としたり食事券及びポイントの利用を控えたりするよう呼びかけることなどについて、それぞれ地域の実状に詳しい都道府県に検討するよう要請した。そして、これらの要請を受けた都道府県の検討結果等を踏まえて、食事券発行事業者等は、図表3(イート事業)のとおり、食事券の新規販売等の一時停止措置を講ずるなどしている。
イベント事業の対象となる最初のイベントは、2年10月29日にイベント事務局に登録された(以下、イベント事務局に登録されたイベントを「登録イベント」という。)。経済産業省は、イベント事務局を募集するために策定した「令和2年度「需要喚起キャンペーン事業(GoToイベント事業)」に係る企画競争募集要領」において、登録イベントの実施方法は、集客を伴うイベント(以下「集客イベント」という。)のほか、新しい生活様式の定着に向けた取組としての無観客ライブ配信等(以下「オンラインイベント」という。)も含まれるとしている。
しかし、その後における感染状況等から、イベント事務局は、図表3(イベント事業)のとおり、集客イベントのチケットについては、新規販売の一時停止措置を順次講じている。
商店街事務局は、商店街イベント等を実施する商店街等の募集を2年10月2日から開始し、採択された商店街等と順次、請負契約を締結した。そして、商店街イベント等は同月19日から実施された。
しかし、その後における感染状況等から、商店街事務局は、図表3(商店街事業)のとおり、商店街イベント等のうち、集客を伴うイベント(以下「商店街集客イベント」という。)の実施について一時停止措置を講じている。一方、オンラインで実施されるイベント、プロモーション、観光商品開発等(以下、これらを合わせて「商店街オンラインイベント等」という。)で既に採択されたものは実施することができるとしている。なお、商店街事務局は、3年1月9日以降、商店街集客イベント及び商店街オンラインイベント等を採択するための審査を一時停止する措置を講じている。
上記のことを含め、GoToキャンペーン事業に関する主な出来事は別図表2に記載したとおりである。
対象となる旅行 | 対象地域 | 公表日 | 東京除外措置及び5都市等に係る一時停止措置等の期間 | |
---|---|---|---|---|
東京都に係る旅行(東京都を目的地とする旅行及び東京都に居住する者の旅行) | 東京都 | 令和2年7月17日 | 7月22日~9月30日 | |
5都市に係る旅行 | 5都市を目的地とする旅行 | 札幌市及び大阪市 | 11月24日 | 11月24日(12月2日)~12月15日注(1) |
12月14日 | 12月14日(12月22日)~12月27日注(1) | |||
東京都 | 12月3日 | 12月3日~12月17日注(2) | ||
12月14日 | 12月18日(12月22日)~12月27日注(1) | |||
名古屋市 | 12月14日 | 12月14日(12月22日)~12月27日注(1) | ||
広島市 | 12月16日 | 12月16日(12月24日)~12月27日注(1) | ||
5都市に居住する者の旅行 | 札幌市及び大阪市 | 11月27日 | 11月27日~12月15日注(3) | |
12月14日 | 12月14日~12月27日注(3) | |||
東京都 | 12月3日 | 12月3日~12月17日注(3) | ||
12月14日 | 12月18日~12月27日注(3) | |||
名古屋市 | 12月14日 | 12月14日~12月27日注(3) | ||
広島市 | 12月16日 | 12月16日~12月27日注(3) | ||
年末年始の全国に係る旅行 | 全国 | 12月14日 | 12月28日~令和3年1月11日 | |
緊急事態宣言に伴う全国に係る旅行 | 全国 | 令和3年1月7日 | 1月12日~2月7日 | |
2月2日 | 2月8日~3月7日 | |||
3月5日 | 3月8日~当面の間 |
対応内容 | 都道府県名 | 計 |
---|---|---|
①食事券の新規販売等を一時停止 | 福島県、茨城県、新潟県、石川県、長野県、愛媛県、佐賀県 | 7 |
②既に発行された食事券及びポイントの利用抑制(利用する際の人数抑制を含む。) | 山形県、山梨県、三重県、香川県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 | 8 |
①及び②の実施 | 北海道、宮城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、富山県、岐阜県、静岡県、愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、岡山県、広島県、高知県、福岡県、熊本県、長崎県 | 22 |
計 | 37 |
対応内容 | 対象地域 | 公表日 | 一時停止措置の期間 |
---|---|---|---|
集客イベントのチケット新規販売の一時停止 | 札幌市 | 令和2年11月26日 | 11月28日~12月27日 |
神奈川県 | 11月27日 | 12月2日~当面の間 | |
全国 | 12月17日 | 12月28日~当面の間 |
一時停止措置の対象 | 対象地域 | 公表日 | 一時停止措置の期間 |
---|---|---|---|
商店街集客イベント | 札幌市 | 令和2年11月26日 | 11月26日~12月27日 |
全国 | 12月17日 | 12月28日~当面の間 | |
商店街イベント等を採択するための審査 | 全国 | 令和3年1月7日 | 1月9日~当面の間 |
2年1月以降の新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、観光需要等が大きく減少した状況を踏まえて、政府は、2年度に3兆円に上る多額の予算を計上するなどしてGoToキャンペーン事業を実施している。
そこで、本院は、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、GoToキャンペーン事業の実施状況はどのようになっているか、旅行者又は消費者に対する給付金や旅行業者等に対する取消料対応費用等の支払は適切に行われているか、4省庁は事業実施に伴い、どのような不正、不適切な事態を想定し、その防止のためにどのような対応策を講じているか、事業の委託先の選定等の契約手続はどのように行われているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、2年度に、旅行者又は消費者に対して給付されるなどした給付金計7213億余円、並びに委託先に対して支払われた委託費計2217億余円を対象として、農林水産本省及びトラベル事務局において、委託契約書等の関係書類を確認したり、関係者から説明を徴したりするなどして会計実地検査を行うとともに、観光庁、経済産業本省、中小企業庁、実績確認監査等事業者、イベント事務局及び商店街事務局から、給付金の給付状況、事業に要した費用の内訳等について、給付金の支給決定に係る書類、委託費の概算払に係る書類等の提出を受けて、その内容について説明を徴するなどして検査した。
GoToキャンペーン事業の2年度における支出済額は、上記のとおり、給付金7213億余円、委託費2217億余円、計9431億余円となっていて、予算現額に対する支出済額の割合(以下「執行率」という。)は、給付金32.0%、委託費44.3%、計34.3%にとどまっていた(図表4参照)。これは、新型コロナウイルス感染症の再流行等による緊急事態宣言の発出等に伴いGoToキャンペーン事業の一時停止措置等が講じられたことによるものである。
なお、2年度の支出済額は、第1次補正予算で措置された額の範囲内となっていて、予備費使用額及び第3次補正予算額に流用増減額を加減した額の全額に相当する額を含む1兆8039億余円については翌年度に繰り越され、引き続きGoToキャンペーン事業の財源に充てられることとなった。
図表4 GoToキャンペーン事業の予算の執行状況(令和2年度)(単位:千円、%)
予算現額 (A) |
支出済額 (B) |
繰越額 |
不用額 |
執行率 (B)/(A) |
|||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
歳出予算額 | 予備費使用額 |
流用増△減額 |
|||||||||
第1次補正予算額 |
第3次補正予算額 |
||||||||||
トラベル 事業 |
① | (目)サービス産業消費喚起事業給付金注(1) | 1,956,646,260 | 1,124,833,275 | 937,376,000 | 311,929,000 | △417,492,015注(8) | 621,290,220 | 1,335,356,039 | ― | 31.7 |
② | (目)サービス産業消費喚起事業委託費注(2) | 410,753,215 | 229,413,713 | 93,737,600 | ― | 87,601,902注(9) | 197,830,482 | 212,922,732 | 0 | 48.1 | |
小計 | 2,367,399,475 | 1,354,246,988 | 1,031,113,600 | 311,929,000 | △329,890,113 | 819,120,702 | 1,548,278,772 | 0 | 34.6 | ||
イート事業 | ③ | (目)サービス産業消費喚起事業給付金注(3) | 198,860,000 | 153,360,000注(6) | 45,500,000注(7) | ― | ― | 98,444,022 | 100,415,977 | ― | 49.5 |
④ | (目)サービス産業消費喚起事業委託費注(4) | 52,917,470 | 46,917,470 | 6,000,000 | ― | ― | 18,441,488 | 34,475,732 | 248 | 34.8 | |
小計 | 251,777,470 | 200,277,470 | 51,500,000 | ― | ― | 116,885,511 | 134,891,710 | 248 | 46.4 | ||
イベント事業 | ⑤ | (目)サービス産業消費喚起事業給付金 | 91,723,500 | 91,723,500 | ― | ― | ― | 1,616,674 | 90,106,825 | ― | 1.7 |
⑥ | (目)サービス産業消費喚起事業委託費 | 28,060,996 | 28,060,996 | ― | ― | ― | 5,112,085 | 22,948,910 | ― | 18.2 | |
小計 | 119,784,496 | 119,784,496 | ― | ― | ― | 6,728,759 | 113,055,736 | ― | 5.6 | ||
商店街事業 | ⑦ | (目)サービス産業消費喚起事業委託費注(5) | 8,135,374 | 5,134,334 | 3,001,040 | ― | ― | 394,700 | 7,740,674 | ― | 4.8 |
GoToキャンペーン事業 | 給付金計 (①、③、⑤) |
2,247,229,760 | 1,369,916,775 | 982,876,000 | 311,929,000 | △417,492,015 | 721,350,916 | 1,525,878,843 | ― | 32.0 | |
委託費計 (②、④、⑥、⑦) |
499,867,055 | 309,526,513 | 102,738,640 | ― | 87,601,902 | 221,778,756 | 278,088,050 | 248 | 44.3 | ||
小計 | 2,747,096,815 | 1,679,443,288 | 1,085,614,640 | 311,929,000 | △329,890,113 | 943,129,672 | 1,803,966,893 | 248 | 34.3 |
前記のとおり、GoToキャンペーン事業を実施する事務局については、4省庁がそれぞれ事業分野に適した執行団体を選定することとされた。そして、4省庁は、公募に応じて企画競争に参加した者の中から、外部有識者を含む企画競争委員会等が選定した相手方と、2年7月から10月までの間に委託契約を締結した(図表5参照)。
図表5 GoToキャンペーン事業を実施する事務局の公募等の手続(令和3年3月末時点)
企画競争実施の公示日 | 令和2年6月16日 | |
企画提案書の提出期限 | 2年6月29日 | |
応募要領 | 企画競争説明書 | |
事業の内容 | 事業スキームの構築、事業の運用、事業の広報・PR、経費合理化のための取組、実施結果等の報告等 | |
評価機関 | 外部有識者4人を含む8人の委員で構成される企画競争委員会 | |
評価基準 | 企画提案書評価基準(観光庁策定) | |
評価項目 | 業務内容の理解度、提案内容の独創性、提案内容の的確性、業務遂行の確実性、費用対効果、経費の適切性、ワーク・ライフ・バランス等の推進に関する指標 | |
契約候補者の選定方法 | 各委員による採点の総合計点が最も高い団体 | |
委託費の上限額 | 2294億余円 | |
企画競争参加者数 | 5団体 | |
契約候補者として選定された者 | ツーリズム産業共同提案体注(1) | |
予定価格 | 1866億余円注(2) | |
契約額 | 1866億余円注(3) | |
契約締結日 | 2年7月17日注(3) | |
委託業務実施期間 | 2年7月17日~3年3月26日注(3) |
項目注(1) | 食事券発行委託事業 | オンライン飲食予約委託事業 | 実績確認監査等委託事業 | 相談窓口・申請案内等委託事業 | |
---|---|---|---|---|---|
企画競争実施の公示日 | 1次公募:令和2年7月21日 2次公募:2年9月8日注(3) |
2年7月21日 | 2年7月21日 | 2年7月21日 | |
企画提案書の提出期限 | 1次公募:2年8月7日 2次公募:2年9月25日 |
2年8月7日 | 2年8月7日 | 2年8月7日 | |
応募要領 | GoToEatキャンペーンに係る事業のうち食事券発行委託事業応募要領 | GoToEatキャンペーンに係る事業のうちオンライン飲食予約委託事業応募要領 | GoToEatキャンペーンに係る事業のうち実績確認監査等委託事業応募要領 | GoToEatキャンペーンに係る事業のうち相談窓口・申請案内等委託事業応募要領 | |
事業の内容 | 食事券の発行、販売、回収、食事券の使用、回収後の飲食店への代金の振込等 | ポイント付与、ポイント使用後の飲食店への代金の振込、実績確認監査等事業者への報告等 | 食事券発行事業の監査・報告、オンライン飲食予約事業の監査・報告等 | 事務局の設置、コールセンターの設置・運営、WEBサイト制作等 | |
評価機関 | 外部有識者6人を含む10人の委員で構成される審査委員会 | ||||
評価基準 | GoToEatキャンペーンに係る事業のうち食事券発行委託事業企画競争手続要領 | GoToEatキャンペーンに係る事業のうちオンライン飲食予約委託事業企画競争手続要領 | GoToEatキャンペーンに係る事業のうち実績確認監査等委託事業企画競争手続要領 | GoToEatキャンペーンに係る事業のうち相談窓口・申請案内等委託事業企画競争手続要領 | |
評価項目 | 実施体制の適格性、知見・専門性及び類似・関連事業の実績等、事業の目的、趣旨との整合性及び事業内容の妥当性、実施方法の効率性、経費配分の適正性、期待される成果、ワークライフバランス等の推進 | ||||
契約候補者の選定方法 | 採点した得点の上位の者から委託費の上限に達するまで | 採点した得点の最上位の者 | |||
委託費の上限額 | 計206億余円 | 計85億円 | 10億円 | 5000万円 | |
企画競争参加者数 | 1次公募:延べ56事業者 2次公募:延べ22事業者 |
18事業者 | 3事業者 | 4事業者 | |
契約候補者として選定された者 | 一般社団法人北海道商工会議所連合会等49事業者 (1次公募:35事業者、2次公募:14事業者) |
ぐるなび株式会社等13事業者 | EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社 | 令和2年度GoToEatキャンペーンに係る事業のうち相談窓口・申請案内委託事業コンソーシアム注(4) | |
予定価格注(2) | 計194億余円 | 計61億余円 | 8億余円 | 5000万円 | |
契約額 | 計194億余円 | 計61億余円 | 8億余円 | 5000万円 | |
契約締結日 | 2年8月28日 (1次公募:34事業者) 2年9月11日 (1次公募:1事業者) 2年10月7日 (2次公募:14事業者) |
2年8月28日 | 2年8月28日 | 2年8月28日 | |
委託業務実施期間 | 2年8月28日~3年3月31日 (1次公募:34事業者) 2年9月11日~3年3月31日 (1次公募:1事業者) 2年10月7日~3年3月31日 (2次公募:14事業者) |
2年8月28日~ 3年3月31日 |
2年8月28日~ 3年3月31日 |
2年8月28日~ 3年3月31日 |
企画競争実施の公示日 | 令和2年7月1日 | |
企画競争提案書の提出期限 | 2年7月21日 | |
応募要領 | 「需要喚起キャンペーン事業(GoToイベント事業)」に係る企画競争募集要領 | |
事業の内容 | 事業スキームの構築、チケット販売事業者等・イベント主催者等の募集及び登録、コールセンターの設置、事業の実施結果の整理及び分析等 | |
評価機関 | 外部有識者5人の委員で構成される第三者審査委員会 | |
審査基準 | 「需要喚起キャンペーン事業(GoToイベント事業)」に係る企画競争募集要領 | |
評価項目 | 応募資格、提案内容の的確性、実施方法・スケジュールの現実性、創意工夫、関連知見・実績、実施体制、費用対効果・経費の適切性、ワーク・ライフ・バランス等の推進、情報管理体制 | |
委託費の上限額 | 280億余円 | |
契約候補者の選定方法 | 採点結果を踏まえて第三者審査委員会で審議し、決定 | |
企画競争参加者数 | 16団体 | |
契約候補者として選定された者 | 株式会社博報堂 | |
予定価格 | 167億余円注(1) | |
契約額 | 167億余円注(2) | |
契約締結日 | 2年10月2日注(2) | |
委託業務実施期間 | 2年10月2日~3年3月31日注(2) |
企画競争実施の公示日 | 令和2年7月1日 | |
企画競争提案書の提出期限 | 2年7月21日 | |
応募要領 | 「需要喚起キャンペーン事業(GoTo商店街事業)」に係る企画競争募集要領 | |
事業の内容 | 事業スキームの構築、商店街イベント等を実施する商店街等の募集、商店街等との契約締結、商店街等への専門的支援の実施、事業の実施結果の整理及び分析等 | |
評価機関 | 外部有識者5人の委員で構成される第三者審査委員会 | |
審査基準 | 「需要喚起キャンペーン事業(GoTo商店街事業)」に係る企画競争募集要領 | |
評価項目 | 応募資格、提案内容の的確性、実施方法・スケジュールの現実性、創意工夫、関連知見・実績、実施体制、費用対効果・経費の適切性、ワーク・ライフ・バランス等の推進、情報管理体制 | |
委託費の上限額 | 51億余円 | |
契約候補者の選定方法 | 採点結果を踏まえて第三者審査委員会で審議し、決定 | |
企画競争参加者数 | 14団体 | |
契約候補者として選定された者 | ひとまちみらい商店街振興コンソーシアム注(1) | |
予定価格 | 49億余円注(2) | |
契約額 | 49億余円注(3) | |
契約締結日 | 2年9月30日注(3) | |
委託業務実施期間 | 2年9月30日~3年3月19日注(3) |
当初、GoToキャンペーン事業の四つの事業を一つの事務局に委託することとしていたときは、委託費の上限額は3095億余円とされており、高額ではないかなどの議論があった。4省庁が事業ごとに委託先を選定することとした結果、4省庁における委託費の上限額の合計額は2928億余円となり、当初の上限額と比べて166億余円(5.3%)低くなった。これは、農林水産省がイート事業全体を統括する事務局を設けないことにより委託費の上限額を引き下げたことによる(2年度に支出された委託費の概況については、後掲(4)ア参照)。
一方、農林水産省は、イート事業全体を統括する事務局としての業務を本省において行っていて、2年6月に9人であったGoToEatキャンペーン準備室の人員を、契約件数が多いなど業務が繁忙であるなどとして、最大20人(3年3月末時点において19人)まで増員していた。
農林水産省は、食事券発行事業者等64事業者と締結した委託契約について、3年3月末までに、イート事業の実施期間を3年度まで延長することなどを内容とする変更契約を計144件締結したとしていた。しかし、検査したところ、同省は、事業者が多いこと、契約変更の内容及び回数が事業者により異なることなどから確認等に時間を要したとして、上記144件のうち85件については、同年7月の会計実地検査時点においても変更契約書を作成していなかった(図表6参照)。なお、同省は、各事業者との間で、契約日、契約金額及びその内訳を含む変更契約の概要については合意ができていて、今後、順次、契約書を作成していくとしている。
したがって、農林水産省は、今後イート事業と同種の事業を実施する際には、同省が事業全体を統括する業務を直接実施することは、委託費を抑制できるなどの効果があり得る一方、今般、委託契約の件数が多いことなどから同省が行う業務が繁忙となったことなどの面があることも踏まえて、業務を適正かつ効率的に実施できる実施方法及び実施体制について検討する必要がある。
図表6 農林水産省における契約事務の状況(令和3年7月の会計実地検査時点)
事業名 | 事業者数 | 変更契約数(件) | うち変更契約書未作成数(件) |
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食事券発行委託事業 | 49 | 136 | 84 |
オンライン飲食予約委託事業 | 13 | 2 | 0 |
実績確認監査等委託事業 | 1 | 2 | 0 |
相談窓口・申請案内等委託事業 | 1 | 4 | 1 |
計 | 64 | 144 | 85 |
観光庁は、サービス産業消費喚起事業(GoToトラベル事業)給付金給付規程に基づき、トラベル事務局を通じて旅行業者等及び地域共通クーポン取扱店舗に対して給付金の支払を行っている。
そして、観光庁は、3年3月末までに、トラベル事務局に給付金計6212億余円を支払っていた。これを月別にみると、図表7のとおり、2年9月に33億余円だったものが、東京除外措置が終了した後の同年10月は309億余円、同年11月は1158億余円、そして同年12月には1757億余円と増加傾向にあったが、同年11月下旬以降に5都市等に係る一時停止措置等が順次拡大されたことから3年1月以降は減少に転じており、同年3月は373億余円となっていた。
図表7 観光庁からトラベル事務局への給付金の支払状況(令和2年7月~3年3月)
旅行代金の割引 | 地域共通クーポン | 計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
金額(月別) | 金額(累計) | 金額(月別) | 金額(累計) | 金額(月別) | 金額(累計) | |
令和2年7月 | - | - | - | - | - | - |
8月 | - | - | - | - | - | - |
9月 | 33 | 33 | - | - | 33 | 33 |
10月 | 276 | 310 | 32 | 32 | 309 | 343 |
11月 | 813 | 1123 | 345 | 378 | 1158 | 1501 |
12月 | 1281 | 2405 | 476 | 854 | 1757 | 3259 |
3年1月 | 1171 | 3577 | 341 | 1195 | 1512 | 4772 |
2月 | 913 | 4490 | 153 | 1348 | 1066 | 5839 |
3月 | 294 | 4785 | 79 | 1427 | 373 | 6212 |
計 | 4785 | 1427 | 6212 |
トラベル事務局は、3年3月末までに、旅行業者等(3年3月末時点でトラベル事務局に登録されているのは34,672者)及び地域共通クーポン取扱店舗(同376,500店舗)に給付金計6207億余円を支払っていた。これを月別にみると、図表8のとおり、観光庁がトラベル事務局に支払った上記給付金の給付と同様の傾向を示しており、2年9月に33億余円だったものが、東京除外措置が終了した後の同年10月は309億余円、同年11月は1055億余円、そして同年12月には1852億余円と増加傾向にあった。その後、同年11月下旬以降に5都市等に係る一時停止措置等が順次拡大されたことから3年1月以降は減少に転じており、同年3月は374億余円となっていた。
図表8 トラベル事務局から旅行業者等及び地域共通クーポン取扱店舗への給付金の支払状況(令和2年7月~3年3月)
旅行代金の割引 | 地域共通クーポン | 計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
金額(月別) | 金額(累計) | 金額(月別) | 金額(累計) | 金額(月別) | 金額(累計) | |
令和2年7月 | - | - | - | - | - | - |
8月 | - | - | - | - | - | - |
9月 | 33 | 33 | - | - | 33 | 33 |
10月 | 276 | 310 | 32 | 32 | 309 | 343 |
11月 | 788 | 1098 | 267 | 300 | 1055 | 1399 |
12月 | 1299 | 2397 | 553 | 853 | 1852 | 3251 |
3年1月 | 1166 | 3563 | 340 | 1194 | 1506 | 4758 |
2月 | 922 | 4486 | 152 | 1347 | 1074 | 5833 |
3月 | 295 | 2781 | 79 | 1426 | 374 | 6207 |
計 | 4781 | 1426 | 6207 |
観光庁がトラベル事務局に支払った給付金が6212億余円であるのに対して、トラベル事務局が旅行業者等及び地域共通クーポン取扱店舗に支払った給付金は6207億余円となっていて、差額の4億余円は3年9月末時点でもトラベル事務局が受領したままになっている。これは、トラベル事務局が、旅行者を代理して受領した後に、同一の旅行に係る給付金を誤って重複申請し支払を受けたことが発覚したことによるものである。
しかし、トラベル事務局は旅行者を代理して給付金を受領しているのであるから、旅行業者等及び地域共通クーポン取扱店舗に対して支払う見込みがない上記の差額については速やかに解消される必要があり、観光庁が、トラベル事業の実施に際してこのような場合における給付金の取扱いを定めておらず、トラベル事務局が受領したままになっていることは適切とは認められない。
したがって、観光庁は、このような場合における給付金の取扱いを定める必要がある。
観光庁は、トラベル事業の予算を適切に執行することなどを目的として、トラベル事務局を通じて、旅行業者等から旅行商品の販売実績や販売計画等を提出させるなどした上、宿泊地が所在する地域別に使用できる当面の予算額(以下「給付枠」という。)を旅行業者等に通知していた。
観光庁は、「サービス産業消費喚起事業(GoToトラベル事業)旅行業者・OTA(注1)等旅行事業者・宿泊事業者向け取扱要領」(以下「トラベル事業取扱要領」という。)において、旅行代金の割引額は、旅行業者等が、給付枠の範囲内において、当該旅行代金の35%以下かつ1人1泊当たり1万4000円(日帰り旅行は7,000円)を上限に自由に設定できるとしていた。
そして、2年9月15日に同月末に東京除外措置が終了することが公表され、トラベル事業の予約が急増したことなどにより一部の旅行業者等において給付枠が不足する事態が生じた。給付枠が不足した旅行業者等の一部は、旅行代金の割引上限額を引き下げて販売していて、そのことが報道で取り上げられるなどした。
観光庁は、このような事態に対して、割引上限額の設定が区々となっていると旅行者に混乱が生ずるなどとして、同年10月15日に、トラベル事業取扱要領から割引率を自由に設定できる旨の記述を削除するとともに、トラベル事業における旅行代金の割引率については35%に固定することを旅行業者等に対して要請する措置を講じた。そして、旅行業者等に既に割り振られていた給付枠については、割振り時に示した地域に限らず利用できることを明確にするとともに、改めて旅行業者等から販売状況、販売見込額等の聞き取りを行い給付枠を追加するなどの措置を講じた。
観光庁は、トラベル事業の開始当初、金券類や鉄道の普通乗車券等換金性の高いもの及びトラベル事務局が適切でないと認めるものについてはトラベル事業の対象とする旅行代金に含められないとして、トラベル事業取扱要領にその旨を明記していた。
その後、トラベル事業を実施していく中で、一部の旅行業者等が販売する旅行商品において、自動車運転免許証を取得するための合宿、英会話講習付きの旅行商品等、観光を主な目的としないものもあることが判明した。
このため、観光庁は、2年10月30日に「GoToトラベル事業の支援対象とする旅行商品の基準・考え方の明確化について」(以下「明確化基準」という。)を公表し、同年11月6日以降に販売等される旅行商品については、観光を主な目的としていること、旅行商品に含まれる商品やサービスの価額が通常の宿泊料金の水準を超えないことなどを踏まえてトラベル事業の対象とするか否かを判断することとした。また、人の動きが回復する中、更なる観光需要の喚起を図るために、同日以降に販売等される旅行商品について、ビジネスを目的とした旅行をトラベル事業の対象外とした。さらに、8泊以上の旅行は観光目的での旅行がごく少数であるという利用実態等を踏まえて、観光需要を最大限に喚起する観点から、同月17日以降に販売等される旅行商品について、1回の旅行で7泊分までをトラベル事業の対象とすることとした。
観光庁及びトラベル事務局は、3年6月24日までに、7,661旅行業者等からトラベル事業の対象として申請があった全ての旅行商品の中から任意に抽出した33,654件を対象に、予約内容の確認書等を提出させるなどして、トラベル事業の対象とならない旅行商品が含まれていないか審査を行っていた。その結果、10旅行業者等が販売した83件の旅行商品(うち既に給付金を旅行業者等に支払っていた旅行商品計63件、給付金給付額計383,772円)は、明確化基準に抵触するなどトラベル事業の対象とならない旅行商品であるとして、給付金の返還を求めるなどしていた。
したがって、観光庁は、今後トラベル事業を再開する場合には、これまでの実施状況から得られた知見を踏まえて、旅行業者等に割り振られる給付枠、旅行代金の割引率及びトラベル事業の対象とする旅行商品の基準・考え方を適切に設定するよう留意する必要がある。
本院は、トラベル事務局からトラベル事業の利用人泊数、旅行代金の割引額等に係るシステムに入力されたデータ(3年7月時点)の提出を受けて、このうち旅行開始日等が明確なデータ(トラベル事務局において、旅行業者等への支払が完了していないものを含み、データの内容を精査中のものは含まない。)のみを集計するなどして、2年7月から同年12月までの宿泊旅行に係る月別の利用人泊数(計9559万人泊)等について分析を行った。
月別の利用人泊数についてみると、東京除外措置が終了した後の2年10月は2550万人泊、同年11月は2852万人泊となっていたが、同月下旬以降に5都市等に係る一時停止措置等が講じられたことから、同年12月は1677万人泊となっていた(図表9参照)。
利用人泊数を旅行の目的地別にみると、東京都が632万人泊(旅行の目的地が判明している9558万人泊の6.6%)と最も多くなっていて、次いで北海道が624万人泊(同6.5%)、静岡県が468万人泊(同4.9%)となっていた(図表10-1参照)。また、旅行者の居住地別にみると、東京都が1183万人泊(旅行者の居住地が判明している9503万人泊の12.4%)と最も多くなっていて、次いで神奈川県が913万人泊(同9.6%)、大阪府が816万人泊(同8.5%)となっていた。
旅行代金の割引額を旅行の目的地別にみると、北海道が315億余円(旅行の目的地が判明している4440億余円の7.0%)と最も多くなっていて、次いで沖縄県が236億余円(同5.3%)、静岡県が231億余円(同5.2%)となっていた。利用人泊数で1位となっていた東京都が旅行代金の割引額では3位までに入っておらず、代わりに沖縄県が2位に入っていた(図表10-2参照)。
旅行代金の割引額を旅行者の居住地別にみると、東京都が585億余円(旅行者の居住地が判明している4402億余円の13.2%)と最も多くなっていて、次いで神奈川県が454億余円(同10.3%)、大阪府が398億余円(同9.0%)となっていて、利用人泊数と同じ順位となっていた。
また、前記の9559万人泊について、1人1泊当たりの平均旅行代金は13,462円となっていた。このうち、旅行代金に交通費等を含まない宿泊のみの旅行商品7476万人泊について、1人1泊当たりの旅行代金に係る利用価格帯の分布を分析したところ、図表11のとおり、旅行代金が5,000円以上10,000円未満のものが最も多く2750万人泊(全体の36.7%)、次いで5,000円未満のものが1700万人泊(同22.7%)となっていた。
本院は、トラベル事務局から地域共通クーポンの利用額、地域共通クーポン取扱店舗がトラベル事務局に登録している業種等に係るデータ(3年5月時点)の提出を受けて、地域共通クーポンの利用額等について分析を行った。
2年10月から同年12月までに旅行者が利用した地域共通クーポンの利用額は1426億余円となっていて、このうち紙媒体のものは1166億余円と、電子媒体のもの260億余円の4.4倍となっていた。
前記の地域共通クーポン取扱店舗376,500店舗(3年3月末時点)について、トラベル事務局に登録されている業種をみると、飲食店が114,130店舗(全体の30.3%)と最も多く、次いでコンビニエンスストア・スーパーマーケットが58,510店舗(同15.5%)、小売(お土産等)が44,056店舗(同11.7%)となっていて、観光施設(遊園地・温泉施設等)は2,400店舗(同0.6%)等となっていた。
そして、地域共通クーポンの利用額を上記の業種別にみたところ、図表12のとおり、小売(お土産等)が391億余円(全体の27.4%)と最も多く、次いで飲食店が249億余円(同17.4%)、コンビニエンスストア・スーパーマーケットが175億余円(同12.3%)、観光施設(遊園地・温泉施設等)が70億余円(同4.9%)等となっていた。
観光庁は、旅行者の便宜を図るなどのために、電子媒体の地域共通クーポンについては、宿泊予定日の15時以降であれば、宿泊施設において宿泊手続を行う前であっても、旅行者がトラベル事務局の運営する電子クーポン受取サイトから取得して利用できることとしている。
地域共通クーポンの利用が開始された2年10月に、観光庁は、トラベル事業の対象となる旅行商品の予約者が、旅行業者等に予約取消等の連絡をすることなく宿泊施設に現れない(以下、この状態を「ノーショー」という。)のに、宿泊予定日に電子媒体の地域共通クーポンを利用するという事態が発生していることをトラベル事務局からの報告により把握した。
上記の事態を受けて、観光庁は、2年10月に、トラベル事務局を通じて、電子媒体の地域共通クーポンを付与する旅行商品を販売していた315旅行業者等に対して、旅行商品販売時に本人確認を徹底したり、旅行開始前に旅行代金を決済したりするなどの不正利用防止対策を講ずるよう求める通知を発出するとともに、同年11月に、旅行者が電子媒体の地域共通クーポンを取得する際に、SMS認証による本人確認を導入するなどの措置を講じていた。そして、観光庁は、同年12月までに、上記の315旅行業者等において不正利用防止対策が講じられていることを確認し、これ以降は、電子媒体の地域共通クーポンを利用した上でのノーショーは発生していないとしている。
3年3月末時点で、観光庁がトラベル事務局から報告を受けたノーショーに係る地域共通クーポン利用額は21,147,000円となっていた。そして、観光庁は、ノーショー予約者が特定できた場合は、給付金に係る贈与契約を取り消して、給付金相当額の返還を請求することとしており、同年9月末までに計643,000円について返還請求を行い、同時点までにこのうち144,000円が返還されている。
したがって、観光庁は、今後トラベル事業を再開する場合には、地域共通クーポンの不正利用の事態から得られた知見を踏まえて、給付金の支払の体制を整備するよう努めることに留意する必要がある。
トラベル事業については、医師や感染症対策等の専門家で構成される新型コロナウイルス感染症対策分科会(以下「分科会」という。)の提言を踏まえるなどした上で、本部長である内閣総理大臣等から構成される新型コロナウイルス感染症対策本部が決定するなどして、観光庁がその決定をトラベル事務局に伝えるなどして実施している。そして、東京除外措置及び5都市等に係る一時停止措置等が執られた際の観光庁等の対応は次のとおりとなっていた。
東京除外措置を公表した2年7月17日において、旅行の取消しに伴い旅行者が負担することとなる取消料については、観光庁としては旅行業者等と旅行者との間で自然体で処理されるという期待を持っていたことから、旅行業者等に対して取消料対応費用を支払わないこととしていた。しかし、旅行の取消料については、旅行者から収受しないと判断した旅行業者等が多くいる一方で、旅行の取消しにより実損が生ずることなどから旅行者に請求せざるを得ないと判断した旅行業者等もいること、また、旅行者に対して十分な周知が行われなかったことを踏まえて、観光庁は、同月21日に、旅行業者等は旅行者から旅行の取消料を収受しないことを求めた。そして、旅行業者等にはトラベル事務局を経由して、予約日、取消日及び旅行開始日が一定の要件に該当する旅行について取消料対応費用を支払うこととした。
観光庁は、「東京都対象外の取消料対応申請マニュアル」において、東京除外措置に伴う取消料対応費用は、旅行業者等が旅行業法(昭和27年法律第239号)に基づき観光庁長官の認可を受けるなどして定めた旅行業約款等に基づき算定した取消料(以下「各社規定取消料」という。)を基準とし、その30%を旅行業者等の負担額とみなして申請するなどとした。そして、東京除外措置に伴いトラベル事務局が旅行業者等に対して支払った取消料対応費用の件数及び金額は、3,454件3492万余円(旅行業者2,574件2494万余円、宿泊事業者880件998万余円)となっていた。
観光庁は、感染状況等から、2年11月24日以降順次、5都市等に係る一時停止措置等を公表し、これに伴う取消料対応費用をトラベル事務局を経由して、予約日、取消日及び旅行開始日が一定の要件に該当する旅行について支払うこととした。そして、3年3月末までに委託費としてトラベル事務局に対して取消料対応費用相当額1154億余円の概算払を行った。
観光庁は、「一時停止等に係る旅行取消による取消料対応取扱要領」(以下「5都市等に係る一時停止措置等要領」という。)において、5都市等に係る一時停止措置等に伴う取消料対応費用は、各社規定取消料の発生の有無にかかわらず、一律に取り消された旅行代金の35%(年末年始の全国に係る旅行の場合は50%)を取消料対応費用として支払うなどとしている。観光庁は、旅行代金の35%としたのは、標準旅行業約款(平成16年国土交通省告示第1593号)等で規定する取消料の率を参考に算出したものであり、また、50%としたのは、年末年始が観光関連事業者にとって最大の繁忙期で、これに係る一時停止措置等を公表したときには既に旅行の予約が相当入っており人員等の手当ても行われている実状があったことによるとしている。
そして、5都市等に係る一時停止措置等に伴いトラベル事務局が3年2月から7月までに旅行業者等に対して支払った取消料対応費用の件数及び金額は、図表13のとおり、4,070,191件1157億余円となっていた。これを措置等の別にみると、年末年始の全国に係る旅行が724億余円(全体の62.6%)と最も多くなっていて、次いで、緊急事態宣言に伴う全国に係る旅行が360億余円(同31.1%)、5都市に係る旅行が71億余円(同6.2%)となっていた。
図表13 5都市等に係る一時停止措置等に伴う取消料対応費用の件数及び金額(令和3年2月~7月)(単位:件、千円)
旅行業者 | 宿泊事業者 | 計 | ||||
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件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | |
5都市に係る旅行 | 108,760 | 3,141,989 | 358,256 | 4,040,981 | 467,016 | 7,182,970 |
年末年始の全国に係る旅行 | 426,497 | 24,081,586 | 1,738,596 | 48,413,847 | 2,165,093 | 72,495,433 |
緊急事態宣言に伴う全国に係る旅行 | 418,743 | 19,004,270 | 1,019,339 | 17,041,414 | 1,438,082 | 36,045,685 |
計 | 954,000 | 46,227,846 | 3,116,191 | 69,496,243 | 4,070,191 | 115,724,089 |
一方、旅行業者の各社規定取消料によると、旅行者は、旅行代金に取消日から旅行開始日までの日数に応じて定められている所定の率を乗じた金額を取消料として旅行業者に支払うことにより契約を解除することができ、募集型企画旅行(注2)及び受注型企画旅行(注3)については、原則として旅行開始日の21日以前に取り消した場合、取消料は発生しないこととなっている。
そこで、主要46旅行業者(注4)が販売した募集型企画旅行及び受注型企画旅行についてみたところ、取消料対応費用の支払対象となった旅行商品641,475件のうち176,265件は、旅行開始日の21日以前に取り消されたものであり、これらの旅行商品に係る取消料対応費用は96億余円となっていた(注5)。
このように、各社規定取消料の発生の有無にかかわらず一律に旅行代金に対する率で取消料対応費用を支払うとしたことについて、観光庁は、5都市等に係る一時停止措置等は、東京除外措置と比較して旅行の需要も戻ってきている中での措置であり、この時期における旅行の取消しは旅行業者等への影響が大きくなること、旅行業者等に迅速に取消料対応費用を支払う必要があることによるとしている。
観光庁は、5都市等に係る一時停止措置等要領において、5都市等に係る一時停止措置等に伴う取消料対応費用は、影響を受けた全ての観光関連事業者間で公平に配分されるべきであるとして、旅行業者に対して、受領した取消料対応費用について、旅行商品に含まれるサービスを提供する宿泊事業者、交通事業者、観光施設等に公平に配分するよう要請している。また、宿泊事業者に対して、食材の卸売業者やリネン業者等、取消しの影響を受ける観光関連事業者に適切に配慮するよう要請している。
観光庁は、旅行業者等に上記の配分作業に係る事業者間の調整、振込手数料等の事務費用が相当程度生じているとの現場の声があるとして、これらの費用相当額を、取消料対応事務費用(以下「事務費用」という。)として、トラベル事務局を経由して旅行業者等に支払うこととし、3年3月末までに委託費としてトラベル事務局に対して事務費用相当額115億余円を支払っていた。
他方、トラベル事務局は、観光庁が定めた5都市等に係る一時停止等要領の「事務費用編」に基づき、取り消された予約件数を基に、取消料対応費用の10%又は申請予約1件につき4,000円のいずれか小さい方の額を事務費用として支払うこととして、3年7月までに旅行業者等に対して計81億余円を支払っていた。
そして、5都市等に係る一時停止措置等に伴う取消料対応費用は公平に配分されるべきものであることから、観光庁は、旅行業者等が公平に配分していないと確認できた場合には、トラベル事業への参画旅行業者等としての登録の取消しなどの処分の対象となるとしている。
その一方で、観光庁は、旅行業者等から宿泊事業者や観光関連事業者にどのように配分されているかなどについて全く把握していなかった。
しかし、旅行業者等に支払われた取消料対応費用は、影響を受けた観光関連事業者間で公平に配分されるべきものであることに加えて、旅行業者等が行う配分作業等に伴う事務費用を観光庁が支払っていることに鑑みると、同庁が配分の状況について把握していないことは適切とは認められない。
したがって、観光庁は、取消料対応費用について、影響を受けた観光関連事業者間で適切に配分されたか把握した上で検証する必要がある。
農林水産省は、食事券発行事業者及びオンライン飲食予約事業者の各事業者を募集するために策定した応募要領において、イート事業に参加する加盟飲食店を事業期間中に広く募集することとしている。
イート事業の加盟飲食店の店舗数をみると、図表14のとおり、事業開始当初は、食事券発行委託事業95,550店舗、オンライン飲食予約委託事業73,182店舗であったが、3年3月末時点では、それぞれ228,114店舗、108,108店舗に増加していた。そして、両事業に重複して加盟している48,957店舗を除いたイート事業全体の加盟飲食店の店舗数は、287,265店舗となっていた。
図表14 加盟飲食店の店舗数(令和2年10月~3年3月)(単位:店舗)
事業名 | 令和2年10月 | 2年11月 | 2年12月 | 3年1月 | 3年2月 | 3年3月 |
---|---|---|---|---|---|---|
食事券発行委託事業(a) | 95,550 | 212,629 | 223,142 | 225,356 | 226,372 | 228,114 |
オンライン飲食予約委託事業(注)(b) | 73,182 | 99,737 | 103,575 | 105,403 | 106,330 | 108,108 |
両事業に加盟している店舗(c) | 14,536 | 44,909 | 47,731 | 48,390 | 48,587 | 48,957 |
イート事業全体(a+b-c) | 154,196 | 267,457 | 278,986 | 282,369 | 284,115 | 287,265 |
農林水産省は、「サービス産業消費喚起事業給付金の支払の臨時特例に関する政令」(令和2年政令第258号。以下「臨時特例政令」という。)等に基づき、49食事券発行事業者及び13オンライン飲食予約事業者に対して、給付金の概算払を行っている。同省は、この理由について、国から給付金が支払われるまでの間は、食事券発行事業者及びオンライン飲食予約事業者が加盟飲食店に対して給付金相当額を立て替えて支払うこととなり、その期間が長期間に及んだ場合に立替払額が多額となって、食事券発行事業者及びオンライン飲食予約事業者の資金繰りが悪化することが懸念されるためとしている。
なお、上記の給付金については、イート事業の期間が延長されたことから精算されていない。
49食事券発行事業者は、3年3月末までに券面額計2919億余円分の食事券を発行し、このうち2373億余円分を販売していた。そして、消費者が利用した加盟飲食店から、食事券計1654億余円分を回収していた。
農林水産省は、49食事券発行事業者から食事券の発行状況等に基づいた概算払額の請求を受け、3年3月末までに、給付金計571億余円を支払っていて、49食事券発行事業者は、加盟飲食店に対して実績確認監査等事業者が使用額を確認できた食事券に係る給付金計330億余円(食事券の回収額1654億余円に100分の20を乗じた額)を支払っていた。
食事券発行事業者が、発行するなどした食事券の額及び加盟飲食店に支払った給付金の支払状況を月別にみると、図表15のとおり、2年11月下旬に食事券の新規発行の一時停止措置等が始まったことから、同年12月に食事券の発行額及び食事券の販売額は大幅に減少しており、3年1月以降は横ばいとなっていた。
図表15 食事券発行事業者から加盟飲食店への給付金の支払等の状況(令和2年9月~3年3月)
令和2年9月 | 2年10月 | 2年11月 | 2年12月 | 3年1月 | 3年2月 | 3年3月 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
食事券の発行額 | 22 | 1336 | 1150 | 190 | 32 | 65 | 121 | 2919 |
食事券の販売額 | 0 | 223 | 1151 | 369 | 174 | 115 | 339 | 2373 |
食事券の回収額 | 0 | 19 | 237 | 445 | 431 | 250 | 270 | 1654 |
給付金(月別) | 0 | 3 | 47 | 89 | 86 | 50 | 54 | 330 |
(累計) | 0 | 3 | 51 | 140 | 226 | 276 | 330 |
13オンライン飲食予約事業者は、3年3月末までに、消費者に対して計523億余円分のポイントを付与していて、消費者はこのうち413億余円分のポイントを加盟飲食店で利用していた。
一方、農林水産省は、13オンライン飲食予約事業者からポイントの利用見込額を提出させ、これに基づき、3年3月末までに給付金計412億余円の概算払を行っていて、13オンライン飲食予約事業者は加盟飲食店に対して給付金計413億余円を支払っていた。
13オンライン飲食予約事業者が、消費者に付与したポイント及び加盟飲食店に支払った給付金等の状況を月別にみると、付与したポイントが2年11月中に予算額の上限(616億余円)に到達する見込みとなり同月からポイントの付与を順次行わないこととしたこと、及び同月下旬に感染状況等からポイントの利用抑制が始まったことから、同年12月に付与したポイント及び利用したポイントは大幅に減少しており、3年1月以降は横ばいとなっていた(図表16参照)。
図表16 オンライン飲食予約事業者から消費者への給付金の支払等の状況(令和2年10月~3年3月)
令和2年10月 | 2年11月 | 2年12月 | 3年1月 | 3年2月 | 3年3月 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与したポイント | 95 | 354 | 57 | 14 | 1 | 0 | 523 |
利用したポイント | 14 | 157 | 90 | 57 | 29 | 64 | 413 |
給付金(月別) | 14 | 157 | 90 | 57 | 29 | 64 | 413 |
給付金(累計) | 14 | 171 | 262 | 319 | 349 | 413 |
イート事業が開始された2年10月上旬、一部の加盟飲食店において、消費者が15時以降に来店し、約300円の商品1品だけを注文して1,000ポイントの付与を受ける(以下、このような方法で加盟飲食店を利用することを「付与ポイント未満の利用」という。)という事態が報道で取り上げられるなどした。
農林水産省は、「サービス産業消費喚起事業(GoToEatキャンペーン)給付金給付規程」において、オンライン飲食予約委託事業におけるポイントについては、14時59分までに来店する予約の場合は1人当たり500ポイントを、15時以降に来店する予約の場合は1人当たり1,000ポイントを、それぞれ加盟飲食店を利用した際に付与することとしていた。一方、加盟飲食店が付与ポイント未満の利用を抑制することについては、特に定めていなかった。
前記の事態は、オンライン飲食予約委託事業で付与されるポイントがなければ通常考えにくい利用形態であり、付与ポイント未満の利用を抑制していない加盟飲食店にとって、同様の利用が広がることが懸念された。
農林水産省は、オンライン飲食予約委託事業の制度設計の段階から、こうした事態が発生する可能性があることについて認識していたが、少額の飲食でも消費者が来店することは需要喚起につながるものであるため、問題があるとまでは考えていなかったとしている。しかし、報道等により事態の発生が話題となっていることを把握したことなどから、同省は、オンライン飲食予約事業者と協議した上で、加盟飲食店に対して、付与ポイント未満の利用を抑制する手段を講ずるよう、オンライン飲食予約事業者から周知させることとした。
そして、13オンライン飲食予約事業者のうち、当初からシステム上付与ポイント未満の利用ができない仕様となっていた1事業者を除く12事業者は、各加盟飲食店に対して、次の①から③までのような手法を例示しつつ、付与ポイント未満の利用を抑制する手段を講ずるよう周知していた。
① 「席のみ予約」をポイント付与の対象とする場合は一定の金額要件(昼500円、夜1,000円以上)を提示すること
② ポイント付与の対象を「コース予約のみ」にすること
③ その他飲食店の実態に応じて①及び②に類する手法を執ること
なお、前記の事態が発生した加盟飲食店では、上記の周知を受けて、ポイント付与の対象を「コース予約のみ」に変更している。
農林水産省は、これらの対策が講じられたことにより、その後、同様な事態は発生していないとしている。
農林水産省は、イート事業の一時停止措置等について、分科会の提言を踏まえるなどした上で、前記のとおり、都道府県に対して、食事券発行事業者等が食事券の新規販売等を一時停止したり、既に発行された食事券やオンライン飲食予約サイトで付与されたポイントの利用を控えるよう消費者へ呼びかけたりすることについての検討を要請している。
農林水産省は、感染状況等から3年3月末までに計7回、都道府県に事務連絡を発して一時停止措置等の検討を要請し、各都道府県からの回答を取りまとめた上で、それぞれの対応状況を公表している。
臨時特例政令等によれば、経済産業省は、イベント事務局に対して、給付金を概算払することができることとされている。
そして、経済産業省は、イベント事務局から登録イベントのチケット販売実績に基づいた概算払額の請求を受けて、3年3月末までに、イベント事務局に給付金計16億余円を支払っていた。一方、イベント事務局は、同月末までに、イベント事務局に登録されたチケット販売事業者等(以下「登録チケット販売事業者」という。)241事業者のうち、給付金の申請があった114事業者に給付金相当額計18億余円(集客イベント13億余円、オンラインイベント5億余円)を支払っていた(図表17参照)。
図表17 イベント事業における給付金の支払状況(令和2年12月~3年3月)(単位:億円)
令和2年12月 | 3年1月 | 3年2月 | 3年3月 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|
経済産業省からイベント事務局への概算払額 | ― | 4 | 9 | 2 | 16 |
イベント事務局から登録チケット販売事業者へ支払われた給付金相当額 | 4 | 9 | 1 | 2 | 18 |
3年3月末までの登録イベントは累計で2,187件となっていて、これを実施方法別にみると、集客イベント1,480件、オンラインイベント707件、登録イベントに占めるオンラインイベントの割合は32.3%となっていた。経済産業省は、オンラインイベントの割合が全体の3割以上となっているのは、前記の一時停止措置において、同省が集客イベントを登録イベントとしないとしていた一方でオンラインイベントの登録は継続するとしていたことなどが影響していることが考えられるとしている。
また、オンラインイベントの割合をジャンル別にみると、講演会(94.1%)、芸能・演芸(64.4%)及び音楽コンサート(56.5%)が高くなっていた一方、映画館、展示会及びファッションショーはオンラインイベントでは登録されていなかった(図表18参照)。
図表18 実施方法別及びジャンル別のイベント登録状況(令和3年3月末までの累計)
ジャンル | 実施方法 | 計 (A+B) |
オンラインイベントの割合(%) (B/(A+B)) |
|
---|---|---|---|---|
集客イベント(A) | オンラインイベント(B) | |||
講演会 | 3 | 48 | 51 | 94.1 |
芸能・演芸 | 31 | 56 | 87 | 64.4 |
音楽コンサート | 283 | 368 | 651 | 56.5 |
その他 | 55 | 51 | 106 | 48.1 |
演劇 | 101 | 85 | 186 | 45.7 |
舞踊 | 15 | 4 | 19 | 21.1 |
遊園地・テーマパーク | 357 | 60 | 417 | 14.4 |
スポーツ | 265 | 33 | 298 | 11.1 |
伝統芸能 | 14 | 1 | 15 | 6.7 |
動物園、水族館等 | 187 | 1 | 188 | 0.5 |
映画館 | 156 | 0 | 156 | 0.0 |
展示会 | 12 | 0 | 12 | 0.0 |
ファッションショー | 1 | 0 | 1 | 0.0 |
計 | 1,480 | 707 | 2,187 | 32.3 |
なお、経済産業省は、実施方法別及びジャンル別の登録イベントの実施状況については、事業期間終了までの間に事業者が提出する販売実績報告により把握できることになっているが、3年3月末時点でイベント事業の期間が終了していないことから、把握できていないとしている。
イベント事業の一時停止措置については、分科会の提言を踏まえるなどした上で、政府又は経済産業省が決定していて、イベント事務局は、その決定を登録チケット販売事業者及びイベント主催者等に通知するとともに、イベント事業のホームページで公表している。
イベント事務局は、感染状況等から、集客イベントのチケット新規販売の一時停止措置を講じており(図表3(イベント事業)参照)、このうち、全国を対象とした一時停止措置となった2年12月28日以降に開始する予定として登録されていた集客イベントは3年3月末までの累計で597件となっていた。
商店街事業は、商店街事務局の審査を経て採択された商店街等に商店街イベント等の実施を請け負わせて実施するものである。
商店街事業に申請があった商店街イベント等のうち、審査済となっていた1,894件について、地域別の採択状況をみると、図表19のとおり、おおむね審査済件数が多い地域の採択件数が多くなっており、採択率については、四国地域の47.6%から沖縄地域の27.7%までとなっていた。
図表19 商店街イベント等の地域別の採択状況(令和3年3月末時点)
地域区分(注) | 審査済件数(A) | 採択件数(B) | 採択率(%) (B/A) |
---|---|---|---|
北海道 | 67 | 21 | 31.3 |
東北 | 138 | 52 | 37.6 |
関東 | 744 | 218 | 29.3 |
中部 | 217 | 80 | 36.8 |
近畿 | 419 | 143 | 34.1 |
中国 | 88 | 32 | 36.3 |
四国 | 42 | 20 | 47.6 |
九州 | 161 | 65 | 40.3 |
沖縄 | 18 | 5 | 27.7 |
計 | 1,894 | 636 | 33.5 |
そして、採択された商店街イベント等636件のうち、商店街等が辞退した17件、及び一時停止措置により契約書の作成を留保している5件を除いた614件について、商店街事務局は、3年3月末までに契約額計39億余円で商店街等との間で請負契約を締結していた。
中小企業庁は、商店街事務局が3年1月末までに商店街等に支払った商店街イベント等65件の請負金額相当額計3億余円について、委託契約書に基づき、商店街事務局から概算払請求書の提出を受けて、同年3月末までに商店街事務局に当該金額を支払っていた。一方、商店街事務局は、同月末までに、商店街イベント等368件の請負金額計18億余円を商店街等に支払っていた(図表20参照)。
図表20 商店街事業における請負金額等の支払状況(令和2年12月~3年3月)(単位:億円)
令和2年12月 | 3年1月 | 3年2月 | 3年3月 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|
中小企業庁から商店街事務局への概算払額 | ― | ― | 3 | ― | 3 |
商店街事務局から商店街等への支払額 | 0 | 5 | 3 | 9 | 18 |
商店街事業の一時停止措置については、分科会の提言を踏まえるなどした上で、政府又は経済産業本省が決定していて、商店街事務局は、その決定を一時停止措置の対象となる商店街等に通知するとともに、商店街事業のホームページで公表している。
そして、商店街事務局は、感染状況等から、図表3-4(商店街事業)のとおり、商店街集客イベントについては一時停止措置を講じていたが、この期間中でも既に採択された商店街オンラインイベント等は実施できるとしていた。
商店街事務局と請負契約を締結していた前記の商店街イベント等614件のうち、3年3月末において、商店街イベント等について、全て実施済みとなっていた157件、及び商店街事務局において実施状況を確認中の118件を除いた339件について、一時停止措置の状況をみたところ、商店街等が、一部又は全部の実施を取りやめたものが154件、一部又は全部の実施を一時停止しているものが185件となっていた(図表21参照)。
図表21 商店街イベント等の一時停止措置の状況(令和3年3月末時点)
請負契約締結済み | 614 | ||
全て実施済み | 157 | ||
商店街事務局において実施状況を確認中 | 118 | ||
商店街等が実施を取りやめ又は一時停止 | 339 | ||
一部又は全部の実施を取りやめ | 154 | ||
一部又は全部の実施を一時停止 | 185 |
商店街事務局が商店街等との間で締結した契約書等によれば、商店街イベント等の請負業務の中止・延期が災害、疾病の流行等の商店街事務局及び商店街等双方の責めに帰すことのできない事由によるものである場合、又は商店街事務局の要請により請負業務の延期・中止をする場合(以下、このような延期・中止を「不可抗力事由による中止等」という。)は、商店街等において当該延期、中止及び不能となった部分の請負業務のために負担した費用のうち、商店街等が付保した保険等により塡補できない部分について、契約金を上限として、商店街事務局がこれを負担することとされている。そして、商店街事務局は、上記の保険等については、地方自治体による支援等も含むとしている。
しかし、検査したところ、商店街事務局は、商店街等からの不可抗力事由による中止等を原因とする費用負担の請求(28件、計1億0669万余円)に対して、3年3月末までに、延期、中止及び不能となった部分の請負業務のために負担した費用であることの確認は行っていたものの、商店街等が保険等により塡補を受けているかどうかについての確認は行わないまま、その全額を支払っている事態が見受けられた。このため、中小企業庁において、商店街事務局に対して、上記の支払額が適切な額となっているか確認させるとともに、今後、商店街等における保険等による塡補状況を把握する方策を検討させる必要があった。
上記本院の検査結果を踏まえて、中小企業庁は、商店街事務局に対して、上記の28件について保険等による塡補分を除いた適切な支払額であったことを3年8月中旬までに確認させた。そして、今後は、商店街等が提出する実績報告書において保険等による塡補の有無を把握させることとした。
前記各事業の委託費について、政府は、委託費の上限額(図表5参照)は飽くまで上限であり、実際に要した費用以外が支払われることはなく、事業目的に照らした効果が最大限発揮されるよう、それぞれの省庁において適切な執行に努めさせるとしている。
4省庁は、委託契約に基づき、委託先からの請求を受けて委託費の概算払を行っていて、委託業務が完了したときは、委託先から精算報告書等の提出を受けて委託費の精算を行うこととしているため、業務が完了していない3年3月末時点では精算は行われていない。そして、2年度末時点における各事業の委託費の状況は次のとおりとなっている。
観光庁は、委託契約に基づき、トラベル事務局から委託費の概算払の請求を受けて、3年3月末までに計1978億余円を支払っていた。その内訳をみたところ、5都市等に係る一時停止措置等に伴う取消料対応費用等相当額が1270億円(うち事務費用相当額115億余円)と64.1%を占めていて、次いで再委託費相当額が310億余円(15.6%)、人件費相当額が242億余円(12.2%)等となっていた(図表22参照)。
農林水産省は、委託契約に基づき、図表23のとおり、46食事券発行事業者、9オンライン飲食予約事業者から委託費の概算払請求を受けて、3年3月末までに計184億余円を支払っていた。
事業名 | 請求事業者数 | 概算払額 |
---|---|---|
食事券発行委託事業 | 46事業者 | 140 |
オンライン飲食予約委託事業 | 9事業者 | 43 |
計 | 55事業者 | 184 |
経済産業省は、委託契約に基づき、イベント事務局から委託費の概算払の請求を受けて、3年3月末までに計51億余円を支払っていた。その内訳をみたところ、再委託費相当額が34億余円と66.8%を占めていて、次いで庁費相当額が12億余円(23.5%)等となっていた(図表24参照)。
中小企業庁は、委託契約に基づき、商店街事務局から委託費の概算払の請求を受けて、3年3月末までに計3億余円を支払っていた。その内訳をみたところ、全額が商店街事務局と商店街等との請負契約に係る外注費となっていて、商店街事務局の人件費等については、商店街事務局からの請求がなかったため、支払っていなかった。
トラベル事務局、イベント事務局及び商店街事務局は、業務の一部を第三者に委託するときは、それぞれの委託契約に基づき、あらかじめ観光庁、経済産業省及び中小企業庁の承諾を得なければならないなどとされている。
そして、各事業の再委託の状況は、次のとおりとなっている。
トラベル事務局が3年3月末までに観光庁の承諾を得て行った再委託の状況についてみると、株式会社JTBグローバルアシスタンス等8者との間で11件の再委託契約を契約額計358億5382万余円(再委託費率(委託契約額に占める再委託契約額の割合をいう。以下同じ。)19.2%)で締結していて、上記の8者に対して、3年3月末までに計257億8431万余円を支払っていた(図表25参照)。
図表25 トラベル事務局が行った再委託の状況(令和3年3月末時点)(単位:万円)
再委託先 | 観光庁が再委託を承諾した日 | 契約日 | 再委託した業務の主な内容 | 3年3月末までにトラベル事務局が再委託先に支払った額 |
---|---|---|---|---|
株式会社JTBグローバルアシスタンス | 令和2年7月31日 | 2年8月3日 | コールセンター業務 | 164億4044 |
株式会社J&Jギフト | 2年8月5日 | 2年8月7日 | 地域共通クーポン(紙媒体)の製造及び精算業務 | 69億1212 |
株式会社ギフティ | 2年9月2日 | 2年10月12日 | 地域共通クーポン(電子媒体)の発行に係る管理業務 | 13億2948 |
株式会社エッグ | 2年8月11日 | 2年12月11日 | コンピュータソフトウェアの開発業務 | 5億2916 |
株式会社DNPプランニングネットワーク | 2年8月5日 | 2年9月30日 | トラベル事務局、旅行業者等向けマニュアルの製造、印刷及び発送業務 | 1億7159 |
2年8月5日 | 2年9月30日 | 公式WEBサイトの制作、運営及び管理業務 | 1億4458 | |
大日本印刷株式会社 | 2年10月2日 | 3年1月29日 | 給付金申請書類のデータ入力業務 | 1億6365 |
2年8月5日 | 2年11月17日 | 地域共通クーポン取扱店舗候補事業者向け説明動画の作成業務 | 1320 | |
株式会社ジェイアール東日本企画 | 2年10月2日 | 2年12月16日 | 宣伝プロモーションにおける広告業務 | 5199 |
株式会社クニエ | 2年11月26日 | 2年12月23日 | トラベル事業に係る効果検証業務 | 1782 |
2年10月2日 | 2年10月22日 | トラベル事業に係る効果検証の方向性の検討及び旅行需要に関する調査業務 | 1025 | |
計 | 257億8431 | |||
委託契約額1866億余円に占める再委託契約額8者計358億5382万余円(再委託費率19.2%) |
イベント事務局が3年3月末までに経済産業省の承諾を得て行った再委託の状況についてみると、図表26のとおり、大日本印刷株式会社等247者との間で再委託契約等を契約額計108億1415万余円(再委託費率64.4%)で締結していた。そして、このうち5者に対して、3年3月末までに計31億7731万余円を支払っていた。
図表26 イベント事務局が行った再委託の状況(令和3年3月末時点)(単位:万円)
再委託先 | 経済産業省が再委託を承諾した日 | 契約日 | 再委託した業務の主な内容 | 3年3月末までにイベント事務局が再委託先に支払った額 |
---|---|---|---|---|
大日本印刷株式会社 | 令和2年10月2日 | 2年10月2日 | イベント登録審査等の業務設計及び審査、現地調査 | 19億7405 |
株式会社博報堂プロダクツ | システム・コールセンター・チケット販売事業者関連業務の設計、運用及びHP等広報関連制作 | 10億5317 | ||
株式会社博報堂コンサルティング | 各種業務設計サポート | 1億1404 | ||
あさひ法律事務所 | 各種法律相談・支援 | 2200 | ||
株式会社N PLAT | システム及びHP関連業務遂行 | 1404 | ||
株式会社プロキューブジャパン | 事業費、給付金等の監査業務 | ― | ||
登録チケット販売事業者 (241事業者) |
2年10月27日~ 3年3月31日 |
チケット販売事業者業務委託 | ― | |
計 | 31億7731 | |||
委託契約額167億余円に占める再委託契約額247者計108億1415万余円(再委託費率64.4%) |
商店街事務局が3年3月末までに中小企業庁の承諾を得て行った再委託の状況についてみると、図表27のとおり、株式会社ポマト・プロ等9者との間で再委託契約を契約額計4億2613万余円で締結(再委託費率8.6%)していた。そして、このうち8者に対して、3年3月末までに計3億1479万余円を支払っていた。
図表27 商店街事務局が行った再委託の状況(令和3年3月末時点)(単位:万円)
再委託先 | 中小企業庁が再委託を承諾した日 | 契約日 | 再委託した業務の主な内容 | 3年3月末までに商店街事務局が再委託先に支払った額 |
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株式会社ポマト・プロ | 令和2年9月30日 (注) |
2年9月30日 | 専門的支援(商店街等へのアドバイス及び問い合わせ対応)、商店街等への感染症対策の調査業務等 | 8915 |
株式会社読広クロスコム | 商店街等募集、商店街イベント等審査業務等 | 8346 | ||
アイビーシステム株式会社 | 商店街等からの申請書類の確認等 | 5685 | ||
株式会社ダイナモ | 消費者用WEBサイト制作、管理等 | 2372 | ||
株式会社博報堂アイ・スタジオ | 商店街用募集WEBサイト制作等 | 1880 | ||
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ | 広告媒体の買付業務にかかる調整及び折衝業務 | 1410 | ||
株式会社オズマピーアール | PR及び広報業務 | 656 | ||
株式会社博報堂DYトータルサポート | 2年11月19日 | 2年11月20日 | 請求書マスタ業務、伝票承認業務等 | ― |
株式会社マッシュ | 2年12月23日 | 2年12月24日 | 商店街事務局業務協力に係るスタッフ派遣 | 2212 |
計 | 3億1479 | |||
委託契約額49億余円に占める再委託契約額9者計4億2613万余円(再委託費率8.6%) |
4省庁は、委託業務が完了したときは、委託先から精算報告書等の提出を受けて、これを精査するなどして、適切に委託費の精算を行うことが重要である。
2年1月に新型コロナウイルス感染症対策本部が設置されて以降、各般の感染防止策が講じられ、同年2月には大規模イベントの自粛要請等が行われた。これ以降、外出自粛や接触機会の削減が一段と進み、経済活動が抑制された。
このような状況を踏まえて、政府は、売上等に甚大な打撃を被った観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテインメント事業を対象に消費を喚起し、また、商店街等に賑わいを回復するためのキャンペーン実施を支援するために、GoToキャンペーン事業を実施することとした。
GoToキャンペーン事業は、2年7月以降順次開始されたが、新型コロナウイルス感染症の感染が再び拡大したことなどから、一時停止措置等が執られるなどしていて、3年9月末時点において、全面的な再開の見込みは立っていない。
一方、政府は、将来のGoToキャンペーン事業の再開を視野に、予算の多くを3年度に繰り越すとともに事業期間の延長措置を執るなどしている。
したがって、4省庁は、今後GoToキャンペーン事業を再開する場合には、引き続き感染状況等の局面に応じて適時適切に執行したり、各事業の目的に照らした効果が最大限発揮されるよう努めたり、今後同種の事業を実施する際に備えて知見を蓄積したりすることに留意して、適切に事業を実施していくことが望まれる。
このうち、農林水産省及び観光庁は、それぞれ次の点に留意して、適切に事業を実施していくことが望まれる。
ア 農林水産省において、今後イート事業と同種の事業を実施する際には、同省が事業全体を統括する業務を直接実施することは、委託費を抑制できるなどの効果があり得る一方、今般、委託契約の件数が多いことなどから同省が行う業務が繁忙となったことなどの面があることも踏まえて、業務を適正かつ効率的に実施できる実施方法及び実施体制について検討すること
イ 観光庁において、次のとおり、これまでの実施状況から得られた知見を踏まえた対応を執ること
(ア) 観光庁がトラベル事務局に支払った給付金と、トラベル事務局が旅行業者等及び地域共通クーポン取扱店舗に支払った給付金との差額をトラベル事務局が受領したままになっていることを踏まえて、このような場合における給付金の取扱いを定めること
(イ) 旅行業者等に割り振られる給付枠、旅行代金の割引率及びトラベル事業の対象とする旅行商品の基準・考え方を適切に設定したり、地域共通クーポンの不正利用の事態を踏まえた上での給付金の支払の体制を整備するよう努めたりすること
ウ 観光庁において、旅行業者等に支払われた取消料対応費用について、影響を受けた観光関連事業者間で公平に配分されるべきであることに加えて、旅行業者等が行う配分作業等に伴う事務費用を支払っていることに鑑みて、適切に配分されたか把握した上で検証を行うこと
本院としては、今後ともGoToキャンペーン事業の実施状況等について、引き続き検査を実施していくこととする。
(トラベル事業)
(イート事業(食事券発行委託事業))
(イート事業(オンライン飲食予約委託事業))
(イベント事業)
(商店街事業)
トラベル事業 | イート事業 | イベント事業 | 商店街事業 | ||||
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令和2年5/26 | 農林水産省、経済産業省及び国土交通省、GoToキャンペーン事業に係る委託先の公募開始 | ||||||
6/5 | 農林水産省、経済産業省及び国土交通省、委託先の公募中止 | ||||||
6/16 | 観光庁、トラベル事務局の委託先の公募開始 | ||||||
7/10 | 観光庁、7月22日以降に実施される旅行をトラベル事業の対象とし、旅行代金の割引を行うことを公表 | 7/21 | 食事券発行事業者(1次)、オンライン飲食予約事業者、実績確認監査等事業者、相談窓口・申請案内等事業者の公募開始 | 7/1 | イベント事務局の委託先の公募開始 | 7/1 | 商店街事務局の委託先の公募開始 |
7/17 |
・観光庁、東京除外措置を公表
・観光庁、トラベル事務局の運営に係る委託契約締結
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7/21 | 観光庁、東京除外措置に伴う取消料対応費用の支払を公表 | ||||||
7/22 | トラベル事業(旅行代金の割引)を開始 | ||||||
8/28 |
・食事券発行事業者との契約(32府県34件)
・オンライン飲食予約事業者との契約(13件)
・実績確認監査等事業者との契約
・相談窓口・申請案内等事業者との契約
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9/15 | 観光庁、東京除外措置の終了(9月30日)を公表 | 9/8 | 食事券発行事業者(2次)の公募開始 | 9/30 | 商店街事業における執行業務の契約締結 | ||
9/11 | 食事券発行事業者との契約(1県1件) | ||||||
10/1 | 地域共通クーポンの利用を開始 | 10/1 | オンライン飲食予約委託事業のポイント付与を開始 | 10/2 | イベント事業における執行業務の契約締結 | 10/19 | 商店街イベント等を開始 |
10/15 | 観光庁、旅行代金の割引率を35%に固定することなどを旅行業者等に対して要請 | 10/5 | 食事券発行委託事業の食事券販売を開始 | 10/29 | イベント事業の対象となる最初のイベントが登録される | ||
10/30 |
・観光庁「GoToトラベル事業の支援対象とする旅行商品の基準・考え方の明確化について」を公表
・観光庁、1回の旅行で7泊分までをトラベル事業の対象とする泊数制限の導入を公表
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10/7 | 食事券発行事業者との契約(14都道県14件) | ||||
11/18 | トラベル事務局、地域共通クーポン(電子)の不正使用を受け、SMS認証による本人確認の実施を公表 | 11/16 | 農林水産省、飲食店や宿泊施設での食事は子供を除く原則4人以下の単位とする検討を都道府県に要請 | 11/28 | 札幌市内の集客イベントについて、イベント事業の対象となるチケットの新規販売を一時停止 | 11/26 | 北海道から、札幌市内で開催される商店街集客イベントについて、実施見直し等の要請があり、実施を一時停止 |
11/21 | 9都道府県において食事券の利用、ポイントの付与・利用は、原則4人以下の単位での飲食とする対応を公表 | ||||||
11/24 |
観光庁、札幌市及び大阪市を目的地とする旅行の一時停止措置等を公表
(これ以降、5都市に係る旅行の一時停止措置等を順次公表)
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11/24 | 農林水産省、食事券の新規販売等の一時停止措置及び食事券やポイントの利用を控える旨の消費者への呼びかけの実施について、都府県に検討を要請 | ||||
11/27 |
10都道府県において食事券の新規販売等の一時停止措置、4都道府県においてポイント及び既に発行された食事券の利用抑制の呼びかけをする旨の公表
(以降、12月17日、令和3年1月7日、1月13日、2月2日、2月26日、3月18日の計7回、都道府県に検討を要請し、都度、公表している)
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12/14 | 観光庁、年末年始の全国に係る旅行の一時停止措置(12月28日~3年1月11日)を公表 | 12/2 | 神奈川県内の集客イベントについて、イベント事業の対象となるチケットの新規販売を一時停止 | 12/28 | 商店街集客イベントの全国一斉停止 | ||
12/28 | 全国の集客イベントについて、イベント事業の対象となるチケットの新規販売を一時停止 | ||||||
令和3年1/7 | 観光庁、緊急事態宣言に伴う全国に係る旅行の一時停止措置(1月12日~2月7日)を公表 | 1/9 | 商店街イベント等を採択するための審査の一時停止 | ||||
2/2 | 観光庁、緊急事態宣言の延長に伴い、全国に係る旅行の一時停止措置(2月8日~3月7日)を公表 | ||||||
3/5 | 観光庁、緊急事態宣言の延長に伴い、全国に係る旅行の一時停止措置(3月8日~当面の間)を公表 |