会計検査院は、令和元年6月10日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月11日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。
一、会計検査及びその結果の報告を求める事項
(一)検査の対象
内閣、内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省
(二)検査の内容
① 政府情報システムの整備及び運用に係る予算の執行状況
② 各府省等が締結する契約の競争性、経済性の状況
③ 政府情報システムの利用状況及び効果の発現状況
④ 政府情報システム全体の効率化及びコスト削減に向けた取組状況
高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号。以下「IT基本法」という。)に基づき、平成13年1月に内閣に設置された高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(以下「IT総合戦略本部」という。)は、社会全体を対象としたIT政策として、e-Japan戦略(平成13年1月高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定)を策定した。
25年6月には、世界最高水準のIT利活用社会の実現とその成果を国際展開することを目標として、「世界最先端IT国家創造宣言」(平成25年6月閣議決定。以下「IT国家創造宣言」という。)が策定された。
その後、IT国家創造宣言は廃止され、「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(平成29年5月閣議決定)が策定された。同計画は、30年6月の変更により「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」に改称され、令和元年6月及び2年7月に、同計画を変更した計画(以下、それぞれ「令和元年基本計画」及び「令和2年基本計画」という。)が閣議決定された。
また、行政を対象としたIT政策としては、平成15年7月に、「電子政府構築計画」(平成15年7月各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)が策定された。
29年5月には、デジタル・ガバメント推進方針(平成29年5月高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定)が策定され、30年1月には、同方針を具体化するために、「デジタル・ガバメント実行計画」(平成30年1月eガバメント閣僚会議決定)が策定された。
同方針によれば、政府は、行政サービスによって生み出される利用者にとっての価値を最大化するために、図表0-1のとおり、「サービス」「プラットフォーム」「ガバナンス」といった電子行政に関する全ての階層をデジタル社会に対応した形に変革すること、すなわち「デジタル・ガバメント」の実現に向けた取組を進めていくこととされている。
図表0-1 デジタル・ガバメントの概要
政府は、IT国家創造宣言において、システム調達やプロジェクト管理に関する共通ルールを整備することとしており、26年12月に、体系的な政府共通のルールとして、政府情報システムの整備及び管理に関する標準ガイドライン(平成26年12月各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定。30年3月30日以降はデジタル・ガバメント推進標準ガイドライン。以下「標準ガイドライン」という。)を策定した。
標準ガイドライン等に用いられる用語の定義を記載した「標準ガイドライン群用語集」では、政府情報システムとは、「各府省がサービス・業務を実施するために用いる情報システム(注1)」とされており、本報告においても当該定義によっている。
行政手続のオンライン化を推進するために、15年2月に、「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律」(平成14年法律第151号)が施行された。
その後の同法の改正により、令和元年12月に、以下のデジタル化の基本原則や添付書類の省略等の行政手続のオンライン化に必要となる事項等が規定されるとともに、同法の名称が「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律」(以下「デジタル手続法」という。)に改められた。
<デジタル化の基本原則>
① 個々の手続及びサービスが一貫してデジタルで完結する。
② 一度提出した情報は二度提出することを不要とする。
③ 民間サービスを含め複数の手続・サービスをワンストップで実現する。
標準ガイドラインによると、デジタル・ガバメントへ変革していくためには、各府省等及び政府全体のITガバナンス(注2)を強化し、価値を生み出すことが重要であるとされている。
政府全体のIT政策を統括するために、内閣官房に内閣情報通信政策監(以下「政府CIO」という。)が置かれている。また、内閣官房は、政府CIO及び各府省等に置かれる情報化統括責任者(以下「府省CIO」という。)の取組を支援する情報化統括責任者補佐官(以下「政府CIO補佐官」という。)の採用及び管理を一元的に行っている。
各府省等には、行政の情報化の推進を統括する府省CIO、情報化を専任とする審議官(以下「府省副CIO」という。)及びPMO(注3)が置かれ、PJMO(注4)が実施するシステムを活用するプロジェクト(以下「プロジェクト」という。)を管理している。
政府全体のITガバナンスの体制は、図表0-2のとおり、政府CIO、政府CIO補佐官、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室(以下「IT総合戦略室」という。)及び総務省が政府全体を管理する体制と、府省CIO、府省副CIO、PMO等が各府省等内を管理する体制とで構成されている。
なお、政府は、新型コロナウイルス感染症への対応において明らかになった様々な課題のほか、少子高齢化や自然災害といった社会的な課題に的確に対応し、社会のデジタル化を強力に進めるために、デジタル社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進する新たな司令塔として、デジタル庁を設置することとしている。
図表0-2 政府全体のITガバナンスの体制
デジタル・ガバメント実行計画によれば、各府省等は、府省CIO及び府省副CIOのリーダーシップの下、同計画に掲げる取組を進めるための中長期計画(以下「中長期計画」という。)を策定することとされている。
各府省等は、中長期計画の策定前は、投資管理、システム経費削減、ロードマップ(後掲(2)ア(イ)参照)、人材確保・育成等の取組について個別に計画を策定していたが、中長期計画では、利用者中心の行政サービス改革、プラットフォーム改革、価値を生み出すITガバナンス等に区分して整理した上で一つの計画に取りまとめている。このうち、各府省等のプラットフォーム改革では、政府情報システム改革の取組を推進して、政府情報システムの数及び運用等経費の削減を実現するとしている。
政府は、システムの一元的な管理体制を構築するために、元年6月に「政府情報システムの予算要求から執行の各段階における一元的なプロジェクト管理の強化について」(令和元年6月デジタル・ガバメント閣僚会議決定。以下「一元的プロジェクト管理強化方針」という。)を策定した。
一元的プロジェクト管理強化方針には、従来の政府情報システムの課題として、①重複的なシステムの開発・運用、②個別最適での予算要求、③調達時の価格低減の限界及び④システム単位での把握・チェックが挙げられている(図表0-3参照)。
図表0-3 従来の政府情報システムの課題
①重複的なシステムの開発・運用 |
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②個別最適での予算要求 |
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③調達時の価格低減の限界
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④システム単位での把握・チェック
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一元的プロジェクト管理強化方針では、政府情報システムの統一的管理のための従来の取組を抜本的に強化するために、次のような取組を早急に実施する必要があるとしている。
a 情報システム関係予算の一括要求・一括計上
情報システム関係予算(後掲(3)ア参照)のうち、政府全体で共通的に利用する人事、給与、旅費等の内部管理業務等を処理するためのシステム、OSやネットワーク等の基盤、機能等(以下「デジタルインフラ」という。)の整備及び運用に係る予算については、原則として、IT総合戦略室が一括して要求し、予算案として一括して計上した上で予算成立後にIT総合戦略室が指定する府省(以下「デジタルインフラ担当府省」という。)に配分し、デジタルインフラ担当府省がIT総合戦略室の定める全体方針に基づき統一的に執行することとなっている。
b 年間を通じたプロジェクト管理の実施
各府省等は、情報システム関係予算に該当する予算を、会計別及び経費区分別に分けて、毎年度、予算要求時に、IT総合戦略室に登録することとなっている。そして、IT総合戦略室、総務省及び各府省等は、登録された各府省等の予算についてグランドデザインに基づく統一的な観点から検証を行うために、①予算要求前(プロジェクトの計画段階)、②予算要求時(プロジェクトの具体化段階)及び③予算執行前(詳細仕様の検討段階)の3段階に分けてレビューを実施することによりプロジェクト管理を行うこととしている。
一元的プロジェクト管理強化方針では、情報システム関係予算の一括要求・一括計上、年間を通じたプロジェクト管理等の取組を着実に実施することを通じて、2年度時点での政府情報システムの①運用等経費(後掲(3)イ参照)と、②整備経費(同参照)のうちのシステム改修に係る経費との合計を、7年度までに3割削減することを目指すとしている。
IT総合戦略室及び総務省は、平成24年度に、全ての政府情報システムを対象とした棚卸調査を実施しており、その結果によると、同年度における政府情報システムの数は約1,500システムとなっていた。
IT国家創造宣言によれば、重複するシステムやネットワークの統廃合、必要性の乏しいシステムの見直しを進めることなどにより、政府情報システムの数を30年度までに半数程度まで削減するほか、大規模な刷新が必要なシステム等を除き、令和3年度を目途に原則として全ての政府情報システムをクラウド(注5)化し、災害や情報セキュリティに強い行政基盤を構築し、運用コストを圧縮することなどとされていた。
IT国家創造宣言に基づく政府情報システムの数及び運用コストの削減を実現するために、「政府情報システム改革ロードマップ」(平成25年12月各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定。以下「ロードマップ」という。)が策定され、前記の約1,500システムから、平成24年度末までに廃止されたものを除くなどした1,363の政府情報システムのそれぞれについて、ロードマップに基づき統廃合等の改革を進めることとなった。
なお、ロードマップは30年6月に廃止され、ロードマップに盛り込まれていた政府情報システムの数及び運用コストに係る削減目標等の趣旨は、デジタル・ガバメント実行計画等に引き継がれている。
政府は、IT国家創造宣言において、各府省等のIT投資の状況等をインターネット経由で一覧性をもって国民が確認できる仕組みの整備を進め、26年度に運用を開始するとしており、26年7月に「ITダッシュボード」というウェブサイトを公開した。
ITダッシュボードでは、IT国家創造宣言に掲げた削減目標の達成状況を把握できるように、年度ごとの政府情報システムの数や運用コストの削減実績を公開することになっている。
総務省は、政府情報システムに関する情報を一元的に管理し、政府におけるIT投資管理、情報システム統合の企画、情報セキュリティ対策・評価等への活用に資するために、政府情報システム管理データベース(Official informationsystem total management Database。以下「ODB」という。)を整備し、25年度に運用を開始した。31年2月に改定された標準ガイドラインによれば、各府省等は、ODBを用いて政府情報システムに係るシステム構成、予算、調達等に関する情報を登録したり、政府情報システムを識別するための情報システムIDを取得したりすることとされている。
社会保障・税番号制度(以下「マイナンバー制度」という。)の導入に伴い、27年10月以降に日本国内に住民票を有している全住民に対して、特定の個人を識別する12桁の番号(以下「マイナンバー」という。)が付番されることとなった。
マイナンバーは、社会保障、税等の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関が保有する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用することとなっている。
また、行政機関が従来使用しているシステムのうち、社会保障、税等に係る個人情報の正本データを保有するシステム(以下「既存システム」という。)は、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年法律第27号。以下「マイナンバー法」という。)に基づき、相互に情報をやり取りすること(以下「情報連携」という。)が可能となった。そして、情報連携(注6)は、内閣官房が設計及び開発を行い、28年度に総務省に移管された情報提供ネットワークシステム(以下「情報提供NWS」という。)を通じて行うこととなっている。
また、内閣官房及び内閣府は、マイナンバー制度における安心等の確保という目的に沿った機能として、国民が自宅のパーソナルコンピュータ等から自身に関する情報連携等の記録を確認できる機能を搭載したオンラインサービスである情報提供等記録開示システム及び地方公共団体の子育てなどに関するサービスの検索やオンライン申請を行うサービス検索・電子申請機能等システム(以下、両システムを合わせて「マイナポータル」という。)を設計し開発しており、内閣府がその運用を行っている。また、内閣官房は、不正な情報連携が行われていないかの監視及び監督を行う機能を搭載した監視・監督システムを設計し開発しており、内閣府に設置された個人情報保護委員会がその運用を行っている(以下、情報提供NWS、マイナポータル及び監視・監督システム並びに既存システム及び中間サーバー(注7)のうち政府情報システムに該当するもの(注8)などを合わせて「マイナンバー制度関連システム」という。)。
政府は、e-Japan戦略を具体化するために策定されたe-Japan重点計画(平成13年3月高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定)において、国民等と行政との間の実質的に全ての申請・届出等手続を、15年度までのできる限り早期にインターネット等で行えるようにすることとした。これを踏まえて、政府は、IT戦略に関する各種の計画等において、国民等や民間事業者等が行う行政手続のオンライン化を推進するための取組を実施している。
そして、各府省等は、国民等や民間事業者等が書面を用いて実施してきた申請、届出等を電子化するためのシステムの整備及び運用を行っている(以下、電子申請の受付及び事務処理に必要な政府情報システムを「電子申請等関係システム」という。)。
政府は、前記のe-Japan重点計画等に基づき、物品、役務及び公共事業それぞれの調達手続において電子入札を導入している。
また、「調達業務の業務・システム最適化計画」(平成21年8月各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)及び「公共事業支援システム(官庁営繕業務を含む)の業務・システム最適化計画」(平成18年3月各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)に基づき、総務省及び国土交通省がそれぞれ整備したシステムにより、物品、役務及び公共事業それぞれの調達手続において電子契約を導入している(以下、電子入札や電子契約を実施するための政府情報システムを「電子調達等関係システム」という。)。
15年7月に策定された電子政府構築計画によれば、区々にシステムの整備及び運用が行われているなど、IT導入による業務及びシステムの最適化が十分に図られているとは言い難い状況にあるとされていた。このため、各府省等は、同計画に基づき、各府省共通業務・類似業務における共通システムの利用等により行政の簡素化及び合理化を図ることとなった。
そして、複数の府省等で処理が行われる業務であってシステムを整備して行うものなどについては、標準ガイドラインに基づき内閣官房が府省共通プロジェクトに指定することとなっていたことから、人事院の「人事・給与関係業務情報システム」(以下「人給システム」という。)、総務省の「一元的な文書管理システム」(以下「文書管理システム」という。)、経済産業省の「旅費等内部管理業務共通システム(注9)」(以下「旅費等システム」という。)等のシステムに関するプロジェクトが府省共通プロジェクトに指定された。なお、令和2年3月に標準ガイドラインが改定された後は、府省共通プロジェクトは一定程度の役割を終えたとして、内閣官房による新たな指定を取りやめるとされている。
平成21年4月に策定された「デジタル新時代に向けた新たな戦略~三か年緊急プラン~」(平成21年4月高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定)では、効率的かつ柔軟で安全な政府情報システムの構築、開発・運用コストの削減及び業務の共通化のために、霞が関クラウド(仮称)を構築し、府省横断的に業務及びシステムの最適化を推進することとしていた。
そして、「新たな情報通信技術戦略」(平成22年5月高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定)、「政府共通プラットフォーム整備計画」(平成23年11月各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)等に基づき、総務省は、各府省等別々に整備されている政府情報システムについて、可能な限り統合し集約することによって一層の効率化や利便性向上を図るために、クラウド等の最新の技術を活用した政府共通の基盤として、政府共通プラットフォーム(以下「政府共通PF」という。)を構築し、25年3月に運用を開始した。そして、令和2年10月には新たな政府共通PFの運用が開始された(以下、平成25年3月に運用を開始した政府共通PFを「第一期政府共通PF」といい、令和2年10月に運用を開始した政府共通PFを「第二期政府共通PF」という。)。
IT総合戦略本部は、IT基本法第36条第1項の規定に基づき重点計画を作成することとなっており、重点計画において定める事項は同条第2項各号に規定されている。IT総合戦略室は、各府省等に対して同項第2号から第7号までの施策等(図表0-4参照)に係る予算を調査しており、その結果を「高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する予算」として公表している。
図表0-4 IT基本法第36条第2項各号の規定
第1号 | 高度情報通信ネットワーク社会の形成のために政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策に関する基本的な方針 |
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第2号 | 世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成の促進に関し政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策 |
第3号 | 教育及び学習の振興並びに人材の育成に関し政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策 |
第4号 | 電子商取引等の促進に関し政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策 |
第5号 | 行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進に関し政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策 |
第6号 | 高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保に関し政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策 |
第7号 | 前各号に定めるもののほか、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を政府が迅速かつ重点的に推進するために必要な事項 |
同予算は、情報システム関係予算と情報システム関係外予算に大別されている。このうち、情報システム関係予算は、標準ガイドラインに規定されている情報システムの経費区分(整備経費、運用等経費及びその他経費)に該当する事項に係る予算である。一方、情報システム関係外予算は、第5世代移動通信システム(5G)の実証実験のための予算等、情報システムの経費区分に該当しないものに係る予算である。
情報システム関係予算は、図表0-5のとおり、近年増加傾向にあり、2年度の当初予算額は7967億余円となっている。
図表0-5 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する予算(平成28年度~令和2年度)
前記のとおり、標準ガイドラインには、情報システムの経費区分として、整備経費、運用等経費及びその他経費という3種類の区分が規定されている。整備経費は、システムの整備(新規開発、機能改修・追加、更改及びこれらに付随する環境の整備をいう。以下同じ。)に要する一時的な経費、運用等経費は、システムの運用、保守等に要する経常的な経費、その他経費は、国の行政機関以外のシステムに関係する経費(地方公共団体等に対する情報システムの整備及び運用に関する助成金等の経費)及びデジタル・ガバメントの推進のための体制整備に要する経費であるとされている(図表0-6参照)。そして、各府省等のPJMOが実施する予算要求の積算は、システム単位で、上記の経費区分に基づくことなどとなっている。
図表0-6 高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する予算の分類
会計検査院は、従来、政府情報システムについて会計検査を行っているところであり、平成17年6月には、参議院から国会法第105条の規定に基づく検査要請を受けて、その検査結果を18年10月に「各府省等におけるコンピュータシステムに関する会計検査の結果について」として報告している(以下、この報告を「18年報告」という。)。
また、会計検査院は、18年報告以降、図表0-7のとおり、政府情報システムについて会計検査を実施した結果を検査報告に掲記するなどしている(以下、23年11月の「情報システムに係る契約における競争性、予定価格の算定、各府省等の調達に関する情報の共有等の状況について」を「23年報告」といい、28年9月の「政府の情報システムを統合・集約等するための政府共通プラットフォームの整備及び運用の状況について」を「28年報告」という。)。
図表0-7 政府情報システムに関する検査報告掲記事項等
検査報告等 | 件名等 |
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会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告 (平成18年10月) |
「各府省等におけるコンピュータシステムに関する会計検査の結果について」 【18年報告】 |
会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告 (21年10月) |
「利用が低調となっていて整備・運用等に係る経費に対してその効果が十分発現していない電子申請等関係システムについて、システムの停止、簡易なシステムへの移行など費用対効果を踏まえた措置を執るよう内閣官房等11府省等の長に対して意見を表示したもの」 |
会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告 (23年11月) |
「情報システムに係る契約における競争性、予定価格の算定、各府省等の調達に関する情報の共有等の状況について」【23年報告】 |
会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告 (24年10月) |
「人事・給与等業務・システム、調達業務の業務・システム並びに旅費、謝金・諸手当及び物品管理の各業務・システムの3の府省共通業務・システムにおける最適化の進捗状況等について」 |
平成23年度決算検査報告 | 「人事・給与等業務・システムについて、参加府省等との調整をより一層実施するなどして、安定的に運用できるよう引き続き改修に努めるとともに、参加府省等と十分情報共有を図り移行支援を実施するなどして、最適化効果が早期に発現するよう意見を表示したもの」(意見を表示し又は処置を要求した事項) |
平成26年度決算検査報告 |
「インターネット上からの通信が可能なサーバ上で利用していたサポート期間が終了しているソフトウェアの更新等を実施するとともに、ポリシー等を改定することなどによりサポート期間が終了しているソフトウェアを利用しないよう改善させたもの」(本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項) 「各府省等における情報システムに係るプロジェクト管理の実施状況等について」(特定検査対象に関する検査状況) |
会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告 (28年9月) |
「政府の情報システムを統合・集約等するための政府共通プラットフォームの整備及び運用の状況について」【28年報告】 |
会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告 (29年7月) |
「国の行政機関等における社会保障・税番号制度の導入に係る情報システムの整備等の状況について」 |
会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告 (30年4月) |
「各府省庁の災害関連情報システムに係る整備、運用等の状況について」 |
平成30年度決算検査報告 | 「本来の事業効果が発現せずに廃止されたセキュアゾーンの整備経緯等を踏まえて、今後の政府共通プラットフォームの整備等に際して、需要の把握、各府省との調整等を適時適切に行うための手続を明確にするよう是正改善の処置を求め、及び早急な対応が求められるなどの際にも、一元的な状況把握、プロジェクト管理等を行うこととするよう意見を表示したもの」(意見を表示し又は処置を要求した事項) |
標準ガイドラインでは、今や政府情報システムは、単なる行政事務処理上の道具ではなく、行政運営の中核を成す基盤として存在するに至っており、ITを徹底活用し、行政内部における行政サービスの利便性の向上並びに行政運営の効率性及び透明性の向上を実現するだけでなく、行政サービスを改善し、デジタル社会に対応したデジタル・ガバメントの実現を目指すことが求められているとされている。
また、政府は、これまで政府情報システムの整備及び運用について、毎年度、多額の予算を計上している。
そこで、会計検査院は、前記要請の政府情報システムに関する各事項について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次の点に着眼して検査した。
ア 政府情報システムの整備及び運用に係る予算の執行状況
政府情報システムの整備及び運用に係る予算の執行状況はどのようになっているか。
イ 各府省等が締結する契約の競争性、経済性の状況
政府情報システムの整備及び運用に当たって各府省等が締結する契約は競争性及び経済性が確保されているか。
ウ 政府情報システムの利用状況及び効果の発現状況
政府情報システムは、有効に活用され、所期の目的に照らして十分な効果を発現しているか、各府省等において、システムの利用状況を把握し、効果の発現状況を検証するための体制が整備され、その体制により適切な把握及び検証が行われているか。
エ 政府情報システム全体の効率化及びコスト削減に向けた取組状況
政府情報システムは全体として適切かつ効率的に整備され、及び運用されているか。また、コスト削減に向けた計画は適切に策定され、コスト削減を着実に実現しているか。
13府省等(注10)の本省、外局等(以下「省庁」という。)計30省庁(注11)が30年度に整備経費又は運用等経費に係る予算を計上し又は執行した実績がある765システム(注12)(別図表1-1参照)を対象として、政府情報システムの整備、運用、利用等の状況について検査を実施した(検査項目によっては29年度以前及び令和元、2両年度の内容を含む。)。
検査に当たっては、2年10月までに26省庁(注13)及び国から公的年金に係る一連の運営業務を委任又は委託されて社会保険オンラインシステム(注14)を運用している日本年金機構において、474人日を要して会計実地検査を行った。
また、上記の26省庁に4省庁(注15)を加えた30省庁から、調書、関係資料等の提出を受けて(新型コロナウイルス感染症に係る対応のため調書を作成することが困難であるとした厚生労働省医政局を除く。)、政府情報システムに係る予算の執行状況、契約の締結状況、利活用の状況、コストの削減状況等について、その内容を分析するとともに、公表されている資料等を基に調査・分析を行うなどした。