沖縄総合事務局(以下「事務局」という。)は、本局庁舎及び離島等に所在する各事務所を接続する基幹ネットワークとして、沖縄総合事務局基幹LANシステム(以下「基幹LAN」という。)を利用している。そして、事務局は、従来利用していた基幹LANを継続して利用するために、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社と、平成30年4月2日に「沖縄総合事務局基幹LANシステムの更改・保守業務一式」を契約額10億7784万円(令和元年10月変更後の契約額10億8991万余円)で締結している。
東日本大震災を踏まえて策定された「内閣府沖縄総合事務局業務継続計画」(平成26年7月策定)によれば、事務局は、被災後に必ず実施しなければならない業務(以下「非常時優先業務」という。)の内容を事務局内の部(注1)ごとに整理して、また、基幹LANへの接続が不可能な状態になった場合にも必要な情報を扱えるように、外部記憶媒体へのバックアップ措置を講ずることとされている。
これを踏まえて、事務局は、前記の契約に基づき、事務局以外の拠点へのシステムバックアップ及び被災時に当該拠点へのリモートアクセスを可能とするために、仮想サーバ基盤(事務局以外の拠点に整備するシステム)、アクセス回線(事務局以外の拠点に設置する専用の回線)及びモバイル回線(モバイルルータを含む。)で構成されるDRシステムを平成31年1月末までに整備していて、DRシステムの設計構築費、賃貸借費等に係る支払金額相当額は4306万余円となっている。
DRシステムは、被災時に業務を継続できるように、次の三つの機能を有している。
そして、事務局は、31年3月に事務連絡を発出して、DRシステムを整備したこと、及び事務局内の各部(注2)において非常時優先業務に必要な電子データをファイルサーバに保存するなどDRシステムを活用すべきことを周知している。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、効率性、有効性等の観点から、DRシステムは、非常時優先業務に使用できる状況になっているかなどに着眼して、前記の契約を対象として、事務局において、契約書、調達仕様書、要件定義書等の書類を確認するとともに、DRシステムの運用状況等について説明を聴取するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
事務局は、DRシステムが整備されて3年近く経過した令和3年10月まで、ファイルサーバの使用状況の確認を行っていなかった。そこで、各部が使用しているファイルサーバの容量及びその内容を確認するなどしたところ、各部において、非常時優先業務に必要な電子データを全く保存していなかったり、一部しか保存していなかったり、保存していた電子データが最新のものとなっていなかったりしていて、被災時に非常時優先業務に使用できる状況になっていなかった。
また、被災時にモバイルルータ及びDRシステム用メールを使用できる状況となっているか確認したところ、モバイルルータを総務部で一括して保管していたり、DRシステム用メールのアカウントを割り当てていなかったりしていて、被災時に本局庁舎及び離島等に所在する各事務所において各部の非常時優先業務に使用できる状況になっていなかった。
このように、事務局において、非常時優先業務に必要な電子データがファイルサーバに保存されていないなどしていてDRシステムが被災時に非常時優先業務に使用できる状況になっていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、事務局において、非常時優先業務に必要な電子データを保存する必要のある各部が当該電子データを保存していないなどの事態を把握していなかったり、非常時優先業務に使用するモバイルルータ及びDRシステム用メールについて、被災時に使用するための検討が十分でなかったりしたことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、事務局は、次のような処置を講じた。
ア 4年6月に事務連絡を発して、各部に非常時優先業務に必要な電子データをファイルサーバに保存すること及び保存した電子データを定期的に確認するなどして最新の状態にすることを周知した上で、総務部において、各部が非常時優先業務に必要な電子データをファイルサーバに保存していることを定期的に確認することとした。
イ あらかじめモバイルルータを配置して被災時に各部が使用できるようにするとともに、DRシステム用メールのアカウントを割り当てて、被災時に各部が速やかにDRシステム用メールを使用できるようにした。