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租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの[46税務署](27)


会計名及び科目
一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入
(項)各税受入金
部局等
46税務署
納税者
69人
徴収過不足額
徴収不足額 160,624,357円(平成27年度~令和3年度)
徴収過大額 1,549,500円(平成30、令和元両年度)

1 租税の概要

源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、申告の手続、納付の手続等が定められている。

納税者は、納付すべき税額を税務署に申告して納付することなどとなっている。国税局等又は税務署は、納税者が申告した内容が適正であるかについて申告審理を行い、必要があると認める場合には調査等を行っている。そして、確定した税額は、税務署が徴収決定を行っている。

令和3年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は90兆1952億余円となっている。このうち源泉所得税及復興特別所得税(注1)(以下「源泉所得税」という。)は20兆4967億余円、申告所得税及復興特別所得税(以下「申告所得税」という。)は4兆2005億余円、法人税は15兆3298億余円、相続税・贈与税は2兆9881億余円、消費税及地方消費税は37兆3201億余円となっていて、これら各税の合計額は80兆3353億余円となり、全体の89.0%を占めている。

(注1)
復興特別所得税  東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)に基づくものであり、平成25年1月から令和19年12月までの25年間、源泉所得税及び申告所得税に、その税額の2.1%相当額を上乗せする形で課税するもの

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、上記の各税に重点をおいて、合規性等の観点から、課税が法令等に基づき適正に行われているかに着眼して、全国の12国税局等及び524税務署のうち11国税局等及び57税務署において、申告書等の書類により会計実地検査を行うとともに、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき、上記の524税務署から提出された証拠書類等により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、国税局等及び税務署に調査等を求めて、その調査等の結果の内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 徴収過不足の事態

検査の結果、46税務署において、納税者69人から租税を徴収するに当たり、徴収額が、72事項計160,624,357円(平成27年度から令和3年度まで)不足していたり、2事項計1,549,500円(平成30、令和元両年度)過大になっていたりしていて、不当と認められる。

これを、税目別に示すとのとおりである。

表 税目別の徴収過不足額等

税目 事項数 徴収不足額 事項数 徴収過大額(△)
源泉所得税
2
1,718,657

申告所得税
22 49,225,300
法人税
27 81,293,400 1 962,600
相続税・贈与税
6 4,596,100 1 586,900
消費税
13 22,404,000
地方法人税
2 1,386,900
72 160,624,357 2 1,549,500
(注)
地方法人税  地方法人税法(平成26年法律第11号)に基づく税目であり、地方交付税の財源を確保するために、平成26年10月1日以後に開始する事業年度から、法人税額の4.4%相当額(令和元年10月1日以後に開始する事業年度からは10.3%相当額)を課税するもの

なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、全て徴収決定又は支払決定の処置が執られた。

(3) 発生原因

このような事態が生じていたのは、前記の46税務署において、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、これを見過ごしたり、課税資料の収集及び活用が的確でなかったりしたため、誤ったままにしていたことなどによると認められる。

(4) 税目ごとの態様

この74事項のうち、源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税及び消費税に関する事態について、その主な態様を示すと次のとおりである。

ア 源泉所得税

源泉所得税に関して徴収不足になっていた事態が2事項あった。これらは、配当に関する事態である。

配当の支払者は、支払の際に、源泉所得税を徴収して法定納期限までに国に納付しなければならないこととなっており、法定納期限までに納付がない場合には、税務署は支払者に対して納税の告知をしなければならないこととなっている。また、自己株式の取得(市場取引による取得等を除く。以下同じ。)に際し、その対価として金銭等を交付した場合、当該株式に対応する資本金等の額を超える部分の金額は、配当とみなされることとなっている。

この配当に関して、徴収不足になっていた事態が2事項計1,718,657円あった。その内容は、自己株式の取得による配当とみなされる金額について、法定納期限を経過した後も長期間にわたって源泉所得税額が納付されていないのに、税務署において課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、納税の告知をしておらず、源泉所得税額が納付されないままとなっていたものである。

イ 申告所得税

申告所得税に関して徴収不足になっていた事態が22事項あった。この内訳は、譲渡所得に関する事態が12事項、所得税額の特別控除に関する事態が7事項及びその他に関する事態が3事項である。

(ア) 譲渡所得に関する事態

個人が資産を譲渡した場合には、その総収入金額から譲渡した資産の取得費や譲渡に要した費用の額等を差し引いた金額を譲渡所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、土地建物等の譲渡による所得については、他の所得と分離して課税することとなっている。そして、譲渡所得の金額の計算上控除する取得費は、その資産の取得に要した金額等(以下「取得価額」という。)とし、その資産が建物等の減価償却資産の場合は、その取得の日から譲渡の日までの間において、不動産所得等を生ずべき業務の用に供されていた期間又は業務の用に供されていない期間の区分に応じて定められた所定の方法により計算した償却費の累積額を取得価額から控除した金額(以下「未償却残高」という。)とすることとなっている。

この譲渡所得に関して、徴収不足になっていた事態が12事項計35,446,000円あった。その主な内容は、譲渡した建物等が業務の用に供されていたにもかかわらず、業務の用に供されていない場合の未償却残高を取得費として譲渡所得の金額の計算上過大に控除しているのに、これを見過ごしたため、譲渡所得の金額を過小のままとしていたものである。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例1> 譲渡所得の金額の計算上控除する取得費を過大に計上していた事態

納税者Aは、平成29年分の申告に当たり、譲渡した土地建物に係る譲渡所得の計算において、建物については業務の用に供されていない場合の未償却残高を取得費とするなどして、譲渡所得の金額を116,223,374円としていた。

しかし、納税者Aの申告書等によれば、譲渡した建物は業務の用に供されていた。したがって、業務の用に供されていない場合の未償却残高を取得費として譲渡所得の金額の計算上過大に控除しているのに、これを見過ごしたため、譲渡所得の金額は17,592,198円過小となり、申告所得税額2,694,200円が徴収不足になっていた。

(イ) 所得税額の特別控除に関する事態

所得税額の算定に当たり、所得税額から一定の金額を控除する各種の特別控除が設けられている。これらの特別控除の一つとして、青色申告書を提出する中小事業者(注2)が特定の機械装置等(注3)を取得するなどして、中小事業者の営む一定の事業の用に供した場合、その年分において、当該年分の事業所得の金額に係る所得税額の100分の20相当額を限度として、取得価額等の合計額の100分の7相当額を所得税額から控除できることとなっている。

(注2)
中小事業者  常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人
(注3)
特定の機械装置等  機械及び装置並びに工具、ソフトウェア、車両及び運搬具、船舶のうちそれぞれ一定の要件に該当するもの

この所得税額の特別控除に関して、徴収不足になっていた事態が7事項計8,210,500円あった。その主な内容は、取得した資産が特定の機械装置等に該当しないにもかかわらず上記の特別控除を適用していたため、所得税額から控除する金額が過大となっているのに、これを見過ごしたため、所得税額を過小のままとしていたものである。

(ウ) その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、事業所得等に関して、徴収不足になっていた事態が3事項計5,568,800円あった。

ウ 法人税

法人税に関して徴収不足又は徴収過大になっていた事態が28事項あった。この内訳は、法人税額の特別控除に関する事態が11事項、交際費等の損金不算入に関する事態が6事項及びその他に関する事態が11事項である。

(ア) 法人税額の特別控除に関する事態

法人税額の算定に当たり、法人税額から一定の金額を控除する各種の特別控除が設けられている。これらの特別控除の一つとして、青色申告書を提出する法人が、国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、当該事業年度の国内雇用者に対する給与等の支給額(以下「雇用者給与等支給額」という。)が前事業年度の国内雇用者に対する給与等の支給額(以下「比較雇用者給与等支給額」という。)を上回ることなどの要件を満たすときは、当該事業年度の法人税額の100分の20相当額又は雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額(以下「雇用者給与等支給増加額」という。)の100分の15相当額等のいずれか少ない金額を法人税額から控除できることとなっている。

この法人税額の特別控除に関して、徴収不足になっていた事態が11事項計11,737,800円あった。その主な内容は、雇用者給与等支給額から控除する比較雇用者給与等支給額の金額を誤っていたため、雇用者給与等支給増加額が適正でなく、法人税額の特別控除額が過大となっているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていたものである。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例2> 給与等の引上げを行った場合等の法人税額の特別控除額の算定を誤ったため、法人税額から控除する金額が過大となっていた事態

B会社は、令和元年8月から2年7月までの事業年度分の申告に当たり、雇用者給与等支給額1,583,522,523円が比較雇用者給与等支給額1,472,369,768円を上回るなどとして、雇用者給与等支給増加額111,152,755円の100分の15相当額16,672,913円を法人税額から控除していた。

しかし、B会社の前事業年度分の申告書に添付された明細書等によれば、雇用者給与等支給額から控除すべき適正な比較雇用者給与等支給額は1,487,457,768円であった。したがって、適正な雇用者給与等支給増加額は96,064,755円と算出され、法人税額の特別控除額はその100分の15相当額の14,409,713円となり、2,263,200円過大となっているのに、これを見過ごしたため、法人税額が同額徴収不足になっていた。

(イ) 交際費等の損金不算入に関する事態

法人が支出する交際費等の額のうち接待飲食費の額の100分の50に相当する金額(以下「接待飲食費損金算入基準額」という。)を超える部分の金額は、所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととなっている。ただし、投資法人等を除く法人のうち事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額(資本又は出資を有しない法人等にあっては所定の方法で計算した金額(以下「資本相当額」という。))が1億円以下であるもの(一定の法人を除く。)については、接待飲食費損金算入基準額に代えて、交際費等の額のうち年当たり800万円の定額控除限度額までの金額を損金の額に算入するとともに、これを超える部分の金額を損金の額に算入しないことができることとなっている。

そして、資本相当額については、資本又は出資を有しない法人の場合、事業年度終了の日における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額から総負債の帳簿価額を控除するなどした金額の100分の60に相当する金額等とすることとなっている。

この交際費等の損金不算入に関して、徴収不足になっていた事態が6事項計5,461,100円あった。その内容は、資本又は出資を有しない法人が、資本相当額が1億円以下である場合の規定を適用して、交際費等の額が前記の定額控除限度額以下であることから損金に算入しない額はないとしていたが、資本相当額を計算すると1億円を超えるため、交際費等の額のうち接待飲食費損金算入基準額を超える部分の金額が損金に算入しない額となるのに、これを見過ごしたため、所得の金額を過小のままとしていたものである。

(ウ) その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、特定同族会社(注4)の留保金に対する特別税率等に関して、徴収不足になっていた事態が10事項計64,094,500円、徴収過大になっていた事態が1事項962,600円あった。

(注4)
特定同族会社  株主等の1人並びにこれと特殊の関係のある個人及び法人が発行済株式総数又は出資総額の100分の50を超える株式数又は出資金額を有しているなどの会社(資本金又は出資金の額が1億円以下であるものを、原則として除く。)

特定同族会社の留保金に対する特別税率に関する事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例3> 特定同族会社の課税留保金額に対して特別税率の法人税を課していなかった事態

特定同族会社については、通常の法人税のほか、利益のうち社内に留保した金額が一定の金額を超える場合には、その超える部分の金額(以下「課税留保金額」という。)に対し特別税率の法人税を課することとなっている。

特定同族会社であるC会社は、平成27年8月から令和元年7月までの4事業年度分の申告に当たり、課税留保金額の計算をしていなかった。

しかし、C会社の申告書等の課税留保金額に関する資料によれば、利益のうち社内に留保した金額があるため課税留保金額の計算を行う必要があり、所定の計算を行うと、課税留保金額平成28年7月期分27,605,000円、29年7月期分43,200,000円、30年7月期分74,644,000円及び令和元年7月期分115,939,000円が算出されるのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課しておらず、法人税額平成28年7月期分2,760,500円、29年7月期分4,980,000円、30年7月期分9,696,600円及び令和元年7月期分16,687,800円、計34,124,900円が徴収不足になっていた。

エ 相続税・贈与税

相続税に関して徴収不足又は徴収過大になっていた事態が7事項あった。この内訳は、相続税額の加算に関する事態が5事項及びその他に関する事態が2事項である。

(ア) 相続税額の加算に関する事態

個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その取得した財産に対して相続税を課することとなっている。そして、財産を取得した者が被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の者である場合には、所定の方法により計算した金額にその100分の20に相当する金額を加算するなどした金額をその者の相続税額とすることとなっている。

この相続税額の加算に関して、徴収不足になっていた事態が5事項3,127,100円あった。その内容は、相続により財産を取得した者が被相続人の弟妹等であり、一親等の血族及び配偶者以外の者であるため、上記のとおり相続税額を加算する必要があるにもかかわらずこの加算をしていないのに、これを見過ごしたため、相続税額を過小のままとしていたものである。

(イ) その他に関する事態

(ア)のほか、障害者控除額の計算等に関して、徴収不足になっていた事態が1事項1,469,000円、徴収過大になっていた事態が1事項586,900円あった。

オ 消費税

消費税に関して徴収不足になっていた事態が13事項あった。この内訳は、課税仕入れに係る消費税額の控除に関する事態が8事項、課税売上高の計上に関する事態が3事項及びその他に関する事態が2事項である。

(ア) 課税仕入れに係る消費税額の控除に関する事態

事業者は、課税期間(注5)における課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除した額を消費税として納付することとなっている。そして、課税売上高に対する消費税額から控除する課税仕入れに係る消費税額は、一定の要件に該当して全額控除できる場合を除き、課税仕入れに係る消費税額等の合計額に課税売上割合(非課税売上高等を含めた総売上高に占める課税売上高の割合。以下同じ。)を乗ずるなどして計算することとなっている。

(注5)
課税期間  納付する消費税額の計算の基礎となる期間で、原則として個人事業者は暦年、法人は事業年度

この課税仕入れに係る消費税額の控除に関して、徴収不足になっていた事態が8事項計14,315,400円あった。その主な内容は、非課税売上高である土地の譲渡収入を総売上高に含めないで課税売上割合を計算しているのに、これを見過ごしたため、課税仕入れに係る消費税額の控除額を過大のままとしていたものである。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例4> 課税仕入れに係る消費税額の控除額の計算を誤っていた事態

D会社は、平成28年10月から29年9月までの課税期間分の申告に当たり、課税売上高を584,996,877円、総売上高を598,065,373円として、課税売上割合を97.81%としていた。

しかし、D会社の法人税の申告書に添付された書類等によれば、非課税売上高である土地の譲渡収入があり、これを総売上高に含めるなどして適正に計算すると、課税売上高は656,072,510円、総売上高は1,083,901,006円、課税売上割合は60.52%となるのに、これを見過ごしたため、課税仕入れに係る消費税額の控除額が過大となり、消費税額8,742,200円が徴収不足になっていた。

(イ) 課税売上高の計上に関する事態

事業者は、課税の対象となる国内において行った資産の譲渡及び貸付け並びに請負等の役務の提供に係る収入金額を課税売上高に計上することとなっている。

この課税売上高の計上に関して、徴収不足になっていた事態が3事項計5,445,800円あった。その主な内容は、事業者が事業用建物を譲渡しているにもかかわらず当該譲渡に係る収入金額を課税売上高に計上していないのに、税務署において課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、課税売上高を過小のままとしていたものである。

(ウ) その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、納税義務の免除等に関して、徴収不足になっていた事態が2事項計2,642,800円あった。

これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局等別に示すと次のとおりである。

国税局等
税務署数
源泉所得税
申告所得税
法人税
相続税
贈与税
消費税
地方法人税
事項数
徴収不足
徴収過大
(△)
事項数
徴収不足
徴収過大
(△)
事項数
徴収不足
徴収過大
(△)
事項数
徴収不足
徴収過大
(△)
事項数
徴収不足
徴収過大
(△)
事項数
徴収不足
徴収過大
(△)
事項数
徴収不足
徴収過大
(△)
      千円   千円   千円   千円   千円   千円   千円
関東信越国税局 4 1 999 3 7,644 1 620 3 1,664 1 713     9 11,642
東京国税局 24 1 718 10 14,309 12 63,747 3
1
2,931
586
10 20,438 2 1,386 38
1
103,533
586
金沢国税局 2         2 4,951             2 4,951
名古屋国税局 6     6 21,606                 6 21,606
大阪国税局 2     1 1,032 1 566             2 1,599
広島国税局 4     1 2,694 3
1
3,380
962
    1 537     5
1
6,612
962
熊本国税局 3     1 1,938 7 7,444             8 9,382
沖縄国税事務所 1         1 581     1 714     2 1,296
46 2 1,718 22 49,225 27
1
81,293
962
6
1
4,596
586
13 22,404 2 1,386 72
2
160,624
1,549