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(2) 私立学校施設整備費補助金(ICT活用推進事業及び防災機能等強化緊急特別推進事業)が過大に交付されていたもの[文部科学本省](30)―(34)


5件 不当と認める国庫補助金 21,343,000円

私立学校施設整備費補助金(ICT活用推進事業及び防災機能等強化緊急特別推進事業)(以下「補助金」という。)は、私立の大学、短期大学、高等専門学校及び専修学校の教育研究の充実と質的向上を図ることを目的として、学校法人等に対して、ICT活用推進事業、防災機能等強化緊急特別推進事業(学校施設耐震改修工事等)等に要する経費の一部を国が補助するものである。

補助金の交付額は、私立学校施設整備費補助金(私立学校教育研究装置等施設整備費(私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費))交付要綱(昭和58年文部大臣裁定)等によれば、ICT活用推進事業については、ICT装置の整備等に要する経費、また、防災機能等強化緊急特別推進事業については、危険建物の防災機能強化のための耐震補強工事等に要する経費(以下、これらを「補助対象経費」という。)のそれぞれ2分の1以内の額とすることとされている。そして、これらの事業の補助対象経費については、次のとおりとされている。

ICT活用推進事業については、音声映像装置、入出力装置等の装置の設置に伴い施設の改造工事を行う場合の工事費及び当該装置の購入に係る経費、当該装置を稼働又は利用する上で必要となる最小限の電子計算機の購入に係る経費等を補助の対象とすることとされている。また、大学における1事業当たりの工事費及び装置等の購入に係る経費から成る補助対象経費の合計が1000万円未満の事業等は、補助の対象とならないこととされている。

防災機能等強化緊急特別推進事業のうち学校施設耐震改修工事については、耐震補強工事の耐震診断、実施設計及び工事に係る経費を補助の対象とすることとされており、このうち実施設計に係る経費については、補助の対象となる工事の実施設計に係る経費を補助の対象とすることとされている。また、工事に付随する備品の整備に係る経費等は、補助の対象とならないこととされている。

本院が、22学校法人において会計実地検査を行ったところ、2学校法人において、ICT活用推進事業について、設置に伴う施設の改造工事を行っておらず、また、音声映像装置等を稼働又は利用する上で必要となる最小限の電子計算機でもないことから補助の対象とならないノートパソコン等の購入に係る経費を補助対象経費に含めていたり、交付要綱等に定めるいずれの装置にも該当せず補助の対象とならない備品の購入に係る経費を補助対象経費に含めており、これを除外すると、補助対象経費が1000万円未満となり補助の対象とならない事業を補助の対象としていたりしていた。また、3学校法人において、防災機能等強化緊急特別推進事業のうち学校施設耐震改修工事について、耐震補強工事と関係がなく補助の対象とならない給排水衛生設備等工事の実施設計に係る経費及び照明器具の改修に係る経費並びに工事に付随して整備した備品であり補助の対象とならない当該備品の整備に係る経費を補助対象経費に含めるなどしていた。

これらの結果、国庫補助金計21,343,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、5学校法人において補助対象経費についての理解が十分でなかったこと、文部科学省において実績報告書等に対する審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

学校法人東洋英和女学院は、令和元年度にICT活用推進事業として「3205教室ICT教育力強化事業」を実施しており、コンピュータを使用して語学学習等を支援するシステム(以下「システム」という。)を整備するための教室の改造工事や当該教室で使用する装置の購入に係る経費を対象として、補助対象経費を31,695,686円(国庫補助金15,847,000円)と算定していた。そして、上記装置の購入に係る経費にはシステムを構成する音声映像装置等のほか、ノートパソコン及びヘッドセット各72台の購入に係る経費を含めていた。

しかし、上記の改造工事は音声映像装置等を設置するために行ったものであって、ノートパソコン等の設置に伴う施設の改造工事は行っていないこと、また、このノートパソコン等はシステムを構成するものではなく、改造工事を行って設置した音声映像装置等を稼働又は利用する上で必要となる最小限の電子計算機でもないことから補助の対象とならないにもかかわらず、同法人は、ノートパソコン等の購入に係る経費12,519,540円を補助対象経費に含めていた。

したがって、上記の12,519,540円を除外して適正な補助対象経費を算定すると、19,176,146円(国庫補助金9,588,000円)となり、国庫補助金6,259,000円が過大に交付されていた。

以上を事業主体別に示すと次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
補助事業
年度
補助対象経費
左に対する国庫補助金交付額
不当と認める補助対象経費
不当と認める国庫補助金
摘要
          千円 千円 千円 千円  
(30)
文部科学本省
学校法人東洋英和女学院
ICT活用推進事業(3205教室ICT教育力強化事業)
31,695 15,847 12,519 6,259
補助の対象とならないノートパソコン等の購入に係る経費を補助対象経費に含めていたもの
(東洋英和女学院大学)
(31)
学校法人金沢学院大学
防災機能等強化緊急特別推進事業(1号館(本部棟)耐震改修工事(大学))等
30 67,799 33,899 5,704 2,852
補助の対象とならない照明器具の改修に係る経費を補助対象経費に含めていたものなど
(金沢学院大学、金沢学院短期大学)
(32)
学校法人皇學館
ICT活用推進事業(皇學館大学第四期教育用無線LAN整備事業)
28 10,646 5,323 10,646 5,323
補助の対象とならない備品の購入に係る経費を除外すると補助対象経費が1000万円未満となり当該事業全体が補助の対象とならないもの
(皇學館大学)
(33)
学校法人比治山学園
防災機能等強化緊急特別推進事業(比治山大学1号館校舎耐震補強工事(大学))等
29 145,432 72,715 2,966 1,483
補助の対象とならない備品の整備に係る経費を補助対象経費に含めていたもの
(比治山大学、比治山大学短期大学部)
(34)
学校法人福原学園
防災機能等強化緊急特別推進事業(九州共立大学第二体育館耐震補強工事)
29 42,800 21,400 10,852 5,426
補助の対象とならない給排水衛生設備等工事の実施設計に係る経費を補助対象経費に含めていたもの
(九州共立大学)
(30)―(34)の計 298,374 149,184 42,689 21,343