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(4) 学校施設環境改善交付金が過大に交付されていたもの[5県](40)―(44)


5件 不当と認める国庫補助金 57,806,000円

学校施設環境改善交付金(以下「交付金」という。)は、「義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律」(昭和33年法律第81号)等に基づき、地方公共団体が作成する公立の義務教育諸学校等の施設の整備に関する施設整備計画によって実施される施設整備事業に要する経費に充てるために、国が地方公共団体に対して交付するものである。

交付金の交付額は、学校施設環境改善交付金交付要綱(平成23年文部科学大臣裁定。以下「交付要綱」という。)等に基づき、当該地方公共団体の施設整備計画に記載された事業のうち、算定の対象となる事業(以下「交付対象事業」という。)ごとに文部科学大臣が定める方法により算出した配分基礎額に交付対象事業の種別に応じて同大臣が定める割合(以下「算定割合」という。)を乗ずるなどして得た額の合計額と、交付対象事業に要する経費の額に算定割合を乗じて得た額の合計額のうち、いずれか少ない額を基礎として算定することなどとなっている。このうち、配分基礎額については、配分基礎額を算定する際の基礎となる面積(以下「配分基礎面積」という。)を算定して、これに交付対象事業の種別に応じて定められた単価を乗ずるなどの方法により算定することとなっている(次式参照)。

(交付額の算定式)

交付額の算定式 いずれか少ない額を基礎とするなどして算定

交付要綱によれば、交付対象事業は、小学校、中学校等の建物等の大規模改造で、教育内容及び方法の多様化等に適合させるための建物の内部改造に係る工事等の質的整備を行う事業(以下「大規模改造(質的整備)事業」という。)、小学校、中学校等の建物で構造上危険な状態にあるもの(危険建物)の改築事業(以下「危険改築事業」という。)等とされている。

そして、大規模改造(質的整備)事業及び危険改築事業における配分基礎面積等については、「学校施設環境改善交付金の配分基礎額の算定方法等について」(平成29年文部科学省大臣官房文教施設企画部施設助成課長通知)等によれば、次のように算定することとされている。

① 大規模改造(質的整備)事業として実施する工事のうち、トイレ改修工事に係る配分基礎面積は、改修工事を実施する部分の床面積の計とする。

② 大規模改造(質的整備)事業として実施する工事のうち、省エネルギー型冷暖房設備の導入等の内部環境改善を図る改造工事(以下「内部環境改善工事」という。)等の配分基礎額は、都道府県等で公共工事等に使用されている積算基準を参考として事業箇所の実情に即して算定し、交付申請時に概算額等により算定した配分基礎額については、実績報告時に契約後の金額を反映する。

③ 危険改築事業において、施設の解体及び撤去事業を実施する場合は、都道府県等で公共工事等に使用されている積算基準を参考として事業箇所の実情に即して算定した施設の解体及び撤去費を配分基礎額に加算する。また、危険改築事業を複数年度にわたって実施する場合には、施設の解体及び撤去事業を実施する年度に施設の解体及び撤去費を配分基礎額に加算する。

本院が、15都道県及び94市区町村の計109地方公共団体において会計実地検査を行ったところ、5県の5市町村において、適正な配分基礎面積を超える面積により配分基礎額を算定したり、契約後の金額を反映せずに配分基礎額を算定したりするなどしていたため、配分基礎額が過大に算定されており、交付金計57,806,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、5市町村において交付金の交付額の算定方法についての理解が十分でなかったこと、5県において5市町村から提出された実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例1

福島県須賀川市は、平成29年度から令和2年度までの間に、西袋第一小学校の大規模改造(質的整備)事業等22事業を実施して、交付金計180,658,000円の交付を受けていた。

同市は、上記22事業のうち、同小学校の大規模改造(質的整備)事業等17事業においてトイレ改修工事を実施するに当たり、配分基礎面積は計1,088m²であるとしていた。

しかし、上記の1,088m²には、改修工事を実施していない部分の床面積が含まれており、トイレ改修工事に係る適正な配分基礎面積は、この床面積を除いた計742m²となる。

したがって、適正な配分基礎面積に基づく配分基礎額により交付金の交付額を算定すると計162,813,000円となることから、交付金計17,845,000円が過大に交付されていた。

事例2

岩手県岩手郡雫石町は、平成27年度から29年度までの間に、雫石中学校の大規模改造(質的整備)事業等4事業を実施して、交付金計127,522,000円の交付を受けていた。

同町は、同中学校の大規模改造(質的整備)事業の実施に当たり、交付申請時に、設計業者による概算額により算定した内部環境改善工事に要する経費128,537,000円を配分基礎額としており、実績報告時も上記の概算額により算定していた。

しかし、配分基礎額に計上した内部環境改善工事に要する経費については、実績報告時には、交付申請時に用いた概算額によるのではなく、契約後の金額を反映する必要があり、これによると77,428,000円となる。

したがって、内部環境改善工事に要する経費を77,428,000円に修正して適正な配分基礎額により交付金の交付額を算定すると計110,316,000円となることから、交付金計17,206,000円が過大に交付されていた。

以上を部局等別に示すと次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
交付対象事業の種別
年度
交付金の交付額
不当と認める交付金の交付額
摘要
          千円 千円  
(40)
岩手県
岩手郡雫石町
大規模改造(質的整備)事業
27~29 127,522 17,206 内部環境改善工事に要する経費について契約後の金額を反映せずに配分基礎額を算定していたもの
(41)
山形県
山形市
29、30 306,507 2,300 適正な配分基礎面積を超える面積により配分基礎額を算定していたもの
(42)
福島県
須賀川市
平成29~令和2
180,658 17,845
(43)
埼玉県
戸田市
危険改築事業
元、2 187,965 8,863 施設の解体及び撤去事業を実施していない年度に解体及び撤去費を加算していたもの
(44)
熊本県
球磨郡水上村
大規模改造(質的整備)事業
28、29 31,503 11,592 適正な配分基礎面積を超える面積により配分基礎額を算定していたもの
(40)―(44)の計 834,155 57,806