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(5) 国宝重要文化財等保存・活用事業費補助金等が過大に交付されていたもの[2県](45)―(47)


3件 不当と認める国庫補助金 42,404,000円

国宝重要文化財等保存・活用事業費補助金(平成29年度以前は国宝重要文化財等保存整備費補助金)及び国宝重要文化財等防災施設整備費補助金は、文化財保護法(昭和25年法律第214号)等に基づき、文化財の適正な保存管理とその活用を図り、もって文化財保護の充実に資することを目的として、補助事業を行う者に対して、事業に要する経費の一部を国が補助するものである。そして、文化財保存事業費関係補助金交付要綱(昭和54年文化庁長官裁定)等によれば、補助事業の補助対象経費は、保存修理工事に係る設計監理に要する経費や修理工事経費等とされている。

文化資源活用事業費補助金(観光拠点整備事業)は、外国人観光客が見込まれる地域で、文化財を活用した魅力向上につながる一体的な整備や公開活用のためのコンテンツの作成等を行うことにより、観光拠点としての磨き上げを図ることを目的として、補助事業を行う者に対して、事業に要する経費の一部を国が補助するものである。そして、文化資源活用事業費補助金(観光拠点整備事業)交付要綱(平成31年文化庁長官決定)等によれば、補助事業の補助対象経費は文化財建造物の美観向上整備事業等に要する経費とされている。

文化資源活用事業費補助金(文化財多言語解説整備事業)は、文化財に関する先進的、高次元な多言語解説を整備し、訪日外国人旅行者数の増加及び訪日外国人旅行者の地域での体験滞在の満足度を向上させることを目的として、補助事業を行う者に対して、事業に要する経費の一部を国が補助するものである。そして、文化資源活用事業費補助金(文化財多言語解説整備事業)交付要綱(平成30年文化庁長官決定)等によれば、補助事業の補助対象経費は、国指定等文化財に関する先進的、高次元な技術を利用した多言語解説を行うためのコンテンツ制作に係る経費とされている。

補助事業の実施に当たり、事業主体が補助の対象となる保存修理工事に係る設計監理、修理工事等を外注する場合には、これに係る消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)額が補助対象経費に含まれる。そして、事業主体が消費税の課税事業者であれば当該外注は課税仕入れに該当することから、確定申告の際に課税売上高に対する消費税額から当該外注に係る消費税額を仕入税額控除(注)した場合には、事業主体はこれに係る消費税額を実質的に負担していないことになる。このため、各交付要綱において、消費税の課税事業者である事業主体は、補助事業完了後に消費税の確定申告により仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金相当額が確定した場合には、その額を速やかに都道府県に報告し、当該金額を返還しなければならないこととなっている。

(注)
仕入税額控除  課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除すること

本院が、7道県、26市町、15法人等計48事業主体において会計実地検査を行ったところ、3事業主体において、仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金相当額の報告及び返還を行っていなかったため、国庫補助金計42,404,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、3事業主体において補助事業における消費税の取扱いに対する理解が十分でなかったこと、2県において補助事業における消費税の取扱いについての指導及び審査が十分でなかったことによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

富士屋ホテル株式会社は、平成28年度から令和2年度までの間に実施した「登録有形文化財(建造物)富士屋ホテル花御殿ほか6件建造物保存修理(登録有形文化財)」等4件の事業に係る補助対象経費について、保存修理工事に係る設計監理費等に消費税を含めて計605,962,860円(国庫補助金計304,506,000円)としていた。

しかし、同会社は、補助事業完了後の消費税の確定申告の際に、本件補助事業に係る消費税額を仕入税額控除し、これに係る国庫補助金相当額が確定していたのに、その額の報告及び返還を行っていなかった。

したがって、上記の仕入税額控除した消費税額計45,477,240円に係る国庫補助金計22,877,000円が過大に交付されていた。

以上を部局等別・事業主体別に示すと次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
補助事業等
年度
補助対象経費
左に対する国庫補助金交付額
不当と認める補助対象経費
不当と認める国庫補助金
摘要
          千円 千円 千円 千円  
(45)
神奈川県
富士屋ホテル株式会社
国宝重要文化財等保存・活用事業費補助金、文化資源活用事業費補助金(観光拠点整備事業)
平成28、
30~
令和2
605,962 304,506 45,477 22,877
仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金相当額の報告及び返還を行っていなかったもの
(46)
日本郵船株式会社
国宝重要文化財等保存・活用事業費補助金、国宝重要文化財等防災施設整備費補助金、文化資源活用事業費補助金(観光拠点整備事業)
平成29~
令和2
377,501 198,869 32,694 17,265
(47)
兵庫県
電鉄商事株式会社
文化資源活用事業費補助金(文化財多言語解説整備事業)
2 31,900 24,882 2,900 2,262
(45)―(47)の計 1,015,364 528,257 81,071 42,404