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(6) 義務教育費国庫負担金が過大に交付されていたもの[文部科学本省、4県](48)―(52)


5件 不当と認める国庫補助金 90,349,755円

義務教育費国庫負担金(以下「負担金」という。)は、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)に基づき、義務教育について、義務教育無償の原則にのっとり、国が必要な経費を負担することによって教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的として、国が都道府県又は政令指定都市(以下「都道府県等」という。)に対して交付するものである。また、負担金により国が負担する経費は、公立の義務教育諸学校(小学校、中学校、義務教育学校及び中等教育学校の前期課程(以下、これらを合わせて「小中学校」という。)並びに特別支援学校の小学部及び中学部)に勤務する教職員の給与及び報酬等に要する経費となっており、その額は、都道府県等の実支出額と「義務教育費国庫負担法第二条ただし書及び第三条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費の国庫負担額の最高限度を定める政令」(平成16年政令第157号。以下「限度政令」という。)に基づいて都道府県等ごとに算定した額(以下「算定総額」という。)とのいずれか低い額の3分の1となっている。

算定総額は、限度政令に基づき、小中学校の教職員に係る基礎給料月額等に同教職員に係る算定基礎定数を乗ずるなどして得た額と、特別支援学校の小学部及び中学部の教職員に係る基礎給料月額等に同教職員に係る算定基礎定数を乗ずるなどして得た額とを合算して算定することとなっている(次式参照)。

算定総額 + 実支出額 いずれか低い額×1/3=負担金交付額 (小中学校教職員基礎給料月額+諸手当)×12 月×算定基礎定数 (特別支援学校教職員基礎給料月額+諸手当)×12 月×算定基礎定数

このうち、算定基礎定数は、都道府県等ごとに当該年度の5月1日現在において、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号。以下「標準法」という。)等に基づき、標準学級数(注1)等を基礎として教職員の定数(以下「標準定数」という。)を算定し、更に「女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律」(昭和30年法律第125号)により臨時的に任用される者(以下「産休代替教職員」という。)、「地方公務員の育児休業等に関する法律」(平成3年法律第110号)第6条第1項の規定により任期を定めて採用される者及び臨時的に任用される者(以下、これらを合わせて「育児休業代替教職員」という。)等の実数を加えるなどして算定することとなっている(次式参照)。

  • 標準定数等
  • 産休代替教職員、育児休業代替教職員等の実数
  • 育児休業者等の実数
  • 算定基礎定数

そして、算定基礎定数の算定に必要な標準学級数は、次のように算定することとなっている。

① 小学校に係る標準学級数は、児童の在籍しない学年の前後の学年(当該前後の学年に第1学年を含む場合を除く。以下同じ。)の児童数がいずれも8人以下である場合は、当該二つの学年の児童を1学級に編制して算定する。

② 学校教育法(昭和22年法律第26号)第81条に規定する小中学校の特別支援学級の標準学級数は、二つ以上の学年の児童生徒数の合計数が8人以下である場合は、当該複数学年の児童生徒を1学級に編制して算定する。

③ 特別支援学校に係る標準学級数は、重複障害学級(注2)に編制する二つ以上の学年の児童生徒数の合計数が3人以下である場合は、当該複数学年の児童生徒を1学級に編制して算定する。

また、小中学校の事務職員の標準定数は、4学級以上の小中学校の数の合計数に1を乗じて得た数等を合計した数となっているが、同一の設置者が設置する小学校及び中学校で4学級から6学級までの小学校及び4学級又は5学級の中学校が500mの範囲内に存する場合には1校とみなすこととなっている。

(注1)
標準学級数  標準法に規定する学級編制の標準により算定した学級数
(注2)
重複障害学級  文部科学大臣が定める障害を二つ以上併せ有する児童生徒で編制する学級

本院が、12都道県及び4市において会計実地検査を行い、また、6府県及び6市から負担金の交付に関する資料の提出を受けるなどして検査したところ、4県1市において、算定総額の算定に当たり、算定基礎定数の算定が過大となっていた。この結果、負担金計90,349,755円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、4県1市において、算定基礎定数の算定方法についての理解及び算定基礎定数の確認が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、態様別に示すと次のとおりである。なお、同一の県が複数の事態に該当している場合がある。

  • ア 標準学級数の算定に係る事態
    • (ア) 小中学校の標準学級数の算定において、児童の在籍しない学年の前後の学年の児童数がいずれも8人以下であるのに当該二つの学年の児童を1学級に編制しなかったり、特別支援学級に編制する二つ以上の学年の児童生徒数の合計数が8人以下であるのに当該複数学年の児童生徒を1学級に編制しなかったりして、標準学級数を1学級とすべきところを2学級に編制するなどして算定していた事態 1県1市
    • (イ) 特別支援学校の重複障害学級の標準学級数の算定において、重複障害学級に編制する二つ以上の学年の児童数の合計数が3人以下であるのに当該複数学年の児童を1学級に編制しておらず、標準学級数を1学級とすべきところを2学級に編制して算定していた事態 1県
  • イ 小中学校の産休代替教職員の実数の算定において、産休代替教職員を重複して算定していたり、育児休業代替教職員の実数の算定において、育児休業代替教職員に該当しない者を含めて算定していたりしていた事態 2県
  • ウ 小中学校の事務職員の標準定数の算定において、同一の設置者が設置する5学級の小学校と4学級の中学校とが500mの範囲内に存するのに1校とみなさずに2校として算定していた事態 1県

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例(ア(ア)の事態)

新潟市は、平成29年度から令和元年度までの間において、小中学校の教職員の算定基礎定数を平成29年度3,944人、30年度4,000人及び令和元年度3,969人とするなどとし、これらに基礎給料月額等を乗ずるなどして算定した算定総額が実支出額を下回ったことから、算定総額を基に平成29年度9,117,251,871円、30年度9,233,596,146円及び令和元年度9,175,822,487円の負担金の交付を受けていた。

しかし、同市は、上記算定基礎定数の算定に当たり、小中学校の標準学級数について、元年度2,199学級とすべきところ、児童の在籍しない学年の前後の学年の児童数がいずれも8人以下であるのに当該二つの学年の児童を1学級に編制していなかったため、2,200学級と算定していた。また、平成29年度2,189学級及び30年度2,216学級とすべきところ、特別支援学級に編制する二つ以上の学年の児童生徒数の合計数が8人以下であるのに当該複数学年の児童生徒を1学級に編制していなかったため、29年度2,191学級及び30年度2,223学級と算定していた。

したがって、適正な標準学級数により適正な算定基礎定数を算定すると29年度3,940人、30年度3,987人及び令和元年度3,968人となり、これらに基づき適正な負担金の額を算定すると平成29年度9,108,277,806円、30年度9,205,100,609円及び令和元年度9,173,584,272円となることから、平成29年度8,974,065円、30年度28,495,537円及び令和元年度2,238,215円が過大に交付されていた。

以上を部局等別に示すと次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
年度
算定総額
左に対する負担金交付額
不当と認める算定総額
不当と認める負担金交付額
摘要
        千円 千円 千円 千円  
(48)
文部科学本省
新潟市
平成29~
令和元
82,580,011 27,526,670 119,123 39,707
算定基礎定数の算定が過大となっていたもの(ア(ア)の事態)
(49)
山形県
山形県
29 47,651,532 15,883,844 11,472 3,824
同(イの事態)
(50)
新潟県
新潟県
29、30 137,085,521 45,695,173 102,723 34,241
同(ア(ア)の事態)
(51)
岐阜県
岐阜県
2 79,329,894 26,443,298 11,671 3,890
同(イ及びウの事態)
(52)
奈良県
奈良県
平成30、
令和元
97,195,357 32,398,180 26,058 8,686
同(ア(イ)の事態)
(48)―(52)の計 443,842,317 147,947,166 271,049 90,349