ページトップ
  • 令和3年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 役務

建設労働者雇用支援事業の委託費の算定に当たり、研修や講習の受講者数が正しく報告されていなかったため、委託費の支払額が過大となっていたもの[厚生労働本省](60)


会計名及び科目
労働保険特別会計(雇用勘定) (項)地域雇用機会創出等対策費
部局等
厚生労働本省
契約名
建設労働者雇用支援事業委託(令和元、2両年度)
契約の概要
建設業における「働きがい・働きやすさ」のある魅力ある職場の理解及び周知の推進とその担い手である雇用管理責任者の育成のための雇用管理研修等を実施するもの
契約の相手方
株式会社労働調査会
契約
平成31年4月、令和2年4月 一般競争契約
支払額
143,048,716円(令和元、2両年度)
過大となっていた支払額
30,623,594円(令和元、2両年度)

1 建設労働者雇用支援事業の概要

厚生労働本省(以下「本省」という。)は、建設業における「働きがい・働きやすさ」のある魅力ある職場の理解及び周知の推進とその担い手である雇用管理責任者の育成を目的として、毎年度、建設労働者雇用支援事業(以下「委託事業」という。)を委託して実施している。

委託事業は、雇用管理責任者が、労働者の募集、雇入れ、配置、退職等の雇用管理に必要な知識を習得することなどを目的とした研修等を実施するものである。このため、受託者は、①雇用管理研修(以下「研修」という。)の開催、②職業紹介責任者講習会及び雇用管理責任者講習(以下、これらを合わせて「講習」という。)の開催、③研修及び講習に係る事業の周知並びに受講者の募集、④受講者の管理等の業務を実施することとなっている。

委託契約書によれば、受託者は、委託事業が終了したときは、委託事業に係る実施結果報告書及び精算報告書を本省に提出することとされている。そして、本省は、受託者から精算報告書の提出を受けたときは、遅滞なくその内容を審査して、適正と認めたときは、契約金額と委託事業に要した額とを人件費、事業費等の経費区分ごとに比較して、いずれか低い額を合計することにより委託費の額を確定することとされている。

また、委託事業に係る仕様書によれば、研修や講習を受講した人数(以下「受講者数」という。)の合計が年間の目標値である7,000人を下回った場合には、次の式により算定した額を契約金額の経費区分ごとの額から減額することとされている。この場合の委託費の額は、減額後の契約金額と委託事業に要した額とを経費区分ごとに比較して、いずれか低い額を合計することにより確定することとされている(以下、契約金額の経費区分ごとの額から減額する額を合計した額を「減額の合計額」という。)。

  • 契約金額の経費区分ごとの額から減額する額
  • 7,000人-受講者数
    7,000人
  • ×
  • 契約金額の経費区分ごとの額

そして、本省は、総合評価落札方式による一般競争入札により、株式会社労働調査会(以下「会社」という。)との間で、平成31年4月及び令和2年4月に委託契約(元年度契約金額73,700,000円、2年度契約金額71,500,000円)をそれぞれ締結して、委託費として計143,048,716円(元年度71,548,716円、2年度71,500,000円)を2年4月及び3年4月に会社に支払っている。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、委託費が適正に算定されているかなどに着眼して、委託事業を対象として、本省及び会社において、委託契約書、実施結果報告書、精算報告書等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

検査したところ、本省は、会社から提出を受けた実施結果報告書に基づいて、元、2両年度の受講者数をそれぞれ6,903人、7,093人であるとして、元年度については7,000人と6,903人との差である97人に係る減額の合計額を1,021,313円とし、減額後の契約金額は72,678,687円であるとしていた。そして、この額と委託事業に要した額である77,671,223円とを経費区分ごとに比較することなどにより、委託費の額を71,548,716円として確定していた。また、2年度については、受講者数が7,000人以上であるとして契約金額の減額を行わず、契約金額71,500,000円と委託事業に要した額である74,665,305円とを経費区分ごとに比較することなどにより、委託費の額を71,500,000円として確定していた。

しかし、会社は、研修や講習の受講申込みがあった人数を受講者数として実施結果報告書を作成していたため、本省に提出した実施結果報告書に記載していた受講者数には、受講を事前にキャンセルした者や当日に欠席した者の人数が含まれており、これらの人数は元年度が計1,259人(注)、2年度が計1,904人となっていた。このため、これらの人数を除いた正しい受講者数は元年度が5,644人、2年度が5,189人となる。

(注)
令和元年度については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、2年3月に予定されていた8会場における研修が中止されたことから、本省と会社が協議を行って、中止に係る受講申込者数391人を受講者数に含める取扱いとされた。このため、受講を事前にキャンセルした者や当日に欠席した者に係る元年度の人数計1,259人に、上記の391人は含まれない。

そこで、上記の正しい受講者数に基づいて、元年度の契約金額を算定すると、当初の契約金額73,700,000円から7,000人と5,644人との差である1,356人に係る減額の合計額14,277,324円を減じた59,422,676円となる。この額と委託事業に要した額である77,671,223円とを経費区分ごとに比較することなどにより適正な委託費の額を算定すると59,422,676円となり、委託費の支払額との差額12,126,040円が過大に支払われていた。また、同様に、2年度の契約金額を算定すると、当初の契約金額71,500,000円から7,000人と5,189人との差である1,811人に係る減額の合計額18,497,554円を減じた53,002,446円となる。この額と委託事業に要した額である74,665,305円とを経費区分ごとに比較することなどにより適正な委託費の額を算定すると53,002,446円となり、委託費の支払額との差額18,497,554円が過大に支払われていた。

したがって、元、2両年度で計30,623,594円の委託費が過大に支払われていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、会社において実施結果報告書の提出に当たり受講者数の確認が十分でなかったこと、本省において委託費の支払に当たり実施結果報告書の受講者数の確認が十分でなかったことなどによると認められる。