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  • 令和3年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第8 厚生労働省|
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就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コース事業の委託費の算定に当たり、委託事業に従事していない日数を委託事業の従事日数に含めてキャリアコンサルタントの人件費相当額を算定するなどしていたため、委託費の支払額が過大となっていたもの[厚生労働本省](61)


会計名及び科目
労働保険特別会計(雇用勘定) (項)職業能力開発強化費
部局等
厚生労働本省
契約名
就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コース事業委託(令和2年度~4年度)
契約の概要
就職氷河期世代の求職者等に対してキャリアコンサルティング、訓練の対象とする職種に係る職業訓練等の業務を実施するもの
契約の相手方
公益社団法人全日本トラック協会
契約
令和2年6月 随意契約
支払額
173,061,374円(令和2年度)
過大となっていた支払額
7,309,500円

1 就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コース事業の概要

厚生労働本省(以下「本省」という。)は、おおむね平成5年から16年までの間に学校卒業期を迎え、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った就職氷河期世代の求職者及び非正規雇用労働者(以下「求職者等」という。)の安定的な就労の促進を図ることを目的として、就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コース事業(以下「委託事業」という。)について、資格等を習得する者の就職先となる企業を傘下に有する各業界団体等に委託して実施している。

委託事業は、求職者等に対して短期間での資格取得と職場実習等を組み合わせた「出口一体型」のプログラムを実施するものである。このため、受託者は、①職業訓練を受講する求職者等の募集、②求職者等に対して訓練受講に係る心構えなどの意識付けを行うキャリアコンサルティング、③訓練の対象とする職種に係る基礎的かつ実践的な技能及びこれに関する知識を習得するための職業訓練、④職業訓練を終えた求職者等の就職支援等の業務を実施することとなっている。

本省は、企画競争を実施して、令和2年3月に、トラック運転手になるための運転免許取得の支援等を事業内容とする提案を行った公益社団法人全日本トラック協会(以下「協会」という。)を契約相手方として選定した。その後、本省は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を踏まえて、委託事業の実現可能性を精査する必要が生じたとして、精査を行った後の同年6月29日に、同日から5年3月31日までを委託期間とする随意契約(委託契約に規定する委託費の限度額925,268,409円(そのうち2年度に係る分268,961,959円))を締結している。

上記の委託契約によれば、本省は、上記の委託契約に定められた限度額の範囲内で、委託事業の実施に要する経費を委託費として協会に交付することとされている。また、協会は、国の会計年度が終了したとき又は委託事業が終了したときは、精算報告書を本省に提出することとされており、本省は、協会から精算報告書の提出を受けたときは、遅滞なくその内容を審査して、適正と認めたときは、委託事業の実施に要した額と会計年度ごとに定められた委託費の限度額のいずれか低い額を委託費の額として確定することとされている。

そして、本省が2年3月及び5月に協会等に対して発出した委託費の取扱い等に係る事務連絡等によれば、契約締結日以降に発生した経費が委託費の対象になるとされていることから、前記の委託契約については、契約締結日である同年6月29日以降に発生した経費が委託費の対象になることとされている。

本省は、2年度の委託費について、2年9月、同年12月及び3年2月の3回にわたり計268,961,959円を概算払により支払って、同年4月に提出を受けた精算報告書を審査して、同年7月に委託費の額を精算報告書の額と同額の173,061,374円と確定して、同年8月にこの額と概算払した額との差額95,900,585円を協会から返還させている。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、委託費が適正に算定されているかなどに着眼して、協会に委託した2年度の委託事業(以下「本件委託事業」という。)を対象として、本省及び協会において、委託契約書、精算報告書等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

検査したところ、協会は、本件委託事業の一部について、本省の承認を得た上で1法人に再委託していた。再委託した業務は、前記の各業務のうち、①職業訓練を受講する求職者等の募集、②キャリアコンサルティング等であり、再委託先は、これらの業務に運営責任者1名、キャリアコンサルタント2名及び事務担当者2名の計5名を従事させていた。

再委託先は、上記5名のうちキャリアコンサルタント1名について、本件委託事業に132日間従事したとして、これに係る人件費相当額3,960,000円を協会に請求して、協会は同額を精算報告書に計上していた。しかし、当該キャリアコンサルタントが実際に本件委託事業に従事した日数は18日間にすぎず、残りの114日間については、他の事業に従事するなどしていて、本件委託事業に従事していなかった。このため、当該キャリアコンサルタントに係る人件費相当額として精算報告書に計上されていた3,960,000円のうち、本件委託事業に従事していなかった日数に係る人件費相当額3,420,000円が過大に計上されていた。

また、再委託先は、前記5名のうち運営責任者1名及び事務担当者1名について、本件委託事業に延べ483日間(運営責任者241日間及び事務担当者242日間)従事したとして、両名に係る人件費相当額計13,275,000円を協会に請求して、協会は同額を精算報告書に計上していた。しかし、両名が本件委託事業に従事したとしていた上記の日数には、本省が協会との間で締結した委託契約の契約締結日である2年6月29日より前の同年4月3日から6月26日までの延べ114日間(運営責任者及び事務担当者それぞれ57日間)が含まれていた。このため、両名に係る人件費相当額として精算報告書に計上されていた13,275,000円のうち、契約締結日より前の日数に係る人件費相当額3,135,000円が過大に計上されていた。

このほか、再委託先が誤って協会に請求した人件費相当額90,000円が精算報告書に過大に計上されていた。

したがって、前記の5名が契約締結日以降に実際に本件委託事業に従事した日数に基づくなどして適正な委託費の額を算定すると165,751,874円となり、前記委託費の確定額173,061,374円との差額7,309,500円が過大に支払われていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、協会において再委託先からの請求に対する確認が十分でなかったこと及び委託費の対象となる経費に対する理解が十分でなかったこと、本省において精算報告書に対する審査が十分でなかったことによると認められる。