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雇用保険の人材開発支援助成金の支給が適正でなかったもの[厚生労働本省、4労働局](62)


会計名及び科目
労働保険特別会計(雇用勘定) (項)地域雇用機会創出等対策費
部局等
厚生労働本省(支給庁)
4労働局(支給決定庁)
支給の相手方
5事業主
人材開発支援助成金の支給額の合計
10,681,400円(令和元、3両年度)
不当と認める支給額
10,681,400円(令和元、3両年度)

1 保険給付の概要

(1) 人材開発支援助成金

人材開発支援助成金(平成29年3月以前に訓練実施計画届の提出があった場合はキャリア形成促進助成金。以下「助成金」という。)は、雇用保険で行う事業である能力開発事業の一環として、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等に基づき、職業訓練又は教育訓練を実施するなど職業能力開発に係る支援を実施した事業主に対して、国が経費等を助成するものである。助成金の対象となる取組には、特別育成訓練コース、キャリア形成支援制度導入コース等がある。

(2) 助成金の支給

助成金の対象となる取組のうち、特別育成訓練コースに係る助成金の支給を受けようとする事業主は、実施する職業訓練の内容等が記載された訓練計画届を管轄の都道府県労働局(以下「労働局」という。)に提出して受給資格の認定を受けるとともに、訓練開始日から起算して1か月前までに、訓練計画届、訓練対象者の雇用契約書、職業訓練の実施内容等を確認するための書類等を労働局に提出して、その内容の確認を受けることとなっている。

そして、特別育成訓練コースの支給要件は、事業主が、①受給資格認定に係る訓練計画に基づき職業訓練を実施すること、②職業訓練に要した経費を全て負担していること、③職業訓練に要した経費の負担の状況を明らかにする書類を整備していることなどとなっている。

助成金の支給を受けようとする事業主は、特別育成訓練コースについては、訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に、支給申請書に職業訓練の実施内容等を記載した実施状況報告書、事業主が職業訓練に要した経費を全て負担していることを明らかにするための領収書等の関係書類を添えて、労働局に提出することとなっている。

支給申請書等の提出を受けた労働局は、関係書類等に基づいて、事業主やその申請内容が助成金の支給要件を満たしているかなどについて審査をした上で支給決定を行い、これに基づいて厚生労働本省は、助成金の支給を行うこととなっている。

また、労働局は、偽りその他不正の行為により本来受けることのできない支給を受けようとした事業主に対して不支給とすること、偽りその他不正の行為により本来受けることのできない支給を受けた事業主に対して、支給した助成金の全部又は一部の支給決定を取り消して返還の手続を行うことなどとなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、事業主に対する助成金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、30年度から令和3年度までの間に助成金の支給を受けた事業主から44事業主を選定して、助成金の支給の適否について、厚生労働本省及び5労働局(注1)において会計実地検査を行うとともに、11労働局(注2)に対して調査及び報告を行うように求めて、その結果を確認するなどして検査した。

検査に当たっては、事業主から提出された支給申請書等の書類により会計実地検査を行うとともに、労働局から提出された支給データの内容を確認することなどにより検査して、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該労働局に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(注1)
5労働局  千葉、石川、愛知、京都、福岡各労働局
(注2)
11労働局  北海道、千葉、神奈川、石川、愛知、京都、兵庫、岡山、香川、福岡、宮崎各労働局

(2) 検査の結果

検査の結果、4労働局管内において元、3両年度に助成金の支給を受けた5事業主は、特別育成訓練コースにおいて、訓練計画に基づく職業訓練を実施していないのに実施したと偽ったり、職業訓練に要した経費を支払っていないのに支払ったと偽ったりするなどして助成金の支給を申請していた。このため、これらの5事業主に対する助成金の支給額計10,681,400円全額が支給の要件を満たしていなかったもので支給が適正でなく、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主が誠実でなかったため、支給申請書等の記載内容が事実と相違していたにもかかわらず、上記の4労働局において、これに対する審査が十分に行われないまま支給決定を行っていたことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

兵庫労働局は、事業主Aから、平成30年8月に、特別育成訓練コースに係る訓練計画届の提出を受けて、助成金の受給資格を認定していた。そして、事業主Aから、同年9月から31年2月までの間に受講者3人に対して受給資格認定に係る訓練計画に基づく職業訓練を実施したとして、同年4月に支給申請書及び職業訓練に要した経費に係る領収書等の添付書類の提出を受けて、これらの書類に基づき、令和3年4月に特別育成訓練コースに係る助成金計2,674,600円の支給決定を行い、この支給決定に基づき、厚生労働本省は同月に同額を事業主Aに支給した。

しかし、事業主Aは、職業訓練に要した経費を訓練実施機関に支払った事実がないにもかかわらず、訓練実施機関が職業訓練に要した経費を事業主Aから受領したとする虚偽の領収書を支給申請書に添付するなどして同労働局に提出していたことから、特別育成訓練コースに係る助成金2,674,600円の全額が支給の要件を満たしていなかった。

なお、これらの適正でなかった支給額については、本院の指摘により、全て返還の処置が執られた。

これらの適正でなかった支給額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名
本院の調査に係る事業主数
不適正受給事業主数
左の事業主に支給した助成金
左のうち不当と認める助成金
      千円 千円
北海道
1 1 950 950
愛知
13 1 646 646
兵庫
13 1 2,674 2,674
福岡
3 2 6,410 6,410
30 5 10,681 10,681