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  • 令和3年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
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  • 補助金

(1) 医療施設運営費等補助金(感染症指定医療機関運営事業に係る分)が過大に交付されていたもの[奈良県](66)(67)


2件 不当と認める国庫補助金 5,775,000円

医療施設運営費等補助金(感染症指定医療機関運営事業に係る分)(以下「運営費等補助金」という。)は、「医療施設運営費等補助金及び中毒情報基盤整備事業費補助金の国庫補助について」(平成23年厚生労働省発医政0331第31号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、感染症患者に対する良質かつ適切な医療の提供を図ることを目的として、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)に規定する感染症指定医療機関の運営に要する経費の一部を国が補助するものである。

交付要綱によれば、運営費等補助金の交付対象となる事業は、感染症法の規定により都道府県知事の指定を受けた設置者が行う第一種感染症指定医療機関(注1)又は第二種感染症指定医療機関(注2)の運営事業(以下「感染症事業」という。)に対して都道府県が補助する事業等とされている。そして、運営費等補助金の交付額は、感染症患者を隔離して入院治療するのに必要な設備・構造を有する専用の病室に設置された病床(以下「感染症病床」という。)の数等を基に算定されることとなっている。

都道府県は、交付要綱、都道府県が定めた要綱等に基づき、感染症事業を行う事業主体に対して、運営費等補助金を原資とした都道府県の補助金(以下「県補助金」という。)を交付している。

そして、都道府県は、事業主体から実績報告書等の提出を受けたときは、これらの内容を審査して取りまとめの上、厚生労働大臣に提出することとなっている。

(注1)
第一種感染症指定医療機関  エボラ出血熱等の一類感染症、急性灰白髄炎等の二類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関として都道府県知事が指定した病院
(注2)
第二種感染症指定医療機関  二類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関として都道府県知事が指定した病院

一方、令和2年4月以降、厚生労働省は、「令和2年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の交付について」(令和2年厚生労働省発医政0430第1号・厚生労働省発健0430第5号)に基づき、新型コロナウイルス感染症への対応として緊急に必要となる感染拡大防止や医療提供体制の整備等について、都道府県の取組を包括的に支援することを目的として、新型コロナウイルス感染症患者等を入院させるための病床を確保する事業(以下「病床確保事業」という。)等を実施する都道府県に対して、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(以下「交付金」という。)を交付している。そして、都道府県は、病床を確保した医療機関等に対して病床確保を行っている期間に応じて、交付金を原資とした補助金を交付するなどしている。

厚生労働省の事務連絡によれば、感染症指定医療機関の感染症病床については、病床確保事業による病床確保の対象となるとされていることから、感染症病床が感染症事業と病床確保事業の二つの事業で重複して対象となる可能性がある。このため、感染症病床については、病床確保事業により病床確保を行っている期間は運営費等補助金の交付対象とはならないこととなっており、運営費等補助金の補助対象事業費は、病床確保事業の対象とした期間を差し引いた期間に基づいて算定することとなっている。

本院が、5府県(注3)の8事業主体において会計実地検査を行ったところ、1県の2事業主体において、感染症病床について病床確保事業により病床確保を行っていて、交付金を原資とした補助金の交付を受けているにもかかわらず、病床確保事業の対象とした期間を差し引かずに運営費等補助金の補助対象事業費を算定していた。この結果、運営費等補助金の補助対象事業費が計11,550,000円過大に算定されており、これに係る運営費等補助金計5,775,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、2事業主体において制度の理解が十分でなかったこと、奈良県において実績報告書等の審査が十分でなかったこと、厚生労働省において同県に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

(注3)
5府県  大阪府、愛知、奈良、高知、福岡各県

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

奈良県は、同県が定めた要綱等に基づき、公立大学法人奈良県立医科大学に対して、同法人が設置する奈良県立医科大学附属病院が令和2年度の2年4月1日から3年3月31日までの全期間において、感染症事業を感染症病床9床で実施したとして、県補助金9,997,000円を交付していた。そして、同県は、同法人に係る運営費等補助金の補助対象事業費を9,997,000円と算定して、運営費等補助金4,998,000円の交付を受けていた。

しかし、同病院が実施した感染症事業の感染症病床9床については、2年4月1日から同年12月7日までの期間は、上記感染症病床9床の全てにおいて、また、同年12月8日から3年3月31日までの期間は、上記感染症病床9床のうちの7床において、それぞれ、病床確保事業により病床確保を行っていて、交付金を原資とした補助金の交付を受けていたことから、これらの期間は運営費等補助金の交付対象とならないものであった。

したがって、同病院が実施した感染症事業について、病床確保事業の対象とした期間を差し引いて、適正な運営費等補助金の補助対象事業費を算定すると1,873,000円となり、前記の補助対象事業費9,997,000円との差額8,124,000円が過大に算定されており、これに係る運営費等補助金4,062,000円が過大に交付されていた。

以上を事業主体別に示すと次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
間接補助事業者
(事業主体)
年度
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金交付額
不当と認める国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金交付額
摘要
          千円 千円 千円 千円  
(66)
奈良県
奈良県
公立大学法人奈良県立医科大学
2 9,997 4,998 8,124 4,062
病床確保事業の対象とした期間を差し引かずに補助対象事業費を算定していたもの
(67)
地方独立行政法人奈良県立病院機構
2 3,426 1,713 3,426 1,713
(66)(67)の計 13,423 6,711 11,550 5,775