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(7) 生活扶助費等負担金等が過大に交付されていたもの[19都道府県](136)―(181)


46件 不当と認める国庫補助金 308,727,203円

生活扶助費等負担金、医療扶助費等負担金及び介護扶助費等負担金(平成25年度以前はこれらを合わせて生活保護費等負担金。以下「負担金」という。)は、生活保護法(昭和25年法律第144号)等に基づき、都道府県、市(特別区を含む。)又は福祉事務所を設置する町村(以下、これらを合わせて「事業主体」という。)が、生活に困窮する者に対して、最低限度の生活を保障するために、その困窮の程度に応じて必要な保護に要する費用(以下「保護費」という。)等を支弁する場合に、その一部を国が負担するものである。保護は、原則として世帯を単位としてその要否及び程度を定めることとなっている。そして、保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産や能力その他あらゆるものを活用することを要件としており、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)、国民年金法(昭和34年法律第141号)等の生活保護法以外の他の法律又は制度による保障、援助等を受けることができる者等については極力その利用に努めさせることとなっている。

また、事業主体は、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず保護を受けた者から事業主体の定める額を返還させたり、不実の申請等により保護を受けるなどした者からその費用の額の全部又は一部を徴収したりすることなどができることとなっている(以下、これらの返還させ、又は徴収する金銭を「返還金等」という。)。

生活扶助等に係る保護費は、原則として保護を受ける世帯(以下「被保護世帯」という。)を単位として、保護を必要とする状態にある者の年齢、世帯構成、所在地域等の別により算定される基準生活費に、健康状態等による個人又は世帯の特別の需要のある者に対する各種加算の額を加えるなどして算定される最低生活費から、当該世帯における就労収入、年金の受給額等を基に収入として認定される額を控除するなどして決定されることとなっている。また、各種加算のうち障害者加算は、国民年金法施行令(昭和34年政令第184号)に定める障害等級の1級の障害を有する者等を対象として、障害を有することによって生ずる特別な需要に対応するもので、障害の区分等に対応した加算額が認定されることとなっている。

負担金のうち保護費に係る交付額は、「生活保護費等の国庫負担について」(平成26年厚生労働省発社援0324第2号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、次のとおり算定することとなっている。

  • 費用の額
  • 返還金等の調定額
  • 不納欠損額
  • 国庫負担対象事業費
  • 国庫負担対象事業費
  • ×
  • 国庫負担率(3/4)
  • 負担金の交付額

この費用の額及び返還金等の調定額は、それぞれ次のとおり算定することとなっている。

ア 費用の額は、次の①及び②の合計額とする。

  • ① 生活扶助等に係る保護費の額
  • ② 被保護者が医療機関で診察、治療等の診療を受けるなどの場合の費用について、その範囲内で決定された医療扶助及び介護扶助に係る保護費の額

イ 返還金等の調定額は、事業主体が被保護者等からの返還金等を地方自治法(昭和22年法律第67号)に基づき調定した額とする。

本院が、25都道県の121事業主体において会計実地検査を行うとともに、18都道府県の57事業主体(注)から関係書類の提出を受けるなどして検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

(注)
18都道府県の57事業主体のうち4道県の4事業主体は、会計実地検査を行った25都道県の121事業主体のうち4道県の4事業主体と重複している。

すなわち、4道県の6事業主体において、返還金等の調定額の算出に当たり、地方自治法等に基づく調定を行っていたにもかかわらず、本来計上すべき調定した額を返還金等の調定額として計上していなかったことなどから、負担金の算定が適切でなかった。また、17都道府県の40事業主体において、生活扶助等に係る保護費の額の算出に当たり、被保護世帯の世帯主等に年金受給権が発生していたにもかかわらず裁定請求手続が行われていなかったことから、当該世帯主等が年金を受給しておらず年金が収入として認定されていなかったり、誤って障害者加算の対象となる障害を有しない者に障害者加算を認定したりなどしていた。このため、負担金計308,727,203円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主体において、負担金の算定に当たり、交付要綱に基づく返還金等の調定額の対象等について理解が十分でなかったこと、保護費の支給決定に当たり、被保護者の年金受給権に係る調査及び裁定請求手続に係る指導が十分でなかったり、障害者加算の対象とすべき障害の認定に係る確認が十分でなかったりしたこと、都道府県において、事業実績報告書の審査、適正な生活保護の実施に関する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

札幌市は、返還金等のうち誤払い又は過渡しとなった保護費(以下「誤払等保護費」という。)の返納について、当該支出した経費に戻入することとした場合は、地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)及び同施行令に基づき同市が定めた札幌市会計規則(昭和39年札幌市規則第18号)に基づき、戻入の決定を行うこととしている。また、出納閉鎖期日までに返納されていない金額については、出納閉鎖期日の翌日に調定を行うこととしている。

そして、同市は、戻入することとした誤払等保護費のうち、出納閉鎖期日までに返納されていない金額について、出納閉鎖期日の翌日に調定を行っていたものの、事業実績報告書の提出に当たり、当該調定による額は返還金等の調定額には含まれないと誤認し、本来計上すべきこの調定した額を計上せずに返還金等の調定額を算出していた。

この結果、平成29年度から令和2年度までにおいて、返還金等の調定額が計130,037,977円過小となっていて費用の額から控除されていなかったため、同額の国庫負担対象事業費が過大に算定されており、これに係る生活扶助費等負担金計97,528,482円が過大に交付されていた。

以上を部局等別・事業主体別に示すと、次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
年度
国庫負担対象事業費
左に対する国庫負担金交付額
不当と認める国庫負担対象事業費
不当と認める国庫負担金交付額
摘要
        千円 千円 千円 千円  
(136)
北海道
北海道
平成28~令和3
19,478 14,609 1,996 1,497
障害者加算の認定を誤っていたものなど
(137)
札幌市
平成29~令和2
243,942,383 182,962,357 130,037 97,528
返還金等の調定額の算出が適切でなかったもの
(138)
函館市
平成28~令和3
22,482 16,861 1,613 1,209
障害者加算の認定を誤っていたものなど
(139)
旭川市
平成28~令和3
49,365 37,024 4,129 3,096
(140)
宮城県
宮城県
平成30~令和2
12,911 9,683 3,096 2,322
年金収入を認定していなかったもの
(141)
石巻市
平成28~令和3
45,317 33,988 1,957 1,467
障害者加算の認定を誤っていたもの
(142)
茨城県
水戸市
平成28~令和3
20,226 15,169 6,685 5,014
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(143)
日立市
平成29~令和3
20,156 15,117 4,291 3,218
(144)
栃木県
宇都宮市
平成29~令和2
53,721,425 40,292,672 8,035 6,026
返還金等の調定額の算出が適切でなかったもの
(145)
栃木市
平成28~令和2
4,967,163 3,725,372 14,309 10,732
(146)
小山市
平成29~令和2
4,385,764 3,289,822 7,420 5,565
費用の額の算出が適切でなかったものなど
(147)
群馬県
前橋市
平成28~令和3
14,275 10,706 1,889 1,417
障害者加算の認定を誤っていたもの
(148)
伊勢崎市
平成28~令和3
26,714 20,035 10,385 7,789
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(149)
太田市
平成28~令和3
25,427 19,070 7,197 5,398
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(150)
千葉県
野田市
平成27~令和2
25,307 18,980 4,160 3,120
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(151)
習志野市
平成27~令和2
17,882 13,412 1,349 1,012
障害者加算の認定を誤っていたもの
(152)
柏市
平成27~令和2
160,264 120,198 9,992 7,494
(153)
市原市
平成28~令和2
56,620 42,465 6,523 4,892
手当収入を認定していなかったもの
(154)
東京都
杉並区
平成28~令和2
8,975 6,731 4,159 3,119
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(155)
板橋区
平成27~令和2
56,001 42,001 15,706 11,779
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(156)
青梅市
平成27~令和2
27,720 20,790 7,468 5,601
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(157)
調布市
平成27~令和3
18,798 14,098 8,841 6,631
(158) 神奈川県
神奈川県
平成28~令和3
16,459 12,344 4,291 3,218
(159)
横浜市
平成29~令和3
51,203 38,402 5,905 4,429
障害者加算の認定を誤っていたものなど
(160)
小田原市
平成28~令和元
10,696,539 8,022,404 35,714 26,785
返還金等の調定額の算出が適切でなかったもの
(161)
新潟県
新潟市
平成29~令和3
21,476 16,107 1,624 1,218
障害者加算の認定を誤っていたものなど
(162)
上越市
27~30
18,894 14,170 3,070 2,302
(163)
岐阜県
岐阜県
元~3
9,594 7,195 2,484 1,863
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(164)
各務原市
平成28~令和3
30,397 22,798 10,230 7,673
(165)
愛知県
名古屋市
平成28~令和3
78,483 58,862 6,177 4,632
障害者加算の認定を誤っていたものなど
(166)
京都府
京都市
平成27~令和3
86,136 64,602 8,323 6,242
(167)
福知山市
平成28~令和3
12,062 9,046 1,877 1,408
(168)
京田辺市
平成28~令和3
32,426 24,320 2,709 2,032
障害者加算の認定を誤っていたもの
(169)
大阪府
吹田市
平成28~令和3
22,872 17,154 3,098 2,323
手当収入を認定していなかったものなど
(170)
和泉市
平成28~令和3
31,264 23,448 3,036 2,277
手当収入を認定していなかったもの
(171)
兵庫県
神戸市
平成27~令和4
93,402 70,051 7,630 5,722
障害者加算の認定を誤っていたものなど
(172)
尼崎市
平成28~令和2
21,998 16,499 2,592 1,944
手当収入を認定していなかったもの
(173)
伊丹市
平成28~令和2
43,559 32,669 1,581 1,185
障害者加算の認定を誤っていたもの
(174)
岡山県
岡山市
25~29
46,110 34,583 2,742 2,056
(175)
福岡県
田川市
平成30~令和2
13,170,328 9,877,746 24,451 18,338
返還金等の調定額の算出が適切でなかったもの
(176)
宮崎県
日向市
平成27~令和2
18,589 13,942 2,245 1,683
障害者加算の認定を誤っていたもの
(177)
鹿児島県
鹿児島県
平成26~令和2
54,832 41,124 2,934 2,201
障害者加算の認定を誤っていたものなど
(178)
奄美市
平成27~令和3
64,078 48,058 8,609 6,456
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(179)
沖縄県
沖縄県
平成28~令和2
36,070 27,052 1,642 1,231
障害者加算の認定を誤っていたものなど
(180)
浦添市
平成28~令和3
47,312 35,484 3,630 2,722
(181)
うるま市
平成28~令和2
38,747 29,060 3,783 2,837
障害者加算の認定を誤っていたもの
(136)―(181)の計 332,387,507 249,298,303 411,636 308,727