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(10) 介護保険の財政調整交付金が過大に交付されていたもの[4道県](187)―(195)


9件 不当と認める国庫補助金 52,477,000円

介護保険(前掲「介護給付費負担金が過大に交付されていたもの」参照)については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、財政調整交付金が交付されている。財政調整交付金は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が行う介護保険財政が安定的に運営され、もって介護保険制度の円滑な施行に資することを目的として、各市町村における介護給付等に要する費用の総額の5%に相当する額を国が負担して、これを市町村並びに市町村の事務の一部を処理するために設けられた一部事務組合及び広域連合(以下「市町村等」という。)に交付するもので、普通調整交付金と特別調整交付金とがある。

普通調整交付金は、市町村間で、市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者(以下「第1号被保険者」という。)の総数に占める75歳以上の者(以下「後期高齢者」という。)の割合(以下「後期高齢者加入割合」という。)及び標準的な所得段階の区分(第1段階から第9段階まで)ごとの第1号被保険者の分布状況(以下「所得段階別加入割合」という。)に格差があることによって生ずる介護保険財政の不均衡を是正するために交付するものである。また、特別調整交付金は、災害その他特別の事情がある市町村等に交付するものであり、被災するなどした被保険者に係る保険料の減免額等を交付の対象とするものである。

財政調整交付金の交付額は、普通調整交付金の額と特別調整交付金の額とを合算した額となっており、このうち普通調整交付金の額は、「介護保険の調整交付金等の交付額の算定に関する省令」(平成12年厚生省令第26号)等に基づき、次により算定することとなっている。

  • 調整基準標準給付費額
  • ×
  • 市町村ごとの
    普通調整交付金交付割合
  • ×
  • 調整率
  • 普通調整交付金の額
(注1)
調整率  当該年度に交付する普通調整交付金の総額と市町村ごとに算定した普通調整交付金の総額とのかい離を調整する割合

上記のうち、調整基準標準給付費額及び普通調整交付金交付割合については、次のとおりとなっている。

ア 調整基準標準給付費額は、当該市町村において給付に要した費用の額等に基づき、次のとおり算出することとなっている。

(注2)
介護給付に要した費用  前年度の1月から当該年度の12月までにおいて、国民健康保険団体連合会が審査決定した居宅介護サービス費、施設介護サービス費等及び市町村が支払決定した高額介護サービス費等の支給に要した費用
(注3)
予防給付に要した費用  前年度の1月から当該年度の12月までにおいて、国民健康保険団体連合会が審査決定するなどした介護予防サービス費等の支給に要した費用
(注4)
収入額  前年度の12月から当該年度の11月までの間における損害賠償金等の収入額

イ 普通調整交付金交付割合は、後期高齢者加入割合補正係数と所得段階別加入割合補正係数を用いるなどして算出した割合である。このうち、後期高齢者加入割合補正係数は、当該市町村において、介護保険事業状況報告(月報)により報告することとなっている前年度の1月報告分(12月末の人数)から当該年度の12月報告分(11月末の人数)までの後期高齢者の人数の累計を基に算出される第1号被保険者の総数に占める85歳以上の後期高齢者の割合(以下「85歳以上後期高齢者加入割合」という。)及び第1号被保険者の総数に占める75歳以上85歳未満の後期高齢者の割合(以下「85歳未満後期高齢者加入割合」という。)を、国から示される全ての市町村における85歳以上後期高齢者加入割合及び85歳未満後期高齢者加入割合とそれぞれ比較するなどして算出した係数である(注5)。また、所得段階別加入割合補正係数は、当該市町村において、毎年4月1日(保険料の賦課期日)における標準的な所得段階の区分ごとの第1号被保険者の人数を基に算出される所得段階別加入割合を、国から示される全ての市町村における所得段階別加入割合と比較するなどして算出した係数である。

(注5)
平成29年度までは、前年度の1月報告分(12月末の人数)から当該年度の12月報告分(11月末の人数)までの後期高齢者の人数の累計を基に算出される後期高齢者加入割合を、国から示される全ての市町村における後期高齢者加入割合と比較するなどして係数を算出することとなっていた。

財政調整交付金の交付を受けようとする市町村等は、都道府県に交付申請書及び事業実績報告書を提出して、これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査した上でこれを厚生労働省に提出して、同省は、これに基づき交付決定及び交付額の確定を行うこととなっている。

本院は、平成28年度から令和3年度までの間に交付された財政調整交付金について、18都道府県の98市区町、3一部事務組合及び1広域連合において会計実地検査を行うとともに、5道県の31市町村及び1広域連合については、事業実績報告書等の関係資料の提出を受けるなどして検査した。その結果、4道県の9市町村において、調整基準標準給付費額の算出を誤ったり、所得段階別加入割合補正係数又は後期高齢者加入割合補正係数の算出を誤ったりして、普通調整交付金の額を過大に算定していたため、財政調整交付金交付額計4,633,627,000円のうち計52,477,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、9市町村において財政調整交付金の交付額の算定に当たり、制度の理解が十分でなかったり、確認が十分でなかったりしていたこと、4道県において事業実績報告書の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例1

千葉県市川市は、令和2年度の普通調整交付金の額の算定に当たり、2年1月分から12月分までの高額介護サービス費を誤って二重に計上するなどして調整基準標準給付費額を算出していた。

そこで、適正な調整基準標準給付費額に基づき普通調整交付金の額を算定したところ、18,627,000円が過大に交付されていた。

事例2

千葉県我孫子市は、令和元、2両年度の普通調整交付金の額の算定に当たり、普通調整交付金交付割合の算出に用いる後期高齢者加入割合補正係数について、前年度の1月報告分(12月末の人数)から当該年度の12月報告分(11月末の人数)までの後期高齢者の人数の累計を基にすべきところ、累計すべき期間を誤認して、前年度の2月報告分(1月末の人数)から当該年度の1月報告分(12月末の人数)までの後期高齢者の人数の累計を基にした結果、実際より多い人数を集計しており、これに基づき85歳以上後期高齢者加入割合及び85歳未満後期高齢者加入割合を算出するなどしていた。

そこで、適正な後期高齢者加入割合補正係数により算出した普通調整交付金交付割合等に基づき普通調整交付金の額を算定したところ、計10,848,000円が過大に交付されていた。

以上を部局等別・事業主体別に示すと、次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
年度
交付金交付額
左のうち不当と認める額
摘要
        千円 千円  
(187)
北海道
士別市
平成28~令和2
914,734 8,295
所得段階別加入割合補正係数の算出を誤っていたものなど
(188)
網走郡大空町
44,248 1,213
調整基準標準給付費額の算出を誤っていたもの
(189)
茨城県
常陸大宮市 373,811 5,886
所得段階別加入割合補正係数の算出を誤っていたものなど
(190)
千葉県
市川市
2 758,363 18,627
調整基準標準給付費額の算出を誤っていたもの
(191)
船橋市
1,292,094 1,153
(192)
市原市
2 391,711 2,381
(193)
我孫子市
元、2
553,549 10,848
後期高齢者加入割合補正係数の算出を誤っていたものなど
(194)
長生郡長生村
元、2
107,464 2,223
調整基準標準給付費額の算出を誤っていたもの
(195)
福井県
小浜市
2 197,653 1,851
所得段階別加入割合補正係数の算出を誤っていたもの
(187)―(195)の計 4,633,627 52,477