ページトップ
  • 令和3年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 農林水産省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(5) 国営更新事業に係る附帯施設の機能保全計画の策定状況等を把握するために把握様式を変更等したり、これに基づき農政局等に対して機能保全計画の策定状況等を把握することなどを周知徹底したり、都道府県等に対して機能保全計画を策定することの目的等を周知徹底したりすることにより、国が負担する附帯施設の対策工事に要する費用を抑制するとともに、国営更新施設と附帯施設とが一体となって機能して国営更新事業の効果が十分発揮されるよう改善の処置を要求したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)農林水産本省
(項)農業生産基盤整備事業費(平成23年度から27年度までは(項)農業生産基盤保全管理・整備事業費、20年度から22年度までは(項)農業生産基盤整備・保全事業費) 等
食料安定供給特別会計(国営土地改良事業勘定)(平成19年度以前は、国営土地改良事業特別会計)
(項)土地改良事業費 等
東日本大震災復興特別会計
(組織)農林水産本省
(項)東日本大震災復興事業費 等
部局等
農林水産本省、9農政局等
国営更新事業の概要
国営事業により造成された既存の農業水利施設の更新等を行う事業
附帯施設の概要
国営更新施設と田畑とを接続するために都道府県等が土地改良事業により造成した用排水路等の施設
検査の対象とした国営更新事業の地区数及び支出済額
86地区 6412億7738万余円(平成15年度~令和2年度)
基幹的な附帯施設のうち機能保全計画が策定されていなかった施設に係る国営更新事業の地区数及び支出済額(1)
48地区 3987億3447万円(平成15年度~令和2年度)
基幹的な附帯施設のうち対策工事開始年度を経過しているのに対策工事が実施されていなかった施設に係る国営更新事業の地区数及び支出済額(2)
37地区 2951億5911万円(平成15年度~令和2年度)
(1)及び(2)の純計
58地区 4646億3666万円(背景金額)

【改善の処置を要求したものの全文】

国営更新事業に係る附帯施設の機能保全計画の策定状況等の把握等について

(令和4年10月26日付け 農林水産大臣宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 国営更新事業等の概要

(1) 国営更新事業及び国営更新施設と田畑とを接続する附帯施設の概要

貴省は、土地改良法(昭和24年法律第195号)等に基づき、ダム、頭首工、幹線用排水路等の農業水利施設の造成を行う国営かんがい排水事業(以下「国営事業」という。)を実施している。そして、貴省は、近年、国営事業により造成された既存の農業水利施設の更新等を行う事業(以下「国営更新事業」といい、国営更新事業により更新するなどした農業水利施設を「国営更新施設」という。)を順次実施している。

また、都道府県、市町村、土地改良区等(以下「都道府県等」という。)は、国営更新事業に関連する土地改良事業として、国営更新施設と田畑とを接続するための用排水路等の農業水利施設(以下「附帯施設」という。)の整備、更新等を国の補助事業等を活用するなどして実施している(参考図参照)。このため、国営更新施設と附帯施設とが一体となって機能することにより、国営更新事業はその効果を発揮することとなる。

(参考図)

国営更新施設及び附帯施設の関係の概念図

国営更新事業に関連する土地改良事業として、国営更新施設と田畑とを接続するための用排水路等の農業水利施設の整備、更新等を国の補助事業等を活用

(2) 農業水利施設の機能保全対策の概要

国は、農業水利施設の機能保全対策について、施設の長寿命化とライフサイクルコストの低減を図る戦略的な保全管理を推進することとしていて、土地改良長期計画(令和3年度~7年度。3年3月閣議決定)において、農業水利施設の補修等の実施に当たっては、将来の保全管理コストの最小化と平準化を図っていく必要があるとしている。

このため、貴省は、農業水利施設の機能保全対策について、従来は施設の機能に支障が生じた後に対策を講ずる事後保全としていたが、適切な補修、補強、更新の対策を執ることで耐用年数を効率的に延伸させる予防保全の手法を取り入れることにより、施設の長寿命化とライフサイクルコストの低減を進めるとしている。そして、平成19年3月に、農業水利施設の適切な機能保全とライフサイクルコストの低減を図るため、実務に必要となる基本的事項を「農業水利施設の機能保全の手引き」(以下「手引」という。)として取りまとめた。また、27年5月に手引を改定して、同月に農政局等及び農政局等を通じて都道府県に対して、手引を積極的に活用するよう通知等している。

手引によれば、①日常管理における点検、補修、②定期的な機能診断、③診断結果に基づく劣化予測、効率的な対策工法の比較検討、機能保全計画の策定、④施設監視計画に基づく施設監視、⑤機能保全計画及び監視結果を踏まえた対策工事の実施等を、段階的、継続的に実施することとされている。そして、附帯施設の場合、①及び④については施設管理者である土地改良区等が、②、③及び⑤については、原則、施設造成者である都道府県等がそれぞれ実施することとなっている。

また、手引によれば、上記のうち②の機能診断において、農業水利施設の劣化状況等を把握するなどとされており、その結果に基づき、表1のとおり、農業水利施設の状態をS―1からS―5までのどの健全度(指標)に該当するかを評価することとされていて、それぞれの健全度に対応する機能保全対策の目安が示されている。

表1 健全度の評価及びこれに対応する機能保全対策の目安(土木施設の場合)

健全度
(指標)
農業水利施設の状態(土木施設) 対応する機能保全対策の目安
S―5 変状がほとんど認められない状態 対策不要
S―4 軽微な変状が認められる状態 要観察
S―3 変状が顕著に認められる状態 補修等
S―2 施設の構造的安定性に影響を及ぼす変状が認められる状態 補強等
S―1 施設の構造的安定性に重大な影響を及ぼす変状が複数認められる状態。近い将来に施設機能が失われる又は著しく低下するリスクが高い状態。補強では経済的な対応が困難で、施設の更新が必要な状態 更新

(注) 本表は手引を基に本院が作成した。

そして、手引によれば、機能保全計画の策定に当たっては、機能診断の結果に基づき、原則として施設ごとに「劣化予測」、「対策工法」、「対策実施シナリオ」、「機能保全コスト(注1)」及び「施設監視計画」の各策定要件について取りまとめることとされている。このうち対策実施シナリオは、施設機能を維持するために適用可能な対策工法と対策工事の開始時期との組合せであり、複数考えられる組合せの中から機能保全コストが最も経済的となる組合せを選定することが基本とされている(以下、最も経済的となる組合せを「最適コスト」という。)。

また、手引によれば、機能保全計画における対策工事の開始予定年度(以下「対策工事開始年度」という。)を経過して対策工事が未実施となっている施設については、施設の劣化の状況が最適コストによる対策工事で対応可能な範囲内(以下「最適コスト範囲内」という。)にあることを、施設監視を通じて確認していることが重要であるとされている。

(注1)
機能保全コスト  ライフサイクルコストの一つとして農業水利施設における経済性の比較検討に用いられる経費であり、施設を供用し、機能を要求する性能水準以上に保全するために必要となる建設工事費、補修・補強費等の経費の総額

(3) 貴省における機能保全対策の実施状況の把握

国営更新施設については、農政局等において機能保全計画を策定していて、貴省は、農政局等からの報告により機能保全対策の実施状況を把握することとなっている。また、農政局等は、機能保全計画が策定されている附帯施設等のうち対策工事開始年度を経過した施設について、都道府県に対して対策工事の実施状況等を所定の様式(以下「把握様式」という。)により報告させることとしている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、有効性等の観点から、国営更新施設と一体となって機能することにより国営更新事業の効果を発揮させる附帯施設について、農政局等は、都道府県等における機能保全計画の策定状況を把握しているか、機能保全計画に基づく対策工事が実施されていない施設の劣化の状況が最適コスト範囲内にあることについて都道府県等において確認していることを把握しているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、9農政局等(注2)が15年度から令和2年度までの間に着手した国営更新事業計86地区(平成15年度から令和2年度までの支出済額計6412億7738万余円)及び附帯施設のうち貴省が基幹的な附帯施設としている受益面積100ha以上の計1,097施設を対象として、貴省、7農政局等(注3)及び茨城、石川両県において附帯施設の現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、9農政局等を通じて34道県から提出を受けた調書の内容について確認するなどして検査を行った。

(注2)
9農政局等  東北、関東、北陸、東海、近畿、中国四国、九州各農政局、北海道開発局、沖縄総合事務局
(注3)
7農政局等  東北、関東、北陸、東海、近畿、九州各農政局、北海道開発局

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 農政局等において附帯施設の機能保全計画の策定状況を把握していない事態

86地区に係る国営更新施設について、農政局等は、原則として機能保全計画を策定していてこれに基づき機能保全対策を実施していた。一方、附帯施設については、都道府県等において手引に基づき機能保全計画を策定することは任意となっており、機能保全計画を策定したとしても、策定した段階では農政局等に報告することにはなっていないことから、農政局等は、機能保全計画が策定されていなかったり、機能保全計画が策定されていても対策工事開始年度を経過していなかったりする施設について、その策定状況を把握できない状況となっていた。また、把握様式において附帯施設と附帯施設以外の施設を区分することにはなっておらず、把握様式で報告されている施設が附帯施設であることを容易には確認できない状況となっていた。

そこで、前記の基幹的な附帯施設1,097施設について、都道府県等における機能保全計画の策定状況を確認したところ、表2のとおり、8農政局等(注4)管内の国営更新事業計48地区(支出済額計3987億3447万余円)に係る附帯施設計489施設(1,097施設に対する割合44.5%)について、機能保全計画が策定されておらず、このうち計27地区に係る計196施設については、標準耐用年数(注5)を1年以上超過している状況となっていた。

また、上記の489施設について、機能保全計画策定の前提となる機能診断の実施状況をみると、計19地区に係る計114施設については実施されていたが、計43地区に係る計375施設については実施されていなかった。

(注4)
8農政局等  東北、関東、北陸、東海、近畿、中国四国、九州各農政局、北海道開発局
(注5)
標準耐用年数  「土地改良事業における経済効果の測定に必要な諸係数について」(昭和60年60構改C第690号)で示されている施設の区分、構造区分ごとに、規定された供用目標期間。耐用年数(必要とされる機能が果たせなくなり、当該施設が供用できなくなるまでの期間)の検討の目安として活用される。

表2 附帯施設の機能保全計画の策定状況等

(単位:地区、施設)
農政局等名  
附帯施設 機能保全計画が策定されていない施設 機能保全計画が策定されている施設
地区 施設
(A)
地区 施設
(B)
(B)/(A)
(%)
標準耐用年数を1年以上超過している施設 機能診断
実施済施設
機能診断
未実施施設
地区 施設 地区 施設 地区 施設 地区 施設
北海道開発局 21 59 6 52 88.1 4 11 3 19 6 33 3 7
東北農政局 22 370 18 189 51.0 9 73 8 68 16 121 15 181
関東農政局 12 147 8 96 65.3 7 63 4 24 8 72 7 51
北陸農政局 10 226 3 49 21.6 3 8 2 2 2 47 7 177
東海農政局 3 35 3 5 14.2 1 2 0 0 3 5 3 30
近畿農政局注(2) 4 75 2 1 1.3 0 0 2 1 0 0 4 74
中国四国農政局 9 125 4 74 59.2 2 38 0 0 4 74 5 51
九州農政局 4 59 4 23 38.9 1 1 0 0 4 23 3 36
沖縄総合事務局 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1
86 1,097 48 489 44.5 27 196 19 注(1)114 43 375 48 注(1)608
  • 注(1) 機能診断を実施している附帯施設は計722施設(114施設と608施設との合計)
  • 注(2) 近畿農政局については、2地区に共通する施設があるため、地区数が施設数より多くなる欄がある。

そして、1,097施設のうち、機能診断を実施している附帯施設は計722施設(表2参照)あり、このうち更新が必要な状態等とされるS―1(48施設)又はS―2(130施設)と判定されたものが計178施設あった。178施設の機能診断を実施した時期と施設の標準耐用年数の関係についてみると、表3のとおり、標準耐用年数を超過する前にS―1又はS―2と判定された附帯施設が129施設(178施設の72.4%)と多数見受けられる状況となっていた。一般に、S―1又はS―2の状態に至ってから対策を実施する場合には施設を長寿命化するために大規模な補強等や更新が必要となり、そのために機能保全コストが増加することとなることから、これらの施設については、S―1又はS―2と判定される以前に機能診断を行い、最適コストの検討を行うなどしていれば、最適コストをより低減することができたものと思料される。

また、標準耐用年数を超過する前であっても上記のような状況となっている一方で、前記のとおり、機能保全計画が策定されていない附帯施設のうち、196施設については標準耐用年数を1年以上超過している状況となっており、その中には機能診断を実施すればS―1又はS―2と判定されるものが相当数存在する可能性がある。

このため、附帯施設については、機能診断を適時適切に実施した上で、機能保全計画を策定して施設の耐用年数を効率的に延伸させる予防保全の取組を行うことが重要である。

表3 機能診断を実施した時期と施設の標準耐用年数の関係

機能診断時の健全度(指標)  
S―1又はS―2と判定された附帯施設数(A) 標準耐用年数を超過する前にS―1又はS―2と判定された附帯施設数(B) (B)/(A)
(%)
S―1 48 33 68.7
S―2 130 96 73.8
178 129 72.4

機能保全計画が策定されていない489施設について機能保全計画を策定していない理由を確認したところ、表4のとおり、機能診断を実施している19地区に係る114施設については、インフラ長寿命化計画(行動計画(注6))に基づいて策定している個別施設計画を機能保全計画として位置付けているためとしているものが8地区に係る75施設と最も多くなっていた。しかし、75施設の個別施設計画における記載内容を確認したところ、最適コストを選択するために必要となる、ライフサイクルコストに係る記載欄は設けられているのに、その検討等が行われておらず、いずれも空欄となっていて、機能保全計画の策定要件を満たしていないものとなっていた。

また、機能診断を実施していない43地区に係る375施設については、財政上の問題のためとしているものが5地区に係る105施設と最も多くなっていた。そして、漏水等により施設に何らかの現象が生じた際に補修等を行えば良いためとした施設が17地区に係る102施設、老朽化が見受けられないためとした施設が5地区に係る56施設等となっていた。

表4 機能保全計画を策定していない理由

(単位:地区、施設)
区分 個別施設計画を機能保全計画として位置付けているため 機能保全計画の策定対象を検討中のため 改修等の実施が予定又は確定しているため 財政上の問題のため 施設に何らかの現象が生じた際に補修等を行えば良いため 老朽化が見受けられないため 整備後間もないため その他
地区 施設 地区 施設 地区 施設 地区 施設 地区 施設 地区 施設 地区 施設 地区 施設 地区 施設
機能診断
実施済
(114施設)
8 75 2 18 5 17                 5 4 19 114
機能診断
未実施
(375施設)
        15 43 5 105 17 102 5 56 8 30 11 59 43 395
  • 注(1) 機能診断未実施の施設数については、複数回答可としたため、機能診断未実施の施設数(375施設)と回答数の「計」欄(395施設)が一致しない。
  • 注(2) 地区数については、2地区に共通する施設があるため、機能診断実施済の施設は地区数が施設数より多くなる欄がある。また、「計」欄は純計であり、各地区数を合計しても「計」欄と一致しない。

しかし、上記のように機能保全計画が策定されないことにより対策工事が適切に実施されない場合には、予防保全の取組による的確かつ効率的な機能保全対策を実施することができず、都道府県等において対策工事に要する費用が増加し、ひいては当該費用に対して国が負担する費用も増加することとなり、また、仮にその機能が失われるなどした場合には、国営更新事業の効果を十分発揮できないこととなる。

したがって、農政局等において、附帯施設の機能保全計画の策定状況を把握して、都道府県等に対して機能保全計画の策定に係る必要な助言を行う必要があると認められる。

(注6)
インフラ長寿命化計画(行動計画)  平成25年11月「インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議」が策定した「インフラ長寿命化基本計画」を踏まえ、地方公共団体等が管理するインフラの維持管理・更新等を着実に推進する中期的な取組の方向を示す「公共施設等総合管理計画」

(2) 機能保全計画に基づく対策工事が実施されていない施設について、当該施設が附帯施設であって、劣化の状況が最適コスト範囲内にあることを都道府県等が確認しているかどうかを農政局等において把握していない事態

(1)のとおり、附帯施設については、機能診断を適時適切に実施した上で、機能保全計画を策定して施設の耐用年数を効率的に延伸させる予防保全の取組を行うことが重要である。しかし、前記のとおり、把握様式において附帯施設と附帯施設以外の施設を区分することにはなっておらず、把握様式で報告されている施設のうちどの施設が附帯施設であるかについて容易には確認できないことなどから、農政局等は、機能保全計画が策定されている附帯施設における対策工事の実施状況について十分把握していなかった。また、把握様式は、施設の劣化の状況が最適コスト範囲内にあるか否かについて把握できる仕組みとなっていなかった。

そこで、前記の基幹的な附帯施設1,097施設のうち、機能保全計画が策定されている計48地区に係る計608施設について、都道府県等における機能保全計画に基づく対策工事の実施状況を確認したところ、表5のとおり、9農政局等の国営更新事業計37地区(支出済額計2951億5911万余円)に係る附帯施設計227施設(608施設に対する割合37.3%)については、対策工事開始年度を経過しているのに対策工事を実施しておらず、施設監視を継続していた。このうち計25地区に係る計80施設については、機能診断の結果、更新が必要な状態等とされるS―1(22施設)又はS―2(58施設)と判定されているのに、2年度末現在、対策工事を実施していなかった。

表5 機能保全計画に基づく対策工事の実施状況

(単位:地区、施設)
農政局等名 附帯施設
(再掲)
機能保全計画が策定されている施設(再掲)  
対策工事開始年度を経過しているのに対策工事未実施の施設
地区 施設 地区 施設
(A)
地区 施設
(B)
(B)/(A)
(%)
S―1又はS―2判定の施設
  S―1判定の施設 S―2判定の施設
地区 施設 地区 施設 地区 施設
北海道開発局 21 59 3 7 1 1 14.2 1 1 0 0 1 1
東北農政局 22 370 15 181 11 79 43.6 7 24 3 5 6 19
関東農政局 12 147 7 51 5 24 47.0 5 21 1 6 5 15
北陸農政局 10 226 7 177 7 65 36.7 4 20 1 9 4 11
東海農政局 3 35 3 30 1 1 3.3 0 0 0 0 0 0
近畿農政局 4 75 4 74 4 18 24.3 3 5 0 0 3 5
中国四国農政局 9 125 5 51 5 27 52.9 3 7 2 2 3 5
九州農政局 4 59 3 36 2 11 30.5 2 2 0 0 2 2
沖縄総合事務局 1 1 1 1 1 1 100.0 0 0 0 0 0 0
86 1,097 48 608 37 227 37.3 25 80 7 22 24 58

上記の227施設について、対策工事開始年度を経過しているのに対策工事を実施していない理由を確認したところ、表6のとおり、財政上の問題のためとしているものが18地区に係る81施設と最も多くなっていた。また、事後保全で良いためとしているものが10地区に係る52施設等となっていた。

表6 対策工事開始年度を経過しているのに対策工事を実施していない理由

(単位:地区、施設)
財政上の問題のため 事後保全で良いため 計画策定後劣化が進行していないことを施設監視により確認しているため 補修工事を実施中であったり、実施する予定であったりしているため 現状は施設の使用に支障はないため その他
地区 施設 地区 施設 地区 施設 地区 施設 地区 施設 地区 施設 地区 施設
18 81 10 52 9 28 7 24 5 16 6 26 37 227

(注) 「計」欄は純計であり、各地区数を合計しても「計」欄と一致しない。

しかし、上記のように対策工事が適時適切に実施されない場合には、都道府県等において対策工事に要する費用が増加し、ひいては当該費用に対して国が負担する費用も増加することとなり、また、仮にその機能が失われるなどした場合には、国営更新事業の効果を十分発揮できないこととなる。

したがって、農政局等において、当該施設が附帯施設であって、施設の劣化の状況が最適コスト範囲内にあることを都道府県等が確認しているかどうかを把握して、都道府県等に対して附帯施設における対策工事に係る必要な助言を行う必要があると認められる。

(改善を必要とする事態)

国営更新施設と一体となって機能することにより国営更新事業の効果を発揮することとなる附帯施設について、農政局等において機能保全計画の策定状況を把握していない事態、及び機能保全計画に基づく対策工事が実施されていない施設について、当該施設が附帯施設であって、劣化の状況が最適コスト範囲内にあることを都道府県等が確認しているかどうかを農政局等において把握していない事態は、適切とは認められず、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、都道府県等において、機能保全計画を策定することやこれに基づき対策工事を適時適切に行うことにより予防保全の取組を推進することについての理解が十分でなかったことにもよるが、貴省において、次のことによると認められる。

  • ア 把握様式等に、附帯施設の機能保全計画の策定状況を把握するための項目がないこと、並びに当該施設が附帯施設であること及び附帯施設の劣化の状況が最適コスト範囲内であることについて都道府県等が確認していることを把握するための項目がないこと、また、このため、農政局等においてこれらを把握していないこと
  • イ 都道府県等に対して、附帯施設について、機能保全計画の策定時期の目安が示されていないこと、また、機能保全計画を策定することの目的や機能保全計画に基づいて対策工事を行うことの必要性についての周知徹底が十分でないこと

3 本院が要求する改善の処置

貴省は老朽化が進行する農業水利施設の機能を保全するために国営更新事業を引き続き実施していくこととしている。

ついては、貴省において、国営更新施設と一体となって機能する附帯施設の予防保全の取組を推進し、適切な機能保全とライフサイクルコストの低減を図ることにより、国が負担する附帯施設の対策工事に要する費用を抑制するとともに、国営更新事業の効果が十分発揮されるよう、次のとおり改善の処置を要求する。

  • ア 把握様式を変更するなどして、農政局等が附帯施設に係る機能保全計画の策定状況を把握するための項目を設けること、また、附帯施設であることを確認できる項目及び附帯施設の劣化の状況が最適コスト範囲内であることについて都道府県等が確認していることを把握するための項目を設けること
  • イ 農政局等に対して、アで変更した把握様式等に基づき、附帯施設の機能保全計画の策定状況を把握するとともに、策定していない場合は、都道府県等に対して必要に応じて助言を行うことを周知徹底すること。また、附帯施設の劣化の状況が最適コスト範囲内であることについて都道府県等が確認していることを把握するとともに、確認していない場合は、都道府県等に対して必要に応じて助言を行うことを周知徹底すること
  • ウ 都道府県等に対して、附帯施設の機能保全計画の策定時期の目安を示した上で、機能保全計画を策定することの目的やこれに基づき対策工事を行うことの必要性を周知徹底すること