(3件 不当と認める国庫補助金 44,240,977円)
部局等 |
補助事業者等
(事業主体) |
補助事業等 |
年度 |
事業費
国庫補助対象事業費
|
左に対する国庫補助金等交付額 |
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
|
不当と認める国庫補助金等相当額 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(226) | 群馬県 |
群馬県 |
河川等災害復旧 |
元、2 | 27,588 (27,588) |
18,401 | 22,609 (22,609) |
15,080 |
(227) | 同 | 同 | 同 | 元、2 | 29,183 (29,183) |
19,465 | 7,487 (7,487) |
4,994 |
(228) | 和歌山県 | 和歌山県 |
同 | 平成30、令和元 |
42,165 (41,913) |
27,956 | 36,230 (36,230) |
24,166 |
(226)―(228)の計 | 98,936 (98,684) |
65,822 | 66,328 (66,328) |
44,240 |
これらの補助事業は、2県が、高崎市下小塙町の一級河川烏川、同市中豊岡町の一級河川碓氷川及び田辺市中辺路町の国道311号において、台風により被災した護岸等を復旧するために、護岸工、大型ブロック積工、根固工等を実施したものである。このうち、根固工は、護岸等の基礎を保護するために、コンクリート製ブロック(以下「根固ブロック」という。)を基礎前面の河床に敷設したものである。
2県は、根固工等の設計を「建設省河川砂防技術基準(案)同解説」(社団法人日本河川協会編。以下「技術基準」という。)等に基づき行うこととしている。そして、本件工事の設計業務を設計コンサルタントに委託し、設計図面、設計計算書等の成果品を検査して受領した上で、この成果品に基づき施工することとしていた。
技術基準等によれば、護岸の破壊は、基礎部の洗掘を契機として生ずることが多いとされ、根固工は、その地点の流勢を減じて、更に河床を直接覆うことで急激な洗掘を緩和する目的で設置されるものとされている。そして、根固工は、流体力に耐える重量とすること、護岸の基礎前面に洗掘を生じさせない敷設量とすることなどが必要であるとされている。
上記のうち、流体力に耐えるために必要となる根固ブロック1個当たりの重量(以下「必要重量」という。)については、設計流速、水や根固ブロックの密度等から算出することとされている。また、洗掘を生じさせない敷設量とするために必要となる根固ブロックの敷設幅(以下「必要敷設幅」という。)については、根固ブロック1列分又は2.0m程度以上の平坦幅に、護岸の基礎前面で河床が低下した場合に、根固ブロック敷設高から低下した河床部分に向けて生ずる斜面の長さ(勾配を30度と見込むため河床が低下した場合の深さの2倍となる。)に相当する幅を加えた幅を確保することとされている。
また、技術基準等によれば、根固工は、根固工と護岸との間に間隙が生ずる場合には適当な間詰工を施すこととされている。
しかし、根固工の設計において、和歌山県は、技術基準等で定められた根固ブロックの密度とは異なる値を用いて必要重量を算出していた。また、群馬県は、被災前と同様の設計で根固ブロックを敷設することとして、技術基準等によることなく敷設幅を決定したり、根固工と護岸との間の間隙に適当な間詰工を施す必要があるのに、間詰工の材料についての検討を行うことなく、現地で発生した土砂を用いてその間隙に盛土を行うこととしたりしていた。
このため、本件根固工は、敷設された根固ブロックが必要重量や必要敷設幅を満たしていなかったり、間詰工の材料としては適当でない粒径の小さな土砂を使用していたことにより土砂が流出して護岸の基礎前面に間隙が生じていたりしていて、河床の洗掘が進行すると護岸等に損傷が生ずるおそれがある状況となっていた(参考図参照)。
したがって、本件根固工は、設計が適切でなかったため、護岸等の基礎を洗掘から保護できない構造となっていて、本件護岸工、大型ブロック積工、根固工等は、工事の目的を達しておらず、これらに係る国庫補助金相当額計44,240,977円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのにこれに対する検査が十分でなかったこと、必要重量の算出方法、必要敷設幅及び適当な間詰工を施すことに対する理解が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
和歌山県は、田辺市中辺路町栗栖川地内の国道311号において、平成30、令和元両年度に、平成30年の台風第20号により被災した二級河川富田川の護岸を兼用する路側擁壁等を復旧するために、大型ブロック積工、根固工(平面型の根固ブロック、延長35.7m)等を実施している。
同県は、根固工の設計に当たり、根固ブロックの密度を2.3t/m³とするなどして、技術基準等の算定式を用いて必要重量を算出した結果に基づき、0.92tの根固ブロックを選定し、これにより施工していた。
しかし、技術基準等の算定式を用いるに当たっては、本件根固工のように根固ブロックが平面型である場合は、根固ブロックの密度を2.03t/m³とすることとなっていることから、これを基に改めて必要重量を算出すると、1.145tとなり、上記の根固ブロックは、必要重量を満たしていなかった。
したがって、本件根固工は、設計が適切でなかったため、大型ブロック積擁壁の基礎を洗掘から保護できない構造となっていて、本件大型ブロック積工、根固工等(工事費相当額36,230,907円、国庫補助金相当額24,166,014円)は工事の目的を達していなかった。
(参考図)
根固工の概念図