(2件 不当と認める国庫補助金 67,538,157円)
部局等 |
補助事業者等
(事業主体) |
補助事業等 |
年度 |
事業費
国庫補助対象事業費
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左に対する国庫補助金等交付額 |
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
|
不当と認める国庫補助金等相当額 |
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---|---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(229) | 岡山県 |
津山市 |
社会資本整備総合交付金(都市再生整備計画) |
26~28 | 104,248 (104,247) |
41,688 | 76,281 (76,281) |
30,504 |
(230) | 同 | 同 | 防災・安全交付金
(下水道) |
30 | 88,026 (85,374) |
42,687 | 74,066 (74,066) |
37,033 |
(229)(230)の計 | 192,275 (189,622) |
84,375 | 150,347 (150,347) |
67,538 |
これらの交付金事業は、津山市が、津山市二宮地内及び河辺(かわなべ)地内において、ポンプゲート2基の躯(く)体(鉄筋コンクリート造)の築造、函渠(かんきょ)内の雨水を河川へ排出するためのポンプ、河川から堤内地(注1)への逆流を防止するためのゲート並びにポンプ及びゲートの操作盤の設置等を実施したものである(参考図参照)。
同市は、本件ポンプゲート2基の躯体に係る耐震設計を「下水道施設の耐震対策指針と解説」(公益社団法人日本下水道協会編。以下「下水道耐震指針」という。)等に基づき行うこととしていた。下水道耐震指針等によれば、下水道施設における躯体等の土木構造物は、レベル1地震動(注2)とレベル2地震動(注2)に対し、必要な耐震性能を確保することとされている。また、コンクリート構造物のレベル2地震動時における耐震設計においては、限界状態(注3)を超える曲げモーメント(注4)が部材に作用する状態となっても、直ちに構造物全体の倒壊・崩壊につながる致命的な損傷が生ずることをできる限り避ける必要があることとされている。このことから、そのような損傷に至るせん断破壊(注5)が生ずる前に曲げ破壊(注4)が生ずるよう設計することが望ましいとして、躯体を構成する主要な部材において、曲げ破壊とせん断破壊のどちらが先に生ずるかの確認を行うことなどとされている(以下、この確認を「破壊モードの確認」といい、曲げ破壊が生ずる前にせん断破壊が生ずることを「せん断破壊モード」という。)。そして、せん断破壊モードであることなどが確認された部材については、せん断力に対して十分なせん断耐力を確保するために、設計せん断力(注5)を設計せん断耐力(注5)で除した値が0.45未満となるように設計することとされている。
同市は、本件ポンプゲート2基の工事に係る設計業務について、仕様書にレベル1地震動時及びレベル2地震動時における照査を行うことを明記して設計コンサルタントに委託し、設計図面、設計計算書等の成果品を検査して受領した上で、この成果品に基づき施工することとしていた。
しかし、上記の成果品では、レベル1地震動時における照査のみを行って耐震設計計算上安全であるとしていて、レベル2地震動時における照査を行っていなかった。
そこで、本件ポンプゲート2基の躯体に係るレベル2地震動時における照査を行ったところ、破壊モードの確認において、躯体を構成する主要な部材がせん断破壊モードとなることが確認された。そして、これらの部材について、設計せん断力を設計せん断耐力で除した値を確認したところ、底版等の部材において0.45を大幅に上回っていて、耐震設計計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件ポンプゲート2基は躯体の設計が適切でなかったため、躯体等(これらに係る工事費相当額計150,347,861円)は、所要の安全度が確保されておらず、これに係る交付金相当額計67,538,157円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
津山市は、平成30年度に、津山市二宮地内において、ポンプゲート1基の躯体(鉄筋コンクリート造、幅5.8m、長さ4.9m、高さ6.0m)の築造、ポンプ、ゲート並びにポンプ及びゲートの操作盤の設置を行う2工事を事業費計88,026,480円(交付対象事業費計85,374,333円、交付金交付額計42,687,166円)で実施していた。
同市は、本件ポンプゲート1基の設計業務に係る仕様書において、レベル1地震動時及びレベル2地震動時における照査を行うこととして当該設計業務を設計コンサルタントに委託し、設計図面、設計計算書等の成果品を検査して受領した上で、この成果品に基づき施工することとしていた。
しかし、上記の成果品では、レベル1地震動時における照査のみを行って耐震設計計算上安全であるとしていて、レベル2地震動時における照査を行っていなかった。
そこで、躯体に係るレベル2地震動時における照査を行ったところ、破壊モードの確認において、躯体を構成する主要な部材である底版等について、せん断破壊モードとなることが確認された。そして、底版について、設計せん断力を設計せん断耐力で除した値が0.851となるなどして0.45を大幅に上回っていて、耐震設計計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件ポンプゲート1基は躯体の設計が適切でなかったため、躯体等(これらに係る工事費相当額計74,066,422円、交付金相当額計37,033,211円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっていた。
(参考図)
ポンプゲートの概念図