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  • 令和3年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
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  • (1) 工事の設計が適切でなかったもの

制御盤の設計が適切でなかったもの[埼玉県](231)


(1件 不当と認める国庫補助金 5,769,704円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(231)
埼玉県
さいたま市
河川等災害復旧
66,990
(64,790)
43,214 8,650
(8,650)
5,769

この補助事業は、さいたま市が、さいたま市桜区大久保領家地内等において、令和元年東日本台風により被災した大久保領家2ポンプ施設、三崎ポンプ施設等5施設の機能回復を図るために、制御盤、排水ポンプ等の製作、据付けなどの工事を実施したものである。

同市は、本件工事の特記仕様書において「公共建築改修工事標準仕様書(電気設備工事編)」(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修。以下「標準仕様書」という。)、「土木設計業務等共通仕様書(さいたま市)」(以下「共通仕様書」という。)等を準用することとしている。標準仕様書によれば、制御盤のような自立形機器の据付けに当たっては、水平移動、転倒等の事故を防止できるように耐震処置を施すこととされ、また、共通仕様書によれば、設計業務は最新の技術基準に基づいて行うこととされている。そして、上記の技術基準に該当する「建築設備耐震設計・施工指針 2014年版」(独立行政法人建築研究所監修)によれば、設備機器を据え付けるために鉄骨架台等の支持構造部材を用いる場合は、支持構造部材をアンカーボルトでコンクリート基礎等に緊結することとされており、アンカーボルトの設計は、設備機器と鉄骨架台を一体と考えて、地震時にアンカーボルトに作用する引抜力(注)が許容引抜力(注)を上回らないようにすることとされている。

同市は、制御盤等の設計に当たり、本件工事が鉄骨架台や制御盤の製作を伴うものであることから、特記仕様書に鉄骨架台の寸法を参考値として請負人に示し、これに基づくなどして請負人が作成した施工承認図を承諾することにしていた。そして、請負人は、制御盤の据付けにおいて鉄骨架台を使用するなどとした施工承認図を同市に提出し、同市の承諾を得た上で施工していた(参考図参照)。

しかし、同市は、制御盤を電柱に固定していた1施設を除く4施設の施工承認図において、コンクリート基礎と鉄骨架台を緊結するためのアンカーボルトの径や本数等が示されていなかったのに、請負人に対してその内容の確認等を行うことなく、これをそのまま承諾していて、制御盤の耐震性の確認を行っていなかった。

そこで、実際にコンクリート基礎と鉄骨架台を緊結しているアンカーボルトの径や本数等に基づいて制御盤の耐震性を確認したところ、地震時に、アンカーボルトに作用する引抜力が、大久保領家2ポンプ施設においては22.29kN/本となり許容引抜力12.00kN/本を大幅に上回っており、また、三崎ポンプ施設においては12.30kN/本となり許容引抜力9.20kN/本を大幅に上回っていて、それぞれ耐震設計計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。

したがって、上記の2施設における制御盤(工事費相当額8,650,232円)は、設計が適切でなかったため、地震時に転倒するなどして損傷し、地震時における所定の機能が維持できないおそれがある状態となっていて、これに係る国庫補助金相当額5,769,704円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同市において、耐震処置を施すことについての理解が十分でなかったこと、請負人が作成した施工承認図の承諾に際しての確認が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
引抜力・許容引抜力  「引抜力」とは、機器等に地震力が作用する場合に、ボルトを引き抜こうとする力が作用するが、このときのボルト1本当たりに作用する力をいう。また、当該ボルトに作用することが許容される引抜力の上限を「許容引抜力」という。

(参考図)

制御盤の概念図

請負人は、制御盤の据付けにおいて鉄骨架台を使用するなどとした施工承認図を同市に提出し、同市の承諾を得た上で施工していた。