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(1) Go Toトラベル事業における取消料対応費用等について、支払要件を満たしていない取消料対応費用等に相当する委託費を国庫に返還させるよう適宜の処置を要求し、及び事後審査の対象範囲を拡充して、取消料対応費用等の支払対象とならないものがないか確認を行うよう事務局に指示し、支払対象とならないことが確認されたものについて返還させるよう改善の処置を要求したもの


所管、会計名及び科目
経済産業省所管 一般会計 (組織)経済産業本省
(項)サービス産業強化費
部局等
観光庁
Go Toトラベル事業における取消料対応費用等の概要
Go Toトラベル事業の一時停止措置等により取り消された旅行商品の予約について、旅行者から取消料を収受しないことに伴い観光関連事業者に生ずる実損を低減させるために、旅行業者等に対して支払うもの
契約名
Go Toトラベル事業における運営業務
契約の相手方
ツーリズム産業共同提案体 代表者 一般社団法人日本旅行業協会
委託費の概算払額
2341億8359万余円(令和2、3両年度)
上記のうち取消料対応費用等相当額
1337億1023万余円
支払要件を満たしていないのに支払われている取消料対応費用等(1)
865件 2957万円(令和2、3両年度)
予約リストの記載内容上、支払要件を満たしていないなどしているのに支払われている取消料対応費用(2)
9,104件 1億8782万円(令和2、3両年度)
(1)及び(2)の計
9,969件 2億1739万円

【適宜の処置及び改善の処置を要求したものの全文】

Go Toトラベル事業における取消料対応費用等の支払について

(令和4年10月12日付け 観光庁長官宛て)

標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求し、及び同法第36条の規定により改善の処置を要求する。

1 Go Toトラベル事業等の概要

(1) Go Toトラベル事業の概要

貴庁は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により失われた観光客の流れを地域に取り戻し、観光地全体の消費を促すことで、地域経済に波及効果をもたらすことを目的として、旅行者に対する給付金の給付により旅行代金の割引等を行うGo Toトラベル事業(以下「トラベル事業」という。)を実施している。そして、トラベル事業の実施に当たり、貴庁は、令和2年7月17日に、旅行業者等7者で構成されるツーリズム産業共同提案体(以下「事務局」という。)の代表者である一般社団法人日本旅行業協会との間で委託契約(委託費の限度額1866億0005万余円)を締結し、トラベル事業に参画する旅行業者及び宿泊事業者(以下「旅行業者等」という。)の募集、給付金の執行管理等の業務を事務局に委託して実施している。

本件委託契約は、契約変更を経て、4年8月末時点で、委託業務の実施期間は4年12月23日まで、委託費の限度額は2888億7590万余円となっており、委託費の概算払として、貴庁から事務局に対して、同年4月末までに計2341億8359万余円が支払われている。また、委託契約に係る仕様書において、事務局は、業務の方針、内容等に疑義が生じた場合は、その都度、貴庁の監督職員と十分に協議の上、業務を進めることなどとされており、貴庁は、この協議において、事務局に対して業務の実施に係る必要な指示等を行っている。

(2) トラベル事業の一時停止措置等への対応

貴庁は、2年7月22日以降に実施される旅行を対象としてトラベル事業を開始したが、その後における新型コロナウイルス感染症の感染状況等を踏まえて、同年11月24日以降、トラベル事業の一時停止措置等を講じており、その対象となる旅行は次のとおりである。

  • ① 「5都市(注1)に係る旅行」 一時停止措置等の期間:都市ごとに2年11月24日から12月27日までのうち一定の期間
  • ② 「年末年始の全国に係る旅行」 同:2年12月28日から3年1月11日まで
  • ③ 「緊急事態宣言に伴う全国に係る旅行」 同:3年1月12日から当面の間

そして、貴庁は、これらの一時停止措置等により取り消された旅行商品の予約について、旅行業者等に対して、旅行者から取消料を収受しないことを求めるとともに、これに伴って観光関連事業者(旅行業者等、交通事業者、宿泊事業者への食材の卸売業者等)に生ずる実損を低減させるために、事務局を通じて旅行業者等に対して、取消料対応費用及び当該費用を旅行業者等から観光関連事業者に配分するなどの事務に係る費用(以下「事務費用」といい、取消料対応費用と合わせて「取消料対応費用等」という。)を支払う措置を講じている。

上記のうち、取消料対応費用については、貴庁の指示の下で事務局が作成した「一時停止等の措置に係る旅行取消による取消料対応取扱要領」(以下「取扱要領」という。)等に基づき、トラベル事業の対象となる旅行商品の予約のうち、予約日、取消日等に関して取扱要領に定められた一定の要件(注2)を満たす予約について、1人1泊当たり1万4000円を上限に、取り消された旅行代金の35%(年末年始の全国に係る旅行の場合は50%)が支払われることなどとなっており、2年11月17日以降に予約された8泊以上の旅行商品の予約については、7泊分までを対象とすること(以下「泊数制限」という。)などとなっている(以下、取扱要領等に基づく取消料対応費用の支払対象となるための要件を「支払要件」という。)。

また、事務費用については、取消料対応費用の申請ごとに、取消料対応費用の10%に相当する額又は取り消された予約1件につき4,000円のいずれか小さい方の額が支払われることとなっている。

(注1)
5都市  東京都、札幌、名古屋、大阪、広島各市
(注2)
例えば、「年末年始の全国に係る旅行」の場合は、令和2年12月13日までに予約された同年12月28日から3年1月11日までに開始する旅行について、2年12月14日18時から3年1月11日24時までに取り消されたものであることが要件となっている。

(3) 取消料対応費用等の支払手続及び支払状況

取扱要領によれば、旅行業者等は、取消料対応費用の申請に当たり、取り消された旅行商品の予約に係る予約日、取消日、旅行商品名等を記載した一覧表(以下「予約リスト」という。)等を事務局に提出することとされている。そして、事務局は、予約リスト等の内容について確認を行うとともに、申請内容に疑義がある予約については、特に、旅行業者等に旅行商品の予約の内容、取消日等を証する書類等(以下「予約記録等」という。)の提出を求めて確認(以下、これらの確認を「事前審査」という。)を行い、貴庁から概算払として支払を受けた委託費の中から取消料対応費用を旅行業者等に支払っている。一方、事務費用については、取消料対応費用の申請ごとに事務局が算出した金額を旅行業者等に通知して、算出額に誤りがないか確認を求めた上で、上記委託費の中から支払っている。また、旅行業者等は、取扱要領に基づき、予約記録等を5年間保管することとなっている。

事務局は、3年1月から10月までの間に事前審査を実施し、3年度末までに、旅行業者等に対して計405万余件の予約に係る取消料対応費用1225億2161万余円、事務費用95億8549万余円、計1321億0710万余円(概算払額のうちの取消料対応費用等相当額も同額。以下同じ。)を支払っている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性等の観点から、事務局は取扱要領等に基づき取消料対応費用等の支払を適切に行っているか、貴庁は取消料対応費用等の支払が適切なものとなるよう事務局に対して必要な指示等を行っているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、前記の委託契約(概算払額計2341億8359万余円。うち取消料対応費用等相当額1337億1023万余円)を対象として、貴庁及び事務局において、予約リストのデータの提出を受けたり、事務局を通じて旅行業者等から提出された予約記録等を確認したり、事前審査の状況等を聴取したりするなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

貴庁は、どのように事前審査を行うかについては、事務局の責任において実施すべきものであるとしており、事務局は、事前審査に当たり、審査担当者向けのマニュアル(以下「審査マニュアル」という。)を作成し、審査マニュアルに沿って、表計算ソフトの特定の条件に合致するデータを抽出する機能を用いて、予約リストに記載された予約日、取消日等が取扱要領に定める対象期間に該当しているかなどを確認することとしていた。

しかし、事務局は、旅行業者等からの大量の申請に対して、取扱要領に定める支払期日を踏まえた迅速な対応が求められる中で、審査に充てる人員に十分な余裕がなかったなどとして、複数の審査担当者による確認を行うこととはしておらず、上記の確認が徹底されていないおそれがあると思料された。また、審査マニュアルの内容を確認したところ、泊数制限を超えた旅行商品の予約が予約リストに含まれていないかなど、トラベル事業の対象とならない旅行商品の予約が申請されていないかについての確認項目が記載されておらず、当該項目の確認が十分に行われていないおそれがあると思料された。

一方、貴庁は、当面の申請期限が3年4月に終了することを踏まえて、同月に、事務局による事前審査が適切であったかを確認するために、事前審査を終えた一部の申請に係る予約について、事前審査では申請内容に疑義がある場合に限って行っていた予約リストと予約記録等との照合を実施させることとして、事務局に対して、旅行業者等に予約記録等の提出を求めて改めて審査(以下「事後審査」という。)を行うよう指示していた。これを受けて、事務局は、3年5月から8月までの間に、申請予約件数の多い「年末年始の全国に係る旅行」及び「緊急事態宣言に伴う全国に係る旅行」の申請に係る計358万余件の予約の中から無作為に抽出したもの及びそのうち申請内容に疑義が生じた旅行業者等に係る予約の中から新たに抽出したもの計6,086件の予約を対象に事後審査を行っていた。この結果、事務局は、計502件の予約について、同一の旅行商品の予約について取消料対応費用が二重に申請されていたり、予約日、取消日等が取扱要領に定める対象期間に該当していなかったりするなど、取消料対応費用等の支払対象とならないものであることを確認して、その結果を3年5月から8月までの間に貴庁に報告していた。

上記の結果及び前記の事前審査が十分でないおそれを踏まえれば、事後審査の対象とされなかった予約についても、取消料対応費用等の支払対象とならないものが含まれていると思料された。

そこで、本院において、前記の事後審査で取消料対応費用等の支払対象とならないものであることが確認された502件を除く予約について、取消料対応費用等の支払対象となるか確認したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 予約記録等に記載された実際の取消日が取扱要領に定める対象期間に該当しないなど支払要件を満たしていないのに取消料対応費用等が支払われている事態

本院において、取消料対応費用の申請を行った予約件数が多い旅行業者11社を選定し、当該旅行業者に係る予約計48万余件について、予約記録等の提出を受け、予約リストの記載内容が予約記録等と一致するかなどについて確認したところ、予約リストに記載された取消日が実際と異なっており、予約記録等に記載された実際の取消日が取扱要領に定める対象期間に該当しないなど支払要件を満たしていないものが計865件、これに係る取消料対応費用等計2957万余円見受けられた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

旅行業者A社は、トラベル事業の対象となる旅行商品の予約(予約日:令和2年10月17日、旅行開始日:3年1月10日、旅行代金:44万円)が、2年12月17日に取り消されたとして、これを予約リストに記載して「年末年始の全国に係る旅行」に係る取消料対応費用の支払を事務局に申請し、3年3月に旅行代金の50%に相当する22万円の支払を受けるなどしていた。しかし、予約記録等を確認したところ、実際の予約の取消日(A社が旅行の中止を旅行者に文書で通知した日)は、2年12月5日となっており、取扱要領に定める対象期間(2年12月14日18時~3年1月11日24時)に該当せず、支払要件を満たしていなかった。

(2) 予約リストの記載内容上、支払要件を満たしていないなどしているのに取消料対応費用が支払われている事態

本院において、予約リストのデータを基に、取消料対応費用の申請内容について、前記405万余件の予約を対象に、支払要件のうち、予約日、取消日等が取扱要領に定める対象期間に該当しているか、旅行商品の内容等が泊数制限等を満たし、トラベル事業の対象となるものであるかを確認した。また、そのうち(1)の48万余件の予約については、同一の旅行商品の予約について二重に申請されていないかも確認した。その結果、のとおり、予約リストに記載されている予約日、取消日等が取扱要領に定める対象期間に該当していなかったり、泊数制限を超えた部分の旅行など旅行商品の内容等がトラベル事業の対象とならないものであったり、同一の旅行商品の予約について取消料対応費用が二重に申請されていたりしていて、予約リストの記載内容上、支払要件を満たしていないなどのものが計9,104件、これに係る取消料対応費用計1億8782万余円(泊数制限については、泊数制限を超える部分に限った額)見受けられた。

なお、予約リストの記載内容上は支払要件を満たしていないなどしていても、実際の予約の内容が支払要件を満たすなどしていれば支払対象となり得るが、事務局は、予約リストの記載内容上、支払要件を満たしていないなどの状況を把握しておらず、旅行業者等から予約記録等を提出させるなどして、実際の予約が支払対象となるかどうかの確認を行うこともないまま、取消料対応費用を支払っていた。

表 予約リストの記載内容上、支払要件を満たしていないなどの旅行商品の予約に係る件数及び取消料対応費用(単位:件、万円)

態様
件数 金額
予約日、取消日等が取扱要領に定める対象期間に該当していないもの 8,632 1億6794
旅行商品の内容等がトラベル事業の対象とならないもの 359 1184
同一の旅行商品の予約について取消料対応費用が二重に申請されているもの 113 803
9,104 1億8782

(3) 事務局による審査の状況

取消料対応費用等については、旅行業者等への迅速な支払が求められる中で十分な事前審査を行えない面もあったと思料されるが、このような状況を踏まえれば、事後審査を確実に行うことにより適切な支払を確保することが極めて重要である。

そして、前記のとおり、事務局は、貴庁の指示を受けて6,086件の予約を対象に事後審査を行った結果、502件の予約について取消料対応費用等の支払対象とならないものであることを確認して、これを貴庁に報告していた。上記の6,086件は、前記405万余件の予約のうちの0.15%にとどまっており、この事後審査の対象とされなかった予約についても、取消料対応費用等の支払対象とならないものが一定程度含まれていると思料された。しかし、貴庁は、事後審査の対象範囲を拡充するなどの対応を事務局に指示していなかった。

また、本院が検査した結果、事務局が審査マニュアルにおいて確認することとしていた項目についてすら十分な確認がされていなかったり、事務局に提出されている予約リストの記載内容によって支払要件を満たしていないなどのことが分かるものについてもその把握がされていなかったりする状況が見受けられた。

これらのことからすると、事務局による事前審査及びこれまでに行った事後審査は十分なものとは認められない。

(是正及び改善を必要とする事態)

予約リストの記載内容が予約記録等と異なっていて予約記録等に記載された実際の取消日が取扱要領に定める対象期間に該当しないなど支払要件を満たしていないのに取消料対応費用等が支払われている事態、及び予約リストの記載内容上、支払要件を満たしていないなどしているのに取消料対応費用が支払われている事態は適切ではなく、是正を図る要があると認められる。また、事務局による審査が十分でない事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、旅行業者が実際と異なる内容の予約リストを提出していたこと、事務局において、事前審査に当たって、審査マニュアルに記載された項目の確認が徹底されていなかったり、審査マニュアルの記載が十分でなかったりなどしていて審査の体制が十分でなかったことにもよるが、貴庁において、取消料対応費用等の支払が適切なものとなるよう事後審査の対象範囲を拡充して支払対象とならないものがないか引き続き事務局に確認させるなどの必要性を十分検討していなかったことなどによると認められる。

3 本院が要求する是正及び改善の処置

前記のとおり、取消料対応費用等については、旅行業者等への迅速な支払が求められる中で十分な事前審査を行えない面もあったと思料されるが、このような状況を踏まえれば、事後審査を確実に行うことにより適切な支払を確保することが極めて重要である。

ついては、貴庁において、トラベル事業における取消料対応費用等の支払が適切なものとなるよう、次のとおり是正及び改善の処置を要求する。

  • ア 予約記録等に記載された実際の取消日が取扱要領に定める対象期間に該当しないなど支払要件を満たしていないのに取消料対応費用等が支払われている事態について、事務局に対して、改めて支払対象とならない取消料対応費用等を算出し、その返還を旅行業者に求めるなどした上で、当該取消料対応費用等に相当する委託費を国庫に返還させること(会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求するもの)
  • イ 予約リストの記載内容上、支払要件を満たしていないなどしているのに取消料対応費用が支払われている事態について、事務局に対して、予約記録等に基づき実際の予約の内容が支払要件を満たすなどしていることが確認されたものを除き、アと同様に返還させること(同法第34条の規定により是正の処置を要求するもの)
  • ウ 事務局に対して、効率的な確認方法等を検討させた上で、これまでの事後審査の結果や本院の検査結果を踏まえて、申請内容に疑義がある予約を抽出するなど、事後審査の対象範囲を拡充して、取消料対応費用等の支払対象とならないものがないか確認を行うよう指示し、支払対象とならないことが確認されたものについては、アと同様に返還させること(同法第36条の規定により改善の処置を要求するもの)