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  • 令和3年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1) 河道掘削に伴う建設発生土について、他の建設工事に有効に利用することにより、建設発生土の処分に係る工事費の低減を図るよう、また、河道掘削工を除根を伴う樹木伐採工と同一契約で実施する場合には、伐採樹木の根株等の体積分の数量を控除して適切に掘削土量を算定するよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)国土交通本省
(項)河川整備事業費
(項)社会資本総合整備事業費
(項)北海道開発事業費
部局等
直轄事業 2地方整備局等
交付金事業 14道県
事業及び交付の根拠
河川法(昭和39年法律第167号)等
事業主体
直轄事業 12河川事務所等
交付金事業 道、県15、市3
計 31事業主体
河道掘削工及び樹木伐採工の概要
河川区域における現況の断面の土砂を、河川整備計画で定める断面まで掘削したり、河道掘削工を実施する範囲内に繁茂している樹木を伐採したりなどするもの
河道掘削工及び樹木伐採工に係る事業費
直轄事業 192契約 470億4980万余円
 (平成30年度~令和3年度)
交付金事業 1,303契約 826億6073万余円
 (平成30年度~令和3年度)
(交付金交付額 409億2218万余円
建設発生土を有効利用することにより低減できた工事費(1)
交付金事業 20契約 7864万余円
 (平成30年度~令和3年度)
(交付金相当額 3932万円
掘削土量から根株等の体積分の数量が控除されていなかったため過大に算定されていた工事費(2)
直轄事業 2契約 166万円
(令和元年度)
交付金事業 49契約 1381万余円
(平成30年度~令和3年度)
(交付金相当額 713万円
(1)及び(2)の計
直轄事業 2契約 166万円
交付金事業 69契約 9245万余円
(交付金相当額 4645万円

1 河道掘削に伴う建設発生土の概要

(1) 河道掘削工、樹木伐採工等の概要

国土交通省は、平成30年12月に閣議決定された「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を踏まえて、樹木繁茂・土砂堆積等による洪水氾濫の危険箇所等を把握するため、全国の約2,340河川(直轄管理河川約140河川、都道府県等管理河川約2,200河川)において緊急点検を実施し、その結果等を踏まえるなどして、樹木伐採・河道掘削等の緊急対策を直轄事業及び交付金事業として実施している。

河道掘削工は、河川区域における現況の断面の土砂を、河川整備計画で定める断面まで掘削等する工事であり、掘削に伴い副次的に土砂等が大量に発生することになる(以下、河道掘削工により発生する土砂等を「建設発生土」という。)。

また、樹木伐採工は、河道掘削工を実施する前やその実施に合わせて、河道掘削工を実施する範囲内に繁茂している樹木を伐採等するものであり、地上の樹木を伐採した後に、土中に残された樹木の根(以下「根株等」という。)を取り除く除根等の再繁茂防止対策を実施するものである。

(2) 河道掘削工及び樹木伐採工に係る工事費の積算

河道掘削工及び樹木伐採工に係る工事費の積算は、国土交通省制定の土木工事標準積算基準書等に基づき算定されている。そして、建設発生土又は伐採木、根株等を当該工事現場外に搬出する費用(以下「運搬費」という。)については、運搬距離に応じるなどして算定されている。

また、建設発生土を他の建設工事現場ではなく土捨場、残土処分場等に搬出する場合に必要となる処理費用等(以下「処分費」という。)については、見積りによるなどして算定されている。そして、同省制定の土木工事数量算出要領(案)によれば、除根により取り除いた根株等については建設発生土と分けて別途数量を算出することとされており、根株等を産業廃棄物として再資源化施設、焼却施設等に搬出する場合も、見積りによるなどして処分費が算定されている。一方、建設発生土を他の建設工事現場に搬出して利用(以下「工事間利用」という。)する場合は、処分費が不要となる。

(3) リサイクル原則化ルール等の概要

国土交通省等は、「資源の有効な利用の促進に関する法律」(平成3年法律第48号)に基づき、「資源の有効な利用の促進に関する基本方針」(平成18年4月財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省告示第1号)を定めており、これによれば、建設工事の発注者等は、建設発生土の利用を促進するため、当該工事現場における建設発生土の性質等の情報を提供するとともに、他の建設工事において必要とされる土砂に関する情報を収集するよう努めることとされている。

そして、国土交通省は、環境への負荷の少ない循環型社会経済システムを構築するため、再生資源の利用及び建設工事に伴い副次的に得られた建設副産物の再資源化施設等への搬出の推進に取り組む必要があるとし、建設副産物の再生利用の促進等を図ることを目的として「リサイクル原則化ルール」(平成18年6月12日国官技第47号等。以下「原則化ルール」という。)等を策定して、地方整備局等に通知している。原則化ルールによれば、同省が発注する建設工事における運用として、建設発生土の工事現場からの搬出については、原則として、50kmの範囲内の他の建設工事現場等へ搬出することとされている。そして、原則化ルールは、都道府県等に対しても周知されている。

(4) 建設発生土の工事間利用を促進するための取組

国土交通省は、建設発生土の工事間利用を促進することなどを目的として、公共工事土量調査(以下「土量調査」という。)を実施している。

土量調査は、各地方整備局等が調査事務局となり、公共工事の発注機関である国、都道府県、市区町村、独立行政法人等を対象として(以下、これらの機関を「対象機関」という。)、年1回又は複数回実施されている。土量調査の対象は、原則として1,000m³以上の土砂の搬出又は500m³以上の土砂の搬入を予定している工事等であり、工事ごとに、機関名、連絡先、工事種別、施工場所等の工事情報と、搬出入の区分、土工を実施する期間、土質区分、土量等の情報とで構成される土量調査データが作成されている。そして、対象機関には、土量調査データが配布されるなどしており、そのデータを工事間利用の調整に活用することができるようになっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、土量調査データを活用するなどして建設発生土を工事間利用するための検討が行われ、建設発生土の処分費の削減が図られているか、除根を伴う河道掘削における建設発生土の掘削土量の算定は適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、9地方整備局等(注1)管内の12河川事務所等(注2)及び19道県等(注3)の計31事業主体が、30年度から令和3年度までの間に土砂堆積等による洪水氾濫の危険箇所等で河道掘削工及び樹木伐採工を合わせて実施したり、いずれかを実施したりした工事(直轄事業計192契約、これに係る事業費計470億4980万余円、交付金事業計1,303契約、これに係る事業費計826億6073万余円(交付金交付額計409億2218万余円))の計1,495契約を対象として、設計書、施工計画書、土量調査データ等の関係資料及び現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注1)
9地方整備局等  東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州各地方整備局、北海道開発局
(注2)
12河川事務所等  江戸川、荒川下流、太田川、菊池川各河川事務所、青森、金沢、三重、姫路、豊岡、徳島各河川国道事務所、札幌、旭川両開発建設部
(注3)
19道県等  北海道、青森、山形、埼玉、神奈川、新潟、福井、山梨、長野、愛知、鳥取、山口、香川、福岡、佐賀、大分各県、横浜、名古屋、福岡各市

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 建設発生土の処分費等の状況

前記1,495契約のうち、2河川事務所等及び16道県等の計18事業主体が実施した374契約において、計1,635,514m³の建設発生土が有償により残土処分場等へ搬出されていた。

そこで、上記の374契約について、事業主体が活用することができる土量調査データを基に、当該工事場所から50㎞の範囲内に土砂の搬入を予定している他の建設工事があり、工期及び土質区分を考慮して当該他の建設工事への搬出が可能だったか、その場合、そこまでの運搬費を考慮したとしても、建設発生土の処分が経済的となるものであったか確認したところ、9県(注4)の9事業主体が実施した20契約において、この条件に該当する建設工事が見受けられた。したがって、上記の20契約においては、土量調査データを活用し、対象機関等の関係者(以下「関係者」という。)との調整が整えば、建設発生土を工事間利用することができた可能性があったと考えられ、その場合には、建設発生土の処分が経済的となることに加えて、建設発生土の有効な利用の促進にもつながることになると思料される。

しかし、上記の9事業主体においては、土量調査データを活用するなどによる建設発生土の搬出先となる建設工事の把握、関係者との調整等の取組が行われていなかったことなどから、当該20契約に係る計45,450m³の建設発生土が工事間利用されることなく有償により残土処分場等へ搬出されていた。

そこで、関係者間の調整が整い、上記45,450m³の建設発生土全てが有効利用できたとして工事費を試算すると、搬出先となる建設工事の現場までの運搬費が計1億1965万余円(交付金相当額計5982万余円)となるものの、処分費が不要となることから、当該20契約に係る運搬費及び処分費の合計額1億9830万余円(交付金相当額計9915万余円)と比べて計7864万余円(交付金相当額計3932万余円)工事費が低減される状況となっていた。

(注4)
9県  埼玉、新潟、山梨、愛知、山口、香川、福岡、佐賀、大分各県

(2) 除根を伴う河道掘削における掘削土量の算定状況

前記1,495契約のうち、5河川事務所等及び16道県等の計21事業主体が、除根を伴う樹木伐採工と河道掘削工とを同一契約において実施していた448契約について確認したところ、2河川国道事務所等及び7道県(注5)の計9事業主体が実施した51契約においては、伐採樹木の除根を行う前に掘削土量を算定していて、掘削土量に掘削箇所の土中に存在していた根株等の体積分の数量が含まれていたのに、これを控除していなかった。そこで、これらの工事において産業廃棄物として搬出された根株等の体積に運搬費等の単価を乗じて試算したところ、河道掘削工に係る掘削費等及び建設発生土に係る運搬費、処分費等の工事費の合計額1548万余円(直轄事業計166万余円、交付金事業計1381万余円(交付金相当額計713万余円))が過大に算定されている状況となっていた。

(注5)
2河川国道事務所等及び7道県  姫路河川国道事務所、札幌開発建設部、北海道、青森、山形、新潟、福井、長野、山口各県

このように、事業主体において、関係者との調整等の取組が行われていなかったことなどから建設発生土が工事間利用されることなく有償により残土処分場等へ搬出されていた事態及び掘削土量に掘削箇所の土中に存在していた根株等の体積分の数量が含まれていたのにこれを控除していなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、事業主体において、河道掘削に伴う建設発生土については、土量調査データを活用するなどして関係者との調整等の取組を行うことなどにより工事間利用すること、河道掘削における掘削土量については、除根を伴う樹木伐採工と河道掘削工とを同一契約において実施する場合には、除根を行った後に掘削土量を算定するなどして、伐採樹木の根株等の体積分の数量を控除することについて理解が十分でなかったことなどにもよるが、国土交通省において、事業主体に対して、次のことについての周知が十分でなかったことなどによると認められた。

  • ア 河道掘削に伴う建設発生土について、経済的な処分が見込まれる場合には、他の建設工事に有効に利用することにより、建設発生土の有効な利用の促進に資するとともに、建設発生土の処分に係る工事費の低減を図ること
  • イ 河道掘削における掘削土量について、伐採樹木の根株等の体積分の数量を控除して適切に算定すること

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、4年9月に各地方整備局等に対して事務連絡を発して次のことを周知するとともに、地方整備局等を通じて都道府県等に対しても同様に周知するなどの処置を講じた。

  • ア 建設発生土について、土量調査データを活用するなどして関係者との調整等の取組を行うことなどにより、経済的な処分が見込まれる場合には、他の建設工事に有効に利用することにより、建設発生土の有効な利用の促進に資するとともに、建設発生土の処分に係る工事費の低減を図ること
  • イ 河道掘削における掘削土量について、伐採樹木の根株等の体積分の数量を控除して適切に算定すること