(2件 不当と認める国庫補助金 56,233,493円)
部局等 |
補助事業者等 |
間接補助事業者等
(事業主体) |
補助事業等 |
実施年度 |
基金使用額 |
左に対する国庫補助金等交付額 |
不当と認める基金使用額 |
不当と認める国庫補助金等相当額 |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(250) | 環境本省 |
滋賀県 |
東近江市 |
再生可能
エネル
ギー等導入推進基金 |
28 | 23,243 | 23,243 | 12,880 | 12,880 |
(251) | 同 | 同 | 蒲生郡日野町 |
同 | 28 | 45,386 | 45,386 | 43,353 | 43,353 |
(250)(251)の計 | 68,629 | 68,629 | 56,233 | 56,233 |
再生可能エネルギー等導入推進基金(以下「基金」という。)は、環境省が、東日本大震災による被災地域の復旧・復興や、原子力発電施設の事故を契機とした電力需給のひっ迫への対応の必要性に鑑み、再生可能エネルギー等を活用したエネルギーシステムの導入等を支援し、環境先進地域の構築に資する事業を実施するなどのために、都道府県及び政令指定都市に対して、平成24年度から26年度までの各年度に二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金を交付して造成させたものである。
都道府県及び政令指定都市は、「平成24年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(再生可能エネルギー等導入推進基金)交付要綱」(平成24年5月環境事務次官通知。以下「要綱」という。)等に基づき、基金を財源として、地震、台風等の災害時に避難所、災害対策本部等の防災拠点となる施設等(以下「防災拠点施設等」という。)に太陽光発電設備、蓄電池設備等を設置するなどの事業(以下「基金事業」という。)を自ら実施するほか、基金事業を実施する市町村等(以下、基金事業を実施する者を「事業主体」という。)に対して、基金を取り崩して補助金(以下、都道府県及び政令指定都市からの補助金を「基金補助金」という。)を交付している。
要綱等によれば、基金事業により設置される太陽光発電設備等は、地震等の災害等が発生して電力会社から供給される商用電力が遮断された際(以下「災害等による停電時」という。)に、防災拠点施設等において必要とされる最低限の機能を維持することを目的とすることとされている。そして、事業主体は、太陽光発電設備等を設置するに当たっては、経済性を考慮するなどして、太陽光パネルからの電力を供給する系統を複数に分けるなどしている。
本院が12都道県及び3政令指定都市並びに基金補助金の交付を受けた39市区町村等において会計実地検査を行うとともに、1県及び4市町については、設計図書等の提出を受けて、その内容を確認するなどして検査したところ、2事業主体が実施した基金事業において、太陽光発電設備及び蓄電池設備の設計が適切でなかったため、災害等による停電時に防災拠点施設等の機能を確保するために必要な電力量又は必要な電力(以下、それぞれ「必要電力量」「必要電力」という。)が確保されておらず、取り崩された基金計56,233,493円(国庫補助金相当額同額)の使用が適切でなく、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2事業主体において、災害等による停電時に太陽光発電設備で発電した電力の供給に係る設備に係る設計業務委託の成果品に誤りがあったのに、これに対する確認が十分でなかったこと、日野町において設備の設計についての理解が十分でなかったこと、東近江市において必要電力に見合うよう蓄電池設備の最大出力を決定することについての認識が欠けていたこと、また、滋賀県において2事業主体に対する助言が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
日野町は、災害時に避難所等として利用する必佐小学校(以下「小学校」という。)及び日野町役場庁舎別館(以下「町役場」という。)に、それぞれ太陽光発電設備、蓄電池設備等を設置する工事を工事費計85,638,600円(基金補助金計45,386,000円、国庫補助金相当額同額)で実施していた。
同町は、小学校における太陽光発電設備等の設計を自ら行うに当たり、それらの規模については、防災拠点施設等の機能を確保するために、次のように決定し、これにより施工することとしていた。
① 太陽光発電設備については、昼間の必要電力量に昼間に蓄電池設備への充電を行うために必要な電力量を加えた電力量の計(以下「昼間必要量」という。)を算定した上で、昼間必要量を確保するために、その出力を17kW程度とする。そして、太陽光発電設備を2系統に分けて設置することとし、それぞれの系統の出力を10.60kW及び6.36kWとする。
② 蓄電池設備については、夜間の必要電力量(以下「夜間必要量」という。)を算定した上で、夜間必要量を確保するために容量を15.00kWhとする。
そして、太陽光発電設備で発電した全電力は、平常時には、商用電力で稼働するキュービクル式高圧受変電設備(注)(以下「キュービクル」という。)を経由する送電線等を用いて供給することにし、災害等による停電時には、キュービクルを経由しての電力供給はできないことから、キュービクルを経由しない送電線のみを用いて供給するなどとしていた(参考図1及び2参照)。
しかし、同町は、設計図書において、出力6.36kWの太陽光発電設備については、誤って、キュービクルを経由しない送電線を設けることとしておらず、これにより施工していたため、災害等による停電時には当該太陽光発電設備により発電した電力を供給することができないなどの状態となっていた(参考図2参照)。
そこで、太陽光発電設備等により供給できる電力量が必要電力量を確保できているか確認したところ、太陽光発電設備により供給できる電力量は、出力10.60kWの太陽光発電設備のみから供給される30.52kWhとなっていて、昼間必要量47.99kWhを大幅に下回るなどしていた。
さらに、同町は、町役場に太陽光発電設備等を設置するに当たり、委託した設計業務の成果品において、一部の系統の太陽光発電設備についてキュービクルを経由しない送電線を設ける設計となっていなかったのに、これにより施工していた。このため、前記と同様に太陽光発電設備により供給できる電力量が昼間必要量を大幅に下回るなどしていた。
したがって、小学校及び町役場に設置した太陽光発電設備等(工事費相当額43,475,012円、国庫補助金相当額43,353,373円)は、設計が適切でなかったため、必要電力量が確保されていない状態になっていた。
(参考図1)
小学校における平常時の太陽光発電設備等の概略図
(参考図2)
小学校における災害等による停電時の太陽光発電設備等の概略図