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  • (3) 工事の設計が適切でなかったもの

鋼製階段の設計が適切でなかったもの[群馬県](252)


(1件 不当と認める国庫補助金 10,121,291円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(252)
群馬県
群馬県
自然環境整備交付金
29、30 32,572
(28,813)
12,966 26,251
(22,492)
10,121

この交付金事業は、群馬県が、妙義荒船佐久高原国定公園内において、歩道の一部(延長82m)が岩塊の崩落により寸断されて通行不能となったことから、迂(う)回路として、鋼製階段(延長55.9m)を設置するなどして新たに歩道を整備したものである。

同県は、本件歩道の設計を「自然公園等施設技術指針」(環境省自然環境局自然環境整備担当参事官室制定。以下「技術指針」という。)等に基づいて行っており、技術指針によれば、鋼製階段を含む自然公園の歩道の設計に当たっては、歩道のタイプ等に応じて適切に安全性を確保することとされている。

同県は、本件歩道のうち鋼製階段について、その設置場所に大型の建設機械を搬入することができないとして、工場で製作された鋼製階段本体の部品を設置場所に搬入して現地で組み立てることができる製品を採用することとしていた。そして、同県は、設計図書において、6ユニットで構成されている鋼製階段本体を支える基礎のうち、地山が土砂である箇所(以下「土砂部」という。)に施工する基礎について、鋼製のアンカー(長さ550mm、径34mm)を土砂の表面から500mmの深さまで打ち込み、アンカーとボルトをナットで連結して、当該ボルトと鋼製階段本体の支柱を接続することとして設計していた(参考図参照)。

しかし、同県は、鋼製階段の設計に当たり、土砂に打ち込まれたアンカー1本当たりに作用する鉛直力(注)が地山の許容鉛直支持力(注)を下回っているかなど、基礎の安全性について検討していなかった。

そこで、本件鋼製階段の6ユニットの計81か所の基礎のうち、土砂部に施工された57か所の基礎について、現地で地山の地盤強度を測定し、地盤強度を測定できた6ユニットの計35か所の基礎について、技術指針等に基づき、地山の許容鉛直支持力を計算したところ、35か所の基礎のアンカーに係る地山の許容鉛直支持力は1本当たり0.06kNから1.81kNとなっていて、アンカー1本当たりに作用する鉛直力3.24kNを大幅に下回っており、計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。

したがって、本件鋼製階段(工事費相当額26,251,227円、交付対象事業費22,492,227円)は、設計が適切でなかったため、設置されたアンカーが地山に沈み込むおそれがある状態になっていて、所要の安全度が確保されておらず、これに係る交付金相当額10,121,291円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、鋼製階段の設計における基礎の安全性の検討の必要性に対する理解が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
鉛直力・許容鉛直支持力  「鉛直力」とは、構造物の自重等がアンカーに対し鉛直方向に働く力をいう。その数値が設計上許される上限を「許容鉛直支持力」という。

(参考図)

鋼製階段の概念図

鋼製階段について、その設置場所に大型の建設機械を搬入することができないとして、工場で製作された鋼製階段本体の部品を設置場所に搬入して現地で組み立てることができる製品を採用することとしていた。