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陸自クローズ系クラウドシステム用の端末等の不足分を補完するために借り上げていた陸自指揮システム用の端末等について、各部隊等が使用するために必要な設定を行っておらず倉庫等に保管するなどしていて、端末等の不足分を補完するために使用されておらず所期の目的を達成していなかったもの[陸上幕僚監部](253)


会計名及び科目
一般会計 (組織)防衛本省 (項)武器車両等整備費
部局等
陸上幕僚監部
契約名
陸自指揮システム構成品借上(東北方面隊)(30継続)等
契約の概要
陸自クローズ系クラウドシステムへの移行に伴い、同システム用の端末等の不足分を補完するための端末等を含めて陸自指揮システム用の端末等を借り上げるもの
契約の相手方
富士通株式会社、株式会社JECC
契約
平成31年2月ほか 随意契約
支払
平成31年4月から令和4年3月まで
陸自指揮システム用の端末等の借上げに係る端末等の台数及びこれに係る支払額
10,651台 4,631,181,600円(平成30年度~令和3年度)
上記のうち陸自クローズ系クラウドシステム用の端末等の不足分を補完するために使用されていなかった端末等の台数及びこれに係る支払額相当額
91台 20,551,020円(令和元年度~3年度)

1 陸自指揮システムの端末等の借上げ等の概要

(1) 陸自指揮システム等の概要

陸上自衛隊は、平成5年度から、陸上幕僚長、方面総監等の各指揮官の指揮・統制及び情報伝達・処理の正確性、迅速性等を向上させるため、各部隊等の各種状況を報告したり、幕僚活動を支援したりなどする機能(以下「指揮統制機能」という。)を有する陸自指揮システム(以下「旧システム」という。)を運用しており、運用に当たっては、端末、プリンタ、スイッチングハブ等(以下、これらを合わせて「端末等」という。)を大臣直轄部隊等及び各方面隊において使用している。そして、陸上自衛隊は、令和元年度から、指揮統制機能を向上させるなどのため、旧システムから陸自クローズ系クラウドシステム(以下「新システム」という。)に順次移行しており、2年3月に大臣直轄部隊等及び中部方面隊、3年3月に北部、東部両方面隊、4年3月に東北、西部両方面隊が新システムにそれぞれ移行し、4年3月までに全ての部隊等の移行が完了している。新システム及び旧システムは、使用するソフトウェアが異なるなどのため、陸上自衛隊は、新システムを使用する部隊等には、新システム用に新規に調達した端末等を配備することとしていた。

陸上自衛隊は、新システムへ移行中の期間においては新システムと旧システムの間で指揮統制機能を用いて情報共有できるよう、連接サーバを設置し運用している。また、新システムに移行した部隊等において、必要となる新システム用の端末の配備ができない場合は、旧システム用の端末を用いて新システムに移行した部隊等との間で情報共有することにより、その不足分を補完することとしているが、その際には連接サーバを使用することとして設定する必要がある(図参照)。

図 連接サーバの運用による情報共有の概念図

旧システム用の端末を用いて新システムに移行した部隊等との間で情報共有すること
により、その不足分を補完することとしているが、その際には連接サーバを使用すること
として設定する必要がある。

(2) 端末等の借上げの概要

陸上自衛隊では、旧システム用の端末等は借り上げて使用しており、陸上幕僚監部(以下「陸幕」という。)の調達要求に基づき、防衛装備庁が賃貸借契約を締結し、当該契約に係る借上期間経過後は、必要により借上期間を更新する再度の契約(以下「再契約」という。)を締結している。

そして、4年2月までに借上期間が終了する再契約のうち、新システムに移行した部隊等が配備先に含まれる再契約において、10,651台の旧システム用の端末等を1年間又は2年間借り上げている。この再契約は、防衛装備庁が随意契約により、富士通株式会社及び株式会社JECCとの三者間で賃貸借契約を締結しているものであり、その契約金額は、46億3118万余円となっていて、防衛装備庁は4年3月までに契約金額と同額を支払っている。

2 検査の結果

本院は、有効性等の観点から、新システムに移行した部隊等における旧システム用の端末等が有効に使用されているかなどに着眼して検査した。検査に当たっては、前記の再契約で借り上げていた10,651台の旧システム用の端末等を対象として、陸幕、11駐屯地(注1)及び防衛装備庁において、契約書、仕様書、調達要求数量に関する資料及び旧システム用の端末等の配備や使用の状況等を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、新システムに移行した部隊等が所在する上記の11駐屯地を含む29駐屯地等(注2)における旧システム用の端末等の配備や使用の状況等について陸幕から調書の提出を受けてその内容を確認するなどして検査した。

(注1)
11駐屯地  真駒内、帯広、八戸、相馬原、朝霞、十条、富士、善通寺、前川原、健軍、那覇各駐屯地
(注2)
29駐屯地等  旭川、真駒内、帯広、八戸、岩手、霞目、神町、勝田、相馬原、朝霞、十条、目黒、横浜、富士、守山、今津、大津、千僧、海田市、善通寺、福岡、前川原、相浦、健軍、湯布院、玖珠、国分、那覇各駐屯地、崎辺分屯地

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

陸幕は、新システムに移行予定となっている29駐屯地等に所在する大臣直轄部隊等及び東部、中部両方面隊の旧システム用の端末等369台(端末176台、プリンタ165台、スイッチングハブ等28台)を新システム用の端末等の不足分を補完するために借り上げることにして、これらを含めて前記の10,651台を再契約する調達要求をしていた。そして、これを受けて防衛装備庁は再契約を締結し、端末等は4年2月までの間、部隊等へ配備されていた。

前記のとおり、旧システムから新システムへの移行に伴い、新システム用の端末等の不足分を補完するためには連接サーバを使用することとして設定する必要がある。しかし、上記の再契約で借り上げた369台のうち、91台(端末38台、プリンタ36台、スイッチングハブ等17台)が配備された16駐屯地(注3)に所在する大臣直轄部隊等及び東部方面隊に属する部隊等は、具体的な対応方法を認識していなかったため、この設定を行っていなかった。

そのため、これらの各部隊等においては、上記91台の端末等を用いて新システムに移行した部隊等との間で情報共有することができず、2年3月から4年2月までの1年間又は2年間の再契約の間、これらの端末等を各部隊等の倉庫等に保管するなどしていて、これらの端末等は新システム用の端末等の不足分を補完するために使用されていなかった。

(注3)
16駐屯地  旭川、真駒内、帯広、八戸、岩手、霞目、神町、相馬原、朝霞、横浜、富士、福岡、前川原、健軍、国分、那覇各駐屯地

したがって、前記の再契約で借り上げた旧システム用の端末等369台のうち91台は、新システム用の端末等の不足分を補完するという所期の目的を達成しておらず、これらに係る支払額相当額計20,551,020円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、陸幕において、新システムに移行した部隊等に対して旧システム用の端末等を用いて新システムに移行した部隊等と情報共有するための対応方法の周知が十分でなかったことによると認められる。