防衛省情報本部(以下「情報本部」という。)は、衛星画像等を解析する業務を行うために、民間の人工衛星が撮影した衛星画像のデータ(以下「画像データ」という。)を利用している。そして、令和3年度に、画像データを利用するため、利用可能な画像データの容量(以下「利用データ量」という。)を300GBとして、3年4月に、一般競争契約により、日本スペースイメージング株式会社(以下「会社」という。)との間で「データ定額制衛星画像利用サービスの加入」に係る契約(契約期間は3年4月1日から4年3月31日まで。以下「当初契約」という。)を契約額59,400,000円で締結している。また、契約締結後に上記の300GBでは利用データ量が不足することが見込まれ、利用データ量を130GB追加する必要が生じたため、情報本部は、4年1月に、随意契約により、会社との間で別途に契約(契約期間は同年1月26日から3月31日まで。以下「別途契約」という。)を契約額31,900,000円で締結している。
本院は、経済性等の観点から、当初契約及び別途契約は適切に実施されているかなどに着眼して、両契約を対象として、情報本部において、契約書、仕様書、見積書等の関係資料を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
情報本部は、当初契約について、会社から見積書を徴しており、見積書に添付されたデータ定額制衛星画像利用サービス価格表(以下「価格表」という。)に記載された利用データ量300GBの価格59,400,000円と見積価格とが同額となっていたことから、見積価格を予定価格として採用して、同額により会社と契約を締結していた。また、別途契約については、改めて会社から徴した見積書に記載されていた利用データ量130GBの価格31,900,000円を予定価格として採用して、同額により会社と契約を締結していた。
しかし、当初契約における見積書に添付された価格表を確認したところ、利用データ量を追加する場合には、価格表に設定された利用データ量において、追加後の利用データ量と当初契約の利用データ量のそれぞれの価格の差額を支払うことで、契約期間中に利用データ量を切り替えることができることとなっていた。そして、価格表には、当初契約の利用データ量300GBに別途契約の利用データ量130GBを加えた430GBを上回る利用データ量として500GBが設定されており、利用データ量500GBの価格は88,000,000円となっていた。
このため、利用データ量の追加に当たり、利用データ量130GBの契約を別途締結するのではなく、当初契約の利用データ量300GBを500GBに切り替える変更契約を締結することが可能であった。
したがって、当該変更契約を締結したとすると、変更契約の契約額は価格表の利用データ量500GBの価格である88,000,000円となり、当初契約及び別途契約に係る契約額計91,300,000円はこれに比べて3,300,000円過大となっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、情報本部において、利用データ量の追加に当たり、当初契約における見積書に添付された価格表の記載内容を十分に確認しておらず、経済的となる契約に係る検討が十分でなかったことなどによると認められる。