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弾薬等技術支援に係る請負契約において、仕様書等で指定していた業務内容に対して実際に実施された業務内容が下回っていたのに、契約の変更を適切に行うことなく、契約額をそのまま支払っていたもの[海上自衛隊補給本部](255)


会計名及び科目
一般会計 (組織)防衛本省 (項)武器車両等整備費
部局等
海上自衛隊補給本部
契約名
(1)、(2) 弾薬等技術支援(水雷)(技術支援)
(3) 弾薬等技術支援(水雷)(技術支援:機雷その2)
(4) 弾薬等技術支援(水雷)(技術支援:機雷その1)
契約の概要
水雷弾薬の性能及び品質を適正に保つために、民間の技術力を活用して技術支援を行わせるもの
契約の相手方
(1)、(2) 三菱重工業株式会社
(3) 株式会社石川製作所
(4) JMUディフェンスシステムズ株式会社
契約
(1) 令和元年8月 随意契約
(2) 令和2年12月 随意契約
(3) 令和3年1月 随意契約
(4) 令和3年1月 随意契約
支払額
(1) 67,650,000円(令和2年度)
(2) 78,929,400円(令和3年度)
(3) 19,672,400円(令和3年度)
(4) 23,970,100円(令和3年度)
 190,221,900円
業務の実施内容が仕様書等の指定内容を下回っていた部分に係る支払額
(1) 9,278,689円(令和2年度)
(2) 15,162,940円(令和3年度)
(3) 4,495,036円(令和3年度)
(4) 3,412,692円(令和3年度)
 32,349,357円

1 契約等の概要

(1) 契約の概要

海上自衛隊補給本部(以下「補給本部」という。)は、運用中の魚雷、機雷、爆雷、欺まん弾等(以下、これらを合わせて「水雷弾薬」という。)の性能及び品質を適正に保つために、民間の技術力を活用する技術支援の請負契約を締結している。

そして、補給本部は、令和元、2両年度に三菱重工業株式会社との間で、「弾薬等技術支援(水雷)(技術支援)」の請負契約を、2年度に株式会社石川製作所及びJMUディフェンスシステムズ株式会社との間で、それぞれ「弾薬等技術支援(水雷)(技術支援:機雷その2)」及び「弾薬等技術支援(水雷)(技術支援:機雷その1)」の請負契約を、いずれも随意契約により契約額計190,221,900円で締結している(以下、元、2両年度に締結した4件の請負契約を「技術支援4契約」といい、技術支援4契約を締結した3社を「請負会社3社」という。)。

技術支援4契約の仕様書及び調達要領指定書(以下、これらを合わせて「仕様書等」という。)によれば、技術支援として、水雷弾薬の技術管理、技術資料管理、技術調査、技術指導、不具合調査、訓練発射等実施要領サーベイ及び性能評価管理の各業務を実施することとされている。補給本部は、これらの業務のうち、技術資料管理については対象となる水雷弾薬の種類又は現地調査の実施回数を、技術指導については対象となる水雷弾薬の種類を、不具合調査及び訓練発射等実施要領サーベイについては実地調査の実施回数を、それぞれの業務内容として仕様書等において指定している。そして、これらの仕様書等において指定した種類及び実施回数に基づくなどして予定価格を算定し、契約額を決定している。

(2) 契約の内容に変更が生じた場合の契約の変更

海上自衛隊契約規則(昭和43年海上自衛隊達第17号。以下「契約規則」という。)によれば、契約の締結後、契約の目的となるものとして仕様書等に掲げられている項目の内容を増減する必要が生じた場合、契約担当官等は、契約相手方と契約の変更を行うこととされている。したがって、技術支援4契約について、仕様書等に掲げられている項目の内容を増減する必要が生じた場合、契約規則に基づき、補給本部は、請負会社3社と契約の変更を行うことが必要となる。

(3) 契約の履行等の監督及び検査

会計法(昭和22年法律第35号)及び予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)に基づき、契約担当官等は、契約の適正な履行を確保したり、給付の完了の確認をしたりするため、自ら又は補助者に命じて、必要な監督及び検査をしなければならないこととなっている(以下、契約担当官等から監督を命ぜられた者を「監督職員」といい、検査を命ぜられた者を「検査職員」という。)。技術支援4契約においては、部隊からの要求又は補給本部自らの所要に応じて、補給本部が請負会社3社に対して技術支援の各業務の履行を求めることになっている。そして、監督職員は、業務の履行状況について指示、承認等することにより監督を行い、検査職員は、請負会社3社から提出される業務ごとの実施状況を取りまとめた不具合調査実施報告書等(以下「報告書」という。)の書類審査等により検査を行うこととなっている。

2 検査の結果

技術支援の各業務については、前記のとおり、仕様書等において種類及び実施回数が指定されているが、これらの中には不具合及び故障の発生状況等によって業務の実施の必要性が影響を受けるものが含まれている。そこで、本院は、合規性、経済性等の観点から、技術支援の各業務について仕様書等における指定内容と実際の業務の実施内容に差が生じていないか、差が生じている場合、契約規則に基づき適切に契約の変更が行われているか、監督及び検査は適切に行われているかなどに着眼して、技術支援4契約を対象に、補給本部において、契約書、仕様書等、予定価格調書、報告書、支払書類等を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

請負会社3社から補給本部に提出された報告書をみたところ、部隊からの要求がなかったことなどにより、一部の業務について、のとおり、実際に実施された業務内容と仕様書等における指定内容に差が生じており、いずれも仕様書等における指定内容を下回っていた。

表 実際に実施された業務内容と仕様書等における指定内容に差が生じていたもの

業務名 弾薬等技術支援(水雷)(技術支援) 弾薬等技術支援(水雷)(技術支援:機雷その2) 弾薬等技術支援(水雷)(技術支援:機雷その1)
令和元年度 2年度 2年度 2年度
仕様書等において指定していた種類又は回数 実際に実施された種類又は回数 仕様書等において指定していた種類又は回数 実際に実施された種類又は回数 仕様書等において指定していた回数 実際に実施された回数 仕様書等において指定していた回数 実際に実施された回数
技術資料管理 8種 3種 9種 3種 3回 2回
技術指導 7種 6種
不具合調査 22回 18回 15回 11回 7回 2回 7回 2回
訓練発射等実施要領サーベイ 17回 9回 18回 16回

しかし、監督職員及び検査職員は、実際に実施された業務内容が仕様書等における指定内容を下回っていることを把握していたものの、一方で仕様書等において、必要と認められる場合は現地調査等を実施するなどの記載があり、部隊等からの要求に応じた必要な現地調査等は実施されていたことから、仕様書等に掲げられている項目の内容の増減には該当しないと誤解して、仕様書等のとおり履行されたと誤認していた。このため監督職員及び検査職員は当該事実を契約担当官等に報告していなかった。そして、契約担当官等は、当該事実を把握していなかったため、契約の変更を行っておらず、契約額の全額がそのまま請負会社3社に支払われていた。

このように、実際に実施された業務内容が仕様書等で指定していた内容を下回っていたのに、契約の変更を行っていなかったことは契約規則に従ったものとなっておらず、適切とは認められない。

したがって、仕様書等において指定していた水雷弾薬の種類又は現地調査等の回数と実際に実施した種類又は回数との差の分に係る支払額32,349,357円は、契約規則に従った契約の変更を行うことなく支払われていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、監督職員及び検査職員において、実際に実施された業務内容と仕様書等における指定内容に差がある場合に、そのことを契約担当官等に報告することの重要性に対する理解が十分でなかったこと、契約担当官等において、監督職員及び検査職員に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。