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  • 令和3年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2) 各駐屯地等における給食業務等の部外委託に係る予定価格の積算に当たり、標準的な積算方法や具体的な確認事項等を周知することにより、予定価格の積算が適切に行われるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)防衛本省 (項)防衛力基盤強化推進費
部局等
陸上幕僚監部、10駐屯地
契約名
給食業務・食器洗浄及び清掃作業の部外委託等21件
契約の概要
各駐屯地等が作成した献立や準備した食材等に基づく調理及び食堂における自衛官等への配食並びに食器等の洗浄及び食堂の清掃等を行わせるもの
検査の対象とした給食業務等の部外委託契約の件数及び契約金額
106件 43億1934万余円(令和2、3両年度)
積算が適切でなかった給食業務等の部外委託契約の件数及び積算額
21件 14億1455万余円(令和2、3両年度)
低減できた積算額
8240万円(令和2、3両年度)

1 給食業務等の部外委託の概要

陸上自衛隊は、各駐屯地等に設置された食堂において自衛官等に対して食事を支給しており、調理及び配食に関する業務(以下「給食業務」という。)並びに食器等の洗浄及び食堂の清掃作業等の業務(以下「食器洗浄等業務」といい、給食業務と合わせて「給食業務等」という。)を部外委託により実施している。

陸上幕僚監部(以下「陸幕」という。)は、給食業務等の部外委託を実施するに当たり、「給食業務等の部外委託実施要領について(通達)」(令和元年陸幕装計第308号。以下「実施要領」という。)を各駐屯地等に発出している。これを受けて、各駐屯地等は、実施要領が定める標準仕様書に予定食数、洗浄する食器等の種類や予定数量等を記載するなどして仕様書を作成している。

そして、各駐屯地等は、給食業務等を業者に請け負わせて実施しており、給食業務等の部外委託に係る支払額は、毎年度多額に上っている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性等の観点から、予定価格の積算が適切に行われているかなどに着眼して、令和2、3両年度に38駐屯地(注1)で締結した給食業務等の部外委託契約計106件、契約金額計43億1934万余円を対象として、契約書、仕様書、予定価格調書、作業従事者勤務割振表(以下「シフト表」という。)等の関係資料を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注1)
38駐屯地  滝川、札幌、真駒内、帯広、北恵庭、島松、安平、幌別、青森、八戸、大和、仙台、霞ヶ浦、北宇都宮、相馬原、朝霞、十条、市ヶ谷、三宿、立川、富士、滝ヶ原、福知山、桂、宇治、八尾、伊丹、山口、善通寺、松山、小倉、飯塚、前川原、目達原、竹松、健軍、北熊本、那覇各駐屯地

(検査の結果)

検査したところ、陸幕は、人件費の賃金単価等について統一的な基準を示すことが困難であるとして、実施要領等において予定価格の積算方法等を示していなかった。このため、38駐屯地は、それぞれの判断により人件費、社会保険料等を計上するなどして予定価格を積算していたが、次のとおり予定価格の積算が適切に行われていなかった事態が見受けられた。

(1) 土日及び祝日に係る人件費の算定が勤務の実態を反映していなかったもの

3駐屯地(注2)は、給食業務等の部外委託に係る人件費について、土日及び祝日の賃金単価を平日の賃金単価に一律に割増率(100分の25又は100分の35)を乗じた額を加算した額としていた。

しかし、労働基準法(昭和22年法律第49号)においては、使用者が労働者に対して週に1日若しくは4週間を通じて4日以上与えることとなっている休日(以下「法定休日」という。)に労働させた場合に賃金を割り増さなければならないこととなっており、土日及び祝日が必ずしも法定休日に当たるわけではないため、割増率を乗じた額を加算する必要はなかった。

また、4駐屯地(注3)は、食器洗浄等業務の部外委託に係る人件費について、土日及び祝日の朝の作業時間を平日の朝の作業時間と同様に設定していた。

しかし、土日及び祝日の朝食は、平日とは異なり、軽食等を配布する形式となっており、食器及び食堂はほとんど使用されていなかった。そして、シフト表を確認したところ、土日及び祝日の作業従事者の勤務は、昼の時間帯からとなっており、土日及び祝日の朝の勤務は生じていなかった。

(注2)
3駐屯地  相馬原、富士、那覇各駐屯地
(注3)
4駐屯地  相馬原、十条、富士、目達原各駐屯地

(2) 社会保険料等の計上等を適切に行っていなかったもの

5駐屯地(注4)は、給食業務等の部外委託に係る社会保険料について、健康保険法(大正11年法律第70号)等によれば、健康保険、厚生年金保険及び介護保険の各保険料は労使折半で負担することとされており労働者負担分を計上する必要はないにもかかわらず、各保険料の算定に当たり、人件費に事業者負担分の保険料率と労働者負担分の保険料率を合算した保険料率を乗じて算定するなどしていた。

また、3駐屯地(注5)は、通勤手当を含む賃金単価を採用していたのに、別途通勤手当を計上していた。

(注4)
5駐屯地  帯広、島松、朝霞、滝ヶ原、健軍各駐屯地
(注5)
3駐屯地  帯広、朝霞、滝ヶ原各駐屯地

上記(1)及び(2)の事態が見受けられた契約は、重複を除くと、10駐屯地(注6)における計21件となる。

このように、10駐屯地において、給食業務等の部外委託に係る予定価格の積算に当たり、土日及び祝日に係る人件費の算定が勤務の実態を反映していなかったり、社会保険料等の計上等を適切に行っていなかったりしていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(注6)
10駐屯地  帯広、島松、相馬原、朝霞、十条、富士、滝ヶ原、目達原、健軍、那覇各駐屯地

(低減できた積算額)

前記の10駐屯地における計21件の契約に係る予定価格の積算額計14億1455万余円について、修正計算すると、計13億3213万余円となり、積算額を約8240万円低減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、10駐屯地において、予定価格の積算に当たり、賃金単価を割り増す場合等における法令等の理解や、実際の勤務体制の確認等が十分でなかったことなどにもよるが、陸幕において各駐屯地等における前記の事態を十分に把握しておらず、予定価格の積算について、標準的な積算方法や具体的な確認事項を示すなどして各駐屯地等に必要な指導を十分に行っていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、陸幕は、4年8月に各駐屯地等に対して通達等を発し、給食業務等の部外委託に係る予定価格の積算について、標準的な積算方法や具体的な確認事項等を周知して、予定価格の積算が適切に行われるよう処置を講じた。