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  • 令和3年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2 東日本高速道路株式会社、第3 中日本高速道路株式会社、第4 西日本高速道路株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1)―(3) 受注者の責めに帰することができない事由等により工事を施工できない場合の工事の一時中止を可能な限り回避するなどして一時中止に伴う増加費用の節減を図るため、工事発注前の設計図書作成や審査等において確認すべき事項等を具体的に示したり、工事の一時中止の発生状況等を把握し、把握した情報を関係部署に共有するなどして工事発注前の設計図書作成や審査等をより適切に行うことができる体制を整備したりするよう改善させたもの


会社名
(1) 東日本高速道路株式会社
(2) 中日本高速道路株式会社
(3) 西日本高速道路株式会社
科目
(1)~(3) 仕掛道路資産
部局等
(1) 本社、3支社
(2) 本社、2支社
(3) 本社、1支社
工事の一時中止の概要
天災等や発注者において工事用地等が確保できないなどの受注者の責めに帰することができない事由により受注者が工事を施工できないと認められるときなどに工事の全部又は一部の施工を中止するもの
令和2、3両年度にしゅん功した工事のうち一時中止に伴う増加費用の負担が生じた工事数及び当該増加費用の額
(1) 49工事 13億8661万余円(平成25年度~令和3年度)
(2) 76工事 55億8328万余円(平成24年度~令和3年度)
(3) 57工事 14億5284万余円(平成27年度~令和3年度)
工事発注前の施工条件の確認や必要な協議が十分でなかったために一時中止を回避するなどできなかった工事数及び一時中止に伴う増加費用の額
(1) 1工事 530万円(平成30年度~令和2年度)
(2) 2工事 3047万円(平成30年度~令和3年度)
工事発注前の施工条件の確認、設計図書への明示や必要な協議が十分でなかったために回避するなどできなかった一時中止が含まれていた工事数及び一時中止に伴う増加費用の額
(1) 2工事 8119万円(背景金額)
(平成28年度~令和3年度)
(2) 1工事 3410万円(背景金額)
(平成30年度~令和2年度)
(3) 2工事 5542万円(背景金額)
(平成29年度~令和3年度)

1 工事の一時中止等の概要

(1) 工事発注の概要

東日本高速道路株式会社(以下「東会社」という。)、中日本高速道路株式会社(以下「中会社」という。)及び西日本高速道路株式会社(以下「西会社」という。以下、これらの会社を総称して「3会社」という。)は、高速道路の新設、改築、維持、修繕等の一環として、多数の土木工事を請負契約により実施している。

3会社がそれぞれ制定している「土木工事請負契約における設計変更ガイドライン」(以下「設計変更ガイドライン」という。)によれば、工事の発注時に発注者が設計図書に示す施工条件は、受注者にとっては工事を施工する工程、体制等の判断基準になるものなどとされており、設計図書に明示する施工条件の例として、工事の関係機関等との協議の状況、工事の着手時期等の工程に関係する事項等が示されている。そして、3会社は、設計図書作成や審査等に当たり、この施工条件の例を踏まえるなどして、工事発注前に施工条件を確認し、設計図書に明示したり、各種協議を行ったりするなど必要な対応を執るなどして工事を発注することになっている。

(2) 工事の一時中止の概要

3会社の工事請負契約書、当該契約書に記載された各項目に必要な手続等を記載している設計変更ガイドライン等によれば、豪雨、洪水、地震等の天災等が生じたり、設計図書と実際の施工条件の相違又は設計図書の不備が発見されたり、発注者において工事用地等の確保ができなかったりするなどの受注者の責めに帰することができない事由により受注者が工事の全部又は一部を施工できないと認められるときは、発注者は、工事の中止内容を直ちに受注者に通知して、工事の全部又は一部の施工を一時中止させなければならないことなどとされている。そして、発注者は、工事を一時中止させた場合において、必要があると認められるときは工期又は請負代金額を変更し、また、受注者が工事の一時中止に伴う増加費用を必要としたときなどは必要な費用を負担しなければならないこととされている(以下、発注者が負担する工事の一時中止に伴う増加費用を「一時中止費用」という。)。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、一時中止費用の節減を図るために、工事発注前に工事の一時中止の事由となり得る施工条件を適切に確認し、設計図書に明示したり、必要となる各種協議等を適切に行ったりしているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、令和2、3両年度にしゅん功した土木工事のうち、一時中止費用が生じた東会社49工事(工事費計1327億7300万余円)、中会社76工事(同計3194億2410万余円)、西会社57工事(同計1509億3937万余円)、計182工事(同計6031億3648万余円)を対象として、3会社の本社、各支社等において契約書、設計図書、工事一時中止指示書等の関係資料を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 施工条件の確認等が十分でなかったために工事の一時中止を回避するなどできていなかった事態

3会社は、上記の182工事において延べ540回の工事の一時中止の指示を行っていて、これに伴う一時中止費用は計84億2273万余円(東会社13億8661万余円、中会社55億8328万余円、西会社14億5284万余円)となっていた。

そこで、上記延べ540回の一時中止の事由について確認したところ、表のとおり、232回については、工事発注前に必要な施工条件を把握した上で、施工条件を設計図書に明示して発注したものの、工事発注後にこれらの設計図書に明示した施工条件を変更する必要が生じたことなどにより工事の一時中止の指示をしたものであった。また、308回は、工事発注前に必要な施工条件を把握していなかったなどのため施工条件を設計図書に明示していなかったものであるが、このうち123回については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が影響したり、天災等が発生したりしたことなど、明らかに工事発注前に把握することができない事由により工事の一時中止の指示をしたものであった。

そして、残る185回について工事の一時中止の事由や工事発注前の設計図書作成、審査状況等を確認したところ、8工事における8回の工事の一時中止は、①工事発注前の施工条件の確認が十分でなかったため、工事に必要となる協議をあらかじめ行っていなかったり、②工事発注前の協議において工事の着手前に実施するよう指示された調査について設計図書に明示していないという不備が発見されたため、工事着手後に当該調査の実施に時間を要したり、③工事対象箇所の最新の詳細点検結果を反映していなかったため、設計図書と現地の条件が著しく相違していたりするなどして工事を施工できないことにより工事の一時中止を指示したものであった。

したがって、上記の8工事における8回の工事の一時中止は、①工事発注前に施工条件を十分に確認して、工事に必要となる協議を事前に行ったり、②工事発注前の協議における指示事項を考慮した工事着手可能時期を設計図書に明示したり、③工事対象箇所の最新の点検結果を把握して、現地の条件を設計図書に反映したりなどした上で発注していれば、工事の一時中止を回避したり、一時中止期間を短縮したりして、一時中止費用を節減することができたと認められた(8工事のうち、工事発注前の施工条件の確認等が十分でなかったために一時中止を回避するなどできなかったものは3工事、一時中止費用計3577万余円(東会社1工事530万円、中会社2工事3047万余円)、工事発注前の施工条件の確認等が十分でなかったために回避するなどできなかった一時中止が含まれていたものは5工事、一時中止費用計1億7071万余円(東会社2工事8119万余円、中会社1工事3410万円、西会社2工事5542万円))。

(2) 工事の一時中止の発生状況やその事由を把握し活用していなかった事態

(1)の事態を踏まえ、前記185回の工事の一時中止の事由についてみると、のとおり、関係機関との協議によるものが73回、設計図書と現地条件の相違によるものが52回、関連する工事等からの施工箇所の引渡し等の遅延によるものが30回、設計内容の確認等が必要となったことによるものが23回、その他が7回となっていた。これらの中には、上記の8回以外に、工事契約後、短期間で関連工事からの施工箇所の引渡しの遅れが発生したことなどから工事の一時中止の指示をしたものも見受けられた。これらの工事の一時中止の事由については、工事発注後に判明したものであるが、3会社は、今後も同様の事由により工事の一時中止が生ずる可能性もあることから、一時中止費用の節減を図るために工事の一時中止の発生状況や工事の一時中止の事由を把握し、把握した情報を関係部署に共有するなどして工事発注前の設計図書作成や審査等の留意事項として活用することで、今後の工事の一時中止の回避等に資するものになると認められた。しかし、3会社は、これらの工事の一時中止の発生状況やその事由を把握し、把握した情報を関係部署に共有するなどして今後の工事発注前の設計図書作成や審査等に活用する取組をしていなかった。

表 工事の一時中止の発生状況

会社名 一時中止を行った工事数
(工事)
一時中止の回数
(延べ)
(回)
施工条件を設計図書に明示していたもの
(回)
施工条件を設計図書に明示していなかったもの
(回)
事由別の一時中止の回数(回)
新型コロナウイルス感染症、天災等 関係機関との協議 設計図書と現地条件の相違 関連する工事等からの施工箇所の引渡し等の遅延 設計内容の確認等 その他
東会社 49 121 54 67 20 9 21 10 7 0
47
中会社 76 297 137 160 66 47 18 19 8 2
94
西会社 57 122 41 81 37 17 13 1 8 5
44
182 540 232 308 123 73 52 30 23 7
185

(注) 前記8回の工事の一時中止の事由である①「工事発注前の施工条件の確認が十分でなかったため、工事に必要となる協議をあらかじめ行っていなかったもの」及び②「工事発注前の協議において工事の着手前に実施するよう指示された調査について設計図書に明示していないという不備が発見されたため、工事着手後に当該調査の実施に時間を要したもの」は本表の「関係機関との協議」、③「工事対象箇所の最新の詳細点検結果を反映していなかったため、設計図書と現地の条件が著しく相違していたもの」は本表の「設計図書と現地条件の相違」にそれぞれ含まれる。

このように、3会社において、工事発注前の設計図書作成や審査等を行うに当たって、施工条件の確認、設計図書への明示や必要な協議が十分でなかったために工事の一時中止を回避するなどできていなかった事態、及び一時中止が生じた工事の発生状況やその事由を把握し、把握した情報を活用していなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、3会社において、次のことなどによると認められた。

  • ア 工事発注前の設計図書作成や審査等を行う際に確認すべき事項として、工事に必要となる関係機関との協議等の実施状況、協議内容や工事内容に関連する調査の状況等の具体的な内容を設計変更ガイドライン等に記載するなどして関係部署に示していないこと
  • イ 工事の一時中止の発生状況等を把握し、把握した情報を関係部署に共有するなど、今後の工事発注前の設計図書作成や審査等の留意事項として活用することの重要性についての理解が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、3会社は、4年9月までに、各支社等に通達を発したり、設計変更ガイドラインを改定したりなどして、可能な限り工事の一時中止を回避したり、一時中止期間を短縮したりして、一時中止費用を節減するよう、次のような処置を講じた。

ア 工事発注前の設計図書作成や審査等において確認すべき事項として、関係機関との協議等の実施状況、協議内容や工事内容に関連する調査の状況等の具体的な内容を示し、関係部署に周知徹底した。

イ 工事の一時中止の発生状況等を把握し、把握した情報を関係部署に共有するなどして、工事発注前の設計図書作成や審査等をより適切に行うことができる体制を整備した。