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委託事業で製作した機械装置等を試作品としていて、機構の取得財産としていなかったため、機構の資産売却収入が不足していたもの[国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構本部](261)


科目
(エネルギー需給勘定) その他収入
部局等
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構本部
機械装置等の概要
「航空機用先進システム実用化プロジェクト/次世代降着システム研究開発」に係る委託事業で事業者が製作したギアアクチュエーター等
有償譲渡の相手方
住友精密工業株式会社
試作品としていた機械装置等の数量及び取得価額
19点 75,283,347円(平成27年度~令和元年度)
上記のうち有償譲渡すべき機械装置等の数量及び取得価額
18点 70,539,427円(平成27年度~令和元年度)
不足していた資産売却収入
51,164,085円(令和2年度)

1 委託事業の概要等

(1) 委託事業の概要

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「機構」という。)は、平成27年度から令和2年度までの間に、「航空機用先進システム実用化プロジェクト/次世代降着システム研究開発」(以下「本件事業」という。)を住友精密工業株式会社(以下「事業者」という。)に委託して実施している。本件事業は、航空機の油圧配管の削減による重量低減等を目的として、脚揚降システムの電動化に係る技術開発等を行うものであり、機構は、事業者と委託契約を締結し、委託費として計691,117,220円を事業者に支払っている。

(2) 委託事業を実施するために受託者が製作した機械装置等の管理等

機構が定めた業務委託契約約款及び委託業務事務処理マニュアル(以下「約款等」という。)によれば、機構から委託された事業を実施するために受託者が製作した機械装置等のうち、取得価額が50万円以上かつ減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)に基づく耐用年数(以下「法定耐用年数」という。)が1年以上のものは、機械装置等が完成した日をもって機構の取得財産とすることとされている。そして、受託者は、製作した機械装置等が機構の取得財産に該当することを報告し、機構は、その内容を確認した上で機構の資産管理簿に記載して管理することとされている。ただし、取得価額が50万円以上かつ法定耐用年数が1年以上の機械装置等であっても、受託者が製作したもので、完成後1年未満で廃棄するなどの条件に該当するものは、受託者において、機構の取得財産としない試作品として取り扱うことができるとされている。一方、受託者が試作品とした機械装置等であっても、完成後1年未満で廃棄しなかった場合は、受託者は機構に当該機械装置等が機構の取得財産に該当することを報告し、機構は完成した日に遡って機構の取得財産とすることとされている。そして、この取扱いは、委託事業終了後であっても、適用されることとなっている。これは、委託事業終了前に1年以上経過した場合との公平を確保するためであり、機構は、このような取扱いとすることを受託者に周知している。

(3) 委託事業終了後の機構の取得財産の売却

約款等によれば、機構は、取得財産について、委託事業終了後、受託者に譲渡することとされており、譲渡価格は、原則として取得価額、法定耐用年数等を用いて算出した事業終了日の属する月の残存価額を基に算定する(以下、受託者に機構の取得財産を売却することを「有償譲渡」という。)こととされている。また、受託者が試作品とした機械装置等を、委託事業終了後に、その完成した日に遡って機構の取得財産とした場合も、同様に事業終了日の属する月の残存価額を基に算定した価格で有償譲渡することとなっている。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、委託事業で受託者が購入又は製作した機械装置等の管理が約款等に基づき適切に行われているかなどに着眼して、本件事業に係る委託契約を対象として、機構及び事業者において、実績報告書等の関係資料を確認するとともに、当該機械装置等の管理状況を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、事業者は、平成28年2月から令和2年2月までにギアアクチュエーター(注)等の機械装置等計19点(取得価額計75,283,347円)を製作していた。これら19点について、事業者は、取得価額が50万円以上かつ法定耐用年数が1年以上の機械装置等に該当するものの、事業者が本件事業で製作したものであり、完成後1年未満で廃棄するなどの条件に該当するとして、全て試作品としていて機構に対する報告を行っていなかった。このため、機構は取得財産としていなかった。

(注)
ギアアクチュエーター  航空機の脚(ランディングギア)を油圧で昇降する装置

しかし、事業者は、上記の19点について、それぞれ完成から1年を経過した平成29年2月から令和3年2月までの時点で廃棄しておらず、継続して研究開発に使用したり、保管したりしていたのに、機構に対する報告を行っていなかったため、機構は上記の19点を取得財産として把握できなかった。

事業者は、これら19点の機械装置等について、それぞれ完成から1年を経過した時点で、機構に対して報告を行う必要があり、機構は、事業者からの報告を受けて、これらを完成した日に遡って機構の取得財産とする必要があったと認められる。そして、これらのうち完成後1年未満で機能を喪失していて有償譲渡に適さない1点を除く18点の機械装置等(取得価額計70,539,427円)について、機構は、それぞれの取得価額、法定耐用年数等を用いて算出した事業終了日の属する月の残存価額を基に算定した価格で事業者に有償譲渡する必要があったと認められる。

したがって、上記の18点について、各機械装置等の完成した日をそれぞれの取得日として本件事業終了時点における残存価額を基に有償譲渡する際の価格を算定すると計51,164,085円となることから、機構において同額の資産売却収入が不足していて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業者において機構から委託された事業を実施するために製作した機械装置等を試作品として取り扱うことができる条件についての理解が十分でなかったこと、機構において事業者に対する指導等が十分でなかったことなどによると認められる。