【改善の処置を要求したものの全文】
特定地域中小企業特別資金事業に係る貸付金の規模について
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
特定地域中小企業特別資金事業(以下「特定地域事業」という。)は、平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所等における事故により移転を余儀なくされている中小企業者等(以下「移転中小企業者等」という。)に対して、その事業の継続又は再開の用に供する土地、建物、構築物又は設備の取得、造成又は整備のために必要な資金及び事業の継続又は再開に必要な運転資金を貸し付ける事業である。特定地域事業は、同年4月の福島県と経済産業省との基本合意に基づき、福島県の意向を踏まえて中小企業庁及び独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「機構」という。)が制度の詳細設計を行って創設された。そして、機構は、一般勘定の政府出資金を財源として、中小企業庁及び福島県との協議の上で定めた「原子力発電所事故に伴う「特定地域中小企業特別資金」事業に係る福島県に対する資金の貸付けに関する準則」(平成23年規程23第12号。以下「準則」という。)等に基づき、特定地域事業を行う公益財団法人福島県産業振興センター(以下「センター」という。)に必要な資金を無利子で貸し付ける福島県に対して、その貸付けに係る資金の一部を無利子で貸し付けている(図1参照)。
機構が福島県に対して貸し付けている資金(以下「機構貸付金」という。)の額は、図1のとおり、23年6月及び26年3月に貸し付けた計703億円であり、福島県がセンターに対して貸し付けている資金(以下「県貸付金」という。)の額は、機構貸付金に福島県の資金1億3000万円を加えた計704億3000万円となっている。そして、センターは、準則等に基づき、同額のうち393億3000万円を原資として移転中小企業者等に対する資金の貸付けを行う事業(以下「貸付事業」という。)を実施している(以下、貸付事業の原資を「貸付原資」といい、貸付事業における移転中小企業者等に対する貸付金を「センター貸付金」という。)。また、残りの311億円を用いて事務費充当基金を造成し、その運用収入等を原資として貸付事業に附帯する貸付決定事務等を行う事業(以下「管理事業」という。)を実施している。
図1 特定地域事業に係る貸付けの概念図
センター貸付金は、表1のとおり、貸付限度額3000万円の資金であり、23年度に①福島県内の移転先において事業を再開する場合等を対象とするA資金及び②避難指示が解除された区域に帰還して事業を再開する場合等を対象とするB資金が設けられた。その後、福島県は、「「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」改訂」(平成27年6月閣議決定)で事業・生業や生活の再建・自立に向けた取組を大幅に拡充するなどとされたことを踏まえて、28年度に福島県原子力被災事業者事業再開等支援補助金(以下「事業再開等補助金」という。)の交付を開始した。これに伴い、③事業再開等補助金の交付を受けて事業を再開する場合等を対象とするC資金が新たに設けられた。
事業再開等補助金は、経済産業省から補助金の交付を受けて造成した基金を原資として福島県が交付するもので、12市町村(注1)において原子力災害によって被災した中小・小規模事業者が事業再開等を行う場合等に、その実施のために必要な経費の一部を補助するものであり、センター貸付金と同様に原子力災害により被災した事業者が事業を再開する場合等を対象とした支援である(表1参照)。そして、センター貸付金の貸付対象となる移転中小企業者等が被災した時点で事業所を有していた区域はおおむね12市町村内に包含されること、また、貸付け又は補助の対象となる資金等は一部を除き共通していることから、センター貸付金の貸付対象となる移転中小企業者等は、基本的に事業再開等補助金を利用することも可能となっている。
表1 センター貸付金及び事業再開等補助金の概要
区分 | 原資 | 貸付け又は補助の対象となる事業者 | 貸付け又は補助の対象となる資金等 | 貸付け又は補助の主な要件等 | |
---|---|---|---|---|---|
センター貸付金 |
A資金
平成
23年度 開始 |
県貸付金 (機構の一般勘定の政府出資金を財源とした機構貸付金等を財源とするもの) |
23年3月11日の時点で特定区域(注(1))に事業所を有していた中小企業者等であって、同日後に特定区域から移転を余儀なくされ、福島県内の移転先(特定区域を除く。)において事業を継続・再開するもの | 福島県内への移転に必要な事業資金 | ・貸付限度額は3000万円(注(3))
・貸付期間は20年以内(うち据置期間5年以内)
・貸付利率は無利子 ・償還方法は月賦の均等償還(繰上償還可能) |
B資金
23年度
開始 |
23年3月11日の時点で特定区域又は旧屋内退避・避難準備等区域(注(2))に事業所を有していた中小企業者等であって、特定区域又は旧屋内退避・避難準備等区域に帰還して事業を継続・再開又は事業の再開へ向けた準備を行うもの | 特定区域又は旧屋内退避・避難準備等区域において事業を継続・再開するために必要な事業資金又は事業の再開へ向けた準備に必要な事業資金 | |||
C資金
28年度
開始 |
23年3月11日に12市町村内に事業所を有し、事業再開等補助金の交付を受けて事業の再開・展開等を行う中小企業者等 | 事業再開等補助金の交付対象事業の実施に必要な資金 | |||
事業再開等 補助金 28年度
開始 |
福島県が造成した基金 (経済産業省から交付を受けた被災事業者自立支援事業費補助金(事業再開・帰還促進基金)を財源とするもの) |
12市町村において原子力災害によって被災した中小・小規模事業者であって12市町村内において事業再開や新規投資、販路開拓等の事業展開投資を行うものや、当該中小・小規模事業者であって原子力災害後休業していた者又は休業していたとみなせる者が12市町村外において事業再開等を行うもの | 事業再開等の実施のために必要な施設・設備・土地の整備、新商品・新サービスの開発に要する費用等 | ・補助金額は補助対象経費(最大4000万円)に補助率を乗じた額が上限
・補助率は事業内容に応じて3分の1以内から5分の4以内まで
・交付する期間は令和3年度末時点で7年度末まで |
貸付事業における移転中小企業者等に新規の貸付けを実施する期間(以下「貸付実施期間」という。)は、準則によれば、センターが県貸付金の交付を受けた日の属する年度末までとされている一方、福島県からの申出があった場合は、機構が年度ごとに延長を認めることができるとされている。そして、当初、貸付実施期間は24年3月までとされていたが、避難指示区域全域の解除に至っておらず、多くの移転中小企業者等が事業を再開できずにいることから今後も支援の継続が必要であるなどとする福島県の申出により毎年度延長されており、令和3年度末時点で5年3月までとされている。
また、準則によれば、管理事業における事務費充当基金は、その全額について、有価証券等のうち長期にわたり有利で確実な運用が確保されるものとして福島県が承認したものをセンターが取得して運用することとされている。そして、センターは、これらにより得た運用収入等を原資として、特定地域事業に従事する職員の人件費、事務経費等(以下「事務費」という。)を支出したり、センター貸付金に係る貸倒引当金及び貸倒損失(以下「貸倒引当金等」という。)に充てたりすることとされている(以下、各年度の運用収入等から事務費を除いた額の累計額を「収支差累計額」という。)。また、センターは、各年度末時点の収支差累計額から貸倒引当金等を除いた額(以下「未使用額」という。)を翌年度以降の管理事業の原資として使用できることとされている。
センターから福島県への県貸付金の償還方法及び福島県から機構への機構貸付金の償還方法は、いずれも貸付けから20年後の年度末を償還期限とした一括償還となっているが、償還期限は前記の貸付実施期間の延長と合わせて延長されている。また、福島県が県貸付金の全部又は一部について償還期限前にセンターから繰上償還を受けた場合には、福島県は機構に対して、県貸付金に占める機構貸付金の割合を当該繰上償還額に乗じた額を直ちに償還することとなっている。
原子力災害による避難指示区域については、4年4月1日時点で、引き続き12市町村のうち7市町村の一部に帰還困難区域が設定されている。そして、このうち6町村内の帰還困難区域において、5年を目途に避難指示を解除し住民の帰還等を目指す特定復興再生拠点区域が設定されたり、同拠点区域外については国が地元と十分に議論しつつ施策の具体化を行い、2020年代をかけて帰還意向のある住民が帰還できるよう避難指示解除の取組を進めていくこととされたりしている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、効率性、有効性等の観点から、貸付金の規模は貸付事業及び管理事業の実績や今後の貸付需要の見込み等を踏まえた適切なものとなっているかなどに着眼して、県貸付金704億3000万円に係る機構貸付金703億円を対象として、中小企業庁、機構本部等において、貸付事業の貸付実績、事務費充当基金の収支等の実績等について、事業実績報告書等の関係資料を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。また、福島県及びセンターの担当者から説明を聴取するなどの方法により調査した。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
貸付原資の規模の決定に当たり、中小企業庁、機構及び福島県は、平成23年6月の機構貸付金の貸付けの際には貸付事業を利用する移転中小企業者等の総数を2,000者、26年3月の追加貸付けの際には新たに貸付事業を利用する移転中小企業者等の総数を1,205者とそれぞれ想定するなどして、必要な規模を計392億円と見込んでいた。
しかし、23年度から令和3年度までの間の貸付事業の貸付実績についてみると、図2のとおり、新規の貸付件数は貸付事業が開始された平成23年度に比べて24年度以降は大きく減少しており、令和3年度はC資金の1件のみとなっていて、3年度末時点の貸付件数の計及び貸付累計額は、937件、156億1810万余円(貸付原資393億3000万円に占める割合39.7%)と貸付原資の規模に比べて低調なものとなっていた。このため、貸付原資から貸付累計額を除いた237億1189万余円(同60.2%)については、これまで一度も貸付けに活用されないまま、センターにおいて保有され続けていた(注2)。
図2 貸付事業の貸付実績
また、前記のとおり、センター貸付金の貸付対象となる移転中小企業者等は基本的に事業再開等補助金を利用することも可能である。そこで、事業再開等補助金の交付実績についてみると、表2のとおり、平成28年度から令和3年度までの間の交付件数の計及び交付額の計は1,160件、106億6296万余円であり、そのほとんどは12市町村内で事業再開等を行うものとなっていた。一方、この間のA資金、B資金及びC資金の貸付件数の計及び貸付累計額はそれぞれ9件、1億3300万円、29件、4億5182万余円、17件、1億2463万余円となっていて、事業再開等補助金の交付実績に比べて低調なものとなっていた(図2参照)。そして、これらの資金については、貸付件数が事業再開等補助金の交付が開始された平成28年度以降大幅に減少して令和3年度にはC資金の1件のみとなっていることも踏まえると、その資金需要の一部は、事業再開等補助金により賄われている可能性があると思料される。
表2 事業再開等補助金の交付実績
(単位:件、千円)区分 | 平成28年度 | 29年度 | 30年度 | 令和元年度 | 2年度 | 3年度 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
交付決定件数 | 381 | 369 | 178 | 114 | 116 | 71 | 1,229 | |
うち12市町村内で事業再開等を行うもの |
379 | 361 | 172 | 113 | 109 | 68 | 1,202 | |
うち12市町村外で事業再開等を行うもの |
2 | 8 | 6 | 1 | 7 | 3 | 27 | |
交付件数 | 117 | 417 | 254 | 160 | 144 | 68 | 1,160 | |
交付額 | 751,187 | 3,715,943 | 2,364,015 | 1,537,951 | 1,431,919 | 861,948 | 10,662,963 |
事務費充当基金の規模の決定に当たり、中小企業庁、機構等は、償還期限までの20年間に支出する事務費を20億円、貸倒引当金等に充てる額を貸付原資300億円に機構の平成22年度末における一般勘定の事業貸付金の貸付残高に対する貸倒引当金の割合17.4%を乗じた52億2000万円と想定し、これらを20年間で、利回り2%又は1%の有価証券等の運用収入で捻出すると想定するなどして、必要な規模を311億円と見込んでいた。
一方、23年度から令和3年度までの各年度末における事務費充当基金の収支等の実績についてみると、前記のとおり、貸付実績が貸付原資の規模に比べて低調なものとなっていることもあり、毎年度、事務費の額は運用収入額等を大幅に下回っていた。また、貸付実績が低調であることなどのため、貸倒引当金等の額も近年は横ばいの状況にあり、図3のとおり、3年度末時点の収支差累計額は33億4836万余円、貸倒引当金等は8億5715万余円となっていたため、未使用額は24億9120万余円となっていた。
図3 事務費充当基金の収支等の実績
前記のとおり、貸付実績は貸付原資の規模に比べて低調なものとなっている。そこで、貸付金の規模の見直しに係る定めについてみたところ、準則等によれば、福島県は、県貸付金の規模の適正化を図るために、貸付実施期間の終了日の属する年度末、その年度以降は5年度ごとの年度末に、貸付事業の実績を踏まえて県貸付金の規模を見直すこととされ、必要があるときは、センターに対して県貸付金の一部繰上償還を命ずるなどの措置を講ずることとされていた。
しかし、貸付実施期間は、前記のとおり、福島県からの機構に対する申出により毎年度延長されているため、結果としてこれまで準則に基づく県貸付金の規模の見直しは行われていなかった。
一方、福島県は、毎年度末、貸付実施期間の延長の申出に当たり貸付事業に係る将来の貸付需要の見込み等に関する資料(以下「検討資料」という。)を機構に提出しており、検討資料の中で、各年度末時点における翌年度以降の貸付需要の見込みについて、福島県内の商工会会員の事業再開状況及び福島相双復興官民合同チーム(注3)の調査結果を踏まえて算出していた。そこで、検討資料における平成25年度以降の各年度末時点での翌年度以降の貸付需要の見込みについてみると、表3のとおり、既に地元で事業再開している事業者の数が一定程度増加していることにより減少するとともに、事業再開等補助金の交付が開始された28年度以降は特に大きく減少していた。そして、令和3年度末に提出された検討資料においては、今後も特定復興再生拠点区域の避難指示解除が予定されていることなどから制度の長期的な継続が必要とした上で、4年度以降の貸付件数の見込みは、地元以外で事業再開している事業者等の数に地元で事業再開する意向を有する者の割合を乗ずるなどして最大で109件と算出されていた。
表3 検討資料における各年度末時点での翌年度以降の貸付需要の見込み等
(単位:件、者)区分 | 平成 25年度末 |
26年度末 | 27年度末 | 28年度末 | 29年度末 | 30年度末 | 令和 元年度末 |
2年度末 | 3年度末 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
翌年度以降の貸付件数の見込み | 1,263 | 1,223 | 1,350 | 460 | 193 | 143 | 128 | 104 | 109 |
地元で事業再開している事業者の数(実績) | 409 | 481 | 557 | 652 | 771 | 907 | 976 | 1,039 | 1,092 |
このように、貸付実施期間が累次の延長を経て長期化する中、貸付需要が減少したり事業再開等補助金の交付が開始されたりしており、中小企業庁及び機構は、このような制度をめぐる環境の変化を検討資料等で把握できていたにもかかわらず、福島県と協議するなどして環境の変化を踏まえた県貸付金の規模の見直しを行っていなかった。
前記のとおり、貸付原資のうち237億1189万余円については、3年度末まで一度も貸付けに活用されないままセンターにおいて保有され続けていた。そこで、本院が、検討資料における4年度以降のセンター貸付金の貸付需要等に対する貸付額の見込みを試算したところ、表4のとおり、貸付額は最大で32億8000万円となると見込まれた。
したがって、前記の237億1189万余円から上記の貸付見込額32億8000万円を除いた204億3189万余円については、今後も使用見込みのない状況となっていると認められる。
表4 今後のセンター貸付金の貸付需要等に対する貸付額の見込み等
(単位:千円)令和3年度末時点で未活用の貸付原資 | 4年度以降の貸付需要 | センター貸付金1件当たりの貸付限度額 | 4年度以降の貸付需要に対する貸付額の見込み(注) | 3年度に貸付決定済みで4年度に貸付けが見込まれるもの | 今後の貸付需要等に対する貸付額の見込み | 3年度末時点の使用見込みのない額 |
---|---|---|---|---|---|---|
(a) | (b) | (c) | (d=b×c) | (e) | (f=d+e) | (a-f) |
23,711,893 | 109件 | 30,000 | 3,270,000 | 10,000 | 3,280,000 | 20,431,893 |
(注) 4年度以降の貸付需要に対する貸付額の見込み(d)は、各貸付けが全て貸付限度額で行われた場合の最大額である。
前記のとおり、貸付実績は貸付原資の規模に比べて低調なものとなっていることもあり、事務費充当基金に係る3年度末時点の収支差累計額は33億4836万余円、未使用額は24億9120万余円となっていた。そして、同時点の貸付残高に対する貸倒引当金等の割合は、機構の一般勘定の事業貸付金では9.7%、移転中小企業者等の経営成績等を反映して設定されているセンター貸付金では11.7%であり、いずれも事務費充当基金の規模の決定に用いられた前記の貸倒引当金の割合17.4%を下回る状況となっていた。そこで、将来の貸倒損失を正確に予見することはできず、貸付残高に対する貸倒引当金の割合も時期により変動し得ることを踏まえて、本院において、上記の割合のうち最も大きな17.4%を用いて今後必要な貸倒引当金等を保守的に試算したところ、表5のとおり、貸倒引当金等は19億1517万余円となると見込まれた。また、3年度末時点で、事務費充当基金はその全額が元本保証のある国債等により運用されていて、これらの満期の到来は最長で19年度となっていることを踏まえて、本院がこれらを満期まで保有する場合に得られる運用収入の見込み等について試算したところ、4年度から19年度までの間に45億円以上の運用収入が得られると見込まれた。そして、その間、毎年度、これまでに発生した事務費のうち最大額である4425万余円の事務費が発生すると仮定した場合でも、15年度までは各年度の運用収入が事務費を上回り、また、4年度から19年度までの間の収支差累計額は38億円以上となることから、必要な事務費は当該運用収入で賄うことが可能と見込まれた。
したがって、前記の収支差累計額33億4836万余円から上記の貸倒引当金等の見込みである19億1517万余円等を除いた13億8894万余円については、今後も使用見込みのない状況となっていると認められる。
表5 今後必要な貸倒引当金等の見込み等
(単位:千円)令和3年度末時点の収支差累計額 | 3年度末時点の貸付残高 | 今後の貸付需要等に対する貸付額の見込み | bとcの計 | 左記に対する貸倒引当金 | 3年度末時点の既貸倒損失 | 今後必要な貸倒引当金等の見込み | 当座の事務費相当額 | 3年度末時点の使用見込みのない額 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
(a) | うち未使用額 | (b) | (c) | (d=b×c) | (e=d×17.4%) | (f) | (g=e+f) | (h) | (a-g-h) |
3,348,364 | 2,491,209 | 7,216,548 | 3,280,000 | 10,496,548 | 1,826,399 | 88,771 | 1,915,171 | 44,250 | 1,388,942 |
(注) 令和4年度の運用収入が得られるまでの間、当座の事務費を支出するための額として、これまでに発生した事務費のうち最大額である4425万余円をあらかじめ充てると仮定している。
以上のことから、3年度末時点で、未活用の貸付原資237億1189万余円のうち204億3189万余円、事務費充当基金に係る未使用額24億9120万余円のうち13億8894万余円、計218億2083万余円の県貸付金に係る機構貸付金見合いの額217億8227万余円は、特定地域事業において使用見込みのない額であると認められる。
(改善を必要とする事態)
県貸付金の規模の見直しが行われておらず、国費を財源とした多額の資金が使用見込みのない状況となっている事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは、中小企業庁及び機構において、次のことなどによると認められる。
前記のとおり、帰還困難区域において、特定復興再生拠点区域が設定されたり、同拠点区域外については2020年代をかけて避難指示解除の取組を進めていくこととされたりしており、避難指示が解除された区域に帰還して事業を継続又は再開することを希望する全ての事業者が事業を再開等できるようになるまでには年数を要する状況にある。そして、このような状況を踏まえて、中小企業庁、機構及び福島県は、今後も特定地域事業による支援を継続していく必要があるとしていることから、今後も貸付実施期間が延長されることが見込まれ、現行の準則に基づく場合には、県貸付金の規模の見直しが行われず多額の資金が使用見込みのないままセンターにおいて保有され続けることとなるおそれがある。
ついては、中小企業庁及び機構において、必要に応じて福島県と協議を行うなどして、使用見込みのない機構貸付金の額の償還を受けて機構が実施する他の事業に活用することなどができるよう、次のとおり改善の処置を要求する。