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  • 令和3年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第11 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

プログラム作成等契約に係る積算価格における労務費の算出に当たり、その業務内容に応じて刊行物単価を参考見積書の労務費単価との比較対象として選定することなどについて積算基準において明確に示すことにより、労務費を適切に算出するよう改善させたもの


科目
経常費用
部局等
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構本部・東海地区、大洗、敦賀両地区
機構が締結したプログラム作成等契約の概要
役務等契約のうち、コンピュータプログラムの作成・改良やコンピュータプログラムを用いた解析等の各作業を業務内容とする契約
上記に係る契約件数及び契約金額
532件 26億4458万余円(令和2、3両年度)
上記のうち検査の対象とした契約件数及び契約金額
153件 18億5658万余円(令和2、3両年度)
上記のうち労務費の算出に当たり、原子力の研究等に関するシステム開発等の特殊性等を考慮する必要のない業務内容となっている契約件数及び労務費の積算額
12件 1億8836万余円(令和2、3両年度)
低減できた労務費の積算額
1300万円(令和2、3両年度)

1 機構の積算基準等の概要

(1) 機構の積算基準の概要

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下「機構」という。)は、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構法(平成16年法律第155号)等に基づき、原子力に関する基礎的研究等を総合的、計画的かつ効率的に行うことなどを目的として、民間事業者等と物品の購入、製作及び役務を内容とする契約(以下「役務等契約」という。)を毎年度多数締結している。

そして、機構は、一般競争契約等において契約金額を決定するための基準となる予定価格を適正、合理的かつ効率的に設定できるようにするために、積算方法等を規定した基準(以下「積算基準」という。)を定めており、予定価格は、積算基準の手順に基づき設定することとなっている。

積算基準によれば、予定価格の設定に当たっては、積算価格を作成しなければならないこととされている。そして、積算価格は、仕様書、設計書等に基づき、①刊行物資料、②他機関への納入実績、③定価(メーカー又は販売代理店が公表している価格又は価格証明書)、④機構における契約実績、⑤機構との契約に応札する見込みのある民間事業者等から徴した参考見積書、⑥その他の各事項について調査の上、適正と認められる数値を適用して作成することとされている。機構は、実際の積算価格を作成するに当たっては、業務内容に応じて、上記の①から⑥までのうち、適切と認められる価格を複数選定した上でそれらを比較し、最も安価なものを適用することにしている。

また、積算基準によれば、役務等契約のうち、コンピュータプログラムの作成・改良や、コンピュータプログラムを用いた解析等の各作業を業務内容とする契約(以下「プログラム作成等契約」という。)に係る積算価格の作成に当たり、労務費については、民間事業者等から参考見積書と併せて作業時間の内訳を徴取した上で所要人日数を算出し、当該所要人日数に機構が別に定める職種等別の労務費単価を乗ずることにより算出するなどとされている。そして、機構は、プログラム作成等契約の労務費の算出に用いる職種等別に機構が設定した労務費単価(以下「機構単価」という。)は、上記の「⑥その他」に該当するとしている。

(2) 職種等別の労務費単価の概要

機構は、機構の実施する原子力に関する基礎的研究等の業務が高度の専門性、特殊性等が求められる汎用性の低いものであり、これを請け負う民間事業者等が限定される場合も多いことから、定期的に外部機関に委託して、過去に機構との間で契約実績のある民間事業者等に対し労務費単価等の調査を行っている。そして、機構は、その調査結果を基に、機構が締結する契約の種類ごとに職種等別の労務費単価等を設定している。このうち、機構単価は、プロジェクトマネージャー、プログラマー等の四つの職種に区分されて設定されている。

また、前記の刊行物資料では、機構単価の設定と同様に、プロジェクトマネージャー、プログラマー等の四つの職種に区分された労務費単価が、民間事業者等の企業規模別(従業員数500人未満、同500人以上1,000人未満、同1,000人以上の3区分)に計12区分設定されている(以下、刊行物資料に設定されている労務費単価を「刊行物単価」という。)。そして、業務内容が同様の場合には、機構において、プログラム作成等契約に係る積算価格における労務費の算出に当たり、刊行物単価を比較対象として選定することが可能な状況となっている。なお、刊行物単価は、民間事業者等の企業規模が大きくなるに伴って労務費単価も高くなる傾向となっていて、企業規模別に設定されているが、機構単位は、企業規模に応じて業務内容の難易度が定まるものではなく、原子力等の専門分野を得意とする小規模企業であっても労務費単価の高い技術者を要して品質の高い業務を行うことが想定されることから、企業規模によらずに設定されている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性等の観点から、機構は、プログラム作成等契約に係る積算価格を作成するに当たって、業務内容に応じて労務費を適切に算出しているかなどに着眼して検査した。検査に当たっては、機構が令和2、3両年度に締結したプログラム作成等契約計532件(契約金額計26億4458万余円)のうち、契約金額が500万円以上のプログラム作成等契約計153件(契約金額計18億5658万余円)を対象として、機構本部・東海地区及び2地区(注)において、契約書、仕様書、積算内訳書等の資料を確認するとともに、担当者から説明を聴取するなどして会計実地検査を行った。

(注)
2地区  大洗、敦賀両地区

(検査の結果)

検査したところ、機構単価における4職種の作業内容は、刊行物単価における4職種の作業内容と同様のものとなっているが、2、3両年度に適用対象となる両単価を職種ごとに比較したところ、刊行物単価における3職種の従業員数1,000人以上の区分を除く計9区分において、機構単価が刊行物単価よりも高価となっており、従業員数1,000人未満の区分の全職種について刊行物単価は機構単価よりも安価となっていた。このことについて、機構は、前記のとおり、機構単価は、高度の専門性、特殊性等が求められる汎用性の低い機構の業務を請け負っている民間事業者等を対象に実施した価格調査を基に設定されたものであるためとしている。

そして、機構は、プログラム作成等契約の労務費の算出に当たって適用する労務費単価については、上記と同様の理由から、刊行物単価を比較対象として選定することなく、機構単価と民間事業者等から徴した参考見積書の労務費単価とを比較して、安価な方を適用していた。

しかし、検査対象とした153件のプログラム作成等契約の中には、物品管理や電子決裁のシステムといった一般的なコンピュータシステムの開発等であり、汎用性の高い業務内容と考えられる契約が含まれていた。

すなわち、153件のプログラム作成等契約に係る仕様書により、その業務内容を確認したところ、このうち12件のプログラム作成等契約の業務内容は、導入事例が多数ある一般的なプラットフォームを前提としたシステム開発等、市販のソフトウェアによる機能追加等などとなっており、労務費の算出に当たって、高い安全性及び品質並びに原子力固有の設備等に関する知識が求められるなどの原子力の研究等に関するシステム開発等の特殊性等を考慮する必要がない汎用性の高い業務におけるシステム開発等に係る作業で構成されていた。汎用性の高い業務は、機構が想定している企業規模によらず労務費単価の高い技術者を要して品質の高い業務の実施を求められるものではないことから、12件のプログラム作成等契約の労務費の算出に当たっては、汎用性の低い機構の業務の実施を前提として設定された機構単価を比較対象として選定することは適切ではないと認められた。

そして、前記のとおり、刊行物単価は、企業規模の区分等によって労務費単価が決定されていることから、上記12件のプログラム作成等契約の相手方の企業規模をみたところ、従業員数が1,000人未満の民間事業者等が受注しているものは10件(83.3%)となっていて、この企業規模の刊行物単価は機構単価より安価となっていた。

したがって、上記12件のプログラム作成等契約の労務費の算出に当たっては、機構単価ではなく刊行物単価を比較対象として選定し、参考見積書の労務費単価と比較して安価な方を適用すべきであると認められた。

このように、機構において、プログラム作成等契約の労務費の算出に当たり、原子力の研究等に関するシステム開発等の特殊性等を考慮する必要のないものである場合において刊行物単価を参考見積書の労務費単価との比較対象として選定していなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(低減できた積算額)

前記12件のプログラム作成等契約に係る労務費の積算額計1億8836万余円について、機構単価を刊行物単価に置き換えるなどして修正計算すると、刊行物単価が機構単価よりも高価となっている2件のプログラム作成等契約における労務費の積算額の増加分を考慮しても、計1億7526万余円となり、機構が算出していた労務費の積算額を約1300万円低減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、機構において、プログラム作成等契約の労務費の算出に当たり、その業務内容に応じた価格を参考見積書との比較対象として選定することについて十分に検討しておらず、当該業務内容が原子力の研究等に関するシステム開発等の特殊性等を考慮する必要のないものである場合には刊行物単価を比較対象として選定することについて積算基準において明確に示していなかったことなどによるものと認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、機構は、4年9月に、積算基準を改正して、同年10月以降に積算を行うプログラム作成等契約の労務費の算出に当たっては、その業務内容が原子力の研究等に関するシステム開発等の特殊性等を考慮する必要のないものである場合には刊行物単価を比較対象として選定することなどについて積算基準において明確に示すことにより、労務費を適切に算出するよう処置を講じた。