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  • 令和4年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 厚生労働省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1) 社会福祉施設等災害復旧費国庫補助金の交付額の算定に当たり、過去に補助金等の交付を受けた建物等に該当するか否かにかかわらず火災保険金を総事業費から控除するなどするよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)児童福祉施設整備費
(項)社会福祉施設整備費
(項)介護保険制度運営推進費
部局等
厚生労働本省(社会福祉施設等のうち児童関係施設等に係る施設整備の災害復旧事業を対象とした災害復旧費補助金に係る事務については、令和5年4月1日以降はこども家庭庁)
補助の根拠
児童福祉法(昭和22年法律第164号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)、老人福祉法(昭和38年法律第133号)等、予算補助
補助事業者
都、道、府2、県12、市19(うち事業主体、県2、市5)
間接補助事業者
(事業主体)
206事業主体
補助事業の概要
自然災害により被害を受けた社会福祉施設等の復旧に要する経費の一部を補助するもの
検査の対象とした事業主体数、施設数及び補助対象事業費
213事業主体 304施設 136億4979万余円
(令和元年度~3年度)
上記に係る国庫補助金交付額
80億7762万余円
過去に補助金等の交付を受けた建物等に該当せず、社会福祉施設等災害復旧費国庫補助金の交付額の算定に当たり総事業費から火災保険金が控除されていない事業主体数、施設数及び補助対象事業費
10事業主体 13施設 1億8871万余円
(令和元年度~3年度)
上記について、総事業費から火災保険金を控除するなどすると、減少すると認められた国庫補助金交付額
9883万円

1 災害復旧費補助金の概要等

(1) 災害復旧費補助金の概要

社会福祉施設等災害復旧費国庫補助金(以下「災害復旧費補助金」という。)は、自然災害により被害を受けた社会福祉施設等の災害復旧に関し、厚生労働大臣に協議して承認を得た災害復旧事業に要する費用の一部を補助することにより、災害の速やかな復旧を図り、もって施設入所者等の福祉を確保することを目的としている。

厚生労働省は、都道府県、指定都市、中核市等(以下「都道府県等」という。)により設置された高齢者関係施設、児童関係施設、障害者関係施設等の社会福祉施設等に係る災害復旧事業を対象として、また、社会福祉法人等により設置された社会福祉施設等の災害復旧のために都道府県等が補助する事業を対象として、都道府県等に災害復旧費補助金を交付している(以下、災害復旧費補助金と都道府県等の負担分を合わせて「災害復旧費補助金等」といい、災害復旧費補助金等により施設整備事業を実施する者を「事業主体」という。)。

そして、災害復旧費補助金の交付額は、「社会福祉施設等災害復旧費国庫補助金交付要綱」(平成22年厚生労働省発社援0315第9号別紙)等に基づき、①総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額等と、②施設の種類ごとに算出した基準額(以下「基準額」という。)の合計額とを比較して、少ない方の額に所定の国庫補助率を乗じて算出した額等とされている。

(2) 補助金交付額の算定における火災保険金の取扱い

厚生省(平成13年1月6日以降は厚生労働省)は、補助金の交付額の算定に当たり控除すべき寄附金その他の収入について、「厚生省所管補助金等にかかる寄付金その他の収入の取扱いについて」(昭和35年4月会発第1312号。以下「昭和35年通知」という。)により定めている。昭和35年通知によれば、控除するその他の収入のうち、火災保険金(共済金等を含む。以下同じ。)の範囲については、過去において補助金等の交付を受けて建設し又は改造改築等により効用の増加した既存建物等(以下「過去に補助金等の交付を受けた建物等」という。)が被災したことによる火災保険金の収入から基準額を基に算出される自己負担相当(以下「自己負担相当額」という。)を控除した額とされている。すなわち、災害復旧費補助金の交付額の算定に当たり、被災した社会福祉施設等が過去に補助金等の交付を受けた建物等に該当する場合、被災したことによる火災保険金の収入は、次のとおり、総事業費から控除することとなっている。

被災したことによる火災保険金の収入 画像

(注1)
例えば、災害復旧費補助金等の補助率が4分の3の場合、自己負担率は4分の1となる。

一方で、過去に補助金等の交付を受けた建物等に該当しない場合の火災保険金の収入の取扱いについては、昭和35年通知には示されていない。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、災害復旧費補助金の交付額の算定に当たり、火災保険金の取扱いは適切なものとなっているかなどに着眼して、令和元年度から3年度までの間に、16都道府県及び19市(注2)から災害復旧費補助金の交付を受けて災害復旧事業を実施した213事業主体の304施設(補助対象事業費計136億4979万余円、国庫補助金交付額計80億7762万余円)を対象として検査した。検査に当たっては、上記の16都道府県及び19市において、当該事業主体から提出された事業実績報告書等を確認するとともに、厚生労働省本省等において、火災保険金の取扱いについて説明を聴取するなどして会計実地検査を行った。

(注2)
16都道府県及び19市  東京都、北海道、京都、大阪両府、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、長野、岡山、熊本各県、札幌、仙台、福島、郡山、いわき、宇都宮、さいたま、川越、千葉、横浜、川崎、長野、京都、大阪、堺、高槻、枚方、神戸、倉敷各市

(検査の結果)

前記213事業主体の304施設について、被災したことによる火災保険金の受取状況をみたところ、70事業主体が106施設について火災保険金計22億6971万余円を受け取っていた。そこで、上記70事業主体の106施設について、災害復旧費補助金の交付額の算定における火災保険金の取扱いをみたところ、過去に補助金等の交付を受けた建物等に該当しないために総事業費から火災保険金が控除されていないものが、5府県及び1市(注3)から災害復旧費補助金の交付を受けた10事業主体の13施設(高齢者関係施設6施設、児童関係施設6施設、障害者関係施設1施設。補助対象事業費計1億8871万余円、国庫補助金交付額計1億1702万余円)について見受けられた。

しかし、厚生労働省は、昭和35年通知において総事業費から火災保険金を控除する対象を過去に補助金等の交付を受けた建物等に限定した理由を確認できないとしており、次のような理由から、災害復旧費補助金の交付額の算定に当たり総事業費から火災保険金を控除する取扱いを、過去に補助金等の交付を受けた建物等に限定する合理性は乏しいと思料された。

ア 火災保険金は、過去に補助金等の交付を受けた建物等に該当するか否かにかかわらず受け取れるものであり、過去の補助金等の交付の有無により、災害復旧費補助金の交付額の算定における取扱いを異にする特段の必要性はないこと

イ 前記10事業主体の13施設については、事業主体が受け取った火災保険金と災害復旧費補助金等の交付額の合計額が総事業費を超えている状況であること

そこで、前記10事業主体の13施設について、災害復旧費補助金の交付額の算定に当たり、自己負担相当額を除いた火災保険金を総事業費から控除するなどして交付額を試算すると、国庫補助金交付額は当初交付額と比べて計9883万余円減少することになる。

(注3)
5府県及び1市  京都府、福島、茨城、千葉、熊本各県、京都市

このように、災害復旧費補助金の交付額の算定に当たり、過去に補助金等の交付を受けた建物等に該当する社会福祉施設等に限定して、総事業費から火災保険金を控除する取扱いとしていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、厚生労働省において、災害復旧費補助金の交付額の算定に当たり、過去に補助金等の交付を受けた建物等に該当しない社会福祉施設等に係る火災保険金の控除に関する取扱いの検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、厚生労働省は、5年8月に通知を発出して、昭和35年通知を廃止した上で、災害復旧費補助金の交付額の算定において、過去の補助金等の交付の有無にかかわらず自己負担相当額を除いた火災保険金を総事業費から控除するなどすることとし、都道府県等に対して、その取扱いを周知するなどの処置を講じた。

また、社会福祉施設等のうち児童関係施設等に係る施設整備の災害復旧事業を対象とした災害復旧費補助金に係る事務が5年4月にこども家庭庁に移管されたことに伴い、同庁も同様の処置を講じた。