厚生労働省は、災害時に入所者等の安全を確保するため、地方公共団体が行う高齢者関係施設への非常用自家発電設備及び受水槽等の給水設備(以下、これらを合わせて「非常用設備等」という。)の整備に、又は社会福祉法人等が行う高齢者関係施設への非常用設備等の整備に対し都道府県若しくは市町村(特別区を含む。以下同じ。)が補助する事業に、地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金を交付している。また、社会福祉法人等が行う障害児者関係施設への非常用設備等の整備に対し都道府県又は政令指定都市若しくは中核市が補助する事業に、社会福祉施設等施設整備費補助金を交付している(以下、地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金及び社会福祉施設等施設整備費補助金を合わせて「施設整備補助金」、社会福祉法人等が行う非常用設備等の整備に対し都道府県又は市町村が補助する事業に施設整備補助金を交付する場合の都道府県又は市町村を「都道府県等」、施設整備補助金により非常用設備等を整備する地方公共団体又は社会福祉法人等を「事業主体」という。)。同省によれば、施設整備補助金に係る交付要綱等において耐震性を確保する必要性等は示されていないものの、整備する非常用設備等について耐震性の確保等に係る必要な措置がなされていることを前提に、都道府県等は施設整備補助金を交付するなどとしている。しかし、施設整備補助金による非常用設備等の整備に当たり、非常用設備等がアンカーボルト等により鉄筋コンクリートの基礎に固定されていないなどしていて、耐震性が確保されているか確認できず、地震の際に有効に機能しないおそれがある事態が見受けられた。
したがって、厚生労働大臣に対して令和4年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり改善の処置を要求した。
ア 都道府県等に対して、事業主体が施設整備補助金により整備する非常用設備等が地震時に転倒することなどがないよう耐震性を確保する必要があることを周知するとともに、施設整備補助金の事前協議等に当たって、当該非常用設備等の耐震性の確保の必要性、及び耐震性が確保されていることが分かる資料を整備しておくことが必要であることを事業主体に周知するなど、耐震性が確保されているか確認するに当たっての留意点等を示すこと
イ 都道府県等に対して、非常用設備等の耐震性の確保に係る項目を加えた事前協議等に用いるチェックリスト等を示すことにより、地方厚生(支)局において都道府県等が確認した内容を基に審査できるようにすること
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 4年11月及び12月に都道府県等に対して事務連絡を発出して、事業主体が施設整備補助金により整備する非常用設備等が地震時に転倒することなどがないよう耐震性を確保する必要があることを周知するとともに、施設整備補助金の事前協議等に当たって、当該非常用設備等の耐震性の確保の必要性、及び耐震性が確保されていることが分かる資料を整備しておくことが必要であることを事業主体に周知するなど、耐震性が確保されているか確認するに当たっての留意点等を示した。
イ アの事務連絡により、都道府県等に対して、非常用設備等の耐震性の確保に係る項目を加えた事前協議等に用いるチェックリスト等を示すことにより、地方厚生(支)局において都道府県等が確認した内容を基に審査できるようにした。