独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(令和4年11月14日以降は独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構。以下「機構」という。)は、石炭又は亜炭を目的とする鉱業権者(注1)(租鉱権者(注2)を含む。以下「鉱業権者等」という。)が石炭鉱害賠償担保等臨時措置法(昭和38年法律第97号。昭和43年5月以降は石炭鉱害賠償等臨時措置法。以下「賠償法」という。)に基づき将来の沈下鉱害(注3)の賠償に要する費用の一部として積み立てた鉱害賠償積立金を管理している。資源エネルギー庁は、賠償義務を負う鉱業権者等(以下「賠償義務者」という。)の存否等により、鉱物の試掘、採掘等のために登録を受けた一定の土地の区域(以下「鉱区」という。)を有資力鉱区と無資力鉱区に区分している。このうち、無資力鉱区は、賠償義務者が存在しなかったり、通商産業局(平成13年1月6日以降は経済産業局)等において、賠償義務者がそれまで積み立てた鉱害賠償積立金に関する一切の権利を放棄することなどを条件として資力を有しないことの認定を行ったりした鉱区となっている(以下、無資力鉱区に係る賠償義務者を「無資力賠償義務者」といい、無資力鉱区に係る鉱害賠償積立金を「権利放棄等積立金」という。)。また、賠償法によると、賠償義務者は機構に対して取戻しの請求を行うなどして機構から鉱害賠償積立金を取り戻せることとなっている一方、取戻し以外の鉱害賠償積立金の処理については定められていない。しかし、権利放棄等積立金については、無資力賠償義務者からの取戻しが見込まれないにもかかわらず、取戻し以外の鉱害賠償積立金の処理が定められていないことなどにより、機構において長期にわたり積み立てられたままとなっていて、他に活用されていない事態が見受けられた。
したがって、資源エネルギー庁において、今後も無資力賠償義務者からの取戻しが見込まれない権利放棄等積立金について、必要な制度を整備するなどして国庫納付することも含めた活用を図るよう、資源エネルギー庁長官に対して令和4年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、資源エネルギー庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、資源エネルギー庁は、本院指摘の趣旨に沿い、今後も無資力賠償義務者からの取戻しが見込まれない権利放棄等積立金の活用について、現行の制度において機構が任意で国庫納付することが可能であることなどを確認し、機構において国庫へ納付する額を算定して同庁に報告することを検討するよう、5年6月に機構に対して文書を発する処置を講じていた。そして、機構は、同庁が発した文書を踏まえて検討し、同年9月に権利放棄等積立金相当額15億4847万余円を国庫に納付した。