内閣府は、令和2年4月に閣議決定された緊急経済対策の一環として、地方公共団体が地域の実情に応じてきめ細やかに必要な事業を実施することを目的として創設された新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(以下「コロナ交付金」という。)について、その基本的な枠組みとなる「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金制度要綱」等を定めるなどしている。これらによれば、コロナ交付金は、地方公共団体が作成した新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金実施計画(以下「実施計画」という。)に基づく交付対象事業に要する費用に対して交付することとされていて、新型コロナウイルス感染症への対応として効果的な対策であり、地域の実情に合わせて必要な事業であれば、原則として使途に制限はないとされている。また、地方公共団体は、実施した個々の交付対象事業(以下「交付金事業」という。)の終了後に、効果の測定(以下「効果検証」という。)を実施し、結果を公表するなど説明責任を果たすよう要請されている。そして、総務省は、2年度に内閣府から5兆0110億余円の予算の移替えを受けた後、同年度中に2兆6144億余円を支出したほか、3年度に2兆3958億余円を繰り越すなどしている。しかし、商品券等の配布事業において使用期限経過後の商品券等に係る未換金相当額等が事務委託等した商工会等に滞留するなどしている事態、金融機関から融資を受けた中小企業者等が負担した信用保証料の補助等事業において保証対象の債務に係る繰上償還に伴い生じた信用保証料等の過払い分の返金等(以下「過払分返金」という。)が地方公共団体に滞留している事態、水道料金等の減免事業において国又は地方公共団体により管理等が行われている施設(以下「公的機関」という。)の利用に係る水道料金等の減免額にコロナ交付金が充当されている事態、新型コロナウイルス感染症対策中小企業等持続化給付金(以下「持続化給付金」という。)の上乗せ事業において持続化給付金の給付に係る贈与契約が解除された場合に上乗せ分の給付が要件を満たすものであるか確認することが困難となっている事態及び交付金事業の適切な方法による効果検証が実施されていなかったり検証結果が公表されていなかったりしている事態が見受けられた。
したがって、内閣総理大臣及び総務大臣に対して4年10月に、次のとおり改善の処置を要求し及び意見を表示した。
本院は、内閣府本府及び総務本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、内閣府及び総務省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 内閣府は、4年11月に地方公共団体に対して事務連絡を発し、商品券等の配布事業について、商品券等の使用実績を把握するなどした上で、事業者等との間で商品券等の換金額によって精算するなどして使用期限経過後の商品券等に係る未換金相当額が事務委託等した事業者等に滞留することがないようにするなどの取扱いを定めて周知した。
イ 内閣府は、アの事務連絡により、繰上償還が行われた場合に信用保証料の補助等事業に係る過払分返金が地方公共団体に生ずる場合があることを周知するとともに、過払分返金が生じた場合には、コロナ交付金を国庫に返還するなどの取扱いを定め、適切に対応するよう周知した。
ウ 総務省は、4年11月に地方公共団体に対して事務連絡を発するなどし、信用保証料の補助等事業に係る過払分返金について、既に生じた過払分返金額等及び今後生ずる過払分返金額等の状況を把握して、把握した過払分返金額等について、補助対象事業費から除くなどして実績報告を行うとともに、コロナ交付金の額の確定後においてもコロナ交付金を国庫に返還する必要がないか確認した報告書を定期的に提出することとして、コロナ交付金を国庫に返還する仕組みを整備して、適切に処理するよう周知した。
エ 内閣府は、アの事務連絡及び4年12月に発した事務連絡により、水道料金等の減免事業について、公的機関を減免対象とすることはコロナ交付金の性質になじまないとする留意事項を示した。また、今後、実施計画に水道料金等の減免事業を掲げる場合は、公的機関を対象に含まない旨を記載させることとし、その旨を周知した。
オ 内閣府は、アの事務連絡により、地方公共団体が、国の補助金等の交付を受けていることを要件として独自の補助金等を交付するなどの事業を実施する際に、地方公共団体が国の補助金等の交付状況を国に確認することについての同意を交付対象者本人から得るなどして、当該交付状況に係る情報を利用するなどして当該補助金等の交付の適正性を確認する体制を整備するよう周知した。
カ 内閣府は、効果検証の方法を地方公共団体に対して周知する方策を検討し、アの事務連絡により、地方公共団体において、効果検証の実施状況について、同府が示した調査結果及び公表事例も参照し、公表事例における効果検証の手法も参考とした上で、適切な方法により、速やかに効果検証を実施して検証結果を公表するよう周知した。
今後、本院としては、過払分返金が生ずることなどに伴うコロナ交付金の国庫への返還の状況について注視していくこととする。