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  • 令和4年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第2節 国会からの検査要請事項に関する報告

参考:報告書はこちら

第1 東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組状況等について


要請を受諾した年月日
平成29年6月6日
検査の対象
内閣、内閣府、デジタル庁(令和3年9月1日設置)、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省、独立行政法人日本スポーツ振興センター等
検査の内容
東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組状況等についての検査要請事項
報告を行った年月日
令和4年12月21日

1 検査の要請の内容

会計検査院は、平成29年6月5日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月6日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。

一、会計検査及びその結果の報告を求める事項

  • (一) 検査の対象
    内閣、内閣府、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省、独立行政法人日本スポーツ振興センター等
  • (二) 検査の内容
    東京オリンピック・パラリンピック競技大会に関する次の各事項

    ① 大会の開催に向けた取組等の状況

    ② 各府省等が実施する大会の関連施策等の状況

2 検査の結果の主な内容

本院は、上記要請の東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「大会」という。)に向けた取組状況等に関する各事項について、合規性、経済性、効率性、有効性、透明性の確保(注1)及び国民への説明責任の向上(注1)等の観点から、次の点などに着眼して検査した。

(注1)
会計検査院法における「その他会計検査上必要な観点」に位置付けられるものである。

① 大会のために国が負担した経費は最終的にどのようになっているか、また、独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「JSC」という。)による大会の支援額はどのようになっているか。

② 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(26年12月31日以前は一般財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会。令和4年6月30日解散。以下「大会組織委員会」という。)、東京都、国及びJSCが大会のために負担した経費の総額はどのようになっているか。

③ 内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局(以下「オリパラ事務局」という。)、オリパラ事務局から事務の移管を受けた内閣官房オリンピック・パラリンピックレガシー推進室(以下「レガシー推進室」という。)及びスポーツ庁は、大会終了後、大会のために国が負担した経費の総額や2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会関係予算(以下「オリパラ関係予算」という。)の支出額等について、前記の要請により本院が会計検査を実施して元年12月4日に参議院に対して行った報告(以下「元年報告」という。)の所見を踏まえて、国民に対して十分な情報提供を行っているか。

④ 新型コロナウイルス感染症対策関連の追加経費や大会延期に伴う追加経費はどのようになっているか。

⑤ JSC、日本中央競馬会、東京都、大会組織委員会、東京都外の競技会場が所在する地方公共団体(以下「都外自治体」という。)である6県3市町等における大会施設の整備、大会のために取得した財産の活用状況等はどのようになっているか。大会終了後の国立競技場の運営管理、活用方法等の検討等について、元年報告以降の進捗状況はどのようになっているか。

⑥ 国が東京都を通じて大会組織委員会に交付する東京パラリンピック競技大会開催準備交付金(以下「パラリンピック交付金」という。)及び東京オリンピック・パラリンピック競技大会新型コロナウイルス感染症対策交付金(以下「コロナ対策交付金」という。)を財源の一部として実施される共同実施事業(注2)について、大会組織委員会による執行、共同実施事業管理委員会(注3)による確認及び東京都による負担金の額の確定は適切に行われているか。また、パラリンピック交付金及びコロナ対策交付金により東京都に造成された基金の残余額に係る国庫納付の状況はどのようになっているか。

⑦ 各府省等が実施する大会に関連して講ずべき施策(以下「大会の関連施策」という。)について、元年報告以降の実施状況はどのようになっているか。

⑧ 前記の要請により本院が会計検査を実施して平成30年10月4日に参議院に対して行った報告及び元年報告において課題等が見受けられた大会の関連施策の実施状況は改善されているか(以下、元年報告の検査結果に対して執られた処置の状況について確認する検査を「フォローアップ検査」という。)。

(注2)
共同実施事業  大会の準備及び運営のために、大会組織委員会、東京都、国等が役割分担及び経費分担に応じて負担する資金を使用して、大会組織委員会が実施する事業
(注3)
共同実施事業管理委員会  平成29年9月に、大会組織委員会、東京都及び国が、コスト管理・執行統制等の観点から、共同実施事業の適切な遂行に資する管理を行うことを目的として、大会組織委員会による各種取組等について確認の上、必要に応じて指摘等を行う協議の場として設立した。

検査の結果の主な内容は次のとおりである。

(1) 大会の開催に向けた取組等の状況

ア 大会の総経費

大会組織委員会が令和4年6月に公表した大会経費の最終報告では、大会経費(注4)の総額は1兆4238億円(注5)、このうち国の大会経費は1869億円とされている。

(注4)
大会経費  大会組織委員会は、大会経費の範囲について、過去に開催されたオリンピック・パラリンピック競技大会も含めて統一的な定義は存在しておらず、それぞれの大会ごとに公表された経費の対象範囲は必ずしも同一ではないと考えられるとしている。その上で、大会組織委員会は、大会経費の最終報告においては「大会に直接必要となる経費」を「大会経費」として取りまとめたとしている。
(注5)
大会経費の最終報告における大会経費は、大会組織委員会の負担分に、清算法人となる大会組織委員会の清算業務に必要な経費の見込額が含まれていたり、東京都の負担分に、大会終了後の4年度及び5年度の新規恒久施設の整備費用の計画額が含まれていたり、国の負担分に、国費の支出を伴わない経費(スポーツ振興くじの収益による国庫納付金の減少見合いの額)が含まれていたりなどしており、各主体の決算額とは異なるものとなっている。

今回、本院が検査したところ、国は、大会のために様々な経費を負担し、また、地方公共団体等が所有する大会施設の整備等への支援、大会組織委員会に対する職員の派遣等、様々な支援を実施していた。また、JSCはスポーツ振興くじの収益を財源として、大会の開催に係る助成を行っていた。大会のために国が負担した経費は3641億余円、JSCによる大会の支援額は1026億余円となっていた。そこで、これらと大会組織委員会が公表した大会経費の最終報告における大会組織委員会の負担分6404億円及び東京都の負担分5965億円を合算し、重複額計48億余円を控除した額(以下「大会の総経費」という。)は、1兆6989億余円(注6)となる。

(注6)
大会経費の最終報告における大会組織委員会の負担分6404億円、東京都の負担分5965億円については、国庫補助金等の交付を受けたものを除き、本院の検査の対象とはならないため、公表値をそのまま使用している。

イ 大会組織委員会、東京都及び国の大会に関する経費の公表状況等

大会組織委員会、東京都及び国は、大会に関する経費をそれぞれ公表している。このうち、大会組織委員会の大会経費には、大会におけるそれぞれの役割分担及び経費分担に関する基本的な方向性についての合意(注7)(以下「大枠の合意」という。)並びに追加経費の負担についての合意(注8)により国の負担とされた国立競技場の整備費用、パラリンピック交付金及びコロナ対策交付金が含まれているが、これら以外のオリパラ関係予算を含む行政的経費は含まれていない。

(注7)
平成29年5月に、大会組織委員会、東京都、国及び11都外自治体は、大会におけるそれぞれの役割分担及び経費分担に関する基本的な方向性について、「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の役割(経費)分担に関する基本的な方向について」のとおり合意した。
(注8)
令和2年12月に、大会組織委員会、東京都及び国は、「東京オリンピック・パラリンピック競技大会における新型コロナウイルス感染症対策調整会議」が大会における新型コロナウイルス感染症対策について取りまとめた中間整理を踏まえた必要な対策を着実に実施して、その際に、それぞれの役割に基づいて責任を果たすこととして、必要となる追加経費の負担について、「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の追加経費の負担について」のとおり合意した。

国は、「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の準備及び運営に関する施策の推進を図るための基本方針」等に基づき大会の関連施策を実施することとしていて、オリパラ事務局は、各府省等がオリパラ関係予算と整理した各年度の予算を公表していたが、その最終的な支出額を事後的に公表することとはなっていない。オリパラ関係予算には、大会組織委員会や大会施設に対する支援額等が含まれていないほか、スポーツ振興くじの収益による国庫納付金の減少見合いの額も含まれておらず、これらを含めた大会のために国が負担する経費の総額は示されていなかった。オリパラ関係予算は、各年度の予算額をその都度公表していたものであり、大会組織委員会のV予算(注9)や東京都の大会経費及び大会関連経費(注10)とは異なり、大会終了までの間に大会のために国が負担する経費の総額(見込額)を示したものではない。また、国は、大会組織委員会及び東京都の大会経費並びに大会のために国が負担した経費の総額については、大会の前後を通じて取りまとめていない。これについて、オリパラ事務局は、国は大会運営の当事者ではないことから、大会の総経費を示すことは行っていないとしていた。オリパラ事務局は4年3月に廃止され、オリパラ事務局の事務の移管を受けたレガシー推進室も同年7月に廃止された。そして、レガシー推進室から事務の移管を受けたスポーツ庁は、既に同年6月に大会組織委員会により大会経費の最終報告が公表されているとして、今後、国として、大会の追加経費を含むオリパラ関係予算の支出額等を取りまとめて公表する予定はないとしている。

(注9)
V予算  大会組織委員会の収支に加えて、東京都及び国に係る大会終了までの間に必要な大会経費を見込んだ予算
(注10)
大会関連経費  本来の行政目的のために行われる事業であるが、大会の成功にも資する事業の経費

ウ 大会のために国が負担した経費

本院の検査結果に基づき、大会のために国が負担した経費を集計したところ3641億余円(うち大会の追加経費494億余円)となっており、その内訳は、大会の準備、運営等に特に資する事業(以下「大会に特に資する事業」という。)の支出額(国立競技場の整備費用を含む。)計3554億余円、国による国立競技場以外の大会施設の整備等への支援計43億余円、大会組織委員会に対する国の職員派遣等の経費及びオリパラ事務局に係る人件費計43億余円となっていた。

エ JSCによる大会の支援額

大会の開催に係る公的支援には、国が経費を負担して実施するもののほか、JSCがスポーツ振興くじの売上金額の一部を財源として実施するものなどがあり、JSCによる大会の支援額は計1026億余円となっていた。その内訳は、国立競技場の整備費用等におけるJSCの負担額計870億余円、地方公共団体又はスポーツ団体が行うスポーツ振興に係る事業に対するスポーツ振興くじ助成の一つの事業として実施していた「東京オリンピック・パラリンピック競技大会等開催助成」の助成額計156億余円となっていた。

オ 国立競技場の整備費用等の状況

国立競技場の民間事業化等に向けた検討状況を確認したところ、4年10月末現在、民間事業化の具体的な事業スキーム等については決まっていない状況となっていた。そして、元年11月の国立競技場の完成後に生じた維持管理費の状況を確認したところ、国立競技場の運営による自己収入(利用料金の徴収等。以下「運営収入」という。)では不足が見込まれることを考慮するなどして、国からJSCに対して、運営費交付金の特殊経費として元年度から4年度までに計56億余円の予算措置が講じられていた。また、国立競技場の敷地のうち、都有地及び区有地の賃借料に対して運営費交付金の特殊経費として、4年度に、別途、10億余円の予算措置が講じられていた。

カ 大会終了後のオリパラ開催準備基金におけるパラリンピック交付金相当額及びコロナ対策交付金相当額の保管額等の状況

東京都は、国から交付を受けたパラリンピック交付金450億円及びコロナ対策交付金560億円を東京オリンピック・パラリンピック開催準備基金(以下「オリパラ開催準備基金」という。)に積み立てて経理している。東京都は、4年3月に、大会組織委員会との間で3年度の共同実施事業負担金の額を確定して、同年6月には共同実施事業における大会組織委員会、東京都、国それぞれの負担額は確定していた。そして、同年10月末現在のオリパラ開催準備基金における交付金相当額の保管額は、パラリンピック交付金相当額71億余円及びコロナ対策交付金相当額309億余円の合計380億余円となっていた。しかし、これについて、同年10月末現在、国庫納付の手続がとられていない。東京都によれば、国庫納付の予定時期については、文部科学省との間で調整中であるとしている。

キ パラリンピック経費のうち、適切ではないと認められたもの

大会組織委員会がパラリンピック競技大会の競技会場の整備及び運営に必要な経費等(以下「パラリンピック経費」という。)として執行した事業についてみたところ、元、3両年度のパラリンピック経費計1888万余円(うちパラリンピック交付金相当額計472万余円)について、車椅子アスリートのバスの乗降をより円滑に行うためのスロープが大会期間中に使用されていなかったなどの適切ではない事態が見受けられた。

(2) 各府省等が実施する大会の関連施策等の状況

ア 大会の関連施策の支出額等

本院が、3年6月に公表された「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の準備及び運営の推進に関する政府の取組の状況に関する報告」に記載された大会の関連施策に係る事業について集計したところ、計443事業となっていた。そして、大会に特に資する事業の支出額は11府省等の114事業計3554億余円、国の大会関連経費(注11)は14府省等の329事業計1兆3002億余円となっていた。

(注11)
国の大会関連経費  国の大会の関連施策に係る事業のうち、大会に特に資する事業以外の事業(本来の行政目的のために実施する事業であり、大会や大会を通じた新しい日本の創造にも資するが、大会に直接資する金額を算出することが困難な事業等)の支出額である。これらの事業の支出額は、東京都が公表している大会関連経費の「本来の行政目的のために行われる事業であるが、大会の成功にも資する事業の経費」に相当すると考えられる。

イ フォローアップ検査において課題が見受けられたもの

オリパラ事務局は、住民等と大会等に参加するために来日する選手等との交流を行い、スポーツの振興等を図る取組を行う地方公共団体をホストタウンとして登録する事業を平成28年1月から行っていて、令和3年度末の登録数は計533団体となっている。ホストタウンとして登録された地方公共団体(以下「登録団体」という。)は、毎年度、交流計画の実施に要する経費のうち登録団体が負担する額の2分の1について、特別交付税の地方財政措置を受けることができることとなっている。登録団体が交流計画に記載した施策等のうち当該年度に実施予定の事業であって、特別交付税の対象となる事業(以下「対象事業」という。)のうち元年度から3年度までのものについて、特別交付税の控除措置(注12)の状況をみたところ、基礎数値(注13)を報告したものの対象事業に係る経費が生じていない団体が計117団体あり、このうち、控除措置が行われた又は行われる予定としているのは計13団体(117団体の11.1%)となっていた。したがって、適切に控除措置を行うことができるよう、総務省は、元年度から3年度までの特別交付税の交付を受けた団体に対して実際に要した経費の報告を求める必要があると認められた。

(注12)
控除措置  特別交付税に関する省令(昭和51年自治省令第35号)の規定に基づき、前年度以前の特別交付税の各事項の算定額について、必要な経費の見込額等により算定した額が実際に要した経費を著しく上回り、又は算定の基礎に用いた数について誤りがあることなどにより特別交付税の額が過大に算定されたと認められるときに、特別交付税の算定の基礎とすべきものとして総務大臣が調査した額を控除する措置
(注13)
基礎数値  対象事業の実施に要する経費のうち登録団体が負担する額(見込額を含む。)

ウ 元年報告以降の検査において課題が見受けられたもの

農林水産本省は、発信力のあるトップアスリートに高品質な日本産食材を体験してもらいその魅力を世界に発信してもらうことなどを目的として、選手村のメインダイニングホールにおいて国産豚肉を使用したメニューの提供を行うこととする「選手村における日本産食材提供による魅力発信業務」に係る請負契約(契約金額1914万余円)を締結している。しかし、実際の業務とは異なる内容の仕様書を作成していたり、履行期限までに給付が完了していないのに契約金額全額を支払っていたり、食材の産地表示が確実に行われるかを確認することなく契約を締結しており、本件契約で調達した日本産食材について産地表示が行われない状況で提供されていたりしていた。

3 検査の結果に対する所見

大会の招致に当たり、政府は、国際オリンピック委員会が求める財政に関する政府保証書を発行しており、万が一、大会組織委員会が資金不足に陥り、東京都がこれを補塡しきれなかった場合は政府が補塡するとされていた。政府保証書の性格については、政府としての政治的な意思の表明として発出されたものであるなどとされているが、このような政府としての意思の表明を行う場合には、大会の招致及び実施に対する国民の理解に資するよう、大会運営の財政に関する情報を示すことが重要であり、大会の支援を行う立場である国としては、大会の開催に至るまで、適時に、大会組織委員会が公表したV予算等を踏まえて、大会のために国が負担する経費の総額(見込額)を示すことが重要であったと考えられる。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、大会の開催時期は延期され、原則として無観客での開催となるなど、大会の実施環境が大きく変わる中で、結果として、国が大会組織委員会の資金不足を補塡するような状況には至らなかったものの、大枠の合意等に基づき大会のための経費を負担してきた国としては、大会に対する国の支援の状況を明らかにして、大会の招致及び実施に対する国民の理解に資するよう、大会のために国が負担した経費及びこれを含む大会の総経費を公表することが重要であったと考えられる。

大会終了後に、大会組織委員会により大会経費の総額が1兆4238億円と公表されたものの、大会のために国が負担した経費の総額及びこれを含む大会の総経費は明らかにされないままとなっている。

今回、本院は、大会のために国が負担した経費及びJSCによる大会の支援額を明らかにするとともに、これに大会組織委員会及び東京都が公表した大会経費を合計した額を1兆6989億余円と示した。

今後、大会と同様に、地方公共団体や民間団体が実施主体となる国際的な大規模イベントが招致され、政府が財政に関する政府保証書を発行して、必要な協力及び支援を行うなど相当程度関与することが考えられる。そのような場合に、イベントの招致及び実施に対する国民の理解や判断に資するよう、国は、イベントの実施までの間に適時に、イベントの準備段階からイベント終了までに国が負担することとなる経費の総額(見込額)を明らかにすることが望まれる。また、イベント終了後には、その事後評価に資するよう、実際に国が負担した額及びイベント全体の経費の総額について国民に明らかにすることが望まれる。

また、国立競技場については、運営収入では維持管理費を支弁できず、相当の国費が充てられていることから、民間事業化に向けた事業スキームの検討が遅滞なく行われることが重要である。

さらに、4年6月に東京都と大会組織委員会との間で共同実施事業の最終的な精算が終了しているが、同年10月末現在、オリパラ開催準備基金において、交付金相当額380億余円が保管されていることなどから、国が東京都に交付したパラリンピック交付金及びコロナ対策交付金に係る基金の残余額について、国庫納付が行われる必要がある。

ついては、検査の結果を踏まえて、国及びJSCは、次の点に留意するなどして、大会終了後の課題について、関係者と相互に連携を図り、適切に対応していく必要がある。

ア 国は、今後、国際的な大規模イベントについて、実施主体等が資金不足に陥った際に政府が補塡する旨の政府保証書を発行して、協力及び支援を行うなど相当程度国が関与することが見込まれる場合には、イベントのために国が負担する経費の総額(見込額)をイベントの実施までに適時に明らかにするとともに、イベント終了後にはその執行状況を明らかにし、また、イベント全体の経費の総額に関する情報を取りまとめて明らかにする仕組みをあらかじめ整備するなど、イベントの招致及び実施に対する国民の理解に資するよう十分な情報提供を行う態勢を検討すること

イ 文部科学省及びJSCは、国立競技場の民間事業化に向けた事業スキームの検討を遅滞なく進めていくこと

ウ 文部科学省は、東京都と調整の上、パラリンピック交付金及びコロナ対策交付金に係る基金の残余額について、国庫納付の手続を行うこと