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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書
  • 令和5年5月

防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策に関する会計検査の結果について


別図表14 事業の成果物の活用状況の詳細

対策名等 事業の成果物が十分に活用されるよう引き続き取り組む必要がある状況
「広域災害・救急医療情報システム(EMIS)を活用した情報収集体制の強化に関する緊急対策」(No.57)
厚生労働省は、「医療施設及び関係者の絶対的不足・被災、支援ルートの途絶、エネルギー供給の途絶による医療機能の麻痺」を回避するための施策に係る対策として「広域災害・救急医療情報システム(EMIS)を活用した情報収集体制の強化に関する緊急対策」(No.57)を実施している。
同対策は、災害時に被災した医療機関の支援に必要な情報を十分に把握するために、同省が、広域災害・救急医療情報システムの操作性・機能の改善等のシステム改修等を実施する対策である。そして、同省は、令和元年度に、同対策として、eラーニング機能の導入、訓練機能の強化等のシステム改修等を実施していた(eラーニング機能の導入及び訓練機能の強化に係る請負代金相当額7351万余円)。
このうち、eラーニング機能の導入及び訓練機能の強化は、同省によると、災害発生時に速やかに応急対策等を講ずるために、都道府県、市町村、医療機関等の関係機関の職員がシステムの操作に習熟して、災害発生時に迅速かつ的確に情報入力を行えるようにしておくことが重要であることから、都道府県が従前から実施している集合研修等に加えて、各関係機関が自主的に入力訓練等を行えるようにするなどのために実施したものであるとしていた。
しかし、これらの機能に係る2年6月から4年6月までの間の利用状況を確認したところ、eラーニング機能は、システムに登録された関係機関(約17,000機関)による受講済件数が1,836件、訓練機能は、システムに登録された医療機関(約15,000機関)のうち個別訓練(各医療機関の職員が個別に行う練習)を利用したのが2,389機関、合同訓練(複数の医療機関が合同で行う訓練)を実施したのが923機関となっていて、いずれも利用が低調となっていた。
「Lアラートを活用した災害対応支援システム構築に関する緊急対策」(No.83)
総務省は、「災害時に活用する情報サービスが機能停止し、情報の収集・伝達ができず、避難行動や救助・支援が遅れる事態」等を回避するための施策に係る対策として「Lアラートを活用した災害対応支援システム構築に関する緊急対策」(No.83)を実施している。
同省は、元年度に、同対策として、災害時に地方公共団体等が放送局等を通じて地域住民等に対して必要な情報を伝達するための共通基盤であるLアラートの地図化システムにおいて、気象関係情報、他団体の避難情報の発令状況の表示等を可能とし、災害対応業務を円滑かつ迅速に行えるように機能拡張する際の標準仕様の策定を実施していた(事業費1億9998万円)。
しかし、同省によると、4年6月末現在で、本件標準仕様の主要な利用者である47都道府県のうち標準仕様を用いて機能拡張を実施した都道府県はなく、同対策は、同月末現在では、災害対応業務を円滑かつ迅速に行えるようにすることに十分に寄与していなかった。
そして、10道県に対して、導入予定等を確認したところ、次の更新の際に検討するなどとしていて、具体的な導入予定が定まっていなかった。
なお、同省によると、これまでも都道府県職員向けの研修において標準仕様について周知するなどしているものの、本件標準仕様の導入は、都道府県においてシステム改修のための予算を確保するなどの準備に時間を要するものであり、引き続き標準仕様を用いた機能拡張が実施されるよう取り組んでいくとしている。
「パブリックビューイング会場等向けの避難情報の提供に係る緊急対策」(No.85)
総務省は、「災害時に活用する情報サービスが機能停止し、情報の収集・伝達ができず、避難行動や救助・支援が遅れる事態」を回避するための施策に係る対策として「パブリックビューイング会場等向けの避難情報の提供に係る緊急対策」(No.85)を実施している。
同対策は、災害発生時に避難情報が提供できず、適切な避難行動が困難な事象が生じたことから、4K8K(次世代の映像規格で現行ハイビジョンを超える超高画質の映像)の上映施設における映像配信プラットフォーム(ネットワーク上で映像コンテンツの入力、変換、配信等を行うもの)に避難情報を発信する機能に係る実証事業を行い、当該機能に係る標準仕様を策定する対策とされている。そして、同省は、元年度に、同対策として、外部のコンサルタント会社に請け負わせて実証事業を行い、映像配信プラットフォームに係る標準仕様を策定した(事業費7095万円)。
実証事業の報告書によれば、標準仕様の導入対象となる公共施設等(劇場、プラネタリウム等)は全国に300程度あるとされているが、4年6月末までに標準仕様を導入した公共施設等は、同省が把握している範囲で7施設(うち4施設は特定のイベントの開催期間のみの一時的な導入)にとどまっており、同対策は、同月末現在では、災害発生時における避難情報の提供に十分に寄与するものとなっていなかった。
なお、同省によると、標準仕様の導入が進んでいなかったのは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、公共施設等が施設の使用制限、催物の開催の自粛等に係る要請を受けて、多数の人が集まるパブリックビューイング等のイベントが中止されたことなどのためであり、今後、導入が進むように周知するなどして取り組んでいくとしている。
「土砂災害対策のためのソフト対策に関する緊急対策」(No.93)
国土交通省は、「大規模な火山噴火・土砂災害(深層崩壊)等による多数の死傷者の発生」等を回避するための施策に係る対策として「土砂災害対策のためのソフト対策に関する緊急対策」(No.93)を実施している。
同対策は、災害リスク情報の整備が不十分な都道府県において、土砂災害警戒区域及び土砂災害特別警戒区域(以下、これらを合わせて「土砂災害警戒区域等」という。)に係る基礎調査を実施するなどの対策である。そして、同省は、同対策として事業を実施する地方公共団体に対して、緊急対策予算に基づき防災・安全交付金等を交付している。
「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(平成12年法律第57号)等によれば、都道府県は、基礎調査の結果を市町村に通知するとともに公表しなければならないこととされ、基礎調査の結果の公表後、市町村と連携して、土砂災害警戒区域等の指定の手続を速やかに進めることとされている。また、都道府県による土砂災害警戒区域等の指定後、市町村は、土砂災害警戒区域における円滑な警戒避難を確保する上で必要な事項を住民等に周知させるために、ハザードマップに反映することとされている。なお、ハザードマップの基となる市町村地域防災計画については、毎年検討を加え、必要があるときは修正することとなっている。
しかし、9道県が基礎調査を実施した結果、土砂災害警戒区域等の指定の条件に該当するとした箇所が所在する228市町村のうち113市町村においては、基礎調査の結果の公表後、指定されるまでの期間(4年6月末現在で土砂災害警戒区域等の指定がされていない箇所については、基礎調査の結果の公表後、同月末までの期間)が2年以上となっていたり(16市町)、土砂災害警戒区域等の指定後、当該情報がハザードマップに反映されるまでの期間(同月末現在でハザードマップに反映していない市町村については、土砂災害警戒区域等の指定後、同月末までの期間)が1年以上となっていたり(98市町村)していた(交付金相当額計6億2610万余円)。