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  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第1 内閣府(内閣府本府)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

沖縄科学技術大学院大学学園補助金等の交付額の算定に当たり、学校法人沖縄科学技術大学院大学学園が受け取った保険金等の取扱いを明確にすることにより、交付額の算定が適切に行われるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)内閣本府 (項)沖縄政策費
部局等
内閣府本府
補助の根拠
沖縄科学技術大学院大学学園法(平成21年法律第76号)、予算補助
補助事業の概要
沖縄科学技術大学院大学の設置・運営等に要する経費に対して補助するもの
損害回復費用に係る補助対象経費
4467万余円(平成30年度~令和5年度)
上記に係る国庫補助金交付額
4467万余円
学校法人沖縄科学技術大学院大学学園が受け取った保険金等のうち、損害回復費用に充当されていなかった額
3135万余円(平成30年度~令和5年度)
上記について、補助対象経費とした損害回復費用に保険金等を充当することとすると、減少すると認められた国庫補助金交付額
3135万円

1 学園補助金の概要等

(1) 学園補助金等の概要

沖縄科学技術大学院大学学園法(平成21年法律第76号)によれば、国は、予算の範囲内において、学校法人沖縄科学技術大学院大学学園(以下「学園」という。)に対して、沖縄科学技術大学院大学の設置・運営、学園以外の者と共同して行う研究の実施等の同法に規定する業務に要する経費について、その2分の1を超えて補助することができるとされている。

そして、内閣府は、学園に対して、沖縄科学技術大学院大学学園補助金(以下「学園補助金」という。)及び沖縄科学技術大学院大学学園施設整備費補助金(以下「施設整備費補助金」という。)を交付している(以下、これらを合わせて「学園補助金等」という。)。

沖縄科学技術大学院大学学園補助金交付要綱(平成23年府沖振第279号)及び沖縄科学技術大学院大学学園施設整備費補助金交付要綱(平成17年府沖振第581号。以下、これらを合わせて「交付要綱」という。)によれば、内閣総理大臣は、同大学の設置・運営等に要する経費を補助対象経費として学園補助金を、また、学園が行う施設の整備(災害復旧を含む。)に要する経費を補助対象経費として施設整備費補助金を、それぞれ予算の範囲内で交付することとされている。

(2) 学園の資産等に対して学園が締結するなどした保険契約

学園は、台風、落雷等の災害や盗難等の偶発的な事故により構内に所有する建物、屋外設備・装置等の資産に生じる損害、その他学園に生じる損害に備えて保険会社との間で火災保険契約、海外旅行保険契約、自動車保険契約、学生教育研究賠償責任保険契約(注)等を締結するなどしている(以下、これらの保険契約の対象となる学園に生じた損害を「学園損害」という。)。

そして、学園は、それぞれの保険契約に基づき、保険会社に対して保険料等を支払い、学園損害が発生した場合、その回復を図るため実施する修繕工事等の費用(以下「損害回復費用」という。)に係る学園損害の補償として、保険会社に対して請求を行うことなどにより、保険金等を受け取ることが可能となっている。

学園によれば、これらの保険契約については、損害回復費用に受け取った保険金等を充当して、損害回復費用の財源を確実に確保して運営に支障が生じないようにするためのものであるとしている。

(注)
学生教育研究賠償責任保険契約  公益財団法人日本国際教育支援協会の賛助会員校に在籍する学生を被保険者(補償を受けられる者)とする、同協会と保険会社との間の団体契約であり、学園は、当該契約に学生全員を加入させ、同協会に対して保険料相当額を支払っている。そして、学生による学園損害が発生した場合、当該契約に基づき、学生が保険会社に対して請求する保険金について、学生が保険会社に指図することにより、学園損害に応じた保険金相当額を損害を受けた学園が保険会社から直接受け取ることが可能となっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、学園補助金等の交付額の算定に当たり、学園損害の補償として学園が受け取った保険金等が適切に考慮されているかなどに着眼して、平成30年度から令和5年度までの間に学園に交付された学園補助金等の補助対象経費に含まれる損害回復費用計4467万余円(学園補助金等交付額同額)を対象として検査した。

検査に当たっては、学園において、学園補助金等に係る実績報告書等の書類を確認するなどするとともに、内閣府本府において、学園が締結するなどした保険契約に基づいて受け取った保険金等の取扱いについて確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

学園は、保険金等を実際に受け取るまでには時間を要すること、保険会社から受け取った保険金等のみでは損害回復費用の全額を賄えるか分からないことなどから、平成30年度から令和5年度までの間に発生した災害、盗難等により損害を受けた学園の資産等について、早急に修繕工事等を行い通常どおりに学園の運営をすべく学園補助金等を充当して学園損害に係る修繕工事等を行っていた。そして、平成30年度から令和5年度までの間に学園が支出した損害回復費用計6804万余円のうち、修繕工事等の実施前に保険金等を受け取っていたことから、これを財源とした損害回復費用計2337万余円を除く残額の4467万余円を各年度の補助対象経費に含めて同額の学園補助金等の交付を受けていた。

他方、学園は、災害等により学園損害が発生したため、保険会社と締結するなどした火災保険契約等の各種保険契約に基づき、学園損害に対して業者から徴した修繕工事費等に係る見積書等を保険会社に送付して保険金等を請求するなどして、保険会社から上記の損害回復費用6804万余円に係る学園損害の補償として保険金等計5473万余円を受け取っていた。

しかし、内閣府は、保険金等の取扱いについて交付要綱等に特段の定めをしていなかった。このため、上記の保険金等5473万余円のうち、前記のとおり2337万余円については損害回復費用に充当されていたものの、学園補助金等の額の確定後に受け取るなどした保険金等3135万余円については補助対象経費とした損害回復費用に充当されていなかった。

そこで、学園補助金等の交付額の算定に当たり、補助対象経費とした損害回復費用4467万余円に保険金等3135万余円を充当することとして交付額を算出すると、国庫補助金交付額は当初交付額と比べて計3135万余円減少することになると認められた。

上記について、事例を示すと次のとおりである。

事例

学園は、令和3年8月の落雷による第1エネルギーセンター特高電気室A系制御用蓄電池等の損傷を復旧するための修繕工事等に係る契約計12件、計2457万余円の損害回復費用を補助対象経費に含めて3年度に同額の学園補助金の交付を受けていた。

他方、学園は、構内に所有する建物、屋外設備・装置等の資産が損害を受けた場合に備えて、2年9月に保険期間を1年として保険会社との間で締結した火災保険契約に基づき、同修繕工事等に係る見積書を同社に提出するなどして保険金を請求して、損害回復費用に係る学園損害の補償として学園補助金の額の確定後である4年8月に保険金2063万余円を受け取っていた。

そこで、学園補助金の交付額の算定に当たり、補助対象経費とした損害回復費用2457万余円に保険金2063万余円を充当することとして交付額を算出すると、国庫補助金交付額は当初交付額と比べて2063万余円減少することになると認められた。

このように、内閣府が保険金等の取扱いについて交付要綱等に特段の定めをしていなかったため、学園において受け取った学園補助金等と保険金等との合計額が補助対象経費とした損害回復費用を超過していた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、内閣府において、学園補助金等の交付額の算定に当たり、保険金等の取扱いについて検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

本院の指摘に基づき、内閣府は、6年8月に、学園に対して通知を発して、毎年度、学園補助金等の交付決定において、学園が受け取った保険金等を損害回復費用に充当することとし、学園補助金等の額の確定後に保険金等を受け取ることとなった場合には、当該保険金等を補助対象経費とした損害回復費用に充当し、充当した額を補助対象経費から除外する修正を行った実績報告書を再提出させるなどの条件を付した上で学園補助金等の交付額の算定を行うこととする処置を講じた。