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  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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特別交付税の額の算定に当たり、算定の対象とならない経費を含めていたこと、特定財源として国庫補助金等を控除していなかったこと、他の算定事項で算定した経費を重複して含めていたことなどにより、特別交付税が過大に交付されていたもの[総務本省](31)―(34)


所管、会計名及び科目
内閣府、総務省及び財務省所管
交付税及び譲与税配付金特別会計 (項)地方交付税交付金
部局等
総務本省
交付の根拠
地方交付税法(昭和25年法律第211号)
交付先
市3、町1
特別交付税交付額
15,499,701,000円(令和3年度~5年度)
過大に交付された特別交付税の額
49,829,000円(令和3年度~5年度)

1 特別交付税の概要

総務省は、地方交付税法(昭和25年法律第211号)に基づき、普通交付税の算定方法によっては捕捉されなかった特別の財政需要があるなどの地方団体に特別交付税を交付している。

特別交付税の額の算定方法は、特別交付税に関する省令(昭和51年自治省令第35号。以下「省令」という。)において、特別の財政需要として算定の対象となる事項(以下「算定事項」という。)ごとに定められている。算定事項には、移住・定住対策に要する経費(以下「移住定住経費」という。)、地方創生の推進に要する経費(以下「地方創生経費」という。)、原油価格高騰対策に要する経費(以下「高騰対策経費」という。)等がある。

地方交付税法等に基づき、市町村は当該市町村に該当する算定事項ごとに特別交付税の額の算定に用いる資料等(以下「算定資料」という。)を作成して都道府県に提出することとなっており、都道府県は管内市町村から提出された算定資料の審査を行って総務省に送付することなどとなっている。そして、同省は、都道府県から送付された算定資料により、各地方団体に交付すべき特別交付税について、額を算定して決定し、交付することとなっている。

省令、算定資料の記載要領等(以下「省令等」という。)によれば、特別交付税の額の算定は市町村が負担する額に基づくことなどとされ、算定の対象となる経費が算定事項ごとに定められている(以下、特別交付税の額の算定の対象となる市町村が負担する額を「市町村負担額」という。)。そして、地方創生経費については、地方創生推進交付金(以下「交付金」という。)を受けて施行する事業に要する経費のうち、交付金の交付額及び地方債を起こすことができる事業に係る経費を除いた額から、更に交付金以外の国庫補助金等の特定財源等を控除した額を市町村負担額とすることなどとされている(参照)。また、高騰対策経費については、公共施設等における燃料費の高騰により増加した経費等の原油価格高騰対策に関する取組に要する経費のうち、国庫補助金等の特定財源等を控除した額を市町村負担額とすることなどとされている。

そして、省令等によれば、算定資料の記載に当たり、他の算定事項において特別交付税が措置される経費については、これを重複計上しないよう除外することとされている。

図 特別交付税の額の算定に係る概念図(地方創生経費の例)

特別交付税の額の算定に係る概念図(地方創生経費の例)

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、特別交付税の額が適正に算定されているかなどに着眼して、総務本省、8県及び9都道県の63市町村において、令和3年度から5年度までの間に交付された特別交付税を対象として、算定資料等を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査の結果、4道県の4市町において、算定資料の作成に当たり、算定の対象とならない経費を含めていたこと、特定財源として国庫補助金等を控除していなかったこと、他の算定事項で算定した経費を重複して含めていたことなどにより、4市町に交付された特別交付税計15,499,701,000円のうち計49,829,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、4道県の4市町において省令等の理解、算定資料の確認等が十分でなかったこと、4道県において市町の算定資料の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

岩手県岩手郡葛巻町は、令和3年度に、地方創生経費の算定資料の作成に当たり、市町村負担額を90,619,000円として、地方創生経費に係る算定額を含む特別交付税410,706,000円の交付を受けていた。

しかし、同町は、3年度の交付金事業として実施した公共施設整備事業が、地方創生経費の算定の対象とならない地方債を起こすことができる事業であったにもかかわらず、同事業に係る経費を誤って地方創生経費の算定の対象としていたため、地方創生経費に係る市町村負担額45,850,000円が過大となっていた。

したがって、適正な市町村負担額に基づいて特別交付税の額を算定すると、374,026,000円となることから、特別交付税36,680,000円が過大に交付されていた。

<事例2>

新潟市は、令和3、4両年度に、高騰対策経費の算定資料の作成に当たり、市町村負担額を3年度244,433,000円、4年度266,353,000円として、高騰対策経費に係る算定額を含む特別交付税、3年度3,512,023,000円、4年度4,773,372,000円、計8,285,395,000円の交付を受けていた。

しかし、同市は、3、4両年度の算定資料の作成に当たり、公共施設等における燃料費の高騰分のみを計上すべきところ、清掃施設、公用車の一部において、誤って燃料費の全額を計上していたため、高騰対策経費に係る市町村負担額、3年度3,371,000円、4年度7,636,000円が過大となっていた。

したがって、適正な市町村負担額に基づいて特別交付税の額を算定すると、3年度120,531,000円、4年度129,359,000円、計249,890,000円となることから、特別交付税、3年度1,686,000円、4年度3,818,000円、計5,504,000円が過大に交付されていた。

以上を道県別に示すと、次のとおりである。

 
道県名
交付先
算定事項
年度
特別交付税交付額
過大に交付された特別交付税の額
摘要
          千円 千円  
(31)
北海道
札幌市
移住定住経費
3 4,950,177 1,095
他の算定事項で算定した経費を重複して含めるなどしていたもの
(32)
岩手県
岩手郡
葛巻町
地方創生経費
3 410,706 36,680
算定の対象とならない経費を含めていたもの
(33)
山形県
新庄市
高騰対策経費
4、5 1,853,423 6,550
国庫補助金等を控除していなかったもの
(34)
新潟県
新潟市
3、4 8,285,395 5,504
算定の対象とならない経費を含めていたもの
(31)―(34)の計 15,499,701 49,829