ページトップ
  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第3 外務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

対外発信拠点として世界3都市に設置されているジャパン・ハウスの運営等業務契約において、委託費業務に伴って生じた収入の残余である余剰額を委託事業費に充当する時期や方法等について仕様書等に具体的に明記することにより、委託費業務に伴って生じた収入が委託事業費に確実に充当されるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)外務本省 (項)広報文化交流及報道対策費
部局等
外務本省
契約名
ジャパン・ハウスの運営等業務(サンパウロ)等3件
契約の概要
ジャパン・ハウスの施設維持管理、事業運営等を行うもの
契約の相手方
株式会社電通、ジャパン・エイチ・エル・リミテッド、株式会社電通ライブ
契約
平成31年4月、令和元年7月 随意契約
委託費の支払額
180億1635万余円(令和元年度~5年度)
上記のうち節減できた委託費の支払額
3億7809万円

1 ジャパン・ハウスの運営等業務の概要

(1) ジャパン・ハウスの運営等業務契約の概要

外務省は、従来日本への関心が必ずしも高くなかった人々を含めた幅広い層に対し、日本の多様な魅力や政策・取組を発信しながら、親日派・知日派の裾野を拡大していくことを目的として、サンパウロ、ロンドン及びロサンゼルスの世界3都市に対外発信拠点となる「ジャパン・ハウス」を設置し、運営している(以下、各都市のジャパン・ハウスをそれぞれ「JHサンパウロ」、「JHロンドン」及び「JHロサンゼルス」という。)。

外務省は、ジャパン・ハウスの施設維持管理、事業運営等を行う運営等業務について、安定的に事業を実施するために、複数年度の業務を一括して委託し実施することとしている。そして、令和元年度から5年度までの5年間を契約期間として、元年度に、5か年度の国庫債務負担行為により、JHサンパウロについては株式会社電通と、JHロンドンについてはジャパン・エイチ・エル・リミテッドと、JHロサンゼルスについては株式会社電通ライブと、それぞれ運営等業務契約(以下「契約」という。)を締結している。

(2) 委託費を用いて実施する業務に伴う収入の取扱い

契約の仕様書によれば、将来的に漸次政府予算への依存度を軽減していくべく、外務省からの委託費を用いて実施する業務(以下「委託費業務」という。)に伴う収入(注)(スポンサーシップ、年会費、入場料等)の増加に向けた受託者の積極的な創意工夫が期待されており、この収入は、専ら委託費業務に必要な経費(以下「委託事業費」という。)に充当することとされている。また、契約期間終了後に精算額を確定した結果、外務省からの委託費及び委託費業務に伴って生じた収入の合算(以下「収入合算額」という。)から精算額を差し引いても余剰が生じる場合は、その扱いについて受託者は同省と協議することとされている。

(注)
仕様書によれば、受託者は委託費業務に伴う収入のうち、スポンサーシップ、年会費及び入場料から得られる収入については、15%を上限とする一般管理費を受領することができるとされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性等の観点から、契約に係る経理処理が仕様書等に従って適切に行われているかなどに着眼して、元年度から5年度までの間の委託費の支払額計180億1635万余円(うちJHサンパウロに係る支払額61億3939万余円、JHロンドンに係る支払額60億0371万余円及びJHロサンゼルスに係る支払額58億7325万余円)を対象として検査した。

検査に当たっては、受託者である株式会社電通及び株式会社電通ライブにおいて、関係資料を確認し、説明を聴取するとともに、ジャパン・エイチ・エル・リミテッドについては、外務省を通じて必要な書類を取り寄せ、確認した。また、外務本省において、契約書、仕様書、業務報告書等の関係資料を確認し、説明を聴取するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

前記のとおり、仕様書によれば、委託費業務に伴って生じた収入は、専ら委託事業費に充当することとされているが、当該収入を委託事業費に充当する時期や方法等について、仕様書及びこれに基づき作成することとされている各拠点の事務局における経理処理について定めたマニュアル(以下、これらを合わせて「仕様書等」という。)には、具体的に明記されていなかった。

そこで、各年度の収入合算額から同年度の委託事業費を差し引いて生ずる余剰額(以下「余剰額」という。)の委託事業費への充当状況及び翌年度への繰越状況について確認したところ、のとおり、JHサンパウロ及びJHロンドンについては、前年度から繰り越された余剰額が契約期間を通じて一度も委託事業費に充当されていなかった。この結果、契約終了時において、JHサンパウロについては累計7490万余円、JHロンドンについては累計3億0318万余円、計3億7809万余円の余剰額が生じていた。

表 各拠点の余剰額の委託事業費への充当状況及び繰越額

(単位:千円)
拠点名 項目 令和元年度 2年度 3年度 4年度 5年度
JH
サンパウロ
前年度繰越額(a) 14,021 19,518 25,724 39,710
収入合算額(b) 1,007,433 1,054,400 1,338,118 1,353,771 1,460,570
委託事業費(c) 993,412 1,048,903 1,331,911 1,339,785 1,425,379
余剰額(d=b-c) 14,021 5,497 6,206 13,985 35,191
委託事業費に充当(e)
翌年度繰越額(a+d-e) 14,021 19,518 25,724 39,710 74,901
JH
ロンドン
前年度繰越額(a) 31,508 153,287 207,895 405,355
収入合算額(b) 789,912 1,073,838 1,231,212 1,762,819 1,920,051
委託事業費(c) 758,404 952,059 1,176,605 1,565,359 1,902,697
余剰額(d=b-c) 31,508 121,778 54,607 197,460 17,354
委託事業費に充当(e)
国庫返納(f) 注(1) 119,520
翌年度繰越額(a+d-e-f) 31,508 153,287 207,895 405,355 303,189
JH
ロサンゼルス
前年度繰越額(a) 2,319 2,319 5,897 9,018
収入合算額(b) 767,268 992,224 1,259,927 1,355,184 1,537,045
委託事業費(c) 764,949 992,224 1,256,349 1,327,857 1,531,871
余剰額(d=b-c) 2,319 3,578 27,327 5,174
委託事業費に充当(e) 24,207 14,192
翌年度繰越額(a+d-e) 2,319 2,319 5,897 9,018
翌年度繰越額 計 47,848 175,124 239,517 454,084 (2) 378,090
  • 注(1) 英国の付加価値税の還付金を国庫返納している。
  • 注(2) 計3億7809万余円は、受託者と外務省との協議の結果、令和6年度から開始した次の契約期間に繰り越している。
  • 注(3) 現地通貨建てで管理しているものは、便宜的に円貨に換算して表している。
  • 注(4) 単位未満を切り捨てているため、集計しても計が一致しないものがある。

各年度の余剰額を委託事業費に充当しなかったことについて、外務省は、業務報告書により余剰額を把握していたものの、委託事業費が契約金額内で収まったことなどにより余剰額を委託事業費に充当させる必要が生じなかったとしていた。

しかし、仕様書の趣旨に照らせば、委託費業務に伴って生じた収入は、ジャパン・ハウスの運営等業務に係る政府予算への依存度を軽減していくために獲得しているものであり、その残余である余剰額を委託事業費に充当することで、外務省からの委託費を節減でき、政府予算への依存度の軽減に寄与するものであることから、余剰額を委託事業費に充当する必要があると認められた。

したがって、余剰額を委託事業費に充当したとすると、委託費の支払額は、JHサンパウロについては60億6449万余円、JHロンドンについては57億0052万余円となり、前記の委託費の支払額と比べてJHサンパウロについて7490万余円、JHロンドンについて3億0318万余円、計3億7809万余円節減できたと認められた。

このように、外務省において、余剰額を委託事業費に充当することにより、契約期間内の委託費業務に係る委託費の支払を節減していなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、外務省において、余剰額を委託事業費に充当する時期や方法等について仕様書等に具体的に明記していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

本院の指摘に基づき、外務省は、委託費業務に伴って生じた収入が契約期間内の委託事業費に確実に充当されるよう、6年度から10年度までの受託者と合意した上で6年9月に仕様書等を改訂し、余剰額を委託事業費に充当する時期や方法等について具体的に明記する処置を講じた。