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租税の徴収に当たり、徴収額に不足があったもの[沖縄地区税関、65税務署](36)


会計名及び科目
一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入
(項)各税受入金
部局等
沖縄地区税関、65税務署
納税者
133人
徴収不足額
336,020,184円(平成29年度~令和5年度)

1 租税の概要

源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、申告の手続、納付の手続等が定められている。

納税者は、納付すべき税額を税関等又は税務署に申告して納付することなどとなっている。税関等、国税局等又は税務署は、納税者が申告した内容が適正であるかについて申告審理等を行い、必要があると認める場合には調査等を行っている。そして、確定した税額は、税関等又は税務署が徴収決定を行っている。

令和5年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は100兆5893億余円となっている。このうち源泉所得税及復興特別所得税(注1)(以下「源泉所得税」という。)は21兆8201億余円、申告所得税及復興特別所得税(以下「申告所得税」という。)は4兆5132億余円、法人税は18兆7571億余円、相続税・贈与税は3兆7559億余円、消費税及地方消費税(以下「消費税等」という。)は41兆4488億余円となっていて、これら各税の合計額は90兆2952億余円となり、全体の89.7%を占めている。

(注1)
復興特別所得税  東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)に基づくものであり、平成25年1月から令和19年12月までの25年間、源泉所得税及び申告所得税に、その税額の2.1%相当額を上乗せする形で課税するもの

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、上記の各税に重点をおいて、合規性等の観点から、課税が法令等に基づき適正に行われているかに着眼して、全国の9税関等、12国税局等及び524税務署のうち9税関等、10国税局等及び74税務署において、申告書等の書類により会計実地検査を行うとともに、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき、上記の524税務署から提出された証拠書類等により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、税関等、国税局等及び税務署に調査等を求めて、その調査等の結果の内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 徴収不足の事態

検査の結果、沖縄地区税関及び65税務署において、納税者133人から租税を徴収するに当たり、徴収額が、137事項計336,020,184円(平成29年度から令和5年度まで)不足していて、不当と認められる。

これを、税目別に示すとのとおりである。

表 税目別の徴収不足額等

税目 事項数 徴収不足額
   
源泉所得税 3 3,272,984
申告所得税 29 82,812,500
法人税 52 145,819,700
相続税・贈与税 25 44,201,400
消費税 23 52,420,300
地方法人税 注(1) 4 5,480,300
国際観光旅客税 注(2) 1 2,013,000
137 336,020,184
注(1)
地方法人税  地方法人税法(平成26年法律第11号)に基づく税目であり、地方交付税の財源を確保するために、平成26年10月1日以後に開始する事業年度から、法人税額の4.4%相当額(令和元年10月1日以後に開始する事業年度からは10.3%相当額)を課税するもの
注(2)
国際観光旅客税  国際観光旅客税法(平成30年法律第16号)に基づく税目であり、観光先進国実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図るための恒久的な財源を確保するために、平成31年1月7日以後の出国から、出国1回につき1,000円を課税するもの

なお、これらの徴収不足額については、本院の指摘により、全て徴収決定の処置が執られた。

(3) 発生原因

このような事態が生じていたのは、沖縄地区税関及び65税務署において、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、これを見過ごし、法令等の適用の検討が十分でなく、又は課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、誤ったままにしていたことなどによると認められる。

(4) 税目ごとの態様

この137事項のうち、源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税及び消費税に関する事態について、その主な態様を示すと次のとおりである。

ア 源泉所得税

源泉所得税に関して徴収不足になっていた事態が3事項あった。これらは、退職手当及び配当に関する事態である。

退職手当及び配当の支払者は、支払の際に、源泉所得税を徴収して法定納期限までに国に納付しなければならないこととなっており、法定納期限までに納付がない場合には、税務署は支払者に対して納税の告知をしなければならないこととなっている。また、自己株式の取得(市場取引による取得等を除く。以下同じ。)に際して、その対価として金銭等を交付した場合、当該株式に対応する資本金等の額を超える部分の金額は、配当とみなされることとなっている。

この退職手当及び配当に関して、徴収不足になっていた事態が3事項計3,272,984円あった。その内容は、退職手当に対する税額の計算に当たり勤続年数に誤りがあり納付した源泉所得税額が過小となっているのに、これを見過ごしたため、また、自己株式の取得による配当とみなされる金額に対して所定の税率を乗じて計算した金額と比べて納付した源泉所得税額が過小となっているのに、税務署において課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、退職手当及び配当に係る納付すべき税額との差額について納税の告知をしておらず、同額が納付されないままとなっていたものなどである。

イ 申告所得税

申告所得税に関して徴収不足になっていた事態が29事項あった。この内訳は、譲渡所得に関する事態が11事項、事業所得に関する事態が9事項及びその他に関する事態が9事項である。

(ア) 譲渡所得に関する事態

個人が資産を譲渡した場合には、その総収入金額から譲渡した資産の取得費や譲渡に要した費用の額等を差し引いた金額を譲渡所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、土地建物等の譲渡による所得については、他の所得と分離して課税することとなっている。そして、個人が相続又は遺贈により取得した資産を一定の期間内に譲渡した場合には、相続税額のうち譲渡した資産ごとに所定の方法により計算した金額について、当該資産ごとに譲渡所得に係る収入金額(以下「譲渡収入金額」という。)から取得費及び譲渡に要した費用の額の合計額(以下「取得費等の合計額」という。)を控除した残額に相当する金額を限度として取得費に加算できることとなっている。また、譲渡収入金額が取得費等の合計額に満たない場合には、取得費に加算できる相続税額はないものとすることとなっている。

この譲渡所得に関して、徴収不足になっていた事態が11事項計14,414,200円あった。その主な内容は、譲渡した建物について、譲渡収入金額が取得費等の合計額に満たないことから、取得費に加算できる相続税額はないこととなるのに、これを見過ごし又は法令等の適用の検討が十分でなかったため、譲渡所得の金額を過小のままとしていたものである。

(イ) 事業所得に関する事態

個人が事業を営む場合には、その総収入金額から必要経費等を差し引いた金額を事業所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。そして、個人が有する減価償却資産の償却費として事業所得の金額の計算上、必要経費に算入する金額は、当該資産について取得日等に応じて定められた償却方法に基づいて計算した金額とすることとなっている。また、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備及び構築物の償却費は、定額法に基づいて計算することとなっている。

この事業所得に関して、徴収不足になっていた事態が9事項計38,002,700円あった。その内容は、28年4月1日以後に取得した建物附属設備及び構築物について、取得日から一定期間償却費が定額法に比べて多額となる定率法に基づいて計算したため必要経費の額を過大に計上しているのに、これを見過ごしたため、事業所得の金額を過小のままとしていたものなどである。

(ウ) その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、不動産所得等に関して、徴収不足になっていた事態が9事項計30,395,600円あった。その主な内容は、収入、経費の各項目の金額に消費税等を含めた経理を行っている場合の消費税等の還付金を総収入金額に算入していないのに、税務署において課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、不動産所得の金額を過小のままとしていたものである。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1> 消費税等の還付金を総収入金額に算入していなかった事態

個人が不動産を貸し付けた場合には、その総収入金額から必要経費等を差し引いた金額を不動産所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。そして、個人が、不動産所得について、収入、経費の各項目の金額に消費税等を含めた経理を行っている場合には、不動産所得の計算上、経費に係る消費税等の額が収入に係る消費税等の額を上回るときに生ずる消費税等の還付金を総収入金額に算入することとなっている。

納税者Aは、令和4年分の申告に当たり、不動産所得の総収入金額を35,902,980円として、この金額の中に消費税等の還付金はないとしていた。そして、この金額から必要経費を差し引き不動産所得の損失の金額を6,291,942円としていた。

しかし、納税者Aは不動産所得に係る収入、経費の各項目の金額に消費税等を含めた経理を行っており、4年5月に納税者Aに対して消費税等の還付金26,586,665円が支払われていた。したがって、この消費税等の還付金を不動産所得の総収入金額に算入するなどすると、不動産所得の金額は32,983,517円となり、39,275,459円過小となっているのに、税務署において課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、申告所得税額16,062,300円が徴収不足になっていた。

ウ 法人税

法人税に関して徴収不足になっていた事態が52事項あった。この内訳は、法人税額の特別控除に関する事態が37事項、交際費等の損金不算入に関する事態が6事項及びその他に関する事態が9事項である。

(ア) 法人税額の特別控除に関する事態

法人税額の算定に当たり、法人税額から一定の金額を控除する各種の特別控除が設けられている。これらの特別控除の一つとして、青色申告書を提出する法人が、国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、当該事業年度の国内雇用者に対する給与等の支給額(以下「雇用者給与等支給額」という。)が前事業年度の国内雇用者に対する給与等の支給額(以下「比較雇用者給与等支給額」という。)を上回ることなどの要件を満たすときは、当該事業年度の法人税額の100分の20相当額又は雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額(以下「雇用者給与等支給増加額」という。)の100分の15相当額等のいずれか少ない金額を法人税額から控除できることとなっている。

この法人税額の特別控除に関して、徴収不足になっていた事態が37事項計47,620,300円あった。その内容は、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額の金額を上回っていないことから、法人税額の特別控除の規定は適用できず誤って法人税額の特別控除を適用しているのに、これを見過ごし又は法令等の適用の検討が十分でなかったため、法人税額を過小のままとしていたものなどである。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2> 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除の規定の適用を誤っていた事態

B会社は、令和3年11月から4年10月までの事業年度分の申告に当たり、雇用者給与等支給額372,266,362円が比較雇用者給与等支給額353,345,684円を上回るなどとして、雇用者給与等支給増加額18,920,678円の100分の15相当額2,838,101円を法人税額から控除していた。

しかし、B会社の当該事業年度分及び前事業年度分の申告書に添付された人件費の内訳書等によれば、正しい雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額は、それぞれ366,839,640円及び372,266,362円であった。したがって、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額の金額を上回っていないことから法人税額の特別控除の規定の適用はできず、誤って法人税額の特別控除を適用しているのに、これを見過ごしたため、法人税額2,838,100円が徴収不足になっていた。

(イ) 交際費等の損金不算入に関する事態

事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額(資本又は出資を有しない法人等にあっては所定の方法で計算した金額(以下「資本相当額」という。))が100億円以下の法人が支出する交際費等の額のうち接待飲食費の額の100分の50に相当する金額(以下「接待飲食費損金算入基準額」という。)を超える部分の金額は、所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととなっている。ただし、投資法人等を除く法人のうち事業年度終了の日における資本相当額が1億円以下であるもの(一定の法人を除く。)については、接待飲食費損金算入基準額に代えて、交際費等の額のうち年当たり800万円の定額控除限度額までの金額を損金の額に算入するとともに、これを超える部分の金額を損金の額に算入しないことができることとなっている。

そして、資本相当額については、資本又は出資を有しない法人の場合、事業年度終了の日における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額から総負債の帳簿価額を控除するなどした金額の100分の60に相当する金額等とすることとなっている。

この交際費等の損金不算入に関して、徴収不足になっていた事態が6事項計10,430,600円あった。その内容は、資本又は出資を有しない法人が、資本相当額が1億円以下である場合の規定を適用して、交際費等の額のうち定額控除限度額までの金額を損金の額に算入していたが、資本相当額を計算すると1億円を超えるため、交際費等の額のうち接待飲食費損金算入基準額を超える部分の金額が損金に算入しない額となって、損金に算入する額が過大となっているのに、これを見過ごしたため、所得の金額を過小のままとしていたものである。

(ウ) その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、特定同族会社(注2)の留保金に対する特別税率等に関して、徴収不足になっていた事態が9事項計87,768,800円あった。

(注2)
特定同族会社  株主等の1人並びにこれと特殊の関係のある個人及び法人が発行済株式総数又は出資総額の100分の50を超える株式数又は出資金額を有しているなどの会社(資本金又は出資金の額が1億円以下であるものを、原則として除く。)

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例3>特定同族会社の課税留保金額に対して特別税率の法人税を課していなかった事態

特定同族会社については、通常の法人税のほか、利益のうち社内に留保した金額が一定の金額を超える場合には、その超える部分の金額(以下「課税留保金額」という。)に対して特別税率の法人税を課することとなっている。そして、特定同族会社の判定は、株主等の1人並びにこれと特殊の関係のある個人及び法人が有している発行済株式の総数、議決権の総数等の割合により行うこととなっており、このうち、議決権の総数による判定においては、議決権を行使することができない株主等が有する当該議決権の数を除いて判定することとなっている。

C会社は、平成29年6月から令和3年5月までの4事業年度分の申告に当たり、発行済株式の総数による判定のみにより特定同族会社に該当しないとして課税留保金額の計算をしていなかった。

しかし、C会社の申告書等の特定同族会社の判定に関する資料に基づいて、議決権の総数による判定において議決権を行使することができない株主等の議決権の数を除くなどして判定を行うと、特定同族会社に該当することとなる。したがって、課税留保金額の計算を行うと、平成30年5月期分81,039,000円、令和元年5月期分87,390,000円、2年5月期分93,290,000円及び3年5月期分121,962,000円が算出されるのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課しておらず、法人税額平成30年5月期分10,655,900円、令和元年5月期分11,608,500円、2年5月期分12,493,500円及び3年5月期分17,892,400円、計52,650,300円が徴収不足になっていた。

エ 相続税・贈与税

相続税に関して徴収不足になっていた事態が25事項あった。この内訳は、相続税額の加算に関する事態が13事項、法定相続分に関する事態が9事項及びその他に関する事態が3事項である。

(ア) 相続税額の加算に関する事態

個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その取得した財産に対して相続税を課することとなっている。そして、財産を取得した者が被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の者である場合には、所定の方法により計算した金額にその100分の20に相当する金額を加算するなどした金額をその者の相続税額とすることとなっている。

この相続税額の加算に関して、徴収不足になっていた事態が13事項計14,713,100円あった。その主な内容は、相続により財産を取得した者が被相続人の妹等であり、一親等の血族及び配偶者以外の者であるため、上記のとおり相続税額を加算する必要があるにもかかわらずこの加算をしていないのに、これを見過ごしたため、相続税額を過小のままとしていたものである。

(イ) 法定相続分に関する事態

相続又は遺贈により財産を取得した者の相続税額は、①相続又は遺贈により財産を取得した者に係る財産の価額の合計額から相続税の非課税財産の価額を除くなどし(以下、この額を「課税価格」という。)、②更に財産を取得した全ての者の課税価格の合計額から基礎控除額を控除した残額を民法(明治29年法律第89号)所定の各相続人(以下「法定相続人」という。)が同法所定の相続分(以下「法定相続分」という。)に応じて取得したものとして案分して得られた各金額(以下「取得金額」という。)に相続税率(注3)を乗ずるなどして算出した金額を合計し(以下、この合計額を「相続税の総額」という。)、③相続税の総額を財産を取得した者の課税価格に応じて案分した金額とすることとなっている。

(注3)
相続税率  取得金額の区分ごとに適用する10%から55%までの累進税率

民法において、法定相続分は、法定相続人の順位等ごとに割合が定められている。同順位の兄弟姉妹等が複数いる場合は、これらの法定相続分は相等しいものとするが、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の法定相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の法定相続分の2分の1とすることとなっている。そして、被相続人の子又は兄弟姉妹が相続の開始以前に死亡したときは、これらの者の子がこれを代襲して相続人(以下、この相続人を「代襲相続人」という。)となり、代襲相続人の法定相続分は、代襲相続人の親が受けるべきであったものと同じであり、被相続人に代襲相続人である複数の甥姪がいるときは、その親が受けるべきであった部分について、当該親の子である甥姪の法定相続分は相等しいものとすることとなっている。

この法定相続分に関して、徴収不足になっていた事態が9事項計15,461,400円あった。その内容は、代襲相続人である複数の甥姪の法定相続分について、その親が受けるべきであった法定相続分を被相続人と父母の双方を同じくするか否かに応じて異なる割合とした上で、その子である甥姪の法定相続分を相等しくすることなく、誤って全員同一の割合としていて、この割合に基づき相続税の総額を算出しているのに、これを見過ごしたため、相続税額を過小のままとしていたものなどである。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例4>法定相続分の計算を誤っていた事態

納税者Dは、令和元年10月相続分の申告に当たり、法定相続人が納税者D等3人いることから、法定相続分をそれぞれ3分の1とし、相続税の総額を61,376,100円、納税者Dの相続税額を50,796,100円としていた。そして、法定相続人3人はいずれも代襲相続人である甥姪であった。

しかし、申告書等によれば、納税者Dの親は被相続人と父母の双方を同じくするものであり、他の2人の甥姪の親は被相続人と父のみを同じくするものであった。このため、納税者Dの親が受けるべきであった法定相続分は3分の2、当該2人の甥姪の親が受けるべきであった法定相続分は3分の1となり、納税者Dの法定相続分は3分の2、当該2人の甥姪の法定相続分はそれぞれ6分の1となる。したがって、これにより計算した相続税の総額70,528,800円に基づいて納税者Dの相続税額を算出すると58,371,100円となるのに、これを見過ごしたため、納税者Dの相続税額7,575,000円が徴収不足になっていた。

(ウ) その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、相続税の総額を計算する場合の法定相続人の人数等に関して、徴収不足になっていた事態が3事項計14,026,900円あった。

オ 消費税

消費税に関して徴収不足になっていた事態が23事項あった。この内訳は、課税仕入れに係る消費税額の控除に関する事態が18事項、課税売上高の計上に関する事態が4事項及びその他に関する事態が1事項である。

(ア) 課税仕入れに係る消費税額の控除に関する事態

事業者は、課税期間(注4)における課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除した額を消費税として納付することとなっている。そして、課税売上高に対する消費税額から控除する課税仕入れに係る消費税額は、一定の要件に該当して全額控除できる場合を除き、課税仕入れに係る消費税額等の合計額に課税売上割合(非課税売上高等を含めた総売上高に占める課税売上高の割合。以下同じ。)を乗ずるなどして計算することとなっている。

(注4)
課税期間  納付する消費税額の計算の基礎となる期間で、原則として個人事業者は暦年、法人は事業年度

この課税仕入れに係る消費税額の控除に関して、徴収不足になっていた事態が18事項計40,085,200円あった。その主な内容は、非課税売上高である集団投資信託の収益分配金等を総売上高に含めないで課税売上割合を計算しているのに、これを見過ごし又は法令等の適用の検討が十分でなかったため、課税仕入れに係る消費税額の控除額を過大のままとしていたものである。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例5>課税仕入れに係る消費税額の控除額の計算を誤っていた事態

E会社は、平成29年12月から令和2年11月までの3課税期間分の申告に当たり、課税売上高を平成30年11月期分128,027,155円、令和元年11月期分7,131,076円及び2年11月期分6,927,410円、総売上高をそれぞれ128,628,905円、7,423,574円及び7,476,506円として、課税売上割合をそれぞれ99.53%、96.05%及び92.65%としていた。

しかし、E会社の法人税の申告書に添付された書類によれば、非課税売上高である集団投資信託の収益分配金に係る収入があり、これを総売上高に含めて適正に計算すると、総売上高はそれぞれ147,228,905円、30,853,574円及び131,736,506円、課税売上割合はそれぞれ86.95%、23.11%及び5.25%となるのに、これを見過ごしたため、課税仕入れに係る消費税額の控除額が過大となり、消費税額それぞれ646,400円、3,923,000円及び4,962,300円、計9,531,700円が徴収不足になっていた。

(イ) 課税売上高の計上に関する事態

事業者は、課税の対象となる国内において行った資産の譲渡及び貸付け並びに請負等の役務の提供に係る収入金額を課税売上高に計上することとなっている。

この課税売上高の計上に関して、徴収不足になっていた事態が4事項計10,462,100円あった。その内容は、事業者が事業用建物の譲渡に係る収入金額を課税売上高に計上していないのに、税務署において課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、課税売上高を過小のままとしていたものである。

(ウ) その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、納税義務の免除に関して、徴収不足になっていた事態が1事項1,873,000円あった。

これらの徴収不足額を税関等及び国税局等別に示すと次のとおりである。

税関等及び国税局等
税関等及び税務署数
源泉所得税
申告所得税
法人税
相続税
贈与税
消費税
地方法人税
国際観光
旅客税
事項数
徴収不
事項数
徴収不
事項数
徴収不
事項数
徴収不
事項数
徴収不
事項数
徴収不
事項数
徴収不
事項数
徴収不
      千円   千円   千円   千円   千円   千円   千円   千円
沖縄地区税関 1 1 2,013 1 2,013
札幌国税局 5 1 951 4 5,700 1 564 6 7,217
仙台国税局 6 4 6,099 3 13,758 2 2,318 9 22,176
関東信越国税局 10 5 39,750 6 22,070 5 5,858 2 1,760 18 69,439
東京国税局 24 2 2,424 14 31,745 27 97,841 7 5,161 10 33,899 2 3,720 62 174,793
名古屋国税局 7 3 2,565 2 1,796 10 13,094 3 5,665 18 23,121
大阪国税局 4 1 848 1 927 1 1,712 3 10,983 6 14,471
広島国税局 3 2 2,465 1 560 2 2,863 5 5,888
高松国税局 1 2 3,648 3 3,320 1 1,815 6 8,783
福岡国税局 2 1 758 1 638 2 1,397
熊本国税局 2 2 5,530 2 5,530
沖縄国税事務所 1 2 1,188 2 1,188
66 3 3,272 29 82,812 52 145,819 25 44,201 23 52,420 4 5,480 1 2,013 137 336,020