ページトップ
  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 文部科学省|
  • 不当事項|
  • 補助金

(2) 私立学校施設整備費補助金(研究装置、教育装置、ICT活用推進事業及び防災機能等強化緊急特別推進事業)が過大に交付されていたもの[文部科学本省](42)―(44)


3件 不当と認める国庫補助金 77,771,000円

私立学校施設整備費補助金(研究装置、教育装置、ICT活用推進事業及び防災機能等強化緊急特別推進事業)(以下「補助金」という。)は、私立の大学、短期大学、高等専門学校及び専修学校の教育研究の充実と質的向上を図ることを目的として、学校法人等に対して、研究装置及び教育装置の整備、ICT活用推進事業、防災機能等強化緊急特別推進事業(学校施設耐震改修工事等)等に要する経費の一部を国が補助するものである。

補助金の交付額は、私立学校施設整備費補助金(私立学校教育研究装置等施設整備費(私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費))交付要綱(昭和58年文部大臣裁定)等によれば、研究装置及び教育装置については装置の整備に要する経費、ICT活用推進事業についてはICT装置の整備等に要する経費、防災機能等強化緊急特別推進事業については危険建物の防災機能強化のための耐震補強工事等に要する経費(以下、これらを「補助対象経費」という。)のそれぞれ2分の1以内の額とすることとされている。また、補助対象経費については次の①から④までのとおりとされている。

① 研究装置の整備については、私立の大学の教授、准教授その他研究に従事する職員が職務として行う学術の基礎的研究又は大学院の学生の研究指導に必要な機械、器具、その他の設備であって、1個又は1組の価額が4000万円以上であり、かつ、当該設備を設置する建物その他の施設に関し施設工事を必要とする事業を行う場合に必要な経費とされている。そして、機械、器具等を取りまとめて1組とした場合、それらの機械、器具等が機能的に密接な関係を持ち、装置としての一体性があるものであることとされている。

② 教育装置の整備については、私立大学等が行う教育に必要な機械、器具、その他の設備であって、1個又は1組の価額が大学にあっては4000万円以上であり、かつ、当該設備を設置する建物その他の施設に関し施設工事を必要とする事業を行う場合に必要な経費とされている。

③ ICT活用推進事業については、私立大学等が行う教育研究に必要な情報通信ネットワークの構築に要する光ケーブル等敷設工事、ICT装置、施設の改造工事及び既設のICT施設における冷房化工事であって、事業費が1000万円以上となる事業を行う場合に必要な経費とされている。

④ 防災機能等強化緊急特別推進事業のうち学校施設耐震改修工事については、私立大学等が行う危険建物の防災機能強化のための耐震補強工事等に必要な経費とされている。

このほか、補助金の補助対象は事業実施年度内に整備が完了する事業であることなどとされている。

本院が、19学校法人において会計実地検査を行ったところ、3学校法人において、次のような事態が見受けられた。

研究装置の整備について、機械、器具等を取りまとめて1組とした場合には、それらの機械、器具等が機能的に密接な関係を持ち、装置としての一体性があるものであることなどとされているのに、装置としての一体性がないため1組とは認められず、それぞれの価額が4000万円未満であるため補助の対象とならない2台の装置を補助の対象としていた。

教育装置の整備について、補助対象は事業実施年度内に整備が完了する事業であることなどとされているのに、事業実施年度の翌年度以降(以下「後年度」という。)に効力が発生するため事業実施年度内に整備が完了しているとは認められない後年度分のライセンス料を価額に含めており、これを除外すると、価額が4000万円未満となり補助の対象とならない装置を補助の対象としていた。

ICT活用推進事業について、補助対象は事業実施年度内に整備が完了する事業であることなどとされているのに、後年度に効力が発生するため事業実施年度内に整備が完了しているとは認められない後年度分のライセンス料を補助対象経費に含めており、これを除外するなどすると、事業費が1000万円未満となり補助の対象とならない事業を補助の対象としていた。

防災機能等強化緊急特別推進事業のうちの学校施設耐震改修工事について、補助の対象となる工事の施工範囲を縮小するなどの契約変更を行ったことにより、補助対象経費が減少していたのに、当初契約の内容等を基に算出された過大な補助対象経費により実績報告書を提出していた。

これらの結果、補助金計77,771,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、3学校法人において補助対象経費についての理解が十分でなかったこと、文部科学省において実績報告書等に対する審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

学校法人龍谷大学は、令和4年度に教育装置「メディア技術に特化したサイバーフィジカルシステム教育装置」の整備を実施しており、教育装置一式の購入及び設置工事に要する経費を対象として、補助対象経費を53,733,623円(補助金26,866,000円)と算定していた。そして、同法人は、補助対象経費のうち、教育装置の価額は、45,747,584円であるとしていた。

しかし、同法人は、教育装置の価額に、事業実施年度内に整備が完了しているとは認められず補助の対象とならないVR機能を利用するための後年度分のライセンス料7,347,950円を含めていた。

したがって、これを除外すると教育装置の価額が38,399,634円となり4000万円未満となることから、本件事業は補助の対象とならず、補助金26,866,000円が過大に交付されていた。

以上を事業主体別に示すと次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
補助事業
年度
補助対象経費
左に対する国庫補助金交付額
不当と認める補助対象経費
不当と認める国庫補助金
摘要
          千円 千円 千円 千円  
(42)
文部科学本省
学校法人北里研究所
ICT活用推進事業(各キャンパスへの新規インターネット回線敷設と、SD―WAN構築工事)、防災機能等強化緊急特別推進事業(V7号館耐震改修工事等)
3 216,464 108,231 42,269 21,135
補助の対象とならない後年度分のライセンス料を除外するなどすると事業費が1000万円未満となり事業全体が補助の対象とならないものなど
(北里大学)
(43)
学校法人自治医科大学
研究装置(多機能invivoリアルタイムイメージングシステム一式)
30 62,755 29,770 62,755 29,770
装置としての一体性がないため1組とは認められない2台の装置の価額がいずれも4000万円未満であるため事業全体が補助の対象とならないもの
(自治医科大学)
(44)
学校法人龍谷大学
教育装置(メディア技術に特化したサイバーフィジカルシステム教育装置)
4 53,733 26,866 53,733 26,866
補助の対象とならない後年度分のライセンス料を除外すると装置の価額が4000万円未満であるため事業全体が補助の対象とならないもの
(龍谷大学)
(42)―(44)の計 332,953 164,867 158,758 77,771