ページトップ
  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 文部科学省|
  • 不当事項|
  • 補助金

(5) 文化資源活用事業費補助金が過大に交付されていたもの[鹿児島県](52)


1件 不当と認める国庫補助金 2,071,000円

文化資源活用事業費補助金(文化財多言語解説整備事業)は、文化財に関する先進的、高次元な多言語解説を整備し、訪日外国人旅行者の地域での体験滞在の満足度を向上させることなどを目的として、補助事業を行う者に対して、事業に要する経費の一部を国が補助するものである。

文化資源活用事業費補助金(文化財多言語解説整備事業)交付要綱(平成30年文化庁長官決定。以下「交付要綱」という。)等によれば、補助事業の補助対象経費は、国指定等文化財に関する先進的、高次元な技術を利用した多言語解説を行うためのコンテンツ制作に係る経費とされている。

補助事業においては、事業主体が補助の対象となるコンテンツ制作に係る業務を外注する場合には、これに係る消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)額に相当する額(以下「消費税相当額」という。)が補助対象経費に含まれる。そして、事業主体が消費税の課税事業者であれば当該外注は課税仕入れに該当することから、確定申告の際に課税売上高に対する消費税額から当該外注に係る消費税額を仕入税額控除(注1)した場合には、事業主体はこれに係る消費税額を実質的に負担していないことになる。このため、交付要綱において、消費税の課税事業者である事業主体は、補助事業完了後に消費税の確定申告により仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金相当額が確定した場合には、その額を速やかに都道府県に報告し、当該金額を返還しなければならないこととなっている。

(注1)
仕入税額控除  課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除すること

本院が、2府県、5市町、29法人等計36事業主体において会計実地検査を行ったところ、1事業主体において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
補助事業
年度
補助対象経費
左に対する国庫補助金交付額
不当と認める補助対象経費
不当と認める国庫補助金
摘要
          千円 千円 千円 千円  
(52)
鹿児島県
一般財団法人産業遺産国民会議
文化財多言語解説整備
2 29,196 22,773 2,654 2,071
仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金相当額の報告及び返還を行っていなかったもの

一般財団法人産業遺産国民会議は、令和2年度に「「明治日本の産業革命遺産」スマートフォンアプリを活用した多言語案内整備事業」を実施していた。そして、本件補助事業の補助対象経費には、外注により実施したAR(注2)機能を搭載したガイドマップの作成等のコンテンツ制作に係る消費税相当額が含まれていた。

しかし、同法人は、補助事業完了後の消費税の確定申告の際に、本件補助事業の補助対象経費に係る消費税額2,654,215円を仕入税額控除していたのに、これに係る国庫補助金相当額2,071,000円について報告及び返還を行っておらず、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同法人において補助事業における消費税の取扱いに対する理解が十分でなかったこと、鹿児島県において補助事業における消費税の取扱いについての指導及び審査が十分でなかったことによると認められる。

(注2)
AR  Augmented Realityの略。拡張現実