ページトップ
  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 保険給付

雇用保険の特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース助成金)の支給が適正でなかったもの[厚生労働本省、2労働局] (64)


会計名及び科目
労働保険特別会計(雇用勘定) (項)高齢者等雇用安定・促進費
部局等
厚生労働本省(支給庁)
2労働局(支給決定庁)
支給の相手方
3事業主
特定就職困難者コース助成金の支給額の合計
9,400,000円(令和2年度~5年度)
不当と認める支給額
2,200,000円(令和2年度~4年度)

1 保険給付の概要

(1) 特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金は、雇用保険で行う事業のうちの雇用安定事業の一環として、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等に基づき、60歳以上の高年齢者や障害者等の就職が特に困難な求職者(以下「就職困難者」という。)、いわゆる就職氷河期に就職の機会を逃したことなどにより正規雇用労働者としての就業が困難な求職者等の雇用機会の増大及び雇用の安定を図るために、当該求職者を雇い入れた事業主に対して、当該雇用労働者の賃金の一部に相当する額を助成するもので、特定就職困難者コース助成金(以下「就職困難者コース助成金」という。)、就職氷河期世代安定雇用実現コース助成金等がある。

(2) 就職困難者コース助成金の支給

就職困難者コース助成金の支給要件は、事業主が就職困難者を公共職業安定所等の紹介により新たに継続して雇用する労働者として雇い入れることなどとなっている。

また、雇入れ日の前日から起算して3年前の日から当該雇入れ日の前日までの間に当該雇入れに係る事業所と雇用又は請負の関係にあった者を雇い入れた場合等は、支給対象とならないこととなっている。

そして、支給額は、原則としてに記載のとおりとなっている。

表 就職困難者コース助成金の支給額

区分 企業規模 第1期
支給額
第2期
支給額
第3期
支給額
第4期
支給額
第5期
支給額
第6期
支給額
支給総額 支給
回数
短時間労働者以外
60歳以上の高年齢者等
中小企業事業主以外の事業主
25万円 25万円 50万円 2回
中小企業事業主
30万円 30万円 60万円 2回
身体障害者及び知的障害者
中小企業事業主以外の事業主
25万円 25万円 50万円 2回
中小企業事業主
30万円 30万円 30万円 30万円 120万円 4回
重度障害者等
中小企業事業主以外の事業主
33万円 33万円 34万円 100万円 3回
中小企業事業主
40万円 40万円 40万円 40万円 40万円 40万円 240万円 6回
短時間労働者
下記の区分に該当しない、労働時間が週20時間以上30時間未満の短時間労働者
中小企業事業主以外の事業主
15万円 15万円 30万円 2回
中小企業事業主
20万円 20万円 40万円 2回
労働時間が週20時間以上30時間未満の障害者
中小企業事業主以外の事業主
15万円 15万円 30万円 2回
中小企業事業主
20万円 20万円 20万円 20万円 80万円 4回
  • (注) 雇入れに係る日(賃金締切日が定められている場合は雇入れ日の直後の賃金締切日の翌日等)から起算した最初の6か月を第1期、以後6か月ごとに第2期、第3期、第4期、第5期、第6期とする。

就職困難者コース助成金の支給を受けようとする事業主は、当該助成金に係る支給申請書及び支給要件を満たした労働者に係る出勤簿等の添付書類を都道府県労働局(以下「労働局」という。)に提出することとなっている。そして、労働局は、支給申請書等に記載されている当該労働者の氏名、生年月日、雇用年月日、賃金の支払、事業主の過去の不正受給の有無等を審査した上で支給決定を行い、これに基づいて厚生労働本省は、就職困難者コース助成金の支給を行うこととなっている。

また、労働局は、偽りその他不正の行為により本来受けることのできない支給を受けようとした事業主に対して不支給とすること、偽りその他不正の行為により本来受けることのできない支給を受けた事業主に対して、支給した助成金の全部又は一部の支給決定を取り消して返還の手続を行うことなどとなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、事業主に対する就職困難者コース助成金等の支給決定が適正に行われているかに着眼して、全国47労働局のうち6労働局(注)が平成30年度から令和5年度までの間に支給決定を行った就職困難者コース助成金等233,956件(支給決定金額計68,111,658,131円)から、支給実績等を基に、同211件(同64,783,329円)、当該支給決定に係る31事業主を選定して、就職困難者コース助成金等の支給の適否について、厚生労働本省及び6労働局において会計実地検査を行った。

検査に当たっては、事業主から提出された支給申請書等の書類により会計実地検査を行い、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該労働局に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(注)
6労働局  山形、群馬、東京、神奈川、京都、山口各労働局

(2) 検査の結果

検査の結果、2労働局管内において2年度から5年度までの間に就職困難者コース助成金の支給を受けた3事業主は、雇入れ日の前日から起算して3年前の日から当該雇入れ日の前日までの間に当該雇入れに係る事業所と雇用又は請負の関係にあった者を雇い入れているのに当該者を支給対象に含めるなどして就職困難者コース助成金の支給を申請していた。したがって、これらの3事業主に対する就職困難者コース助成金の支給額計9,400,000円のうち計2,200,000円は支給の要件を満たしていなかったもので支給が適正でなく、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主が誠実でなかったことや制度を十分に理解していなかったことにより、支給申請書等の記載内容が事実と相違していたのに、2労働局において、これに対する審査が十分でないまま支給決定を行っていたことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

神奈川労働局は、事業主Aから、就職困難者Bを令和2年6月に藤沢公共職業安定所の紹介を受けて同年7月に雇い入れたとする支給申請書等の提出を受けて、これらに基づき、就職困難者Bを支給対象とする就職困難者コース助成金800,000円の支給決定を行っていた。

しかし、実際には、事業主Aは就職困難者Bと平成30年9月には請負の関係にあり、事業主Aは雇入れ日の前日から起算して3年前の日から当該雇入れ日の前日までの間に当該雇入れに係る事業所と請負の関係にあった就職困難者Bを雇い入れていた。

したがって、就職困難者Bは就職困難者コース助成金の支給対象とならず、就職困難者コース助成金800,000円の全額が支給の要件を満たしていなかった。

なお、これらの適正でなかった支給額については、本院の指摘により、全て返還の処置が執られた。

これらの適正でなかった支給額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名
本院の調査に係る事業主数
不適正支給に係る事業主数
左の事業主に支給した就職困難者コース助成金
左のうち不当と認める就職困難者コース助成金
      千円 千円
群馬
6 1 2,600 600
神奈川
6 2 6,800 1,600
12 3 9,400 2,200