ページトップ
  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 補助金

(6) 新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(感染症検査機関等設備整備事業に係る分)が過大に交付されていたもの[4都道県](96)―(102)


7件 不当と認める国庫補助金 60,351,000円

新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(感染症検査機関等設備整備事業に係る分)は、「令和3年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)の交付について」(令和3年厚生労働省発医政0401第4号・厚生労働省発健0401第6号・厚生労働省発薬生0401第67号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、地方衛生研究所(注1)等における検査機器の導入を支援することにより、新型コロナウイルス感染症の検査体制を整備することを目的として、国が都道府県に対して交付するものである。

交付要綱等によれば、この交付金の交付の対象は、都道府県が行う事業及び市区町村や民間団体等で都道府県が適切と認める者が行う事業に対して都道府県が補助する事業に要する経費とされている。このうち、都道府県が補助する事業に係る交付金の交付額は、次のとおり算定することとされている。

① 所定の基準額と対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額を選定する。

② ①により選定された額と総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額に交付金の交付率(10分の10)を乗じて得た額と、都道府県が補助した額とを比較して少ない方の額を交付額とする。

また、本件事業は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)の規定により都道府県、政令市(注2)及び特別区が行う検査に必要な設備を整備するものであるとされている。本件事業の整備対象設備は、次世代シークエンサー(注3)、リアルタイムPCR装置(全自動PCR検査装置を含む。)、等温遺伝子増幅装置及び全自動化学発光酵素免疫測定装置の四つの検査機器とされており、これらの整備対象設備のほか、検査に必要不可欠であって整備対象設備と一体的に利用する備品は、交付金の交付対象とされている。

さらに、本件事業に係る対象経費は、使用料及び賃借料、備品購入費、補助金及び交付金に限られており、検査機器の保守費用は、交付の対象とならないこととなっている。

(注1)
地方衛生研究所  地域保健対策を効果的に推進し、公衆衛生の向上及び増進を図るため、都道府県等における科学的かつ技術的中核として、関係行政部局、保健所等と緊密な連携の下に、調査研究、試験検査、公衆衛生情報等の収集・解析・提供等を行うことを目的として、都道府県等に設置される機関
(注2)
政令市  地域保健法施行令(昭和23年政令第77号)において保健所を設置するとされている市
(注3)
次世代シークエンサー  DNAの塩基配列を高速かつ大量に解読する検査機器。同機器を使用して新型コロナウイルスの全ゲノム解析を実施することでウイルスに生じた全ての変異を検出できることから、感染経路の特定や変異株の発生動向の監視等のために使用される。

本院が、12都道府県(注4)及び85事業主体において会計実地検査を行ったところ、4都道県の7事業主体において、交付の対象とならない経費である①整備対象設備に該当しない検査機器の整備費用、②検査に必要不可欠であって整備対象設備と一体的に利用する備品とは認められない備品の整備費用及び③検査機器の保守費用を対象経費の実支出額に含めていたため、これに係る交付金計60,351,000円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、7事業主体において制度の理解が十分でなかったこと、4都道県において事業実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

(注4)
12都道府県  東京都、北海道、大阪府、秋田、山形、神奈川、愛知、三重、福岡、佐賀、熊本、宮崎各県

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

学校法人日本医療大学(以下「大学」という。)は、令和3年度に、次世代シークエンサー3台等の検査機器及び検査機器と一体的に利用する備品を計97,517,000円で整備したとして、北海道から交付金を原資とする補助金(以下「道補助金」という。)97,517,000円(交付金交付額同額)の交付を受けていた。

しかし、大学が次世代シークエンサーとして整備したとしていた3台のうち1台は、シークエンサーであるものの、整備対象設備である次世代シークエンサーには該当せず、当該シークエンサーの整備費用20,152,000円は交付の対象とならないものであった。また、大学は、対象経費の実支出額に、交付の対象とならない経費である次世代シークエンサー2台の保守費用2,531,760円を含めていた。

したがって、交付の対象とならないシークエンサーの整備費用及び次世代シークエンサー2台の保守費用を対象経費の実支出額から除くなどして適正な道補助金の交付額を算定すると74,833,000円となり、道補助金の交付額97,517,000円との差額22,684,000円が過大となっていて、これに係る交付金22,684,000円が過大に交付されていた。

以上を部局等別・事業主体別に示すと次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
間接補助事業者
(事業主体)
年度
交付金交付額
不当と認める交付金交付額
摘要
          千円 千円  
(96)
北海道
北海道
学校法人日本医療大学
3 97,517 22,684
整備対象設備に該当しない検査機器の整備費用及び検査機器の保守費用を対象経費の実支出額に含めていたもの
(97)
東京都
東京都
J―VPD株式会社
4 19,750 7,276
整備対象設備に該当しない検査機器の整備費用を対象経費の実支出額に含めていたもの
(98)
株式会社プロップジーン
4 12,303 8,215
(99)
株式会社マイクロスカイラボ
4 7,106 7,106
(100)
神奈川県
神奈川県
社会福祉法人恩賜財団済生会支部神奈川県済生会(横浜市東部病院)
3 21,560 10,560
検査に必要不可欠であって整備対象設備と一体的に利用する備品とは認められない備品の整備費用を対象経費の実支出額に含めていたもの
(101)
熊本県
熊本県
株式会社CIS
3 77,198 2,200
検査機器の保守費用を対象経費の実支出額に含めていたもの
(102)
学校法人銀杏学園(熊本保健科学大学)
3 29,106 2,310
(96)―(102)の計 264,540 60,351