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(10) 医療提供体制推進事業費補助金(周産期母子医療センター運営事業に係る分)が過大に交付されていたもの[神奈川県](107)(108)


2件 不当と認める国庫補助金 107,559,000円

医療提供体制推進事業費補助金(周産期母子医療センター運営事業に係る分)(以下「国庫補助金」という。)は、「医療提供体制推進事業費補助金交付要綱」(平成21年厚生労働省発医政第0513001号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、都道府県が指定又は認定した周産期母子医療センターの充実強化を迅速かつ着実に推進することを目的として、その運営に係る経費の一部を国が補助するものである。

交付要綱等によれば、周産期母子医療センター運営事業の補助対象は、都道府県が実施する事業及び市町村や厚生労働大臣が適当と認める者等が実施する事業に対して都道府県が補助する事業とされている。このうち、都道府県が補助する事業に係る国庫補助金の交付額は、次の①から③までによるなどして算定することとされている。

① 総合周産期母子医療センター、地域周産期母子医療センター等の種目ごとに、所定の基準額と対象経費の実支出額とを比較して、少ない方の額を選定する。

② ①により選定された額と、総事業費から診療収入額、特別交付税及び寄附金その他の収入額(以下「収入額」という。)を控除した額とを比較して、少ない方の額を選定する。

③ ②により選定された額に補助率(3分の1)を乗じて得た額と、都道府県が補助する額とを比較して、少ない方の額を選定する。

周産期母子医療センター運営事業のうち、地域周産期母子医療センターの種目に係る①の基準額は、新生児集中治療室(NICU)、新生児回復室(GCU)等の部門ごとに、病床1床当たりの単価に当該部門の病床数を乗ずるなどした額を合算するなどして算出することとされている。ただし、黒字の部門(収入額が対象経費の実支出額を上回る部門)については、算出対象から除くこととされている。

本院が、9府県(注)の29事業主体において会計実地検査を行ったところ、神奈川県の1事業主体において、対象経費の実支出額を過大に算出していた結果、黒字の部門が算出対象から除かれていなかったため、また、同県の1事業主体において、休床としていて事業の対象となる患者を受け入れていない病床を部門の病床数に含めていたため、国庫補助金計107,559,000円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、1事業主体において対象経費の実支出額の算出についての理解及び確認が十分でなかったこと、1事業主体において基準額の算出対象となる病床についての理解が十分でなかったこと、同県において事業実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
9府県  大阪府、秋田、神奈川、愛知、三重、山口、福岡、佐賀、宮崎各県

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

独立行政法人地域医療機能推進機構相模野病院は、平成30年度から令和4年度までの各年度に、地域周産期母子医療センターの運営について、神奈川県から国庫補助金を原資とする同県の補助金(以下「県補助金」という。)計145,337,000円(国庫補助金相当額同額)の交付を受けていた。

同病院は、県補助金の交付額の算定に当たり、NICU部門及びGCU部門を基準額の算出対象としていた。そして、両部門に係る対象経費の実支出額の算出については、同病院の経理において部門別の区分がなされていないことから、損益計算書に計上されている同病院全体の医薬品費や委託費等の費用を「病院全体の入院診療に係る診療業務収益」に占める「NICU及びGCUに係る診療業務収益」の割合を用いて案分する方法により行っていた。

しかし、損益計算書に計上されている同病院全体の費用は、入院診療に係る分だけではなく、外来診療に係る分も含んでいるのに対して、「病院全体の入院診療に係る診療業務収益」は外来診療に係る収益を含まないことから、上記の方法によることは適切ではない。

そこで、医薬品費や委託費等について、入院診療に係る分だけではなく、外来診療に係る分も含めた「病院全体の診療業務収益」に占める「NICU及びGCUに係る診療業務収益」の割合を用いて案分する方法によるなどして、適正な対象経費の実支出額を部門別に算出すると、同病院が算出した対象経費の実支出額は、いずれの部門についても過大となっていた。さらに、これにより、NICU部門については、前記いずれの年度においても、収入額が対象経費の実支出額を上回って黒字となるため、基準額の算出対象から除かれることとなる。

したがって、NICU部門を算出対象から除いて適正な県補助金の交付額を算定すると計41,650,000円となり、県補助金の交付額145,337,000円との差額103,687,000円が過大となっていて、これに係る国庫補助金103,687,000円が過大に交付されていた。

以上を事業主体別に示すと次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
間接補助事業者
(事業主体)
年度
国庫補助金交付額
不当と認める国庫補助金交付額
摘要
          千円 千円  
(107)
神奈川県
神奈川県
独立行政法人地域医療機能推進機構相模野病院
平成30~令和4
145,337 103,687
対象経費の実支出額を過大に算出していた結果、黒字の部門が算出対象から除かれていなかったもの
(108)
川崎市立川崎病院
2~4 38,045 3,872
休床としていた病床を部門の病床数に含めていたもの
(107)(108)の計 183,382 107,559