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  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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(11) 国民健康保険の療養給付費負担金が過大に交付されていたもの[厚生労働本省](109)―(113)


5件 不当と認める国庫補助金 44,480,143円

国民健康保険は、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づき、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除いた者を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関して、療養の給付、出産育児一時金の支給、葬祭費の支給等を行う保険である。そして、国民健康保険には、都道府県が当該都道府県内の市町村(注1)(特別区を含む。以下同じ。)とともに保険者となって行うもの(以下「都道府県等が行う国民健康保険」という。)と、国民健康保険組合が保険者となって行うものとがある。

(注1)
一部の市町村は、広域連合等を設けて、国民健康保険に関する事務を処理している。

都道府県等が行う国民健康保険の被保険者は、同法に基づき、当該都道府県の区域内に住所を有する者とされ、一般被保険者と退職被保険者(注2)及びその被扶養者とに区分されている。

(注2)
退職被保険者  被用者保険の被保険者であった者で、平成26年度までの間に退職して国民健康保険の被保険者となり、かつ、厚生年金等の受給権を取得した場合に65歳に達するまでの間において適用される資格を有する者

国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、都道府県等が行う国民健康保険財政の安定化を図るために、同法に基づき、都道府県に対して療養給付費負担金(以下「負担金」という。)が交付されている。そして、当該都道府県に対して交付された負担金は、他の公費等と合わせた上で、当該都道府県内の市町村による療養の給付等に要する費用に充てるための財源として、当該市町村に対して交付されている。

毎年度の負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金等の算定に関する政令」(昭和34年政令第41号)等に基づき、次のとおり算定することとなっており、市町村が負担金の交付額の算定に必要な情報について都道府県に報告し、都道府県がこれに基づいて負担金の交付額を算定している。

交付額

このうち、一般被保険者に係る医療給付費は、療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る被保険者の一部負担金に相当する額を控除した額と、入院時食事療養費、療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額との合算額とすることとなっている。ただし、都道府県又は市町村が、国の補助金等の交付を受けずに自らの財政負担で、年齢その他の事由により、被保険者の全部又は一部について、その一部負担金に相当する額の全部又は一部を当該被保険者に代わり医療機関等に支払う措置(以下「負担軽減措置」という。)を講じている場合がある。この場合、負担軽減措置の対象者の延べ人数の一般被保険者数に占める割合が一定の割合を超える市町村については、負担軽減措置の対象者に係る療養の給付に要する費用の額等に、負担軽減の度合いに応じた減額調整(注5)を行うこととなっている。

(注3)
保険基盤安定繰入金  市町村が、一般被保険者の属する世帯のうち、低所得者層の負担の軽減を図るために減額した保険料又は保険税の総額等について、当該市町村の一般会計から国民健康保険に関する特別会計に繰り入れた額
(注4)
前期高齢者納付金  高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)の規定により、各医療保険者が社会保険診療報酬支払基金に納付する納付金(前期高齢者交付金がある場合には、これを控除した額)
(注5)
減額調整  負担軽減措置により一般被保険者が医療機関等の窓口で支払う一部負担金が軽減されると、一般的に受診が増えて医療給付費が増加する(波及増)傾向があるとして、この波及増に係る国庫負担対象費用額を減額するために行われる調整

負担金の交付手続について、①交付を受けようとする都道府県は、厚生労働省に交付申請書を提出し、②これを受理した厚生労働省は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査した上で、③これに基づき、厚生労働省において交付決定を行って負担金を交付することとなっている。そして、④都道府県は、当該年度の終了後に厚生労働省に事業実績報告書を提出し、⑤これを受理した厚生労働省は、その内容を審査した上で、⑥これに基づき、厚生労働省において交付額の確定を行うこととなっている。

本院は、平成30年度から令和4年度までの間に交付された負担金について、22道府県において会計実地検査を行うとともに、1県から事業実績報告書等の関係資料の提出を受けるなどして検査した。その結果、5府県において、集計を誤って一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定し、また、負担軽減措置の対象者に係る医療給付費の一部について減額調整を行っていないなどしていたため、負担金交付額計369,637,785,952円のうち計44,480,143円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、5府県において確認が十分でなかったこと、厚生労働省において事業実績報告書の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

神奈川県は、令和2年度の負担金の実績報告に当たり、市町村から負担金の交付額の算定に必要な情報についての報告を受け、これに基づき負担金の交付額を算定していた。しかし、同県茅ヶ崎市から報告された情報において、同市は、一般被保険者に係る医療給付費を集計するに当たり、高額療養費及び高額介護合算療養費の支給に要した費用の額の一部について二重に計上しており、一般被保険者に係る医療給付費を35,308,581円過大に算定していた。このほか、同県内の11市町村から報告された情報にも、一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定するなどの誤りがあった。

その結果、同県において一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定するなどしていたため、負担金計13,479,871円が過大に交付されていた。

以上を事業主体別に示すと、次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
年度
国庫負担対象費用額
左に対する国庫負担金
不当と認める国庫負担対象費用額
不当と認める国庫負担金
摘要
        千円 千円 千円 千円  
(109)
厚生労働本省
千葉県
2、3 391,160,864 125,171,485 19,647 6,287
負担軽減措置の対象者に係る医療給付費の一部について減額調整を行っていなかったもの
(110)
神奈川県
2 264,159,449 84,528,781 48,687 13,479
集計を誤って一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたものなど
(111)
大阪府
3 352,072,714 112,663,268 39,200 12,544
(112)
広島県
2 88,299,627 28,255,865 16,688 5,340
(113)
長崎県
2 59,432,439 19,018,385 21,339 6,828
(109)―(113)の計 1,155,125,095 369,637,785 145,563 44,480