ページトップ
  • 令和5年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 補助金

(13) 生活扶助費等負担金等が過大に交付されていたもの[14都府県](134)―(169)


36件 不当と認める国庫補助金 385,454,317円

生活扶助費等負担金、医療扶助費等負担金及び介護扶助費等負担金(以下、これらを合わせて「負担金」という。)は、生活保護法(昭和25年法律第144号)等に基づき、都道府県、市(特別区を含む。)又は福祉事務所を設置する町村(以下、これらを合わせて「事業主体」という。)が、生活に困窮する者に対して、最低限度の生活を保障するために、その困窮の程度に応じて必要な保護に要する費用(以下「保護費」という。)等を支弁する場合に、その一部を国が負担するものである。保護は、原則として世帯を単位としてその要否及び程度を定めることとなっている。そして、保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産や能力その他あらゆるものを活用することを要件としており、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)、国民年金法(昭和34年法律第141号)等の生活保護法以外の他の法律又は制度による保障、援助等を受けることができる者等については極力その利用に努めさせることとなっている。

また、事業主体は、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず保護を受けた者から事業主体の定める額を返還させ、又は不実の申請等により保護を受けるなどした者からその費用の額の全部又は一部を徴収することができることなどとなっている(以下、これらの返還させ、又は徴収する金銭を「返還金等」という。)。

生活扶助等に係る保護費は、原則として保護を受ける世帯(以下「被保護世帯」という。)を単位として、保護を必要とする状態にある者の年齢、世帯構成、所在地域等の別により算定される基準生活費に、健康状態等による個人又は世帯の特別の需要のある者に対する各種加算の額を加えるなどして算定される最低生活費から、当該世帯における就労収入、年金の受給額等を基に収入として認定される額を控除するなどして決定されることとなっている。また、各種加算のうち障害者加算は、国民年金法施行令(昭和34年政令第184号)に定める障害等級の1級の障害を有する者等を対象として、障害を有することによって生ずる特別な需要に対応するもので、障害の区分等に対応した加算額が認定されることとなっている。

負担金のうち保護費に係る交付額は、「生活保護費等の国庫負担について」(平成26年厚生労働省発社援0324第2号)等に基づき、次のとおり算定することとなっている。

負担金の交付額

この費用の額及び返還金等の調定額は、それぞれ次のとおり算定することとなっている。

ア 費用の額は、次の①及び②の合計額とする。

① 生活扶助等に係る保護費の額

② 被保護者が医療機関で診察、治療等の診療を受けるなどの場合の費用について、その範囲内で決定された医療扶助及び介護扶助に係る保護費の額

イ 返還金等の調定額は、事業主体が被保護者等からの返還金等を地方自治法(昭和22年法律第67号)に基づき調定した額とする。

また、誤払い又は過渡しとなった保護費の返納に当たり、事業主体が当該支出した経費に戻入することとした場合、当年度中に戻入された額については、当年度の費用の額に計上されないこととなっている。

本院が、26都道府県の99事業主体において会計実地検査を行うとともに、9都府県の21事業主体(注)から関係書類の提出を受けるなどして検査したところ、14都府県の35事業主体において、生活扶助等に係る保護費の額の算出に当たり、被保護世帯の世帯主等に年金受給権が発生していたにもかかわらず裁定請求手続が行われていなかったことから、当該世帯主等が年金を受給しておらず年金が収入として認定されていなかった事態、誤って障害者加算の対象となる障害を有しない者に障害者加算を認定していた事態等が見受けられた。また、東京都の1事業主体において、事業実績報告書の作成に当たり、誤って、当年度中に戻入された額を当年度の費用の額に計上していたことから、費用の額を過大に算出していた事態が見受けられた。このため、負担金計385,454,317円が過大に交付されていて不当と認められる。

(注)
9都府県の21事業主体のうち2府県の3事業主体は、会計実地検査を行った26都道府県の99事業主体のうち2府県の3事業主体と重複している。

このような事態が生じていたのは、35事業主体において、保護費の支給決定に当たり、被保護者の年金受給権に係る調査及び裁定請求手続に係る指導が十分でなかったこと、障害者加算の対象とすべき障害の認定に係る確認が十分でなかったことなどしたこと、厚生労働省及び13都府県において、適正な生活保護の実施に関する指導が十分でなかったことによると認められる。また、1事業主体において、負担金の算定に当たり、事業実績報告書に計上する費用の額の確認が十分でなかったこと、同省及び東京都において、事業実績報告書の審査が十分でなかったことによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

東京都墨田区は、世帯Aの保護を平成16年6月に開始しており、29年8月から令和3年9月までの保護費の支給に当たり、世帯主Bから収入はないとの届出を受けて、これに基づき、保護費の額を決定していた。

しかし、世帯主Bには平成19年7月に年金受給権が発生していたにもかかわらず、同区による年金受給権の調査及び裁定請求手続に係る指導が十分でなく、世帯主Bによる裁定請求手続が行われていなかったことから、世帯主Bは年金を受給していなかった。そして、本院の検査を踏まえて、同区が裁定請求手続に係る指導等を行った結果、世帯主Bは計9,317,497円の年金を遡及するなどして受給した。

したがって、同区がこの額を収入として認定していれば、当該収入分の保護費計9,317,497円は支給の必要がなく、同額が過大に支給されており、これに係る負担金計6,988,123円が過大に交付されていた。

以上を部局等別・事業主体別に示すと、次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
年度
国庫負担対象事業費
左に対する国庫負担金交付額
不当と認める国庫負担対象事業費
不当と認める国庫負担金交付額
摘要
        千円 千円 千円 千円  
(134)
青森県
青森市
平成28~令和4
66,865 50,149 11,000 8,250
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(135)
山形県
酒田市
平成30~令和5
33,624 25,218 8,087 6,065
(136)
群馬県
高崎市
平成28~令和4
58,678 44,008 14,694 11,020
(137)
埼玉県
草加市
平成30~令和5
5,640 4,230 5,524 4,143
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(138)
朝霞市
平成30~令和5
16,855 12,641 4,294 3,221
(139)
新座市
平成29~令和5
72,113 54,084 16,282 12,211
(140)
千葉県
木更津市
元~6
38,662 28,996 2,278 1,708
障害者加算の認定を誤っていたもの
(141)
習志野市
平成29~令和4
34,553 25,914 12,818 9,613
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(142)
市原市
平成28~令和4
61,660 46,245 28,357 21,267
(143)
東京都
墨田区
平成28~令和4
268,713 201,534 55,995 41,996
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(144)
目黒区
2~4
5,603 4,202 2,302 1,727
(145)
大田区
平成28~令和3
32,363 24,272 8,335 6,251
(146)
世田谷区
平成29~令和4 33,449 25,087 18,590 13,942
(147)
中野区
平成29~令和5
57,623 43,217 10,073 7,554
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(148)
江戸川区
平成28~令和5
108,469 81,351 12,518 9,389
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(149)
八王子市
平成28~令和4
107,139 80,354 20,486 15,364
(150)
昭島市
平成28~令和5
94,661 70,996 13,574 10,180
(151)
日野市
平成29~令和4
84,570 63,427 6,153 4,615
(152)
福生市
元、2
4,405,149 3,303,862 61,538 46,153
費用の額の計上額が誤っていたもの
(153)
神奈川県
横浜市
平成29~令和5
122,220 91,665 46,377 34,782
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(154)
川崎市
平成29~令和4
24,473 18,354 4,481 3,361
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(155)
厚木市
平成29~令和4
28,306 21,229 6,930 5,197
(156)
大和市
平成29~令和4
11,829 8,872 4,197 3,148
(157)
新潟県
新潟市
平成29~令和2
14,150 10,612 1,525 1,144
障害者加算の認定を誤っていたもの
(158)
福井県
福井市
平成29~令和4
20,023 15,017 5,535 4,151
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(159)
愛知県
半田市
平成27~令和4
46,137 34,603 10,562 7,921
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(160)
春日井市
平成28~令和4
26,406 19,804 6,771 5,078
(161)
大阪府
豊中市
平成29~令和4
133,700 100,275 28,602 21,452
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(162)
守口市
平成28~令和3
49,479 37,109 3,843 2,882
手当収入を認定していなかったものなど
(163)
和泉市
平成29~令和4
12,276 9,207 3,511 2,633
年金受給権の調査が十分でなかったもの
(164)
東大阪市
平成29~令和4
23,509 17,631 8,257 6,193
(165)
岡山県
笠岡市
平成30~令和5
19,338 14,504 4,729 3,546
年金受給権の調査が十分でなかったものなど
(166)
宮崎県
宮崎市
平成28~令和4
23,396 17,547 5,480 4,110
(167)
延岡市
平成28~令和4
16,625 12,468 5,788 4,341
(168)
日南市
平成29~令和5
33,617 25,212 6,662 4,996
(169)
沖縄県
沖縄市
平成28~令和4
202,713 152,035 47,776 35,832
(134)―(169)の計 6,394,603 4,795,952 513,939 385,454