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障害児通所給付費に係る国の負担が不当と認められるもの[1県、1市](187)


会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)障害保健福祉費
部局等
1県、1市
国の負担の根拠
児童福祉法(昭和22年法律第164号)
実施主体
市7、町4、計11実施主体
事業者
2事業者
過大に支払われた障害児通所給付費に係る障害児通所支援の種類
放課後等デイサービス
過大に支払われた障害児通所給付費の件数
596件(平成28年度~令和2年度)
過大に支払われた障害児通所給付費の額
9,692,817円(平成28年度~令和2年度)
不当と認める国の負担額
4,846,408円(平成28年度~令和2年度)

1 障害児通所給付費の概要

(1) 障害児通所支援

障害児通所支援は、児童福祉法(昭和22年法律第164号。以下「法」という。)に基づき、障害児に対して児童発達支援、放課後等デイサービス(注1)等を行うものであり、市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、これに要する費用について、障害児の保護者に対して障害児通所給付費を支給している。

そして、障害児の保護者が障害児通所支援を受けようとする場合の手続は、次のとおりとなっている。

① 障害児の保護者は、居住地等の市町村から障害児通所給付費を支給する旨の通所給付決定を受ける。

② 通所給付決定を受けた障害児の保護者(以下「通所給付決定保護者」という。)は、通所給付決定の有効期間内に都道府県知事又は政令指定都市若しくは中核市等の長(以下「都道府県知事等」という。)の指定を受けた指定障害児通所支援事業者(以下「事業者」という。)の事業所において、障害児通所支援を受ける。

また、都道府県知事等は、法等に基づき、障害児通所給付費等の適正化等を図るために、事業者に対して指導等を行っている。

(注1)
放課後等デイサービス  学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(幼稚園及び大学を除く。)に就学している障害児に対して、授業の終了後又は休業日に児童発達支援センター等の施設において、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を提供する支援

(2) 障害児通所支援に要した費用の額の算定

事業者が障害児通所支援を提供して請求することができる費用の額は、「児童福祉法に基づく指定通所支援及び基準該当通所支援に要する費用の額の算定に関する基準」(平成24年厚生労働省告示第122号。以下「算定基準」という。)等に基づき、障害児通所支援の種類ごとに定められた基本報酬の単位数に各種加算の単位数を合算し、これに単価(10円から11.52円)を乗じて算定することとなっている。

そして、放課後等デイサービスに要する費用の額の算定においては、常時見守りが必要な障害児への支援や障害児の保護者に対する支援方法の指導を行うなどの支援の強化を図るために、事業所に配置することとなっている児童指導員等の従業者の員数に加えて、常勤換算(注2)により算定した児童指導員等の従業者を1人以上配置している場合には、児童指導員等加配加算として、加配する従業者の種別、事業所の定員等に応じた単位数を基本報酬の単位数に加算することなどとなっている。

(注2)
常勤換算  従業者の勤務延べ時間数を事業所において常勤の従業者が勤務すべき時間数で除することにより、当該事業所の従業者の員数を常勤の従業者の員数に換算する方法

(3) 障害児通所給付費

市町村は、法に基づき、通所給付決定保護者が事業者から障害児通所支援の提供を受けたときは、事業者の請求に基づき、障害児通所給付費を事業者に支払うことなどとなっており、障害児通所給付費は、障害児通所支援に要した費用の額から当該通所給付決定保護者の家計の負担能力その他の事情をしんしゃくして政令で定める負担額等を控除して得た額となっている。

そして、国は、障害児通所支援に要した費用について市町村が支弁した障害児通所給付費の2分の1を負担している。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、障害児通所給付費の算定が適正に行われているかに着眼して、19都道府県及び41市区(14政令指定都市、27中核市等)において、障害児通所支援の提供を行う事業所を設置する451事業者に対する障害児通所給付費の支払について会計実地検査を行うとともに、1県から、障害児通所支援の提供を行う事業所を設置する1事業者に対する障害児通所給付費の支払について、障害児通所給付費の請求に係る関係資料の提出を受けるなどして検査した。そして、障害児通所給付費の支払について疑義のある事態が見受けられた場合には、更に都道府県等に事態の詳細な報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

検査したところ、1県及び1市(中核市)に所在する2事業者は、障害児通所給付費の算定に当たり、児童指導員等加配加算の要件を満たしていなかったのに、児童指導員等加配加算を適用して算定するなどしていた。

このため、596件の請求に対して、平成28年度から令和2年度までの間に11市町が支払った障害児通所給付費が計9,692,817円過大となっていて、これに対する国の負担額計4,846,408円は負担の必要がなかったものであり、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業者において算定基準等を十分に理解していなかったことにもよるが、1県及び1市(中核市)において事業者に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

香川県に所在する事業者Aは、障害児通所給付費の算定に当たり、放課後等デイサービスの提供を行った事業所aにおいて、平成28年6月、7月、29年12月から30年2月まで、30年11月から令和元年5月まで及び元年7月から同年10月までの各期間について、同事業所に配置することとなっている児童指導員等の従業者の員数に加えて配置された児童指導員等の員数が、常勤換算により算定すると1人以上となっておらず、児童指導員等加配加算の要件を満たしていなかったのに、児童指導員等加配加算の単位数を基本報酬の単位数に加算していた。

このため、上記の事態に係る526件の請求に対して8市町が支払った障害児通所給付費が計6,299,111円過大となっていて、これに対する国の負担額計3,149,555円は負担の必要がなかった。

以上を事業者の所在する県等別に示すと、次のとおりである。

県等名
実施主体
(事業者数)
年度
過大に支払われた障害児通所給付費の件数
過大に支払われた障害児通所給付費
不当と認める国の負担額
摘要
      千円 千円  
秋田市
3市(1)
2 70 3,393 1,696
放課後等デイサービス
香川県
8市町(1)
平成28~令和元 526 6,299 3,149
11市町(2)
平成28~令和2 596 9,692 4,846