厚生労働省は、生活保護法(昭和25年法律第144号)等に基づき、都道府県、市(特別区を含む。)又は福祉事務所を設置する町村(以下、これらを合わせて「事業主体」という。)が、生活保護を受ける世帯に支弁した保護に要する費用(以下「保護費」という。)等に対して、その4分の3を生活扶助費等負担金、医療扶助費等負担金及び介護扶助費等負担金(以下、これらを合わせて「負担金」という。)として交付している。保護費について、事業主体は、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず保護を受けた者から事業主体の定める額を返還させるなどすることができることなどとなっている(以下、返還させるなどする金銭を「返還金等」という。)。負担金の交付額は、保護費等の額から返還金等の調定額を控除するなどして算定することとなっている。このうち、返還金等の調定額は事業主体が被保護者等からの返還金等を地方自治法(昭和22年法律第67号)に基づき調定した額となっている。また、誤払い又は過渡しとなった保護費の返納に当たり、事業主体が当該支出した経費に戻入することとした場合、当年度中に返納されなかった額(以下「戻入未済額」という。)は、翌年度に調定されることになる。さらに、被保護者の医療扶助又は介護扶助を受けた事由が第三者の行為によるものである場合に事業主体に支払われる損害賠償金(以下「第三者行為損害賠償金」という。)等については、事業主体が調定し、返還金等の調定額に含めることとなっている。しかし、18都府県の47事業主体において、戻入未済額及び第三者行為損害賠償金等に係る調定額が事業実績報告書に計上されていなかったため、負担金が過大に交付されている事態が見受けられた。
したがって、厚生労働大臣に対して令和5年10月に、次のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めた。
ア 前記47事業主体のうち返還手続が未済の事業主体に対して、過大に交付されていた負担金について返還の手続を速やかに行わせること(会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求したもの)
イ 事業主体に対して、負担金の算定に当たり、戻入未済額に係る翌年度の調定額及び第三者行為損害賠償金等に係る調定額が返還金等の調定額に含まれること、戻入未済額に係る調定を適切に行った上で負担金の算定を適正に行う必要があることについて周知すること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めたもの)
ウ 負担金の事業実績報告書の審査に当たり、返還金等の調定額を的確に把握するため、戻入未済額等の額を記載させるよう事業実績報告書の様式を改正すること、また、都道府県に対して、返還金等の調定額を的確に把握するよう周知すること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めたもの)
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 返還手続が未済であった47事業主体に対して、過大に交付されていた負担金について6年4月までに返還の手続を行わせた。
イ 負担金の算定に当たり、戻入未済額に係る翌年度の調定額及び第三者行為損害賠償金等に係る調定額が返還金等の調定額に含まれること、戻入未済額に係る調定を適切に行った上で負担金の算定を適正に行う必要があることについて、6年2月に事務連絡を発して、事業主体に対して周知した。
ウ 負担金の事業実績報告書の審査に当たり、返還金等の調定額を的確に把握するため、戻入未済額等の額を記載させるよう、6年5月に事業実績報告書の様式を改正した。また、イの事務連絡により、負担金の事業実績報告書の審査に当たり、返還金等の調定額を的確に把握するよう都道府県に対して周知した。