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  • 令和5年度|
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  • (2) 工事の設計が適切でなかったもの

防風施設の設計が適切でなかったもの[九州農政局](198)


(1件 不当と認める国庫補助金 11,444,626円)

 
部局等
補助事業者等
間接補助事業者等
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(198)
九州農政局
長崎県
(事業主体)
水利施設等保全高度化
3~5 136,317
(136,126)
74,869 20,826
(20,808)
11,444

長崎県は、効率的な営農と農地の利用集積による農業経営の安定を図るために、佐世保市及び東彼杵郡川棚町にまたがって所在する宮長地区において、区画整理事業として、みかんの樹園地の整地、防風施設の設置等の工事を実施している。

このうち防風施設の設置は、強風の影響を最も受けやすい海岸に直接面した2か所において、みかんの風害の防止を目的として、コンクリート製の支柱、化学繊維製のネット等から構成される防風ネット(高さ5.0ⅿ、延長計168.3ⅿ)を設置するものである。

同県は、防風施設の設計について、「土地改良事業計画指針 防風施設」(農林水産省構造改善局計画部監修。以下「指針」という。)等に基づき行うこととしていた。

指針によれば、防風施設は、農作物等が被害を受けない安全な風速まで減風させることを設置目的としており、そのために必要な減風機能を持っていなければならないこととされている。そして、防風施設の設計に当たっては、現地観測等によって得られた風速を基に設計風速を算定し、これを農作物等が風害を受けない風速の最大値である限界風速まで減少させるよう減風機能の検討を行うなどすることとされている。

同県は、防風施設の設置に係る計画において、指針等に基づき、同地区の設計風速22.1ⅿ/sを、みかんの限界風速7.4ⅿ/sまで減少させることとして、防風ネット及び防風生垣を設置し、一体的な防風対策を行うことにより必要な減風機能を確保することとしていた。そして、防風ネットについてのみ先行して設計を行い、防風生垣については区画整理後の現地状況を踏まえて既存の樹木の利用等を含めて検討を行うことにしていた。

しかし、同県は、誤って防風生垣の設計を行わないまま本件工事を発注しており、設計図面において防風施設として防風ネットのみを設置することとしていたことから、防風生垣を設置せずに工事を完了していた。

このため、防風ネットのみの減風機能により、みかん苗木が受ける風速を算定すると、設計風速22.1ⅿ/sの減風後の風速は18.4ⅿ/sとなり、限界風速7.4ⅿ/sを大幅に上回っていて、必要な減風機能が確保されていない状況となっていた。

したがって、本件防風施設(補助対象事業費計20,808,413円)は、設計が適切でなかったため、みかんの風害を防止するという工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額計11,444,626円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、防風施設の設計についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。